あらすじ
孤児オリヴァー・ツイストは薄粥のお代わりを求めたために救貧院を追い出され、ユダヤ人フェイギンを頭領とする少年たちの窃盗団に引きずり込まれた。裕福で心優しい紳士ブラウンローに保護され、その純粋な心を励まされたが、ふたたびフェイギンやその仲間のサイクスの元に戻されてしまう。どんな運命がオリヴァーを待ち受けるのか、そして彼の出生の秘密とは――。ディケンズ初期の代表作。
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チャールズ・ディケンズ
(1812-1870)英国ポーツマス郊外の下級官吏の家に生れる。家が貧しかったため十歳から働きに出されるが、独学で勉強を続け新聞記者となる。二十四歳のときに短編集『ボズのスケッチ集』で作家としてスタートし、『オリヴァー・ツイスト』(1837-1839)でその文名を高める。他にも自伝的作品『デイヴィッド・コパフィールド』(1849-1850)など数々の名作を生んだイギリスの国民的作家。
オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)
by ディケンズ、唐戸 信嘉
ノアは慈善学校の生徒で救貧院の孤児ではなかった。私生児でもなく、ちゃんと両親もいた。両親はすぐそばに住んでいた。母親は洗濯女で、父親はのんだくれの下級兵士だった。兵士といってもすでに退役しており、片足が義足で、日割りにすると二ペンス半と少しの恩給をもらって暮らしていた。もうずいぶんと長いこと、近所の店の小僧たちは往来でノアを見かけると、「半ズボン(3)」とか「慈善学校」とか不名誉なあだ名で彼を呼んだ。ノアはじっとこらえて彼らを無視した。だが幸運にも、とうとう名なしの孤児――どんなに卑しい者でも、後ろ指をさすことのできる人物――が彼の前に現れた。彼の鬱憤は利息つきでオリバーにぶつけられることになった。これは、よくよく考えてみるに値する事例である。なぜなら、ノアという人物を観察すると、人間の本性の瞠目すべき特徴が明らかになるからである。王侯貴族であろうと下劣な慈善学校の少年であろうと、愛すべきこうした性格は、身分に関係なく育まれるのだ。
バンブル氏がこのように話すと、オリバーはまた自分の母親が悪くいわれていることを聞きつけ、ほかの一切の物音を消し去るほど激しく扉を蹴りはじめた。と、そこへ、サワベリー氏が帰宅した。夫人たちは、彼の憤怒を誘うような尾ひれをつけてオリバーの不祥事を報告した。彼はただちにゴミ置場の扉を開け、生意気な弟子の首根っこをつかみ、オリバーを引きずり出した。
すぐわきの一里塚には大文字で「ロンドンまで百十キロ」と記されていた。その地名は彼の心に、かつてない、さまざまな連想を呼び起こした。ロンドン! あの偉大なる大都市ロンドン! そこへ行けば誰も――あのバンブル氏でも――もはや自分を見つけることなどできまい! 救貧院の老人たちがよくこんなことをいっていた。気骨のある若者ならロンドンで食うに困ることはない。田舎者には思いもよらぬ生活の手立てがいくらでもあるものだと。助けてくれる者がなければ、行き倒れて死ぬほかない自分のような宿無しの少年にとって、ロンドンこそ目指すべき場所に違いない。このような考えが脳裏をよぎり、オリバーはすぐに立ち上がってまた歩き出した。
