春日太一のレビュー一覧

  • なぜ時代劇は滅びるのか

    Posted by ブクログ

    数年前にテレビ時代劇、「水戸黄門」が最終回を迎えた。これで時代劇のレギュラーテレビ番組は全滅した。かつて「銭形平次」、「遠山の金さん」、「大岡越前」、「暴れん坊将軍」などテレビ欄を占めたこともあった時代劇は滅びつつある。なぜそんな状況になったのか。著者の分析によれば、視聴者側と製作者側の問題がある。

    視聴者側の問題とすれば、近年になってテレビ視聴率が年代別に算出されるようになったことだ。時代劇はそれなりの視聴率を取っていたが、その視聴者は50代以上であることが数字上はっきりしてしまった。企業は、お金を使いたがらない高齢者しか見ないテレビ番組には提供したがらない。スポンサーがつかない番組が消え

    0
    2014年11月21日
  • なぜ時代劇は滅びるのか

    Posted by ブクログ

    時代劇がマンネリ化していった原因、大河ドラマが平板化していく過程、時代劇が陥っていった衰退の渦をひとつひとつ解きほぐし、唇を噛み締めながら詳述した本。論評対象が実名なのも素晴らしい。

    0
    2014年11月01日
  • なぜ時代劇は滅びるのか

    Posted by ブクログ

    タイトルのとおり、時代劇衰退の要因を抉っている本。
    もう見応えのある時代劇の新作は出てこないのかもしれない。そうならないことを期待はするが。
    しかし、本書が指摘した諸問題は、時代劇だけに留まらず、現代劇にもかなりあてはまる。
    だから、最近の地上波ドラマは見る気がしないのである。

    0
    2014年10月21日
  • 仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―

    Posted by ブクログ

    戦後日本の映画界を牽引していた東宝と東映のクロニクル。
    1970年代は映画の公開本数も、観客動員数も、映画館の数も全盛期をとっくに過ぎた斜陽期のようです。これをテレビ台頭のせいだよと一言では片付けられません。戦後の何もない時代から配給の確保、労働問題、世代交代、観客層の変化と諸問題に取り組んできた配給・制作チームの奮闘があったんですねえ。春日さんのわかりやすくてドラマチックな語り口でぐいぐい引き込んでしまう熱い本でした。
    あと、製造と流通では流通が圧倒的に強いということが泣けるくらいによくわかります。

    0
    2014年08月17日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    昔いたという勝新太郎が目の前で生きているような内容だった。
    時代劇のすさまじいまでの職人たちのつばぜり合いが見えてくるようで、そんな時代の中の、一時代を築きあげた勝新太郎という天才が何を追求し、何を映画の中に残してきたのか。
    こだわり抜いた作品を作ろうとし、そのために周りを振り回しつづけてきたすさまじい生き様に驚愕した。
    作者の取材力も素晴らしく、時代劇にほとんど触れずに来た自分にも伝わる良い本だった。

    0
    2015年01月16日
  • 仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―

    Posted by ブクログ

    1971年の東映「仁義なき闘い」が日本映画の「昔の終わり」であり、東宝「日本沈没」がいまの始まりだとする。「あかんやつら」が東映の実録ものであったのに対し、本書は新書らしく日本映画史やビジネスにも置き換えられるものをふくんでいた。いまの東映のすこしさびれた感じと東宝が制覇している感じは、東宝が製作まで担うブロックブッキングから配給のみを行うフリーブッキングにシフトしたことに起因している。製作部門のアウトソーシングという点は、あらゆる業種にも考えさせられる問題だろう。「日本沈没」へのリアリティのこだわりも面白く、映画を見てみたくなった。

    0
    2014年02月25日
  • 仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―

    Posted by ブクログ

    興行を母体とする東宝と、製作から始まった東映という二大映画会社に焦点を絞った日本映画会社の盛衰記で、戦後日本の映画史の入門書としてもお薦め。戦後国民の娯楽として隆盛し、50年代にその黄金期を迎えるやいなや、60年代には早くも斜陽期を迎え、廃れながらも決してなくならず、今もなお娯楽の一角を担っているという、その紆余曲折のスピードに驚く。他の芸術娯楽メディアに比べると、自らの成功体験に引きずられての失敗が目立つように思うのは、映画が多額の資金と大勢の人間によって作られるものであり、常にリクープを命題とせざるを得なかったからのように思う。

