加賀山卓朗のレビュー一覧

  • 二都物語

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    初ディケンズ。もっと古くて歴史の匂いを感じる本かと思ったら、二つの都市を舞台に、銀行のカビ臭いいかめしさ、街の喧騒、登場人物の描写と会話が生き生きとしてて温かさと愛にあふれており、あっという間に読めてしまった。フランス革命は実際に圧倒的な民衆の怒りとうねりであの空気感だったのだろうけど、理不尽な裁判、ギロチンの非情さが際立っていて、特に革命の時の勇ましいドファルジュ夫人がダーネイに対しては冷たく残酷で、そういう場面と雰囲気に読んでて一喜一憂する。
    ダーネイとルーシーの愛よりは、お針子とシドニーの無垢で気高い魂が印象的だった。

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    2022年12月24日
  • 葬儀を終えて〔新訳版〕

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    病気で急死したリチャードの葬儀で姪のコーラが放った一言「だって彼は殺されてんでしょう」。
    空気が読めないが真実を突く事が過去多かった彼女の一言。彼女がその後すぐに殺されたことにより、リチャードは本当に病死だったのか!?を巡るストーリー。
    本作はトリックが凄かった。派手さは無いのだが、あー、なるほどー、その視点は無かった。と、ただただ納得。コーラの放った一言が単なる一言なのだけれども、こんなにも物語に食い込めるのかという部分で凄かった。

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    2022年12月11日
  • 火刑法廷〔新訳版〕

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    最初のどう見てもオカルトな事件が、ちゃんと論理的に解決されて、そして…という展開がとてもハリウッドのサスペンス映画っぽくて面白い!

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    2022年08月08日
  • 黒き荒野の果て

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    ネタバレ

    裏家業の運び屋から足を洗って、真面目に自動車整備工場を営んでいる主人公ボーレカード(バグ)。しかし、同じ町に大きな同業者の工場ができ、経営難に陥り、裏家業にもう一度足を突っ込まざるを得なくなる。

    貧困と犯罪、家族のしがらみ。抜け出せない過去、黒人と白人それぞれの格差社会と交錯する差別…。前世紀から続くアメリカのやるせない社会問題を背景に、ぶっとびカーチェイスシーンを織り交ぜて描くアクションノアール小説。

    スピード感といぶし銀的渋さの両立。古い器に新しい酒を入れる手法の模範例ともいえる傑作。

    日本もここまで貧困化し、都市圏と圏外の生活や文化がかけなはれている現状、よそ事と笑えない小説だと思

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    2022年06月26日
  • 黒き荒野の果て

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    設定はありきたりな感じだが、読み始めると初っ端から疾走感と緊迫感にグイグイ引っ張られる。ハードボイルドチックな気の利いた会話や時には詩的な感じさえする比喩表現も愉しい。

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    2022年06月07日
  • 地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録

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    序文だけでもうすっかり心つかまれてしまった。
    大人による、大人のための文章。
    これよ、これ! こういうのが読みたかったのー! と、私の脳みそ含むからだ全部が喜んでいるのを感じた。

    もともと、ミステリや探偵小説の類はあんまり好きじゃないから、ジョン・ル・カレの作品も「ナイロビの蜂」しか読んだことない。
    でも、これまで読んだ推理小説は読んだ端から忘れていって、ほぼ頭の中に残っていないけど、「ナイロビの蜂」だけは、割と心の深いところに沈殿していて、読み終わった後もよく思い出します。
    小説があんまり良かったので、映画もすぐ見たほど。(そして、映画も悪くはなかったけど、小説の方がだんぜん良かった)

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    2022年06月04日
  • 二都物語

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    タイトルの地味さとは裏腹に、物凄くスケールの大きな大河ドラマ。一大エンターテイメント。
    勧善懲悪なんだけど、根底に民衆の本物の苦しみがあるからこそ、その中での愛や助け合いや勇気が輝くのだと感じる。
    割とかっちりした辻褄合わせとか、現代的な感じ。漫画化したりして今の若者にも読んでほしい。