その部屋は壁も天井も、古さと汚れのために真っ黒だった。暖炉の前に 樅 の木でできたテーブルが据えてあり、その上にジンジャーエールの空壜にさしたロウソク、何個かの錫のマグ、パンやバターや皿などが置かれていた。紐で暖炉の上に固定され、火にかけられたフライパンの中では、ソーセージが焼けていた。そして手に大きなフォークを持った、年老いた皺だらけのユダヤ人が、そのフライパンの前に立っていた。卑しい、ぞっとする顔立ちは、もじゃもじゃの赤毛によって隠されていた。彼は油で汚れたフランネルのガウンを着て、喉元を大きくはだけ、フライパンと、大量の絹のハンカチがぶら下がっている物干し竿の両方に注意を向けているようだった。年代物の麻袋で作った粗末なベッドが所狭しと並び、四、五人の少年たちがテーブルを囲んで座っていた。彼らはドジャーと同い年ぐらいに見えたが、大人びた様子で、陶器製の長いパイプをくゆらし、酒を飲んでいた。ドジャーがユダヤ人に何事か耳打ちすると、少年たちは彼のそばへ寄り集まった。そしてふり返ってオリバーにニヤニヤと笑いかけた。ユダヤ人も同じように、フォークを手にしたままオリバーのほうを向いて笑った。
このゲームが何回もくり返されたころ、若い女二人が少年たちを訪ねてやって来た。一人はベットといい、もう一人はナンシーといった。二人とも豊かな髪をしていたが、結い方はいい加減で、靴も靴下も薄汚れていた。美人とはいいかねたが、厚化粧をしたその顔はたくましく、威勢のいい感じがした。二人は少しも飾らず人当たりがよかったので、オリバーは実に感じのよいお姉さんだと思った。実際二人はその通りの人物だった。
「多分そうでしょう」オリバーは答えた。「天国はずいぶんと遠くにあって、そこでみんな幸せに暮らしているから、哀れな子供の枕元までわざわざやって来るはずはありません。でも、僕が病気だと母さんが知ったら、きっと天国にいても心配してくれると思います。母さんだって死ぬ前、とても重い病気だったんです。でも、天国にいると、僕のことなど少しも知りようがないかもしれません」オリバーはちょっと黙ってから、そうつけ加えた。「僕が苦しんでいるのを知ったら、母さんも悲しい気分になると思います。夢の中に出てくる母さんは、いつも優しくて幸せそうですけど」
オリバー・ツイスト (光文社古典新訳文庫)
by ディケンズ、唐戸 信嘉
ノアは慈善学校の生徒で救貧院の孤児ではなかった。私生児でもなく、ちゃんと両親もいた。両親はすぐそばに住んでいた。母親は洗濯女で、父親はのんだくれの下級兵士だった。兵士といってもすでに退役しており、片足が義足で、日割りにすると二ペンス半と少しの恩給をもらって暮らしていた。もうずいぶんと長いこと、近所の店の小僧たちは往来でノアを見かけると、「半ズボン(3)」とか「慈善学校」とか不名誉なあだ名で彼を呼んだ。ノアはじっとこらえて彼らを無視した。だが幸運にも、とうとう名なしの孤児――どんなに卑しい者でも、後ろ指をさすことのできる人物――が彼の前に現れた。彼の鬱憤は利息つきでオリバーにぶつけられることになった。これは、よくよく考えてみるに値する事例である。なぜなら、ノアという人物を観察すると、人間の本性の瞠目すべき特徴が明らかになるからである。王侯貴族であろうと下劣な慈善学校の少年であろうと、愛すべきこうした性格は、身分に関係なく育まれるのだ。
バンブル氏がこのように話すと、オリバーはまた自分の母親が悪くいわれていることを聞きつけ、ほかの一切の物音を消し去るほど激しく扉を蹴りはじめた。と、そこへ、サワベリー氏が帰宅した。夫人たちは、彼の憤怒を誘うような尾ひれをつけてオリバーの不祥事を報告した。彼はただちにゴミ置場の扉を開け、生意気な弟子の首根っこをつかみ、オリバーを引きずり出した。
すぐわきの一里塚には大文字で「ロンドンまで百十キロ」と記されていた。その地名は彼の心に、かつてない、さまざまな連想を呼び起こした。ロンドン! あの偉大なる大都市ロンドン! そこへ行けば誰も――あのバンブル氏でも――もはや自分を見つけることなどできまい! 救貧院の老人たちがよくこんなことをいっていた。気骨のある若者ならロンドンで食うに困ることはない。田舎者には思いもよらぬ生活の手立てがいくらでもあるものだと。助けてくれる者がなければ、行き倒れて死ぬほかない自分のような宿無しの少年にとって、ロンドンこそ目指すべき場所に違いない。このような考えが脳裏をよぎり、オリバーはすぐに立ち上がってまた歩き出した。
