あらすじ
『このミステリーがすごい! 2024年版』(宝島社)海外編第1位!
「ミステリが読みたい! 2024年版」(早川書房)海外篇第3位!
アンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞3冠!
MWA賞長篇賞最終候補作!
黒人の父親、白人の父親、惨殺された息子たち――
血の弔いが幕を開ける。
「懺悔と贖罪に彩られた哀しき父親たちの挽歌」
宇田川拓也 ときわ書房本店 (本書解説より)
デニス・ルヘインの『ミスティック・リバー』を訳したときと同じくらい、感情を揺さぶられた。
――加賀山卓朗(翻訳家)
読者の鈍った心身を痛めつけ、頭蓋と魂を揺さぶる! S・A・コスビーの才能は、もはや疑いようがない!
――小島秀夫(ゲームクリエイター)
僕らの生きるこの世の悲痛を描く、コスビーは詩人である。
――霜月 蒼(ミステリー評論家)
疾走する文章によって読む者の心をたまらなく震わせる物語である。
――杉江松恋(書評家)
現代クライムサスペンスの最前線をゆく傑作だ。
――吉野 仁(ミステリー評論家)
殺人罪で服役した黒人のアイク。出所後庭師として地道に働き、小さな会社を経営する彼は、ある日警察から息子が殺害されたと告げられる。白人の夫とともに顔を撃ち抜かれたのだ。一向に捜査が進まぬなか、息子たちの墓が差別主義者によって破壊され、アイクは息子の夫の父親で酒浸りのバディ・リーと犯人捜しに乗り出す。息子を拒絶してきた父親2人が真相に近づくにつれ、血と暴力が増してゆき――。解説:宇田川拓也
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
昨年のこのミス海外部門で1位だった本作をかねてより読んでみたいと思っていた。犯罪小説だけあって、スピード感、凶暴性に事欠かない読みやすい内容だった。息子たちを殺された父親同士がバディというのも、新感覚。
しかしながら、何か物足りない、もう一捻りほしいというのが正直な気持ちである。展開や心理面に深みがあると、より楽しめたと思う。
Posted by ブクログ
⭐️5.0
コスビーを初めて読んだのがこの作品で、大ファンに。
中年のダメパパ2人が、殺された息子たちのために立ち上がる復讐もの。
まず、パパたちがスネに傷ありまくり、偏見ありまくりという設定からして、これまでのハードボイルドものとは少々毛色が違う。とにかくヒーロー感もダンディ感も皆無。それなのに最後は、めちゃくちゃカッコいいパパたちに泣けてくる。
ストーリーはシンプルながら、人種差別やLGBTという今日的なテーマを下敷きにしつつ、アクションシーンは血で血を洗うようなえげつなさもあり、手に汗握るシーンが続き、読ませる筆致に唸らせられながら、一気読みしてしまった。
次の作品が楽しみな作家さんに出会えた幸せよ。
Posted by ブクログ
白人男性と黒人男性という同性カップルが殺され、2人の父親が復讐のために力を合わせて犯人を探して追い詰めていくというストーリー。
物語の舞台はアメリカで、アメリカで黒人や性的マイノリティはどのような扱いを受けているのか、主人公である2人の父親コンビがそれぞれ自分の息子の性的マイノリティにどれほど理解を示せずに過ごしてきたのか、という苦悩を交えながら速い展開で話は進んでいく。
暴力の場面もあるが、犯人をやっつけてスッキリ爽快・溜飲を下げるのではなく、タイトル通り哀しい物語でした。
Posted by ブクログ
「なんだか最近心に元気ないな...。なんでだろう...。」と思いつつ、そういえば最近ブクロブを見てなかったなと思い開いたら、なんと年初から記録をつけてなかったことに気づいたズボラ読書家です。やっぱり本を読まないとダメですね、語彙力も感情も乏しくなりがちです。
まずは何か1冊読まねばと、久々の読書に手に取ったのはこちら「頬に哀しみを刻め」
舞台はThe現代のアメリカ!
