加賀山卓朗のレビュー一覧
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ネタバレディケンズの皮肉とユーモアがすごい。とてつもなく悲惨な状況をブラックユーモアに包んで描くので、くすっと笑えます。ですがその分、後でじわじわとそのつらい状況が身に迫ってくるような感覚がありました。
間接的に描くことで、より考えさせられるという感じでしょうか。スイカに塩をふると、より甘さを感じるのと同じようなものかと。
オリバー自身は特に機転を利かせたり、成長したり、そういう活躍の場面はありません。ですが、オリバーはかわいすぎる。孫を見るような感じで彼が運命に翻弄されるのを見守ってしまいます。
モンクスの正体が明かされた場面は、かなり拍子抜け。正体は絶対にハリーの方がよかったでしょう。いや、おそらくディケンズ自身も最初はそういう想定でいたと思います。だってローズはハリーに相談しなかったじゃないですか。
なんか最後の方がグダグダになって、後付け感が半端ないです。いや、本当にナンシーがああなるまではとても面白かったです。そこまではわくわく感がたまらなかったです。ですがそれ以降のご都合主義・予定調和な感じが鼻につきます。
面白かったのは面白かったですが、風呂敷のたたみ方に失敗したような感じは受けました。ただ二都物語でも感じましたが、ディケンズの描写力のすごさは、間違いないです。 -
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アメリカでミステリー賞を数多く獲得し、日本でも話題のS・Aコスビーの最新作である。
結婚して夫婦になった二人のLGBTの息子達が突然銃撃され惨殺される。
黒人と白人の彼らの父親が衝撃と絶望のなかで、事件を解明し犯人を探し報復する話である。二人は息子達への生前の暴挙やLGBTへの無理解や差別を後悔し罪滅ぼしで命懸けの復讐をする。
息子はかつての恋人(女性)が大物政治家の二代目と付き合い、性癖と異常な権力欲を知り別れさせようとするが、二代目は大事な選挙中のため露見を恐れて、凶悪な犯罪組織を使って関係者を抹殺すべく夫婦を殺害した。
冷酷な組織の暴力や殺人の描写はフィクションとはいえどぎつく、LGBTや差別という現代社会の切実な課題を底流に据えたハードボイルド・ミステリーである。
LGBTはアメリカ社会では既に慣れたことと思っていたが登場人物達の対応は偏見に満ちていて意外であった。白人の父親は覚悟の死を遂げる。
臨場感のある表現で切迫した速い展開に、始めから引き込まれ一気に読む、読み終わってホッとする。
男親の息子達への強い贖罪意識に余韻が残る。
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作家 小川洋子さんが出演されていたFMの番組で取り上げられたのを機に、いまさらながら読んでみようかと購入したのが数年前。熟成期間をへて、ようやく読み終えた。
文学史上ではもちろんよく知られている作者チャールズ・ディケンズであるが、私はこの『オリヴァー・ツイスト』が初めて。この作者、作品初め、著名な古典とも言える作品はあまり読んでいない。お恥ずかしい。
孤児として生まれたオリヴァーの数奇な運命の物語には読み進めるうちに引き込まれ、久々に小説を読む楽しみを味わえた。
それとともに、現在のパレスチナの悲惨な状況をもたらしている遠因でもある、イギリス(おそらく当時のヨーロッパ)におけるユダヤ人への差別意識がはっきりと描かれていて、知ることができたのは大きな収穫であった。 -
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イギリス文学を代表する作家ディケンズの『大いなる遺産』でっか
先日読んだカルロス・ルイス・サフォンの『天使のゲーム』で主人公ダビッドの人生を変えたともいえるこの名作
本当にそこまで魂を揺さぶるようなお話なの?ってことで確かめてみることにしました
出来れば光文社古典新訳文庫で読みたかったんですが、ラインナップにないものはしょうがない(『クリスマスキャロル』『二都物語』『オリバー・ツイスト』はある)
と思っていたら新潮社がわいの大好きな加賀山卓郎さん訳で新訳版を出してるじゃないですか
やるな新潮社
まぁ今回ばかりはいい仕事したなと認めてやろう
さて中身の方はと言えば加賀山さんらしからぬちょっと古めかしい訳、新潮社に飲まれたか?いや元のディケンズの文章がかなり腫れぼったいんだな
いや「腫れぼったい」ってどういう文章よ?って思われるかもしれないが、自分としてはかなり的を射た表現なので説明しない
そして何より主人公のピップがぜんぜん好きになれない
莫大な遺産を相続することになった幸運をさも当たり前のように享受し、浪費して、これまでどんなときでも味方になってくれ、愛情深く育ててくれた義兄で田舎の鍛冶屋ジョーを恥ずかしいと感じて粗末に扱う
かなり最低な奴
子どものころは心やさしいいい子だったのにすっかり変わってしまってがっかりりな上巻
ふふふふふ
でも分かってますよ
分かってますとも、これってあれでしょ?ディケンズが仕掛けた巧妙な罠なんでしょ?読者を一回嫌な気持ちにさせといてからのーなんでしょ?