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    2022年05月04日
  • 黒き荒野の果て

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     ホンモノのノワールがやって来た。古いフレンチ・ノワールの世界が、現代に帰ってきた。そういう小説の時間をもたらしてくれる作品である。

     70年代のアメリカン・ニューシネマのフィルムの傷を想定しながら読む。暗闇に潜んで見上げていた傷だらけのスクリーン。暗くくすんだカラー。映画館内に漂う煙草のにおい。小便臭いコンクリート打ちっぱなしの廊下の匂い。しかしスクリーンの向こうには、野望を持つ男と女のしゅっとした切れの良さがある。銃口と硝煙。カーブの向こうを見据えるドライバーの冷徹な眼差し。

     それらは大抵。美しい犯罪ストーリーだった。生と死、疑わしい愛、安全さに欠ける大金、それらがやり取りされていた

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    2022年03月14日
  • 二都物語

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    ミュージカルや演劇を何度も観るよりこの本一冊でその何倍もの感動を体験できると思う。
    こぼれたワインを舐めとる様子や、ゴルゴンの首に出てくる侯爵の館など、惹きつけられる描写が多く、形や色彩や音を伴って感覚に訴えてくる作品だった。

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    2022年03月11日
  • 黒き荒野の果て

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    家族のために最後の仕事,犯罪へと向かうボーレガード。家族のため、守るためだったはずのことがどんどん追い込まれていく。犯罪計画と信用できない仲間たち。夫として父親としての想いと妻の気持ちとのずれ。その間で揺れながらそれでも計画に飛び込んでいくこと。乾いた空気がある犯罪小説であり、良くも悪くも家族を強く想っている家族小説でもあってとても読み応えのある作品。

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    2022年03月07日
  • 大いなる遺産(上)(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ディケンズは中産階級の底辺から這い上がった。安サラリーマンだった父はお人好しで経済観念がまるでなく、一家は路頭に迷う寸前まで行った。少年ディケンズは教育らしい教育を受けられず、12歳で靴墨工場で働き、これをかなり屈辱的体験だと捉えていた。これはのちの『デイビット・コパフィールド』に反映されている。

    やがて事務員として働きながら速記術を学び、記者として新聞や雑誌に記事を寄稿し始める。的確な観察を記事にまとめる際、ユーモアとペーソスをたっぷり交えて記述するのが得意だった。

    ディケンズは飽かせぬ天性のストーリー・テラーだった・ただし、小説のプロット構成が巧みだったのではない。

    全体の構成がバラ

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    2022年02月21日
  • 大いなる遺産(下)(新潮文庫)

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    メチャクチャ面白くない?突然金や地位を得る若者というのは何度となく焼き直されてるが、これを超える話は無いのでは。登場人物の一人一人がイキイキとしていたし、最後も良い。古さを感じない翻訳もgood!

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    2022年02月06日
  • モーリス

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    ネタバレ

    ※クライヴのことしか話していません※

    クライヴとかいう男を生きたまま熊の体に縫い付けて火を放って燃やしたい!!!!!!!!!!!!!!!!!
    (※ミッドサマーを視聴していた)
    ミッドサマーのクリスティアン以上に胸糞男だった。
    とりあえずクライヴのせいでお腹を壊した。

    おっとりして人畜無害だがスポーツマンのモーリスは自分の性的指向に気づいていたけれども、その性格のせいで「自分は同性が恋愛対象なのだ」とはっきり意識することができなかった。
    聡明であらゆることに鋭敏なクライヴは早々に自分の性向に気づき、苦しんで自分を抑圧することに慣れてしまっていた。
    当時イギリスでは、同性愛は犯罪とされていて、