ジャンルとしてはサスペンスでとある殺人事件を中心に話が進みます。その進んでいく過程で、現代アメリカが直面する、人種だったり属性だったりという問題がハイライトされていくような形です。
私は海外に長く住んでいたような経験は無いものの、アジア人があまりい国や地域に滞在したときの、現地の人たちが無意識のうちに持つ蔑むような視線は経験したことがあります。それを日常的に受けるということは想像するだけで恐ろしいし、そして更に恐ろしいのはその視線に慣れてしまうこと。
この作品特有かなと思ったのは、外形的に恵まれた人種や属性だったら問答無用で幸せなのか?という点にもきちんとスポットライトが当てられている所。
ジャンルとしてはサスペンスだと思われるのと、上述のような社会的問題もはらんでいるので全体的に暗いトーンで進んでいきますが、エンターテイメント性も要所要所で散りばめられていて、飽きずに読めるんじゃないかなと思います。
洋書独特のグロめな描写も無くはないので、苦手な方は注意かもです。
社会に対して大なり小なりネガティブな感情を持ってしまったときに、本の中だけでもスカッとしたい!と思った週末に集中して読む用におすすめです◎
Posted by ブクログ
めちゃくちゃ面白かった。読ませる、ハードボイルドでかっこいい、セクシュアリティとアメリカのマスキュリニティ(というか同性愛嫌悪)が肌触りをもって描かれてる。
泣いたわ。泣くわこんな。他のも読んでみたい。
Posted by ブクログ
息子を殺された父親達が犯人と、その裏にある真相を探る物語。兎に角、父親達は強くて容赦がない。本作のテーマには、マイノリティが関わっているが、本筋とはそこまで関係はない。クライムアクションは普段読まないが面白かった。
Posted by ブクログ
「憎しみだ。人は復讐を正義のように語るが、復讐はちょっといいスーツを着た憎しみさ」
黒人の父親、白人の父親、惨殺された息子たち――
血の弔いが幕を開ける。
後悔、悲嘆、憎悪、復讐・・・亡き息子たちへの懺悔と非情な暴力への怒りが壮絶に描かれ、読んでる内に感情移入してしまう恐ろしい作品でした
何より登場人物の圧倒的なキャラクター性が魅力的で、ハードボイルドなオヤジたちの最期を覚悟した復讐劇に痺れました
一つ一つのやり取りの情景が目の前に映し出されるように鮮明に浮かび、手に汗握る大立ち回り!何よりクライマックスは・・・!是非ご自分の目でお確かめ下さい!!
(そのまま脚本にもなりそうだし、映画化・ドラマ化してくれないかな。ダメかな。絶対見るんだけどな)
この物語の重要なテーマの一つは人種差別やジェンダー、LGBTQ+だと思います。犯罪小説でこうした問題を主眼に置いた小説ってはじめてかもしれませんね。
これまでの人生の大きな価値観を揺さぶられ、戸惑い、間違い、それでも理解を諦めず自分なりの回答を探していく姿が人間くさくてとても良かった・・・!
仮に理解が難しかったとしても、自分の息子である限り、せめて幸せを一緒に喜んであげることができないか、葛藤から彼らなりの答えを導き出していく過程が深く刺さりました・・・同じ立場になったら自分はどうなんだろう。。。
ノワール小説を初めてちゃんと読んだ気がしますが、これはクセになってしまうぞ・・・!なんと恐ろしい・・・!