その部屋は壁も天井も、古さと汚れのために真っ黒だった。暖炉の前に 樅 の木でできたテーブルが据えてあり、その上にジンジャーエールの空壜にさしたロウソク、何個かの錫のマグ、パンやバターや皿などが置かれていた。紐で暖炉の上に固定され、火にかけられたフライパンの中では、ソーセージが焼けていた。そして手に大きなフォークを持った、年老いた皺だらけのユダヤ人が、そのフライパンの前に立っていた。卑しい、ぞっとする顔立ちは、もじゃもじゃの赤毛によって隠されていた。彼は油で汚れたフランネルのガウンを着て、喉元を大きくはだけ、フライパンと、大量の絹のハンカチがぶら下がっている物干し竿の両方に注意を向けているようだった。年代物の麻袋で作った粗末なベッドが所狭しと並び、四、五人の少年たちがテーブルを囲んで座っていた。彼らはドジャーと同い年ぐらいに見えたが、大人びた様子で、陶器製の長いパイプをくゆらし、酒を飲んでいた。ドジャーがユダヤ人に何事か耳打ちすると、少年たちは彼のそばへ寄り集まった。そしてふり返ってオリバーにニヤニヤと笑いかけた。ユダヤ人も同じように、フォークを手にしたままオリバーのほうを向いて笑った。
このゲームが何回もくり返されたころ、若い女二人が少年たちを訪ねてやって来た。一人はベットといい、もう一人はナンシーといった。二人とも豊かな髪をしていたが、結い方はいい加減で、靴も靴下も薄汚れていた。美人とはいいかねたが、厚化粧をしたその顔はたくましく、威勢のいい感じがした。二人は少しも飾らず人当たりがよかったので、オリバーは実に感じのよいお姉さんだと思った。実際二人はその通りの人物だった。
「多分そうでしょう」オリバーは答えた。「天国はずいぶんと遠くにあって、そこでみんな幸せに暮らしているから、哀れな子供の枕元までわざわざやって来るはずはありません。でも、僕が病気だと母さんが知ったら、きっと天国にいても心配してくれると思います。母さんだって死ぬ前、とても重い病気だったんです。でも、天国にいると、僕のことなど少しも知りようがないかもしれません」オリバーはちょっと黙ってから、そうつけ加えた。「僕が苦しんでいるのを知ったら、母さんも悲しい気分になると思います。夢の中に出てくる母さんは、いつも優しくて幸せそうですけど」
婦人の名誉のためにいっておくが、彼女は行かないとはっきり断りはしなかった。ただ、警察に行くのは「どうしても気がすすまない」と確固たる意志を示し、丁寧にやんわりと拒絶したにすぎない。こうした礼儀正しさは、にべもなく断って仲間を傷つけたくないという、生来の育ちの良さに由来するものであった。
恐怖に耐え切れず、オリバーは本を閉じるとわきへ押しやった。それからひざまずいて、自分がそのような罪を犯さぬようにと神に祈り、もし自分がおぞましい犯罪に手を染める運命ならば、今すぐこの命を終わらせてくださいと願った。やがてオリバーは落ち着きを取り戻し、低いきれぎれの声で、この窮地からお救いください、家族にも友人にも愛されたことのない孤児を憐れんでくださるならば、どうか今こそ、邪悪な犯罪を前にして孤立無援でいる自分をお助けください、と嘆願した。
医者はカーテンを戻しながらため息をついた。「悪はどんな人間にも宿る。美しい風貌の奥に、悪徳が宿ることだってある」
朝の散歩がもはや一人きりでなくなったことは、注目すべき変化だった。オリバー自身もそう感じていた。ハリー・メイリーは――花束を抱えて帰宅するオリバーと出会ったとき以来――すっかり花に夢中になり、花の生け方にもなみなみならぬセンスを発揮し、年若い友人をすっかり引き離していた。けれども、こうした点で遅れをとったにせよ、一番いい花がどこに咲いているかを心得ているのはオリバーだった。二人は毎朝一緒に野辺を駆けまわり、とびきり美しく咲いた花々を持ち帰った。今では若い婦人の寝室の窓は開け放たれていた。ローズは豊かな夏の香りを部屋に入れることを好み、その爽やかな香りは彼女の回復を助けた。格子窓のすぐ裏には、丁寧に作られた小さな花束がいつも花瓶に生けてあった。その花瓶に生けられた花束は――水は頻繁に取り替えられていたが――枯れても決して捨てられることがない事実に、オリバーは気づいた。ロスバーン医師が朝の散歩に出かけようと庭を横切るとき、決まってその部屋の窓辺を見上げ、意味ありげにうんうんとうなずくことにもオリバーは気づいていた。そうこうしているあいだに日々は飛ぶように過ぎ、ローズはぐんぐん回復していった。
