加賀山卓朗のレビュー一覧

  • オリヴァー・ツイスト(新潮文庫)

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    ネタバレ

    ディケンズの皮肉とユーモアがすごい。とてつもなく悲惨な状況をブラックユーモアに包んで描くので、くすっと笑えます。ですがその分、後でじわじわとそのつらい状況が身に迫ってくるような感覚がありました。

    間接的に描くことで、より考えさせられるという感じでしょうか。スイカに塩をふると、より甘さを感じるのと同じようなものかと。

    オリバー自身は特に機転を利かせたり、成長したり、そういう活躍の場面はありません。ですが、オリバーはかわいすぎる。孫を見るような感じで彼が運命に翻弄されるのを見守ってしまいます。

    モンクスの正体が明かされた場面は、かなり拍子抜け。正体は絶対にハリーの方がよかったでしょう。いや、

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    2024年07月23日
  • 頬に哀しみを刻め

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    ネタバレ

    このミス海外編の1位ということで読んでみました。
    息子を殺された二人の父親の復讐のお話ですが、LGBTへの差別が大きく関わっています。
    基本的にはマッチョなアメリカの復讐劇ですが、そこにLGBTを含む様々な差別がベースになっているところが今風かなと思いました。
    竹蔵が感じたのは、日本ではありえないくらいの警察の捜査のずさんさかな。
    LGBT夫婦であった息子たちが生前は理解できなかった父親たちの懺悔の思いが何度も出てきますが、もし息子たちが殺されなかったら息子たちとの関係は断絶したままだったはずで、そういった想いが何度も何度も語られるのがちょっと???ということが評価があまりよくない理由です。あ

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    2024年07月17日
  • 頬に哀しみを刻め

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    アメリカでミステリー賞を数多く獲得し、日本でも話題のS・Aコスビーの最新作である。
    結婚して夫婦になった二人のLGBTの息子達が突然銃撃され惨殺される。
    黒人と白人の彼らの父親が衝撃と絶望のなかで、事件を解明し犯人を探し報復する話である。二人は息子達への生前の暴挙やLGBTへの無理解や差別を後悔し罪滅ぼしで命懸けの復讐をする。

    息子はかつての恋人(女性)が大物政治家の二代目と付き合い、性癖と異常な権力欲を知り別れさせようとするが、二代目は大事な選挙中のため露見を恐れて、凶悪な犯罪組織を使って関係者を抹殺すべく夫婦を殺害した。

    冷酷な組織の暴力や殺人の描写はフィクションとはいえどぎつく、LG

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    2024年07月15日
  • シルバービュー荘にて

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    いつか読もうと積読状態の「寒い国から帰ってきたスパイ」をよそに、遺作となった今作からル・カレ作品に手を出した。諜報部の保安責任者と脱サラした書店主の視点が切り替えながら進行する前半は物語の進行方向が読めないものの、<シルバービュー>での対面を皮切りに、物語を取り巻く構図が徐々に明らかとなる。大義の為にその身を捧げた諜報部員の半生は悲哀に満ち溢れ、国家の名のもとに翻弄される現役のメンバー達にもそこはかとない空虚感が漂う。理解し切れない用語や言い回しも多々あれど、熟練の技法に裏打ちされた静かな余韻を味わった。

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    2024年06月25日
  • オリヴァー・ツイスト(新潮文庫)

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    作家 小川洋子さんが出演されていたFMの番組で取り上げられたのを機に、いまさらながら読んでみようかと購入したのが数年前。熟成期間をへて、ようやく読み終えた。

    文学史上ではもちろんよく知られている作者チャールズ・ディケンズであるが、私はこの『オリヴァー・ツイスト』が初めて。この作者、作品初め、著名な古典とも言える作品はあまり読んでいない。お恥ずかしい。

    孤児として生まれたオリヴァーの数奇な運命の物語には読み進めるうちに引き込まれ、久々に小説を読む楽しみを味わえた。

    それとともに、現在のパレスチナの悲惨な状況をもたらしている遠因でもある、イギリス(おそらく当時のヨーロッパ)におけるユダヤ人へ

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    2024年06月13日
  • 大いなる遺産(上)(新潮文庫)

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    ディケンズさんの代表作の1つの上巻です。
    文章は美しい流れだと思った。
    でも内容はかなり暗いね。

    孤児と言っても両親がいないけれども実姉とその夫と暮らすピップ。
    実姉はヒステリーでぎすぎすした人。

    両親の墓地がある沼地で脱走兵を結果的に助けることで「大いなる遺産」を将来手にすることになるのだけど、なんだか不思議な世界だな。

    ただ、ところどころに人間とは何か、より良く生きるにはどうしたらよいかのヒントになりそうなものがキラっと隠されるように埋め込まれていて、それを宝探しのように見つけるのがこの作品の醍醐味なのかも…。

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    2024年05月28日
  • 7月のダークライド

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    CL 2024.5.15-2024.5.17
    軽快な語り口のわりにラストは切ない。
    主人公のハードリーの強い思いで進んでいくので多少現実的でない面もあるけど、この余人に理解し難い使命感がいいな。

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    2024年05月17日
  • 処刑台広場の女

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    これほど人物一覧を見返した本はなかろう。それでも足りない人いるし、これで続編があると言われても、どこまで覚えていられるか…

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    2024年05月15日
  • 処刑台広場の女

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    ネタバレ

    1930年のロンドンを舞台としたミステリ。

    「探偵レイチェル」というあらすじの表記に惑わされてしまった。1件の事件の真相を示唆したくらいで「探偵」って。そもそも「探偵」じゃないよね。

    古式ゆかしい犯罪小説。
    真相は奇をてらったものではなく、順当。
    視覚的に映える場面が多いので、ドラマ化に向いていそう。時代性ゆえか、脳内に展開するのはモノクロな場面なのだけれど。