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    2021年09月29日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    これは翻訳の妙でもあるのだろうけど、文章の隅々まで英国っぽさが溢れる小説。人物の性格造形から気候や街の雰囲気、ウイスキーや料理、菓子等の小道具に至るまで、芯が一本ビシッと通っていて、知らずしらずのうちに世界に引き込まれた。

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    2021年07月16日
  • 11月に去りし者

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    「あらゆる決断によって新しい未来をひとつ作る、他の未来を全て潰して」
    随所に、なかなかの哲学的な名言が刻まれている。

    一九六三年十一月ジョン・F・ケネディ大統領暗殺事件は、ミステリーな点が多くフィクション、ノンフィクションとも数多くの作品が世に出ている。
    この小説は、事件の謎解きではなく、事件によって人生が動き出した人々の物語。

    追う側、追われる側、それに巻き込まれる人たち
    疑心暗鬼の中、それぞれにドラマがあり、人生が動き出す。
    それは、先に確かなことなど何ひとつないドラマ……

    登場人物が魅力的で、ラストを読み終えたあとの余韻が映像的に残る。
    わたしには、シャーロットの撮ったギドリーの長

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    2021年06月24日
  • 死ぬまでにしたい3つのこと

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     この作品の不思議なタイトルを見て、不思議に思ったので、まずはネットで検索してみたのだが、『死ぬまでにしたい100のこと』『死ぬまでにしたい10のこと』がヒット。ミステリーではないみたいだが、ドラマ化されたり、推奨行為として実践されたりしているようである。本書を読むまで、死ぬまでにしたいことのリストアップをぼくはちなみに考えたことすらない。

     でもこの物語の少女は、『死ぬまでにしたい3つのこと』のタトゥーを片腕に入れてから、しっかりと行方不明になってしまったそうである。本書のこのタイトルが気になる方は、その意味ではぼくの疑問に回答が得られたや否やを、読むことで探り当てて頂きたい。
     
     個人

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    2021年02月24日
  • 大いなる遺産(下)(新潮文庫)

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    これに満点以外を付ける人の気持ちがわからない。
    それくらいには衝撃を受けた作品だった。
    上巻の200ページくらいまではひたすらイングランドの田舎での貧乏な暮らしの細かな描写が続き、正直退屈していたが主人公がある人物の家に招かれてから興味を惹かれ出した。
    そのまま導かれるように下巻を読み進めるとディケンズの魔力に取り憑かれることとなった。
    上巻で描かれていた(私が退屈だと感じた箇所含め)ことが、見事な伏線となり丁寧に少しずつ回収されていく。こんなことされてはページを捲る手が止まらない。
    本作は大きくミステリーとジャンル分けされているようだが、文学で表現出来る様々な要素が入り組んでおり、読み手によ

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    2021年02月02日
  • 11月に去りし者

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    ケネディ暗殺事件の真相が明らかになるという意外性はあるものの、ありがちな犯罪小説でありふれた恋愛小説であり非常にアメリカ的な小説。であればこそ、エピローグでハリウッド世界に収斂させたストーリーテリングが見事でした。もし映画化されることがあれば、母親が遺した写真の入った箱をいつしか娘達が開けたときにあの男の人を思い出す瞬間をエンディングにしてもらいたい。

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    2020年12月16日
  • 生活の発見 場所と時代をめぐる驚くべき歴史の旅

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    時間、感覚、旅など、身近なものの考え方が、歴史のなかにどのように変わってきたかを思考する本。切り口がすき。

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    2020年03月12日
  • 二都物語

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    まず掴みの馬車シーンからしてダイナミックで面白く、音や映像的なイメージの使い方もうまい。映画的なシーンが多々。クライマックスへ向かう高め方、回収の仕方も素晴らしい。手練だわ、ディケンズすごいわーと改めて思わされる。
    私は女の対決シーンが特に面白かった。

    いやー、「人間を描く」とはこういうことだよね。

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    2020年02月19日