Posted by ブクログ
良いな〜
アメリカンハードボイルド
銃、ナイフ、デカイピックアップトラック、酒、
暴力、殺し、人種差別、LGBT、犯罪、不正、正義
日本には無いワイルド感が最後は、アメリカ的な気持ち良さで終わる。
ノンストップで読める
Posted by ブクログ
息子たちを殺された二人の父親が、復讐する物語。
その父親たちの経歴がひどい。
一人は貧乏白人で、アル中で、前科持ちで、刑務所帰り。
もう一人は黒人で、人殺しの前科があり、もちろん刑務所帰り。
さらに、殺された二人の息子たちはゲイで、生きている間の親子関係は最悪だった。
とにかく、二人が暴力的で殺しまくる。
警察もあまり出てこない。
少しご都合主義的な展開もあるが、
復讐を通して、
人種間のわだかまりが実は子どもの頃から
植え付けられた古びた価値観だったり、
命を張って助け合うことで、人間としての本質的な良さを知り、
友情を深めていく。
暴力に彩られた、大人のファンタジーでもある。
Posted by ブクログ
作品の舞台はアメリカ、バージニア州リッチモンド
黒人で過去に服役しがらも、地道に働き庭園管理会社を経営しているアイク
白人で妻に捨てられ、酒浸りになっているバディー・リー
彼らの息子同士(ゲイ)は互いに父親に祝福されることなく結婚していたが、ある日警察からこの息子たちが撃ち殺されたとの連絡を受ける
男の世界を生きてきたアイクとバディー・リーは息子を愛しながらも、息子たちの性について理解できず向き合うことを避けてきた…
それに対する後悔や贖罪が二人の男を掻き立て、息子たちを殺した犯人への復讐に向かっていく
とにかく元囚人のおっさんたちのこと…
いくら息子たちを殺されたからといって、やること全てすごい!戦争状態
もう歯止めがかからない…
でもついこの不器用なおっさんコンビにクスッ!と笑い共感してしまうのだ
たがテーマは重い
人種差別、暴力、性(LGBTQ+)…
読後にタイトルが深く胸に突き刺さる
人間性や社会問題を深く掘り下げ
ただの復讐劇ではなく、人間性や社会問題を深く掘り下げた作品
息子を殺された二人の父親が復讐を誓う物語だが、その中で描かれる父親たちの感情、特に哀しみ、怒り、そして愛は非常に深い
語は非常にスリリングで、暴力描写もリアル。
コスビーのスタイルが如実に現れているが、それが単なる暴力描写ではなく、背景に深い人間ドラマを持っている
Posted by ブクログ
このミス2024年第1位
LGBTQの息子たちを殺された前科者の老人たちが復讐する痛快劇。LGBTQについての部分はなかなか難しいが、それを除けば痛快に最後まで突っ走る。
中途半端な終わり方でないのがよかった。
Posted by ブクログ
現代でもこういうタイプのバイオレンスな感じがあるんだなあ、と感心。かと言って古臭い作りでなく、あまり考えすぎずに楽しめた。翻訳物ならではの読みにくさがなければ★5
Posted by ブクログ
「アメリカ」の善悪、美醜、正邪、愛憎 等の全てをぶち込んだような小説。「アメリカ」が書いたような、「アメリカ」だからこそ書けたような、救いようのない分断と…愛の物語。
Posted by ブクログ
元ギャングで出所後は真っ当な商売で幸せだ家庭を築いていたアイク、そして典型的レッドネックのバディ・リー、この二人がバディを組んで復讐のために大暴れする。アメリカ南部を舞台にしたとても痛快な物語だが、ここにLGBTがかかわってくるのがややこしく、秀逸である。3.8
Posted by ブクログ
このミス一位で気になったので、手に入れて読んでみた。
同姓同士の結婚をした息子さんが、何者かに銃撃され殺されてしまった後、2人の父親(アイクとバディ•リーが手を組んで犯人を見つけ復讐を目論む話。
父親達は、息子が同性愛者であることを受け入れきれず
、生前息子とまともに向き合えなかったことを後悔していて、読んでいてやるせなさがつたわってきました。
アイクもバディ•リーも元囚人で、やること考えることアウトロー。
ギャング達はそんな2人を老人としかみていなく、酷い返り討ちにされてしまいます。
2人とも人を殺すことに読んでいて気持ちいいくらい躊躇がありません。
「ジョン・ウィック」程スマートではないけど、カッコよかった。
そして、バディ•リーの陽気さがまた良かった!