「上等なウサギのパイだぞ、ビル」チャーリーは肉入りパイを相手に見せていった。「ウサギは美味いぜ。手脚もやわらかいしな。口の中で骨が溶けるほどだ。口からつまみ出す手間もいらない。それから、一ポンド七シリング六ペンスする緑茶を二百グラムだ。濃いの何のって。沸騰した湯に入れればティーポットの蓋がぶっ飛ぶほどだぜ。あとは、精製してない砂糖を七百グラム。アフリカの連中にはこういう上等な砂糖は作れまいよ。一キロもあるパンを二個、極上のバターを五百グラム、グロスター・チーズ一切れ。お終いは、とびきり上等の酒だ!」
「心配するな、チャーリー」慰めるようにフェイギンはいった。「あいつは有名になる。そりゃあ間違いのないところだ。あいつの賢さが知れ渡るときがきっと来るよ。自分でそれを証明するだろうし、旧友や恩師の顔に泥をぬることはあるまい。それにあいつはまだ若い! あの年齢で流刑になるなんて勲章ものさ!」
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『オリヴァー・ツイスト』は単に「小説として面白かったね」で終わらずに、社会そのものに強い影響を与えました。なんと、実際に多くの人がこの作品を読んで社会改善を唱え、制度も改革されていったのです。 こうした「善を呼び覚ます小説の影響力」。 これはものすごいことであります。 ドストエフスキーが多くの人、特に子どもたちにディケンズの小説を勧めるのはこういうところにもその理由があるのかもしれません。 ディケンズの代表作『オリヴァー・ツイスト』、読みやすく物語展開も目まぐるしい面白い作品でした。
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いわずとしれたディケンズ初期代表作。運命に翻弄される孤児オリヴァーの波瀾万丈な少年時代、そして出生の秘密。
何度も映像化されていて見たことはないのだが、救貧院で薄粥のお代わりを求めるシーンが有名らしい。読んでみるとこれはひどい。貧民救済施設といえど、人を人間扱いしていないじゃないか!以下、当時の貧困層と弱者虐待の実態、低俗な人間の醜さが描かれ、作者ディケンズの痛烈な皮肉と風刺の切れ味がすさまじいほどに冴える。そのなかで前半はオリヴァーの逆境と克服が繰り返されるスリリングな展開が続き、先が気になって仕方なかった。
次第に集まってくる多くの登場人物たちの個性や配置が魅力的かつ巧妙だ。特に窃盗団たちの描かれ方は本作最大の特徴ともいえ、犯罪小説的な側面もある。善人と悪人がはっきりしていて、それぞれの人間性の程度にふさわしい結末が用意されているので、非常に健全なカタルシスが得られた。ただ、その意味では境界線にいる、とある少女だけは別で、ラストの文章など作者も特別な目線を捧げているのが印象的だった。
主人公オリヴァーは純粋無垢な少年だが、ひたすら運命に翻弄されるだけで、そこから特に成長するというわけではない。加えてあまりに都合の良すぎる巡り合わせが続いたり、後半はオリヴァーを置き去りにした展開になるなど、本作にはいくつかの欠点も見受けられる。しかし、そんなことは気にしなくてもいいじゃない、と言いたくなるほどのエネルギーとスピード感に満ちた大作なのは確かだ。700ページオーバー、面白いので一気に読めます!