    0
    2014年02月11日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    ネタバレ

    勝新太郎が、ここまでの“クリエイター”であることは、まったく知らなかった。テレビの「座頭市」で勝が口伝いに演出プランを練っている音声が残されている。次から次へと口をついて出てくる市の世界観、ストーリー展開はすごい!と思った。まわりのスタッフはヒヤヒヤものだと思うけど…。それだけに、名監督はなかなかうまくいかず、黒澤明の「影武者」から降板させられる。現場で当時流行したホームビデオを回していた、というのが最終的な理由というのも面白い。完成しそうになると壊してしまう。そんな勝新太郎の生まれついての性が彼の人生を湾曲させまくる。とても読み応えのある評伝でした。

    0
    2014年01月18日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    山城新伍さんの『おこりんぼさびしんぼ』読んでからの『天才 勝新太郎』だったけどどちちも素晴らしいし、魅力的な人をここまでうまく伝えられるのは著者の力量と対象への想いや気持ちがあるからだとわかる。いろんな人がオススメしてくれるのもわかる。
    すごいわ。

    0
    2013年12月25日
  • 仲代達矢が語る 日本映画黄金時代

    Posted by ブクログ

    こういう本を読むのは好きだ。その割には邦画は見ないんだけど。
    150本超出演しておられるが黒沢映画と華麗なる一族、二百三高地、他数本しかみていない。
    初めて仲代達也の名前を意識したのは、この本の終わり近くになってやっと出てくるNHK大河ドラマ「新平家物語」だ。
    大河ドラマ史上の傑作のひとつと思うんだけど出演を決めた理由が面白い。お母さんが近所の人達に息子が落ち目だと思われるのが悔しいと泣いて電話してきたから。(昭和47年の大河ドラマだが既に世間は役者はテレビに出るものという認識があったらしい)
    ここはひとつ親孝行しようか!という理由で出演を決めたとの事。
    黒沢明、小林正樹、岡本喜八、五社英雄等

    0
    2013年09月27日
  • 仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―

    Posted by ブクログ

    僕が幼いころ、TVが普及する前は映画が最大の娯楽だったことを聞かされた。ゴジラ・モスラが初めて見た映画だった世代だから、それ以前の映画はよくわからないが、この著作は沸騰する映画全盛期の日本を余すことなく映し出してくれる。文句なしに面白い。BSで昔の映画を見る際のには、そのその頃の時代背景が感じられるようになるだろう。

    0
    2012年09月22日
  • 仁義なき日本沈没―東宝vs.東映の戦後サバイバル―

    Posted by ブクログ

    ~1973年1月公開の「仁義なき戦い」は「『昔』の終わり」であり、年末に公開された「日本沈没」は「『今』の始まり」だった。~
    映画は昔から大好きです。母の話によると私が初めて見た映画は「渚にて」(グレゴリーペック主演)で、私をおんぶして見に行ったそうです。流石に1970年以前の映画界については良く覚えてませんが。戦後の混乱期から『今』に繋がる1973年に至る東宝と東映の盟主争いをテンポよく説明していきます。流行を作ってはそれに固執して飽きられていく・・・。全くこれの繰り返しなんですね。巻末の最終章によると今の映画産業は衰退した後の成熟期なんだそうです。「三丁目の夕日」にも映画館のシーンがありま

    0
    2012年09月20日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    勝新太郎は、たしかに天才だったのだ。台本は初めからあって無きが如し。突然、即興で芝居を始める勝。プランの変更につぐ変更。混乱をきわめる現場と振り回されまくるスタッフ。しかしフィルムをつなげてみると、とてつもない作品に仕上がっている――こんな綱渡りのなかでよく作品をつくれたものだと思う。評伝を読む楽しみが凝縮された傑作。

    0
    2012年06月28日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    面白かった!カツシンのイメージが変わった!勝新太郎は、日常でも勝新太郎を演じることによって勝新太郎でいることができたのだろう。オレ何言ってんだろう(笑)いずれにしろ、「天才」とは周囲が作り出した姿に過ぎないということだ。