間違いないでしょー!
さて下巻や如何に?!
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ポアロもの。
資産家、アバネシー家の当主・リチャードの葬儀が終わり、出席した親族一同の前で遺言執行人の弁護士・エントウィッスル氏から故人の遺産の内容が公開されます。
ですがその時、リチャードの末妹・コーラの放った爆弾発言により、その場が凍り付くことに。
「だって彼は殺されたんでしょ?」
そしてその翌日、コーラが自宅で殺害されているのが発見されて・・。
これぞファーストインパクト(?)といった感のある、コーラの爆弾投下。
もう、これで引き込まれちゃいますものね~。
この、“・・彼は殺されたんでしょ?”は、
“いいかい、彼女を殺してしまわなきゃいけないんだよ”(『死との約束』)
“なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?”(『なぜ、エヴァンズに頼まなかったのか?』)
と並ぶ、クリスティー“つかみ名台詞3選”といったところでしょうかね。(※現時点)
(因みに、個人的な“優秀つかみシチュエーション編”は『パディントン発4時50分』です♪)
さて、コーラの発言と彼女の死亡によって、リチャードの死因も怪しくなってきたぞ・・ということで、序盤は弁護士のエントウィッスル氏が、独自で関係者達にヌル目のヒアリングをしていき、中盤からはそのエントウィッスル氏から依頼を受けたポアロが登板してガッツリ調査していく流れです。(UNARCOのポンタリエってw)
とにかく、相続関係者(ある意味容疑者)が多いので、巻頭の家系図を頼りに読み進めていた私ですが、今思えば“家系図に注目”してまうという事自体、トラップに嵌っていたのかも・・( ゚д゚)ハッ!?
こうして真相を追っていく過程で、彼らの抱える事情や人間模様がじわじわ炙りだされてくるというじんわり展開で、ちょっと進みが遅いかな・・と思いつつ、これまでクリスティーの印象操作によるミスリードに散々騙されてきた実績(?)を持つ私なりに、“敢えて怪しくない人物”をマークしていたのですが・・結果、大ハズレでしたー!
犯人が想定外な人物だったどころか、最初っから騙されてましたよ~。
さすが、クリスティー師匠は1枚も2枚も上手でしたね。
ところで、本書に登場したアバネシー家親族の男性陣が揃いも揃ってダメんずばかりで(何だかクリスティーあるあるになってきた模様)、特にスーザンとモードには“目を覚ませ!”と肩を揺さぶりたくなった私です~。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ手持ちの文庫本は表紙がクラシカルな雰囲気の女性のポートレートで登録されている表紙より好きだが、もはやポップとも言えるようなどんでん返しの本書には多少アニメっぽいイラストの方が合ってるのかもしれない。本作より後のクリスティ「蒼ざめた馬」がかなり好きで、本作もヘンダーソンが引用する昔の知人バリンジャーさんの「死んだ人間などちっとも怖くない、注意しなきゃいかんのは生きたろくでなしどもだ」という名言通り、怪奇現象を科学的に解明する話だろうと思いながら読み進めて説示までなかなか面白かったが、いきなり探偵役が倒れるあたりから収拾のつかない展開に。評決と言う短い終章でガラッとオカルトに揺り戻され、ここが本作の最大の魅力なんだろうけど、魑魅魍魎を斬る蒼ざめた馬のさっぱりとしたラストとは対照的。ツッコミを入れながら楽しむ作品のようです。鏡の前で手持ちの服をとっかえひっかえする若い女の子みたいにお洒落好きなおじいさん、殺されてかわいそう!「アクロイド殺し」で犯人が犯行当日あれだけの行動をとるのは忙しすぎて時間が足りず無理、との指摘を読んだことがあるが、本作の死体消失トリックも相当際どい短時間決戦。看護師は確かに正妻に罪を着せようと試みたり人が悪いかもしれないけれど過去の経緯は気の毒なところもあるし、「本当は罪を犯していない」のに終身刑ってかわいそう。いつの間にかゴーダン・クロス殺人事件にすり替わってしまっているが、これ結局真相不明だし、その前の毒殺のドレスの謎とか警察が深追いしなくてよいのかなあ…マークが急いで金が必要な理由どこかに書いてましたっけ?事件後行方不明になった、で終わるのは省略の美?何世代も放置していたにもかかわらず、この物語の時点から過去世の復讐話になるなら、あの「奥様は魔女」はマークだけでなく妹や弟(珍しい性格設定だけど知人で似ている人います)も亡き者にしてその際に夫を仲間に引き込む展開が想定されているのか。マイルズは図らずも死後に火刑に処されており、八つ墓村(映画しか見てないけど)なら被害者の子孫が復讐という形になっていたが、こちらでは犠牲者の甥が無意識のうちに自ら手を下すのが凄まじい。