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Posted by ブクログ
2008年9月12日午前9時15分、CNBCにテロップが流れた。「関係筋によると、リーマンの問題解決に公的救済はない模様」市場が開くとリーマン株は3.84$に下げる。6月頭に韓国産業銀行(KDB)からの出資受け入れを交渉していた時点ではまだ株価は30$でリーマンCEOのファルドは33%増の40$を主張した。7月21日にバンカメに持ちかけた際には株価は18.32$で少なくとも25$欲しいと主張したがバンカメにとってはただ同然で買えるのでなければ意味がなかった。リーマンの資産にはあまりにも不透明なものが多すぎたのだ。
9月4日にはポールソン財務長官はファニー・メイとフレディ・マックの救済を決め、その終末に両社はこれを受け入れ7日の日曜日に発表された。次はリーマンだ。この時点でファルドはこう言っている「ベア・スターンズですら1株10$だ。この会社はそれより安い値段では絶対売らないぞ!」。1株6.4$を提示していたKDBは手を引いた。9日にはJPモルガンがリーマンの一部を買いたたく可能性をほのめかす。この日の終値は45%安の7.79$。
10日リーマンは前倒しで第3四半期の決算発表を行った。改善計画では資産運用部門の55%を売却し、不良資産をスピンオフさせる。しかし、売却資産のポートフォリオは時価を反映させず新会社は時価評価の圧力を受けることなく、”みずから”が実態価値とかけ離れると考える価格以下での資産売却を強いられませんと続けた。リーマンを批判し続けてきたヘッジファンドマネージャーのアインホーンから見れば事態はもっとはっきりしている。リーマンは有害なゴミ資産の評価源を避けようとしている、いかようにも数字をでっち上げられるということだと。リーマン株は少し戻したがまだ解決していない問題がある。新会社には資金が必要だ。この時点でJPモルガンは手を引き最後に残った資金の出し手はバンカメかイギリスのバークレーズとなった。
13日土曜日、ポールソンがウォール街の全CEOを招集した。午後6時45分から始まった会議の冒頭でポールソンはこう言った。「週があける前に、何らかの解決策を見いださねばならない。公的資金注入はその答えではない。あなた達だけで解決してもらう。」買い手の2社は支援なしでは資金は出さない。その片方のバンカメCEOのケン・スミスもここにおり、参加者は全て状況を知っている。もしリーマンが倒れたら次はメリルリンチ、そしてモルガン・スタンレー、ゴールドマン・サックス(GS)と破綻は連鎖する。この日のメンバーではないがAIGやGEも危ない。日本の銀行に対する公的資金投入は評判が悪かったがアメリカでも同様だ。共和党は納税者の負担が増えることに、民主党は企業の高給取りと経営者の救済に反対している。メリルもバンカメとの合併に意欲を見せておりもしバンカメがリーマンを助けたら今度はメリルが窮地に陥る番だ。7月にGS出身の財務次官ロバート・スティールがCEOに就任したワコビアも危ない。AIGの方は新たな損失が見つかり資金は600億ドル必要と見積もられた。
14日朝、イギリスのバークレイズはリーマンのバッドバンクに他の銀行が330億$融資すれば残りを買収することを表明していた。CEO達は拠出を決意しリーマンは救われるかに見えた。またメリルもGSから1株1桁価格なら買収される見込みがついた。しかしここで認識されてはいたが重視されていなかったイギリスの上場基準が待ったをかける。正式に取引が完了するまでの間リーマンに債務保証するには株主投票が必要であり、今日中に買収を決めるためにはイギリス政府から免除の承認がいる。しかしイギリス政府はアメリカの金融危機を持ち込むのを嫌い許可しなかった。なぜアメリカ政府が何もしないのにイギリス政府がリスクをとる必要が有るのか・・・
ついにプランBがスタート、連銀は貸し出し枠を拡大する準備を始めたがそれをリーマンに利用させるとモラル・ハザードが拡がるためその日の内にリーマンに破産申請させる必要が有った。政府に破産を強制する権限はないのだが。もはや時間も策も残されていないリーマンの取締役会はこの日の夜遅く破産を決定し、15日にチャプター11を申請した。その裏では1株29$と言う金融業界市場最高のプレミアでのバンカメのメリル買収が決まった。15日の記者会見では予想されたようにポールソンが返答に困る質問が来た。「ベア・スターンズは救済したのに、リーマンは救済しなかった理由は?」「連銀がAIGにつなぎ融資を行う理由は?」