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ホームズの時代の貧困について、小説を読みたくなり、ギッシング『無階級の人々』に続き読んでみました。
貧困は悪いことなのだと納得しました。
この本の解説はG.K.チェスタトンが書いていて、ディケンズについて理解が深まります。
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孤児オリバー・ツイストは子どもだが、生い立ちのせいか、不遇な扱いを受けていた。実の親を亡くした彼は救貧院に預けられたが、お代わりを求めたことで追い出されてしまい、その後、フェイギンというユダヤ人に出会い、そのユダヤ人の仲間たちともに、悪事に加担したこともあった。そんな彼は、ブラウンローという紳士に出会い、彼との出会いから、オリバーの人生は一変する。このように、本作は、オリバーと関わった人たちの環境、社会に焦点を当てており、当時のイギリスの、特に貧困層の立場を詳細に描かれている。また、後半では、モンクスという青年の謎を追い、なぜ彼が執拗にオリバーを狙っているのかというサスペンス要素満載の話が展開される。
Posted by ブクログ
あまりに悲惨なオリヴァーの人生に、涙なしには読めない。
とにかく、この子には幸せになってほしいと願いながら読み進めた。
翻訳ものにありがちな読みづらさはあるけれど(作者が伝記を書いている、という体で書いているのも、日本の小説にはあまりないので違和感がある)、物語が山あり谷ありで最後まで読み通せた。
途中でつらさからやめたくなることもあったが、なんとか最後まで読み終えることをおすすめしたい。
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イギリス文学の傑作、ディケンズ読むならこれ! みたいな話を聞いたので読みました。
確かに面白い。しかもエンタメ作品として。
タイトルはオリヴァー・ツイストだが、オリヴァー以外の登場人物にもポンポン視点が移る群像劇。恩田陸並みに登場人物がたくさん出てくるのでメモ必須。
文章はとにかく皮肉まみれで思わずニヤリとさせられる表現が多い。キャラはみんな個性が尖っていて特に悪人の描写が上手い。
文学的にどうこうは置いといて、ヴィクトリア朝イギリスの風俗小説として、メロドラマとしてなどの俗っぽい楽しみ方もできることは特筆すべきである。
ただし、ストーリーの構成がガタガタで最後の方などオリヴァーが出てこなくなるので、その点はマイナス。
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役者あとがきにある通り、人物が生き生きとしている。
オリヴァーや女性たちが受ける扱いは本当にひどかった。この時代では当たり前のことだったのかと思うと、現代に生まれた幸せを感じる。
Posted by ブクログ
なろう小説で、無職転生に代表される幼少期スタート系小説が好きな方は、読んで面白いと思います。はい、私の事ですね。
ガス灯、ガルバニ電池、蒸気機関、、、情報量と描写力は、流石ディケンズ!