    この一連の騒ぎで成長したのは新聞記者ジェイコブ。いつかレイチェルを出し抜けるかな。

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    2024年05月08日
  • 頬に哀しみを刻め

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    ハードボイルドな展開に惹きつけられたがアメリカのジェンダー社会も取り上げていて斬新で新しく感じた。これは映画化してほしい。

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    2024年04月27日
  • 7月のダークライド

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    説明されてはいるものの、なぜこの子たちを助けたいのかそもそもの動機が理解しにくいため、彼がなぜここまでするのか、最後まで歩み寄れず。甘々でまるでファンタジー。うまく行きすぎるし、カタキ役も中途半端だし。フェリスとの関係含め青少年の憧れを詰めこんだのか?と思えるほど。ラストは思い通りになってよかったね、と言ってあげたいくらい。大谷さんが語られるくだりのみ、ほんわかしました。

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    2024年04月21日
  • 処刑台広場の女

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    うーん微妙だな面白いといえば面白いが若干すっきりしないなあ。
    前半で名前とやったことがこんがらがってしまいました登場人物の一覧表が初めて役に立ちました。

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    2024年04月21日
  • 大いなる遺産(上)(新潮文庫)

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    イギリス文学を代表する作家ディケンズの『大いなる遺産』でっか

    先日読んだカルロス・ルイス・サフォンの『天使のゲーム』で主人公ダビッドの人生を変えたともいえるこの名作
    本当にそこまで魂を揺さぶるようなお話なの?ってことで確かめてみることにしました

    出来れば光文社古典新訳文庫で読みたかったんですが、ラインナップにないものはしょうがない(『クリスマスキャロル』『二都物語』『オリバー・ツイスト』はある)
    と思っていたら新潮社がわいの大好きな加賀山卓郎さん訳で新訳版を出してるじゃないですか

    やるな新潮社
    まぁ今回ばかりはいい仕事したなと認めてやろう

    さて中身の方はと言えば加賀山さんらしからぬちょ

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    2024年04月07日
  • 処刑台広場の女

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    ネタバレ

    評価が高いので気になっていた一冊。レイチェル・サヴァナクとは一体何者なんだというのが主眼なのだが、やたらと人が殺され無理矢理風のドンデン返しが続く。が、緊迫感が感じられず平板な印象で残念。1930年代が主舞台となっているがその雰囲気効果は伝わってこない。あれだけのことをしたにもかかわらず、レイチェルはシリーズであるらしい。マジか。

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    2024年03月29日
  • 7月のダークライド

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    遊園地で働く主人公が、虐待された形跡の残る子供を見かけた事から始まるミステリー。まず、遊園地の子の色々を探る時点で、私的にはアウトとは思う。公的機関に訴えても難かしいかな。と言う意味でも、リアリティがなくて残念だった。

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    2024年03月28日
  • 二都物語

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    原文は知らずだが、装飾の多い文章で読みにくい。急な場面展開でわかりにくい。訳者あとがきによると「ひとつのイメージから別のイメージをどんどんつなげて息の長い文章を綴る饒舌体」が特徴のようだ。ドラマチックな話ではあるが、すごく感動するまでには至らず。

    初ディケンズ。これはそれまでの大きな特徴であったユーモアが抑え気味になった後期の作品だそうだ。ならば前期の作品も読まないとディケンズは語れない。

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    2024年03月12日
  • 処刑台広場の女

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    SL 2024.3.6-2024.3.10
    2018年の作品で1930年のロンドンが舞台。その時代らしさと現代的な面も混在する。
    レイチェル•サヴァナクとは実際何者なのか、がわかったところで事件もある程度見えてくる。
    終盤にはさらなるドンデン返しも。
    とても雰囲気のある作品だった。

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    2024年03月10日
  • 7月のダークライド

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    主人公は饒舌な23歳、ハードリー。遊園地の'呪われた西部開拓地'で'死んだ保安官'役をして生活している。が、親からの虐待を疑われる幼い姉弟を見かけた時から気楽な生活が一変する。結末をどうつけるのか色々考えながら読み進めたが、そうくるか、と胸熱。

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    2024年03月03日
  • 葬儀を終えて〔新訳版〕

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    ポアロもの。

    資産家、アバネシー家の当主・リチャードの葬儀が終わり、出席した親族一同の前で遺言執行人の弁護士・エントウィッスル氏から故人の遺産の内容が公開されます。
    ですがその時、リチャードの末妹・コーラの放った爆弾発言により、その場が凍り付くことに。
    「だって彼は殺されたんでしょ?」
    そしてその翌日、コーラが自宅で殺害されているのが発見されて・・。

    これぞファーストインパクト(?)といった感のある、コーラの爆弾投下。
    もう、これで引き込まれちゃいますものね~。
    この、“・・彼は殺されたんでしょ?”は、
    “いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ”(『死との約束』)
    “なぜ、エヴァ

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    2024年02月25日
  • 葬儀を終えて〔新訳版〕

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    騙された!それはもう清々しく騙されました!
    ……と、私は一体何度クリスティーの感想に書けば気が済むのでしょうか。それくらい、まんまと彼女の術中にハマってしまったのでした。

    「だって彼は殺されたんでしょ?」
    大富豪リチャードの葬儀で、末妹コーラが放った一言はその場をいた人々に動揺を与えた。そしてその翌日、コーラが何者かに殺される――。
    『雲をつかむ死』でも思ったのですが、クリスティー女史は本当につかみもうまい。今作はポアロものの中でも後半の作品になるのですが、あらすじが気になりすぎて手に取ってしまいました。
    ページを開いてびっくり。なんと、これまで読んだクリスティー作品で初めて、家系図がついて

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    2024年02月18日