ラストシーンが切ないけどあたたかいなと、印象に残りました。
Posted by ブクログ
3.5くらい。
映画「アメリカン・フィクション」で揶揄された黒人が書いた小説ってこんななのかな、と感じた。
でも、そういうのが今求められてて読まれているのかもしれない。
コテコテのB級感。昔はワルだった男が家族のために復讐する。コテコテ。
そこに黒人差別やLGBTQが絡んでくる。
読むのに時間かかったけど、読めて良かった。
Posted by ブクログ
2024年初読み本。『このミステリーがすごい!2024年版』海外編第1位作品。このミス推しの作品ということで、余りストーリーとかを気にせずに書店で見つけて、即購入しました❗
本書は、ジェンダーやLGBT、人種差別という重く深い問題に真正面から向き合いながら、愛する子供の復讐劇を描いた、ピカレスク小説。
息子の死から、復讐を誓うまでの過程が結構丁寧に描かれているので、最初は少し退屈に感じるかも知れませんが、復讐すると誓ってからは、とてもハードな展開のバイオレンス小説となっています❗
訳者の加賀山 卓朗さんはパーカーの『スペンサー』シリーズでも御馴染みの方で、海外小説にありがちな読み辛さは殆どないと言っても過言ではありません❗また、作品の雰囲気が船戸与一さんにちょっと似ているかなぁと感じました。
正直、中盤までは読むのを少し後悔しましたが、読後は全くそんなことは感じさせない作品でした♫S・A・コスビーは、ちょっと気になる作家さんなので、『黒き荒野の果て』もチャレンジしたいと思います❗
Posted by ブクログ
読書会の課題本。そうでなければ、読まなかったであろう。
何となく映像化を意識した文章の様に感じてしまう。暴力的シーンや、血が出る描写などは生理的に受け付けられない。。。。。結果的にあまりにも狭い人間関係となり、特に最後のシーンはあまりにも出来すぎというか、B級映画のクライマックスって感じにしか思えない終わり方ってのにも違和感を感じながらも、「お決まり事」がもたらす爽快感というか、「正義は勝つ」的な高揚感は得られる。日本語にしたときの違和感がところどころ感じられるのだが、英文を読んだわけではないので訳の良し悪しについては何とも言えない。
Posted by ブクログ
翻訳されてるから読みづらい部分もあったけど、最後まで読めた。
人種差別やジェンダー等、社会問題に触れてて当人が亡くなってから考えを改めるっていうのが切なかった。
Posted by ブクログ
セクシャリティーの問題を取り入れて、現代の社会派目線はあるものの、割と典型的な「THE復讐」ものでした。
結構読み応えもあって、なかなか面白かったです。
ただ、真犯人判明シーンなどは、特に伏線回収とかも無く、割とあっけなく、雑な感じで物語は終焉を迎えます。
そのため、全体の印象としては、一本道なストーリー展開で、ちょっぴり拍子抜けでした。
Posted by ブクログ
展開が映画みたいだった…冒頭から巻末までテンポ良く進んでる感じがあった。
登場人物みんな…あまり良い人ではないけど、人間味があって私は好きよ……人間だもの。
人間なのに頭から足まで全部善人というのは存在しない。嫌な感情、ドロドロしている感情誰もが持ってるでしょ。
その感情を上手くコントロールしているだけ、表に出していないだけ。
小説では、ドロドロしている感情を良い方向に出している所があれば、悪い方向に出している所もあって、「みんな人間だものね、人間みんな失敗するよ」とどこかで俯瞰的に読んでいる自分がいた。
Posted by ブクログ
ザ・ダークサイド・オブ・アメリカって感じ。
ストーリー運びも巧みだし、人物設定もうまい。
ジェンダー、LGBTQ、人種差別問題を添え物程度に入れるのでなく、真相に関わるテーマとして描いてる。
という名作なんだろうけど、暴力シーンが多くて。
若い頃とちがって耐性が減って読むのヘトヘト。
以前はエルロイとか大好きだったけど、いま読めるかな〜。
Posted by ブクログ
息子の同性を愛しているとの告白を受け入れる事ができずに仲たがいしてしまった父親。その息子がパートナーと共に惨殺されてしまう。