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孤児オリヴァー・ツイストが運命に翻弄されながらも生き抜き、幸福な生活を手に入れるまでのドラマを描くチャールズ・ディケンズの代表作であり、イギリス文学の古典。
非常に多くの人物が登場するが、そのそれぞれが強い個性を持ち合わせるあたりは人物造形に非凡な才能を発揮した著者ならでは。
そろそろクリスマスも近い。名作「クリスマス・キャロル」を読み返したくなる頃合い。
Posted by ブクログ
ずっと前、大いなる遺産を最後まで読むことができなくて合わないのかなって思ったけど、オリヴァー・ツイスト物語は読みやすかったです。借り物なので、今度自分用に買います。これを機に大いなる遺産をもう一度読み直そう……。
Posted by ブクログ
ディケンズの皮肉とユーモアがすごい。とてつもなく悲惨な状況をブラックユーモアに包んで描くので、くすっと笑えます。ですがその分、後でじわじわとそのつらい状況が身に迫ってくるような感覚がありました。
間接的に描くことで、より考えさせられるという感じでしょうか。スイカに塩をふると、より甘さを感じるのと同じようなものかと。
オリバー自身は特に機転を利かせたり、成長したり、そういう活躍の場面はありません。ですが、オリバーはかわいすぎる。孫を見るような感じで彼が運命に翻弄されるのを見守ってしまいます。
モンクスの正体が明かされた場面は、かなり拍子抜け。正体は絶対にハリーの方がよかったでしょう。いや、おそらくディケンズ自身も最初はそういう想定でいたと思います。だってローズはハリーに相談しなかったじゃないですか。
なんか最後の方がグダグダになって、後付け感が半端ないです。いや、本当にナンシーがああなるまではとても面白かったです。そこまではわくわく感がたまらなかったです。ですがそれ以降のご都合主義・予定調和な感じが鼻につきます。
面白かったのは面白かったですが、風呂敷のたたみ方に失敗したような感じは受けました。ただ二都物語でも感じましたが、ディケンズの描写力のすごさは、間違いないです。
Posted by ブクログ
作家 小川洋子さんが出演されていたFMの番組で取り上げられたのを機に、いまさらながら読んでみようかと購入したのが数年前。熟成期間をへて、ようやく読み終えた。
文学史上ではもちろんよく知られている作者チャールズ・ディケンズであるが、私はこの『オリヴァー・ツイスト』が初めて。この作者、作品初め、著名な古典とも言える作品はあまり読んでいない。お恥ずかしい。
孤児として生まれたオリヴァーの数奇な運命の物語には読み進めるうちに引き込まれ、久々に小説を読む楽しみを味わえた。
それとともに、現在のパレスチナの悲惨な状況をもたらしている遠因でもある、イギリス(おそらく当時のヨーロッパ)におけるユダヤ人への差別意識がはっきりと描かれていて、知ることができたのは大きな収穫であった。
Posted by ブクログ
一部の登場人物を整理し切れず読み進めてしまった。。
善良な人物より悪党寄りの人間の方がドラマがあるのでもっとゆっくり読めばよかったと少し後悔。
Posted by ブクログ
もともとこの夏はディケンズ作品を読もうと思っていたが、ちょうど来月からオーブでこの作品のミュージカル版が上演されるとのことで、一作目は『オリヴァー・ツイスト』にした。
700ページ越えだから早々に挫折するかと思っていたけど、2日で終わった笑
先の展開が気になるように伏線をはるディケンズの手腕を感じましたね…。
酷い場面や恐ろしい場面、血生臭い場面と、安心してほっとできる幸福な場面が交互に描かれて、ある種のスリリングさがあった。
救貧法や新救貧法についても後から調べて勉強になりました。
オリヴァーを中心とした周囲の様々な階級、職業、地位の人々の描写を通して、新救貧法という制度が社会に何をしていたかを露わにするような作品。
実際、この作品が為政者を動かす世論づくりに貢献したという。
エンタメ小説っぽい展開なんだけど、社会批判的視点も含まれているという大衆受けとのバランスがちょうど良かったのかなと。シンプルにオリヴァーが可哀想でこれ以上酷い目に遭わせないで!って思うもん。オリヴァーの描写は当時の子ども観らしく純粋ではあるものの、お母さんを侮辱されたら(責められたほどではないけど)暴力も振るうし、At the Back of the North Windのダイヤモンドよりは全然ましだったかな。
