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気鋭のジャーナリストが鋭く抉りだすリーマン・ショックのセンセーショナルな内幕。800‐CEO‐READビジネス書大賞受賞作。《フィナンシャル・タイムズ》紙の年間ベスト・ビジネスブックに選出。金融ノンフィクションの傑作
みずからの利益か、世界金融システム破綻の回避か? 迫り来る未曾有の危機に際して、リーマン・ブラザーズCEO、ポールソン財務長官、バーナンキFRB議長、ガイトナーNY連銀総裁、ウォーレン・バフェット、そして巨万の富を稼ぐウォール街のトップは、何を考え、何を語り、いかに行動したか?
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Posted by ブクログ
2008年9月12日夜ニューヨーク連銀にウォール街の銀行のCEOが集められた。議題はライバル会社であるリーマン・ブラザーズをどうやって救うか。政府の支援はない。5大投資銀行のうち最も弱く、最もリスクの高い(レバレッジの大きい)ベア・スターンズは既に倒れた。ウォール街の企業のレバレレッジは32倍、上手くいってる間はリスクをとればとるほど儲かり、幹部からトレーダーまで高給で他社に移籍されないように繋ぎ止めるのが当たり前だった。サブプライムローンなどの債券はひとまとめにされ、それから切り刻まれ、またまとめられてCDOという債券に仕立て上げられた。理論上はリスクを分散することで低格付けのCDOを組み合わせて出来上がったCDOは格付けが上がる。しかし、分散したはずのリスクはつながっていたためサブプライムローン市場の崩壊で金融システムそのものが崩壊の危機に陥った。レッドクリフの連環の計を思い出してしまったのだが鎖でつなげばそれぞれの船は安定し、悪天候でも船が沈んだり船が揺れて落ちたりするリスクは小さくなる。しかし一旦火の手が上がると鎖でつながれた船団全体が焼け落ちるリスクが高まることに気がついていなかった。
半年前の3月17日月曜日の朝5時リーマン・ブラザーズCEOのディック・ファルドは悪夢の週明けを迎えていた。金曜日に財務長官ハンク・ポールソンからビッグ・ファイブのベア・スターンズがこの終末に破綻することが告げられたからだ。しかもベア・スターンズは政府の支援付きでJPモルガンにわずか1株2ドルでたたき売られることが決まってしまっている。ひずみを見つけた空売り屋が狙う破綻のドミノの向け先は次に小さいリーマンだと言うことはわかっていた。市場が開くと同時にリーマン株は35%下落し、WSJのインタビューに応じた結果一旦50%下げた株は取引終了1時間前に上昇に転じ、結局19%安の31.75$で閉じた。
コロラド大学の将校養成プログラムで弱いものいじめをする教官につっかかって放校処分になったファルドが上巻の主人公であり、雑用係のバイトとして入ったリーマンでスタートレーダーでAMEXに買収されるまでの8ヶ月間、クーデターを起こし会社のトップに立ったグラックスマンに見いだされた。94年にAMEXがリーマンを放り出した際ファルドはCEOに抜擢され後のCOOである盟友ジョー・グレゴリーとともにアグレッシブな取引でリーマンを成長させた。このグレゴリーの人事が後に色々問題を引き起こすのだが直感に従い、後にリーマンを救おうと奔走する債券部門のトップ、ハーバート・マクデイドを専門外のエクイティ部門に移動させ、ブロンド美人(写真を見る限り?キャリアウーマンっぽくはある)のエリン・キャランをCFOに据えた。キャランは実力を見せようと張り切るが元は税務が専門でプレゼンは上手かったが破綻間近のCFOとしては適任ではなかった。人情家で激しやすいファルドは人事には関わらず、後にはグレゴリーやキャランを切ることも上手く出来ない。リーマンに投資する機関投資家はいくつかあったが最終的にはファルドが主導権を握りたがり、リーマン株を高く売りつけようとしたが為に全てご破算になっている。拡大期には戦闘を走る魅力的なリーダーだったファルドには負け戦の殿軍の指揮は向いておらず、実際にリーマンが破綻する下巻では存在感を失っている。
金融危機を救おうとするポールソンはゴールドマンサックス(GS)のCEOからブッシュ政権に引き抜かれていたが、リーマンショック後にそこらにGS出身者がいたために批判を受けることになる。例えば下巻で救済されるワコビアのCEOロバート・スティールは7月まで財務次官で同じくGS出身だ。元財務長官のロバート・ルービンやポールソンが追い出したコーザインはニュージャージー州知事になっており、このクーデターに参加したジョン・セインはこの物語の中ではバンカメに救済されるメリルリンチのCEOだ。セインは911の当日GS本社にいた幹部のトップで不幸なことにその日だけGSのCEOとして仕事に就いた。
FRBのバーナンキ、ニューヨーク連銀のガイトナー、ビッグ・ファイブやシティ、JPモルガンといった商業銀行のそれぞれの立場で物語は進むがリーマンと並んで大きな位置を占めたのがAIGだった。AIGは会社の破綻に備える保険(CDS)を売り出し、大きな収益を上げていたが金融システムが破綻すると保険金の支払いは不可能になる。この本では「空売り屋」のヘッジファンドは名もなき悪役だが、マイケル・ルイスの「世紀の空売り」ではアンチヒーローとして描かれており、むしろ問題なのは無謀なレバレッジをかけてリスクを膨らませた投資銀行や破綻が足下に来ているのにCDSの販売をやめなかったAIGの方だ。原題の「TOO BIG TO FAIL」はリーマンではなくAIGに代表される複雑に絡まり合った金融システムそのものだが連鎖破綻を防ごうと資金注入すると、無謀なリスクをとった人達に高価な報酬を与えることになり、報酬を制限すると人員が逃げ出し問題の解決が遅れてしまう。政府としては何をどうしても批判は避けられない。
