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Posted by ブクログ
この並外れた個性を持つ作家の一作目は『黒き荒野の果て』だと思っていたが、これまで日本でも翻訳ミステリーのなかで最高評価を受けてきた三作の前に、実は未訳の本書が存在していたとは。現代の新しいクライム小説に眼を着けているハーパーBooksの代表的傑作となっているコスビーだが、今になって版元を変えて、知られざるデビュー作が時代を遡って登場した。
未だ日本の版元が眼を着ける前の作品とは言え、これまでの既翻訳作品3作と比べても何の遜色もないばかりか、この作家の原点となる南部を舞台にしたノワール&バイオレンスをこれでもかと見せてくれるハイレベルな傑作であるように思う。一人称による葬儀社勤務の中年黒人男性が主人公なのだが、彼の独白による展開方法が作品を見事に成功させているし、むしろデビュー作だからなのか、躍動感とエキセントリックなストーリーとがとても際立って見える傑作であるように思う。
ヴァージニア州の田舎町の神父が殺されるという事件。元警察官ながら現在は葬儀社勤務で、昔から腕っぷしに自信を持つ反骨の青年ネイサンはその殺人事件の真相究明に拘り、町のダークサイドの渦中へと飛び込んでゆく。一人称での彼の語りが紡ぐ長編小説ながら、小さな町でのダークサイドと、そこに息づく町民たちのそれぞれの闇を抉る語り口と、息継ぎを許さない緊張の連続が現在のコスビーとその印象をダイレクトに繋げてしまう。
出版社は変われど、翻訳者が同じである点も好感が持てるが、この作品が埋もれていたというこの数年間が何とももったいなかったと感じるのも、既作品を超えるくらいの本書の密度を経験すれば誰もが感じて頂けるものではないだろうか。ページ数の割に登場人物が多く、キャラクター・リストが別紙で付いているものの、そこに全員が掲載されているわけでもない。むしろこの作品の主人公はネイサン一人ではなく、町の住民すべてではないのか? と疑念を覚えるほど、すべてのキャラクターが結構な大役を課され、なおかつ運命の歯車に呑み込まれているように見える。
しかし、思えば、それがコスビー・ワールドなのだと思い返せば頷ける。新作はもう一年待ちのようである。二年も(翻訳を入れれば三年か)待たされるというところに、この旧作の翻訳があって有難い限り。現代アメリカ南部の闇を抉るコスビーの作品は、権力欲でいっぱいの醜くしか見えない現大統領を裏側から嘲笑するパワフルな文化力学になっているかもしれない、などとそう考えるのは穿ち過ぎであろうか?
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このミス大賞で海外部門の1位に選ばれた『頬に哀しみを刻め』のS.A.コスビーの長篇デビュー作
アメリカ南部ヴァージニア州を舞台とし、人種問題や南部独特の闇を描いているのはデビュー作から一貫しているようだ
主人公のネイサンはヴァージニア州の田舎町の葬儀社に勤めている
元は保安官だったネイサンに牧師殺害事件の調査が信徒から依頼される
やがて牧師の裏の顔が浮かび上がり…
ネイサンは町を支配する悪に立ち向かおうとするのだが、ネイトへの衝撃はすざましい…
解説にも書かれていたが、とにかくS.A.コスビーの作品は暴力描写に手を抜かない!
しかし、この主人公ネイサンが何とも陽気でやたらに強い…
だからなのかひどい描写であるにも関わらず、どこか痛快に読み進めてしまうのだ!
そして何といっても作品の根底にある家族や仲間との絆がすごい
まぁ、そんな絆があっていいのか?と思わなくはないが…(笑)
Posted by ブクログ
S・A・コスビーのデビュー作。
田舎町で葬儀社に勤める元海兵隊で元保安官補のネイサンは、イーソー・ワトキンス牧師死亡の調査を信徒から依頼される。表向きは自殺と噂されるが、腐敗した保安官事務所は詳細を語ろうとせず何か怪しい。調査を進めると、牧師周辺のきな臭い関係が明らかになってくる。
デビュー作だけあり、コスビー作品のエッセンスが濃縮されている。片田舎の中だけで物事が進むので物語のスケール感は小さく、後の作品で見られる社会問題まで盛り込むストーリーの深みみたいなものはあまりない印象で、わりとサラッと読めてしまうのだが、展開の面白さはさすが。ネイサンの相棒スカンクがあまりにも無敵で、都合の良い便利屋すぎるのが少し気になった。
Posted by ブクログ
S・A・コスビーのデビュー作。
『暗き荒野の果て』『頬に哀しみを刻め』『すべての罪は血を流す』という、その後の作品同様にアメリカ南部の田舎で暮らす黒人の社会と生きづらさ、そしてその社会の闇が描かれている。
主人公ネイサン・ウェイメイカーはかつて保安官として働いていたが、ある事件をきっかけに保安官を辞め、現在は従兄弟が経営している葬儀屋で働いている。
バプテスト教会の牧師イーソー・ワトキンスが死体で見つかり、警察は自殺として処理される。しかし、その処理に不審な点を感じた信徒からネイサンに実際には何があったのか事件の調査をしてほしいと頼まれる。
イーソー・ワトキンスを調べていくと牧師が働いていた教会に異様に高い寄付が定期的に支払われていることを知り、イーソー・ワトキンスが裏で何かをやっていたということも掴む。
しかし、その情報を知ったことでネイソンは命を狙われはじめる。
デビュー作にしてこのクオリティはさすがS・A・コスビーだと驚いた。
それ以降の作品はより鋭さが増している印象を受け、本作は少し荒唐無稽さを感じた。とは言っても馬鹿らしいとかそういうものではなくてエンタメ性が高いというか、ちょっとズルいキャラクターのスカンクという人物がいる。
このスカンクという人物が何者なのか気になってしまって、スピンオフをくれ、という気持ちになってしまった笑
つい先日、最新作の『King of Ashes』も刊行された。既にかなり高い評価で、こちらは早速NetflixでスピルバーグのAmblinとオバマ夫妻の製作会社はHigher Ground Productionsでドラマ化が決まったらしい。
邦訳も楽しみだが、映像化も楽しみだ。
Posted by ブクログ
あのS・A・コスビーのデビュー作
そりゃ、読まないとダメでしょ!
S・A・コスビーと言えば、、、
強盗稼業から一度足を洗った男がまた犯罪に巻きこまれていく話で、アンソニー賞、マカヴィティ賞、バリー賞というミステリ主要三賞のほか、数々の受賞を果たした『黒き荒野の果て』
ゲイのカップルを惨殺された父親たちが犯人を捜して復讐する話で、『黒き荒野の果て』と同じ三賞を二年連続で受賞した『頬に哀しみを刻め』
黒人保安官がひと癖もふた癖もある部下を率いて連続殺人犯を追う話で、アンソニー賞やエドガー賞に輝いた『すべての罪は血を流す』
これらの作品があり、もうどの作品も面白い!
『黒き荒野の果て』の原書刊行が2020年ということで、わずか4年あまりでこれだけの業績をあげたのは異例中の異例らしいです
そりゃ、このデビュー作も読まないとダメでしょ!
コスビー作品の一番の魅力は登場人物
特に、暴力的でとにかく強い主人公が最高にカッコいい!
本作の主人公ネイサン(ネイト)・ウェイメイカーの怒りから解き放たれた暴力も最高に痺れる
そりゃ、このデビュー作も読まないとダメでしょ!
コスビーの作品が好きなあなたも、まだ読んだことないあなたも、そりゃ、読まないとダメでしょ!
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