反対に、邪悪または愚かな人々の描写一言一句に大袈裟な皮肉が込められていて面白かった。ただし、偏見が色濃いユダヤ人のフェイギンの描写が舞台版でどう描かれているか気になる。
ちなみに教区吏のバンブル氏は「尊大な下っ端役人」という意味で普通名詞bumbleになっているとか。
女性の描写も結構興味深かった。親切で心の美しいお嬢さん、生まれ落ちた環境のために悪の中で生きざるを得なかったがいまだ優しさや情など女心のようなものを持つナンシー、バンブル氏を尻に敷く抜け目のない夫人などなど…
ヴィクトリア時代の小説の女性も家庭の天使って感じのが多いけど、バンブル氏の夫人はかなり痛快だった。
あとフェイギンの一味の中でも、ナンシーや、少年(名前ど忘れした)は改心の余地があるように描かれていたが、ナンシーはサイクスを愛したがために自ら囚われたまま結局殺されることとなり、まだ若い少年は抜け出すことができたというのも興味深いと思った。
まだチケット取ってないけど、ミュージカル版観たいなと思う。
Posted by ブクログ
ジェイン・オースティンを読む合間に、別の本を読んでみようと思って、同じく英国の代表的作家であるディケンズを読んでみた。
話はそれるが、サマセット・モームの「世界の十大小説」(1954年)の国別構成は、英4、仏3、露2、米1となっていて、作家とタイトルを挙げると、
イギリス
フィールディング 「トム・ジョーンズ」 1749年
オースティン 「高慢と偏見」 1813年
エミリー・ブロンテ 「嵐が丘」 1847年
ディケンズ 「デビッド・コパーフィールド」 1850年
フランス
スタンダール 「赤と黒」 1830年
バルザック 「ゴリオ爺さん」 1835年
フローベール 「ボヴァリー婦人」 1856年
ロシア
トルストイ 「戦争と平和」 1869年
ドストエフスキー 「カラマーゾフの兄弟」 1879年
アメリカ
メルヴィル 「白鯨」 1851年
と錚々たる作品が並ぶ。
英国人のモームだけに、イギリスが多いの当然だろうが、「トム・ジョーンズ」は英文学の研究者以外には、あまりなじみのない作家ではなかろうか。
その代わりにだれを入れたらよいか、モームに合わせて1800年代の作家と作品で考えてみたが、「モンテ・クリスト伯」のアレクサント゛ル・デュマか、「レ・ミゼラブル」のヴィクトル・ユーゴーが思い浮かんだ。
ディケンズが入っているなら、この二人でもいいのではないか。
とちらか一人を選ぶのが難しいというなら、「嵐が丘」ただ一作のエミリー・ブロンテをはずして、デュマとユーゴー両人とも入れてもおかしくないと思うのだが、そうすると英2、仏5になってモームとしては承服し難いだろうから、やっぱりこういう結果にしかならないのかもしれない。
ドイツがないのが意外なのだが、ゲーテの「若きウェルテルの悩み」は1774年だし、トーマス・マンの登場は1900年以降なので、うまくいかない。あとはスペインのセルバンテスだが、「ドン・キホーテ」は意外と古く、1600年初頭だ。
というわけで、このラインナップ、「トム・ジョーンズ」を除けば誰もが知っている名作中の名作なので、できれば20代のうちに一度は読んでおくべき作品群だ。
それで本作品の「オリバー・ツイスト」なのだが、これまで読んできたオースティンの作品にくらべると、さほど面白くない。オースティンばかりでなく、デュマの作品よりも劣ると思う。面白くさせようさせようという意図が目立ちすぎて、逆に面白くない。
ディケンズの他の作品に較べてデキが良くないだけなのかもしれないが、そういえば過去に読んだ「デビッド・コパーフィールド」や「大いなる遺産」もそれほど面白くはなかった。それからすると、モームの自国びいきがなかったら、はたして十大小説のラインナップに名を連ねることができるのだろうか、そんな気もしてくる。
とはいえ、オーウェルはじめ、イギリス人のディケンズに対する評価はきわめて高いので、こちらの読解力不足もあるのだろう。
でも、その真価と魅力がわかりずらい作家だ。
そう思うのは私だけだろうか。
Posted by ブクログ
子供の頃に手にとっていたら夢中になったかもしれない。
ストーリーとしては、善玉はとことん善良で、悪玉は救いようもなく邪悪な定型的なメロドラマ。
ただ、社会の最下層で押し潰されそうになっている人々の悲嘆や、それにも負けずずる賢く立ち回る悪人たちの描写が奮っている。あまり当時のイギリスの世相に詳しくないけど、かなり風刺も入っているのかな?と思わせた。