16日午後1時連銀の繋ぎ融資が受けられなければAIGは後数分でキャッシュ不足で破産するところまで追いつめられていた。AIGは世界的な金融システムの事実上の要であり、もし破綻すると世界中の金融機関のレバレッジを支えたCDSの保証が消えあらゆる銀行が資金調達の必要に迫られる。さらにAIGは世界中で8100万件の生命保険を発行しその総額は1.9兆$を越える。AIGの破綻は大恐慌を再来させかねない、まさしくTOO BIG TO FAILだ。連銀はAIGにLIBOR+8.5%と言う高金利で850億$を貸し付けたがその後のAIGのモラル・ハザードはオバマ大統領のボーナス奪還宣言によく知られている。22日には子会社の幹部が44万$を費やした高級リゾートでの会合を催し、翌年3月には幹部社員に対し1億6500万$のボーナス支給が発表された。
モルガン・スタンレーは東京三菱UFJからの資金提供で生き延びたがそれは90億$の小切手で10月13日午前7時53分に契約が締結され手渡された。偶々この日は日米ともに休日で電子送金が出来なかったのだ。19章の終わりにおそらく2度と現れない高額小切手のコピーが載っている。
ポールソンは9月19日に不良資産救済プログラム(TARP)を発表し、10月3日下院の再審議でようやく可決された。さらに銀行に直接投資できるようにウォーレン・バフェットのアイデアを取り入れて修正し10月13日午後3時に再びCEO達を招集した。とにかく各銀行に先ず資金援助を受け入れてもらう、そうしておかないとTARPを利用する銀行は危ないと狙われるためだ。午後6時23分までに各CEOは電話での取締役会を開きこの案を受け入れた。TARPの準備金は7000億$(70兆円)。2008年9月24日に成立した麻生内閣の景気対策が75兆円、09年度の当初一般会計予算が88.5兆円だ。
のちにポールソンはリーマンを救済しなかった理由を定期的に修正している。最初は警告のため、そして後にはその権限がなかったと。それでもバークレイズをつなぎ止める手は残っていたしモラル・ハザードがなくなったわけでもない。このように批判される部分はあるにせよよくこれだけの手を打ったものだ。ブッシュ大統領が全く金融システムを理解しておらず、ポールソン、ガイトナー、バーナンキ達に丸投げだったことは幸運だったのかもしれない。麻生政権の景気対策も使い道はともかく非常時の対策としてはもっと評価されるべきなのだろう。鳩山内閣のぐだぐだ進行が1年前に始まっていればと考えるとちょっと怖い。
Posted by ブクログ
「よくここ迄詳細に人物の発言や会議内の様子を含めて調べきれたな」というのが素直な感想。
話は、ベアスタンズ合併後のリーマンが破綻に向かう一部始終、その後市場は更に下がり続け、モルガンスタンレー、ゴールドマン・サックスにまで経営危機が及んでいく。
まさにリーマン・ショックの裏側。当時の実在のトップ投資銀行のCEOたちや財務省連銀の役員たちが史上最大の金融危機に対し、どのような行動を取っていなのかが詳細に記してあり、読み応えがあった。
金融危機のさなかのせいか、投資銀行が自社の保有資産価値を全然把握できていないのは何とも間抜けであり、適切な対策を施したとしも、市場は違う反応を示せば結局は危機を脱しないのはなんとも無力だなってという感じがした。また、困ったときはバフェットに支援を頼むことが多いのでやはり信頼が厚いんだなと思った。
また、モルガン・スタンレーと三菱からの支援を受ける話が出た時に、ポールソンが「日本の銀行は行動が遅く、何も決めれられない。よってその話は信用出来ない」と却下されたのが、まあ一般的な日本の企業に対する印象なのかなと何とも悲しくなった。
登場人物が多く、全部英語名なので混乱しそうになるが、親切にも巻末に人物表が載っているので、助けになる。
Posted by ブクログ
「時間があると言うときには足りないものだ。」
誰がリーマンを救うのか、から始まる後編。
後編でも、各会社の生き残りをかけた画策が見られる。そして、”株主のため”というスタンスを重視している姿は、やはり日本の起業人とは違う考えなのだと感じた。株式会社である以上は、他社を顧みずに自社利益を追求するのが第一に正しい考え方なのだとは思う。
リーマンショックを通して、金融は貪欲で危険なものだという認識がそれまで以上に広がった。その結果、お金からお金を生み出す行為は不潔で非人間的だという侮蔑が一般化している。そのような考え方は一理あるかもしれないが、人が成功してお金持ちになることを妬んではいけない。
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