加賀山卓朗のレビュー一覧

  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    本書の解説には、某小説家による以下のコメントが引用されています。

    「スパイを主人公にしているからスパイ小説にちがいないだろうが、そのようなレッテルは無用の傑作である」

    まさにその通りです。
    スパイ小説の傑作であることは間違いないですが、より大事なことはスパイという存在を描いた人間小説ということかもしれません。

    誰が二重スパイなのかという謎を追いかける愉しみもありますが、それと同時に語り手であり主人公である男にとって何が大事なのかを知っていく愉しみもあります。

    500ページ近い作品ですが、久しぶりに睡眠時間を削ってでも読み進めたいと思わせてくれた一冊でした。

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    2018年10月19日
  • 地下道の鳩 ジョン・ル・カレ回想録

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    作者の半生、下っ端スパイだった頃や、父母の話やら色んなエピソードが面白かったです。
    スマイリーものって三部作しか読んでなかったので、他のも読んでみよう。
    映画も見直して、やっぱ良いなぁ、と。続編作られるといいなぁ。

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    2018年08月21日
  • 火刑法廷〔新訳版〕

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    非常によくできたミステリ。表向き見事に解決したかに思われる事件が、最後の短い章ですべて覆される。最後の章がなければ、これほど長く評価はされなかったかもしれない。

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    2018年07月03日
  • スパイたちの遺産

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    なんとも面白い、過去の忌まわしい事件の数々、形を変えて現在に蘇ります。スマイリーと仲間たち、その後、そして、今は、でありますな。星4つ

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    2018年01月30日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル下 倒れゆくウォール街の巨人

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    リーマン・ブラザース、AIG、モルガン・スタンレー、そしてゴールドマン・サックスと立て続けに押し寄せる危機の波の中で、なんとか時間を稼いで、資金調達や担保を探して...と金融危機の中で必死にもがく様が伝わって来る。上巻は今一つだったが、下巻がスピード感もあって面白い。

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    2018年01月06日
  • スパイたちの遺産

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    『寒い国から帰ってきたスパイ』と『ティンカー、テイラー、ソルジャー、スパイ』の二作を読んでから読むことを勧める書評があった。訳者あとがきにも、同様のことが書かれているが、それはネタバレを恐れての注意。二作品を読んでいなくてもこれ一作で、十分楽しめるので、わざわざ旧作を掘り返して読む必要はない。ただ、これを読むと、前の二作を未読の読者は、おそらく読みたくなると思うので、読めるなら先に読んでおくといいだろう。

    数あるル・カレのスパイ小説の主人公として最も有名なのが、ジョージ・スマイリー。眼鏡をかけた小太りの風采の上がらない中年男だ。ただし、現場から寄せられる真贋の程の分からぬ数多の情報を重ね合わ

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    2017年12月22日
  • オリヴァー・ツイスト(新潮文庫)

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    孤児オリヴァー・ツイストが運命に翻弄されながらも生き抜き、幸福な生活を手に入れるまでのドラマを描くチャールズ・ディケンズの代表作であり、イギリス文学の古典。

    非常に多くの人物が登場するが、そのそれぞれが強い個性を持ち合わせるあたりは人物造形に非凡な才能を発揮した著者ならでは。

    そろそろクリスマスも近い。名作「クリスマス・キャロル」を読み返したくなる頃合い。

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    2017年12月09日
  • オリヴァー・ツイスト(新潮文庫)

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    ずっと前、大いなる遺産を最後まで読むことができなくて合わないのかなって思ったけど、オリヴァー・ツイスト物語は読みやすかったです。借り物なので、今度自分用に買います。これを機に大いなる遺産をもう一度読み直そう……。

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    2017年09月29日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル上 追いつめられた金融エリートたち

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    この本を読むと、リーマンショックは不可避だったのではないかと思う。振り返って見ると、それぞれの打ち手の良し悪しは評価できるのだろうけど、トップノッチの人たちが、頭脳と体力を振り絞っても(から?)、あの結果になったことを考えると、資本主義という仕組み上、起こるべくして起こったとしか言えない気がする。

    P99 バフェットはまたリーマンの財務諸表に取り掛かった。ある数字や事項が気になるたびに、そのページ番号を報告書の最初のページに書きためていった。読み始めて一時間と立たないうちに、報告書の最初のページは何十もの番号で埋まった。これは明らかな危険信号だ。バフェットは一つ単純なルールに従っていた。疑問

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    2017年08月20日
  • 三つの棺〔新訳版〕

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    以前にも読んだことはなく初読でしたが、なるほど、『火刑法廷』と並ぶカーの代表作の1つとされるだけあり、このトリックというか謎解きは今読んでも練られておりかつ意表を突きすごい。(練られすぎているが故やや無理は感じるものの)

    個人的にはどうもカーはストーリーに没入出来ずに好きな作家ではないのですが、第17章の「密室講義」が無くとも確かに古典として残る名作と思います。そして、その密室講義が作品に色を添えていることもまた事実。