生きているうちに、息子のありのままを受け入れておけば良かったと後悔する父親の後悔と苦悩。そんな自分に対する怒りが激しい復讐へと駆り立てていく。
人種差別、性差別と現代の社会問題を取り上げながら、ベースは普遍的な父の息子への深い愛情である。
一風変わったハードボイルド作品。
それにしてもやり過ぎでしょ?って思うぐらいのバイオレンスシーン、アクションシーンが満載。疾走感がたまらない。アイクがカッコいい。
Posted by ブクログ
XのTLで見かけて気になったので読んでみました。
思っていたのと違っていた。笑
ジャンルとしてはハードボイルドになるかと思います。
暴力シーンが苦手な方は厳しい気がします。
(結構な頻度で出てくるからね)
ストーリーに目新しさはそんなにないのですが、同性(男)同士の夫婦(カップルって言ったほうがいいのか?表現が困る)が何者かに殺害されたところからストーリーは始まります。
彼らの父親二人が手を組んで復習するべく犯人を捜す、というもの。
被害者がゲイの夫婦、というところが今どきっぽいです。
LGBT、人種差別、親子関係、裏社会と重いテーマが何重にも重なっています。それだけのテーマを扱っているので、結構なページ数になります。
ですが、意外と面白く読めました。(バイオレンスシーンは厳しいですが)
なんといっても父親二人の心境の変化が丁寧に書かれているのです。
重めのテーマに対して、薄っぺらい内容だと読めたものではないと思うのです(・・・結局それで終わりかよ、みたいな)が、登場人物の生い立ちもかなり丁寧に書かれてますし、人種差別の表現などもかなりリアルなんじゃないかと察します。何より裏社会をきちんと取材して描いている感じがします。
バイオレンス要素と人物の丁寧な描写が交互に訪れます。それがストーリーに強弱を与えているんですよね。
そんな中で気になる一言がありました。
”本当の自分を隠すべきだとあなたが思っているそれこそが、ぼくの指摘したかったことなんだ。”
ストーリーの核でもあり、これを父親二人がどのように認めていくか、といった本のテーマともなる言葉になります。
表紙を見てもわかるように、かなり重量感あるストーリーです。
本質を追求したい人には向いている作品だと思いました。
Posted by ブクログ
このミス海外編の1位ということで読んでみました。
息子を殺された二人の父親の復讐のお話ですが、LGBTへの差別が大きく関わっています。
基本的にはマッチョなアメリカの復讐劇ですが、そこにLGBTを含む様々な差別がベースになっているところが今風かなと思いました。
竹蔵が感じたのは、日本ではありえないくらいの警察の捜査のずさんさかな。
LGBT夫婦であった息子たちが生前は理解できなかった父親たちの懺悔の思いが何度も出てきますが、もし息子たちが殺されなかったら息子たちとの関係は断絶したままだったはずで、そういった想いが何度も何度も語られるのがちょっと???ということが評価があまりよくない理由です。あと、ちょっと悪役たちが役不足という感じでした。
竹蔵
Posted by ブクログ
アメリカでミステリー賞を数多く獲得し、日本でも話題のS・Aコスビーの最新作である。
結婚して夫婦になった二人のLGBTの息子達が突然銃撃され惨殺される。
黒人と白人の彼らの父親が衝撃と絶望のなかで、事件を解明し犯人を探し報復する話である。二人は息子達への生前の暴挙やLGBTへの無理解や差別を後悔し罪滅ぼしで命懸けの復讐をする。
息子はかつての恋人(女性)が大物政治家の二代目と付き合い、性癖と異常な権力欲を知り別れさせようとするが、二代目は大事な選挙中のため露見を恐れて、凶悪な犯罪組織を使って関係者を抹殺すべく夫婦を殺害した。
冷酷な組織の暴力や殺人の描写はフィクションとはいえどぎつく、LGBTや差別という現代社会の切実な課題を底流に据えたハードボイルド・ミステリーである。
LGBTはアメリカ社会では既に慣れたことと思っていたが登場人物達の対応は偏見に満ちていて意外であった。白人の父親は覚悟の死を遂げる。
臨場感のある表現で切迫した速い展開に、始めから引き込まれ一気に読む、読み終わってホッとする。
男親の息子達への強い贖罪意識に余韻が残る。