    0
    2011年12月04日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    小さな時に、勝新が「影武者」から降ろされた!!ってお袋が騒いでいたときからが僕の勝新に対する記憶なんだけど、全盛期ってそんなに知らないんだよな、ビデオの中でしか。三味線を弾いてる姿がエライ格好良かった記憶があるけど。
    彼が「影武者」を降ろされたってのには、彼が演出家だったからって要素が強いんだね。ただの俳優だと思ってたんだけど、プロデューサーであり、演出までやってただなんて、正にスーパーマンだよ。僕も「座頭市」は何本か見てて、殺陣や演出がスゴいなあと思ってたけど、それも一手に引き受けてただなんて。
    著者はまだ若いんだけど、当時のことをよくヒアリングしてるし、何より自分の時代でないことに、それも

    0
    2011年11月13日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    テレビでの勝新太郎監督・脚本(あってないようなものだが)・主演の「座頭市」を見ていないが、脚本の芝居に縛られず現場で芝居を口立てで作ってフィルムを原稿用紙のように使って記録していく即興演出の成果というのが見てみたくなった。DVD借りようか。
    そういう作りの映画で興行的に成功するのは至難の業で、北野武の映画が当たらないと言われ続けたのと近いところがある。
    黒澤明とのコラボがお山の大将は二人両立できず空中分解したのも無理からぬところがあるのがわかる。

    0
    2010年12月27日
  • 天才 勝新太郎

    Posted by ブクログ

    圧巻です 天才は生きにくい そう思わずにはいられない 奥村利男は勝新太郎として生きた そして勝新太郎は座頭市の映像そのものとして生きた
    こんなの知ってて座頭市観たらたまらんね

    こないだ借りた勝新太郎のCDが良かったのも三味線のバックグラウンドがあったからだと分かり納得だ

    繊細な心の内をありありと哀しくも描ききっているので、さぞかし古くから勝氏の近くにいた作者なのだろうと思ったのだが後書きみて驚いた 僕より年下じゃん 調査力、描写力に恐れ入りました

    0
    2010年06月10日
  • なぜ時代劇は滅びるのか

    Posted by ブクログ

    自分の記憶にある時代劇といえば暴れん坊将軍くらいで、なぜかと言うと父親が見ていたから。気になっていたのはなんだかいつもみんな服やら何やらピカピカだったので、本当にこんなに綺麗だったのかなーとは思っていた。それがファンタジーと言われればそうなのか、単に手を抜いていたのか。
    とかなんとか、時代劇の諸々の裏話みたいなものが書いてあるので、時代劇ファンじゃなくても楽しげ。ジジババが見つからいつも同じ展開になったわけじゃないのかー。
    この本から時は流れて、今はハリウッド経由で時代劇が注目されているらしいので、また新しい時代になったら面白いのかもしれぬ。でもほっとくと中国になってたりするから気をつけんと。

    0
    2025年10月03日
  • あかんやつら 東映京都撮影所血風録

    Posted by ブクログ

    01
    東映は映画の製作,配給会社である.戦後の一時期に台頭した,その最も盛んな活動を見せた時期が描き込まれている.年代で言えば1950年代から60年代にかけてだろうか.東映の全てではなく,その特徴が最も現れていた京都撮影所(02)が中心的な舞台となる.出入りするのは俳優に限らない.この撮影所から吐き出される映像作品には,監督,助監督,プロデューサー,撮影,照明,美術といった面々のほか,大部屋の斬られ役たちも出入りする.その胡散臭さと柄の悪さには舌を巻く.違法すれすれと言わず,戦後のどさくさに紛れた不法もあっただろうことが示唆される.また,警察組織や反社会組織とも連携したなかに東映の映画が生み出

    0
    2025年08月17日
  • 鬼の筆 戦後最大の脚本家・橋本忍の栄光と挫折

    Posted by ブクログ

    春日太一さんの本、久々に読んだけど面白かった!

    改めて橋本忍の凄さを痛感させられながらも、大枠の話なので各映画の詳細を知りたい場合には向かないかも。

    砂の器に取り憑かれてくところや、ギャンブル的な人生なところも面白い。

    0
    2025年05月02日