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    2017年02月27日
  • 二都物語

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    母親にはじめて買ってもらった文庫本(のひとつ)。旺文社文庫だった。表紙はほぼ同じで、こちらはカラーになっている。あまり面白かった記憶はなく、読み終えたかどうかも定かではない。
    今回、新訳ということもあり、懐かしくなって読んでみた。けっこう面白いじゃないですか!! なんとなく結末がわかっていても、思ってもみなかった伏線がつながってくる快感と、後半に向けて尻上がりに加速するスピード感が素晴らしい。ディケンズにしてはコンパクトなサイズも、話が広がりすぎずよい。名作。

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    2016年08月04日
  • 二都物語

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    ストーリー展開がバラバラで、何がどう繋がるのか不明なまま数百頁を読み進めるのは辛い。後半部分になって、個別の展開が全て繋がってくるとあとは一直線。

    新訳の日本文であっても、読みにくい箇所がしばしば出てくる。特に自然描写の箇所など。多分もともとディケンズの文章自体が、修飾語や関係代名詞が長々と使われていたり、主語と述語の関係もおやっ?と思わすところがあるのかもしれない。

    やはり一度は、言語で読んでみたい。

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    2016年07月25日
  • 二都物語

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    シドニー!

    前知識なく読み始めてフランス革命が舞台と知る。
    ロンドンとフランスの。イギリス人とフランス人の。

    アガサ・クリスティの「バグダッドの秘密」からの。

    シドニーの言葉が優しい。

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    2016年06月02日
  • リーマン・ショック・コンフィデンシャル下 倒れゆくウォール街の巨人

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    「よくここ迄詳細に人物の発言や会議内の様子を含めて調べきれたな」というのが素直な感想。
    話は、ベアスタンズ合併後のリーマンが破綻に向かう一部始終、その後市場は更に下がり続け、モルガンスタンレー、ゴールドマン・サックスにまで経営危機が及んでいく。
    まさにリーマン・ショックの裏側。当時の実在のトップ投資銀行のCEOたちや財務省連銀の役員たちが史上最大の金融危機に対し、どのような行動を取っていなのかが詳細に記してあり、読み応えがあった。

    金融危機のさなかのせいか、投資銀行が自社の保有資産価値を全然把握できていないのは何とも間抜けであり、適切な対策を施したとしも、市場は違う反応を示せば結局は危機を脱

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    2016年03月20日
  • ヒューマン・ファクター〔新訳版〕

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    派手さの全くないスパイ小説。なのに、確かにぐいぐい引き込まれる。政治状況は変わっているが、今、読んでも古びれないのは、ヒトの生きざまの根幹に触れているから。

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    2015年10月17日
  • 三つの棺〔新訳版〕

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    密室講義を読むために本作品を手に取ったと言っても過言ではありませんが、実際にこの作品で使われたトリックが発端となりその後様々なミステリに使われていると思うと、当時これを考え出したことが如何に偉大なことか思い知らされます。

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    2015年08月23日
  • 三つの棺〔新訳版〕

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    かの有名な「密室講義」は素晴らしい内容ですし、名探偵自ら架空の存在であることを認めてしまったメタ発言が楽しいです。ただ、どうしても冗長に感じてしまうのが残念なところです。
    本書の密室トリックは理解出来ない部分があって微妙に感じるものの、全体的な仕掛けや犯人の隠匿方法と有機的に結び付いている所が秀逸です。

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    2020年04月19日
  • 二都物語

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    ネタバレ

    古典読書。タイトル以外は予備知識なしで読み始めた。ロンドンとパリを舞台にした歴史小説で、本人の言葉からは歴史考証もこだわったと思われる。フランス革命が起こったときの実際の雰囲気を味わえる。教科書ではただの暗記になることも小説で読むと登場人物に寄り添った疑似体験になるため今までとは違った視点を得られた。ただ前半散りばめられた登場人物の経歴が終盤に次々ときれいにハマっていくミステリ的な要素が強いので、純粋な歴史小説とは言えない面もある。ただそれがドラマチックな展開を引き出しているので、本書はフィクションとノンフィクションどちらの側面でも読み応えのあるものになっている。

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    2015年07月12日
  • 繊細な真実

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    もし日本で高名な人気作家が日本を舞台にこんなシチュエーションの小説を発表したら、現政権下では、出版社に圧力がかけられるかも。ル・カレの小説はもうスパイエンタメの範疇を脱している。日本にトビーやキットのような良心と勇気を併せ持つ外交官が存在するだろうか。

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    2015年03月08日
  • 繊細な真実

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    ル・カレってジャンルでいうとスパイ小説、エスピオナージュなんだけど必ず主人公の恋愛の要素が含まれていて(で、それがダメダメだったりして)少し切なくなるよね。

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    2015年01月15日