春日太一のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
仲代達矢…
重厚という言葉を天下一品のこってりスープで十日間煮込んだような濃厚な味わいの演技。
同世代の俳優たちが次々と天国へとログアウトしていくなか、いまだ延々と地上界にインし続けるアプリ廃課金者のごとき生命力。
彼が語る名優・名監督の逸話が実におもしろいです。
本書を読むとまた彼の映画が観たくなります。
「人間の條件」「殺人狂時代」などがアタクシのフェイバリットでございます。
唯一の汚点は市川崑の「女王蜂」冒頭部分の学生服姿でしょうか。
どう見ても浅草のコント芸人にしか見えないのです。
彼の演技力をもってしてもこれだけの年齢的なギャップはいかんともしがたく…痛々しいかぎり。
やはり学生姿 -
Posted by ブクログ
多作は「新進気鋭が腕試しをする試験場」でもあり、「粗製濫造で視聴者離れを引き起こす要因」でもあった。
かつて全盛を極めた時代劇の凋落はいつから、なぜ始まったのか。現状に至るまでを時代劇・映画史研究家が解説する。
1955年の時代劇映画は174本。50年代は毎年150本以上あり、1960年にも年間168本が製作されたが、わずか2年後の1962年には77本に、1967年には15本まで減少する。50年代は他に娯楽が少なく映画館入場者数が10億人を超えていたが、60年代に入って急激に落ち込み、東京オリンピックに合わせて普及した家庭用テレビの影響がさらに重くのしかかる。そこから半世紀以上続く、時 -
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市川崑は脚本家の奥様、和田夏十の内助の功に支えられていた。
監督は奥様の没後は迷走…。和田夏十さんのすごさももっともっと検証されるべきでしょう。
「木枯し紋次郎」の主題歌、上條恒彦「だれかが風の中で」の詞まで書かれていたとは。すごいね。
吉永小百合を「監督クラッシャー」と断言するのもツボ。
戦後の日本の映画界の駄目っぷりも露わに。「東京オリンピック」は人選ミスって駄目じゃん。
角川が仕掛けた金田一耕助ブームがミステリへのめり込むきっかけだっただけに、石坂浩二インタビューは嬉しいおまけ。
見たくなる映画やTVが一杯出て来て、それだけでお釣りが来る一冊ですね。 -
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Posted by ブクログ
筆者の春日太一氏は最近、書籍も多く、ラジオなどの出演も多い若手の時代劇研究家だ。
私は彼の「あかんやつら」を読み、かつてあった日本の時代劇の凄みにはまった一人だ。
ラジオにもよく出演し、語り口も分かりやすく聞きやすい信頼できる批評家の一人だと思う。
たまたま、角川シネマで市川崑特集をやっており、ちょうどこの本の存在を知った事と被り、この本を読んで市川崑の「破戒」を見た。
筆者が本書で評価している様に非常に画の綺麗な美しい映画であり、ある部分の会話ではコメディ的な皮肉もありつつ、そしてクールな、非常に客観的な人物が配置されていたり、確かにその評価の通りだと感じた。
特に、弱い男と強い女という対比 -
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Posted by ブクログ
ネタバレ市川崑監督論の研究書。
久しぶりに仕事以外で小説でないものを読みました。
自分はちょうど「犬神家の一族」の封切から市川監督作品を見だしたので、それ以前の監督作品の解析は大変勉強になりました。
自分も監督の最高傑作と思っていた「細雪」が評価されていたのもうれしいです。
ただ、自分は映像的には評価している「東京オリンピック」ですが、聖火ランナーのやらせについて言及しなかったのはちょっと物足りなかったです。
しかし、市川作品の映像美に虜にさせられた「犬神家の一族」の詳細な分析も納得ですし、石坂浩二のインタビューで晩年の苦労もわかり涙しました。
読書感想から離れてしまいますが、自分は高校・大学と映画 -
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Posted by ブクログ
映画評論家という職業は、絶滅危惧種的存在にしか思えないけど、春日太一の本を読むと、映画史家というのは必要なんだなあ毎回思います。
短時間のインタビューで、ベテラン俳優達から、実のある話をうまく引き出せる著者の手腕は鮮やかです。
登場している俳優たちは、名前と顔は知ってるけど、邦画もTVドラマも殆見ない自分的には、俳優としてというよりも、バラエティ番組などで見かける大御所俳優枠というポジションのおじさん達。という程度の認識しかありませんでした。
例えば、松方弘樹なんて、昔「元気が出るTV」でただ笑ってるだけの、おじさん。と思っていたので、時代劇に対する思い入れの深さとかが書かれていて、良