上巻で最も納得がいくのはオマハの賢人バークシャー・ハザウェイのウォーレン・バフェットの投資哲学だ。投資相手を検討してもし疑問点が余りにも多ければ例え答えが用意されていても投資しない。わからないものには手を出さないに限る。複雑な債券化商品を売り出したCEO達は自社の資産の時価を計算することが出来ず方針を誤った。
Posted by ブクログ
原題は”Too Big To Fail”。「私は世界大恐慌の研究者として人生をすごしてきました。歴史から判断しても、いま大胆な行動をとらなければ、ふたたび恐慌が訪れるでしょう。そして今回は以前よりはるかに、はるかに深刻なものになる」(ベン・バーナンキ、下巻、P.279)と言われた2008年9月の数週間のドキュメンタリー。
内容は関心あればお読み頂くとして、一番重かったのは、責任を負っている人ほど負っていない人に対して我慢しなければならないということだ。「山のようにある悪い選択肢のなかでは、いちばん現実的な解決策」(同、P.370)は政治家、マスコミに袋叩きにされる。事態が解決しなければ被害を受けるのは実は叩いている当人たちなのだが、それに気づいていない。こういう場面で人々を説得することはプロ同士の交渉よりも難しい。
貪欲で我が強く同時に献身的で異常なまでに仕事熱心、こういう多義性をもった人々を単純に「悪党」よばわりするのもメディアなら、彼らの成し遂げたことに光を当てるのもやはりメディア、ということで本書の著者はNYタイムズ紙の熟練記者。彼は末尾でセオドア・ルーズベルト大統領の言葉を引用する。「重要なのは批評家ではない・・・名声は、現に競技場に立つ男のものだ。・・・万一失敗に終わっても・・・勝利も敗北も知らない者たちと同じになることはありえない」(同、P.430)。
リーマンの経営者がワシントンで開かれた公聴会に呼ばれる。議員・有権者の罵声を浴びる中、弁護士に用意させた原稿を突然とじて即興で語った言葉。
「私は毎晩目を覚まし、何かちがう方法があったのだろうか、と自問しています。あのときの会話でほかにどう言えただろうか。自分はどうすべきだったのだろうか。そうやって、毎晩毎晩わが身をふり返っています。」(同、P.380)
スケール感や重さは人それぞれでも、仕事を真剣にやるというのはこの悔恨と日々向き合うこととほぼ同義なのではないだろうか。
Posted by ブクログ
「証券かはリスクを減らし、流動性を高めると考えられていたが、現実に発生するのは数多くの機関と投資家が良かれ悪かれ密接に結びつく状況だった。」
リーマンブラザーズがいかに破滅していくのかについて多くの証言に基づき書かれたノンフィクションもの。
優秀な者たちによる駆け引きは面白く、私益を追求しすぎた結果として自分の利益すらもぶっ飛ばしてしまう環境を作る恐れがある危険な行為は、ほかの誰かが絶対に守るに違いないという確信がなければ行う事ができない。空売り。しかし、それが見捨てられたしまった場合、リスクテイカーはその最終決定機関を非難する。なんという強欲で私益中心なのか。
そのような私欲が渦巻く投資機関で働く事は、やはりとても面白いのだと思う。
Posted by ブクログ
リーマンショック前後のウォール街で何が起こったのか。膨大なインタビューやメール、証言等を集め分析したもの。リチャード・ファルド(リーマンCEO)、ロイド・ブランクファイン(ゴールドマンCEO)、ウォーレン・バフェット、ジェイミー・ダイモン(JPモルガンチェースCEO)、ジョン・マック(モルガンスタンレーCEO)、ジョン・セイン(メリルリンチCEO)、ロバート・ウィラムスタッド(AIG CEO)など金融機関のトップに加え、ポールソン財務長官、バーナンキFRB議長、ガイトナーNY連銀総裁など政府関係者も実名で登場する。それぞれの信念、保身、怒り、疑念、友情、家族愛、裏切り、株主対策などが絡まって、
「その日」に向かって進んでいく。内容は複雑だか、時間をかけてじっくり読み進める価値がある。下巻が楽しみ。
Posted by ブクログ
綿密な取材と、掴んで離さない描写。エキサイティングな展開にぐいぐい引き込まれる。入りからやばい。
そしてダイモンは爆弾を落とした。朝起きてからずっと考えていたこと、彼の世界終末の日のシナリオだった。
「次の手順でいく」彼は続けた。「ただちにリーマン・ブラザーズの倒産に備えてほしい」間を置いた。「そして、メリルリンチの倒産」また間を置いた。「AIGの倒産」また間。「モルガン・スタンレーの倒産」最後にひときわ長い間を置いて、「そして可能性として、ゴールドマン・サックスの倒産に備える」
電話の向こうでいっせいに息を呑む音がした。
あと、経営幹部レベルのすごいとこ。
・電話はアシスタントがつないで、自分ではかけたり待ったりしない
・メールは後述筆記
・飛行時間短縮のためロシア上空飛行の許可を取りたいと言う
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