加賀山卓朗のレビュー一覧
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ネタバレ良くできているが、面白くはない。
事件パートが密室パズルを出題するために用意されているようで魅力的ではないし、探偵役のキャラもただ不可能状況を提示するために動いている。
密室談義の部分で、「現実感がないといってミステリを批判するな」といった話が出てくる。それはそのとおりだと思う。ミステリにはあっと言わされるようなものを求めてる。ただ、現実感のなさにも2通りがあると思う。1つは、有り得そうもない奇抜なトリック。つまり「思いついてもやらんやろ…」。もう1つは、必然性が薄いために起きえないと思うもの。つまり「そんなんよう起きんやろ…」というやつ。この作品はそれで言うと後者だ。密室殺人という不可能を可能にするために「目撃者が頼りにした時計がズレてた」「撃たれてからもあるいていて偶然であって撃ち返した」「撃たれてからもしばらく大丈夫だったが、密室に入ったあとにはずみで死に至った」といった偶然を重ねていく。今回のような事件が起きない、とは言わない。起きたから小説になったのだ、と言えるから。不可能状況を可能にするために多種多様な仕掛けの部品を用意して、それらで一つの密室という機械を作り上げる執念には感心する。ただ面白いかというと別だ。私は手品の種をきいてなーんだと思うよりも、手品の種をきいてなお魔法の世界に居続けられるようなミステリのほうが好きだ。 -
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スウェーデンを代表する企業の社長令嬢が大量の血痕を残して失踪した。
少女は腕に3つのチェックボックスのタトゥーを入れ、直前に最後の1つを埋めていた。
10代の少年が容疑者に浮上したものの遺体は発見されず、未解決のまま時が過ぎた10年後、同じタトゥーを入れた少女の死が判明する。
ある事情から素性を隠し再捜査に加わったFBI捜査官ジョンは、事件の深い闇に囚われていき……。
自己啓発本のようなタイトルだが、もちろん違う。相変わらずスウェーデンのミステリの紹介は止むことがない。この作品もなかなかのページターナーで一気読み。続編もでているが、翻訳されるかどうか。 -
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18世紀、フランス革命を背景にフランスとイギリス二つの街で時代に翻弄された人々の話。読んだきっかけはダークナイトトリロジー3作目の「ダークナイトライジング」が二都物語をモチーフにしている、とノーラン監督が言ってたので気になったから。市民たちが暴走し、貴族や市民を裁判にかけるシーンがあるんだけどライジングで「そういえばスケアクロウが裁判してたなあ!あれここから来てたんか!」とか思い出して、ライジングも一緒に甦ってきて楽しかった。フランス革命といえばベルばら、レ・ミゼラブル(トム・フーパー版)のイメージだったので漫画と歌で少々ぼかされていた市民たちのとんでもなく貧しい暮らしや、それにぶちギレた市民たちによる血で血を洗う大殺戮なんかがしっかりと、でも詩的な言い回しで進んでいくので気分はめちゃめちゃ最悪なんだけどそこまで凹まずに知ることができた。時代が時代なので、女性への当たりがキツかったりするのであんまり声を張っておすすめはできないけど、カートンの告白シーンを初めとするルーシー、ダーニー、カートンの三角関係や、ルーシー父の錯乱シーン、ダーニーの裁判、ミス・プロスとドファルジュ夫人の一騎討ち(これ、死の秘宝のベラトリックスとモリーの対決くらい好きになった。つかオマージュしてる???)など、基本みんなの立ち位置が辛いしキツいししんどいけどそれぞれ見せ場がとてもおもしろいし手に汗握る。
カートンの、究極に身も心も美しい者(ルーシー)の前で勝手に己を悔い改めてしまう描写がすごくツボというか性癖だった。美しい存在に、純粋な光に、自分の醜い部分も含めた何もかもを露にされてしまうとき、それを受け入れたり、また逃げてしまったりする所に、私は人間って生物の良さを感じる。 -
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先日読んだ「20の古典で読み解く世界史」で紹介されていたうちの1作品
主人公ピップは幼い頃両親が亡くなり、20以上年上の意地悪な姉とその婿である鍛冶屋のジョー(こちらは良い人)に育てられた
ジョー以外ほとんどの大人がピップをサンドバッグかのように当たり散らし、意地悪を言い、傷つける
結構読んでいくのがしんどくなる
ここまでみんなで意地悪をする場面を描く必要はあるのか?と素朴な疑問が浮かんでしまう
どうやらディケンズの両親が金銭的にだらしなく一家が破産し、ディケンズは靴墨工場で働いていたようなのだが、そこでの仕打ちはひどく、かなり精神的ダメージだったようだ
そんなことも影響しているのかもしれない…
それでもジョーだけが強い味方で何度も助けられ支えられ、それなりになんとかやっていく
退屈であまり愉快とはいえない日常に変化が…
クリスマスイブに脱獄囚と出会う
脅されながらも食糧を渡し、誰にも話さないことを約束
これを皮切りにピップの身に次々と変化が…
その中でも一番の出来事はお金持ちハヴィシャムの屋敷に招かれ、美しく誇り高いエステラと出会ったことだ
しかしエステラはピップを軽蔑し、ひどいことをたくさん言い、ピップは辱めを受ける
自分が下等で情けない暮らしをしていることを嫌と言うほど思い知るのだ
そしてハヴィシャムはエステラに言う
「男の心をずたずたにしておやり」
(そうハヴィシャムは過去に婚約者に裏切られひどい目にあっているのだ)
今までジョーを誇りに思い、ジョーの徒弟になるのを幸せなことと思っていたのに…
ピップの中で何かが変わっていく…
心の葛藤が生まれる
ジョーとの単調で貧しいながら、人としての誇りを持つ暮らし
一方、新しい都会での生活に憧れ立派な紳士を夢見るピップの気持ちは痛いほどよくわかる
(若い頃はそういうものだと言ってしまえばそれまでなのだが…)
どちらも気持ちも正直なピップの心だ
揺れ動きつつももう後ろを見たくない前のめりな若さの勢いが加速する
一見シンデレラストーリー(少年版)かに見えるがそんな一筋縄ではいかなさそうな意味深なことがあちこちに潜んでいる(ワクワク)
誰にも内緒に食糧を渡した脱獄囚、彼とはまた再会の予感を示唆している…
一体姉は誰に襲われてしまったのか 再起するのであろうか?
ハヴィジャムはピップに何を仕掛けているのか
(ピップ及び一部の人間は彼女から遺産を引き継いだと思っているが、密かに違うと思っている…
では一体誰が…)
エステラは人間らしい感情が芽生えるのか ピップに対する気持ちに変化は起こるのか
はたまたピップはエステラを愛し続けるのか
ヒディに対する気持ちはどうなるのか?
そして、ピップは与えられたこの環境でどう成長していくのか
そうそう新たに出会う友人となるハーバートはとても粋で心暖かい青年
彼との友情シーンはポッと明かりが灯りホッコリする!(数少ない癒し場面)
イジメられたり、ひどい扱いを受けてばかりいるピップ
それでもストーリーが暗くならないのはウィット感に溢れる文章のせい
ジョークにイギリスらしさが溢れており、テンポの良さがジメジメさせない
そしてあまりに個性あふれる登場人物たち
しかしアクが強過ぎ…みなさん
この時代の英国って???
下巻で張り巡らされた伏線がどう回収されるのか楽しみである