ま、つまり、年配の男優さんのインタビュー集なんです。
ただ、一応ねらいとして、女性遍歴とかではなくて、「芝居と言う仕事に取り組んできた歴史」という切り口が意識されている、ということですね。
夏八木勲、蟹江敬三、平幹二朗、松方弘樹、千葉真一、中村敦夫、林与一、近藤正臣、前田吟、平泉成、杉良太郎、綿引勝
...続きを読む彦、伊吹吾郎、田村亮、風間杜夫、草刈正雄、
という16人。多いですね。一人一人はそんなに長くありません。
やっぱり、こういう面々に対して、まだ生きている訳ですけど(インタビュー時点では)、
「日本映画史」「日本の映画、およびテレビドラマ及び演劇まで含めた、視覚物語芸能史」「つまりは、日本俳優史」
と、でも言うべき、すごくこう、後世からの研究視点も意識したような切り口を持っている。聴き手で本の作り手である、春日太一さんが。
その視点が、春日太一さんの仕事の素敵さに共通しているなあ、と思います。
そういう目線で見ると、この16人はそれぞれに、劇団の養成所だったり、映画のスカウトやニューフェースだったり、コネだったり、モデル出身だったり、いろいろな形で仕事を始めています。
そういう出発点や事情自体が、もはやその時代の世の中の有様を映していて面白いですね。
それはつまり、1960年代=1970年代前半なんです。
この頃、高度経済成長が一回フン詰まって、1968年の学生運動の季節があって、その反動として迷走の70年代…というこの時代のことを、よりよりこの16人に重ね合わせて観ていく視点が強めにあったら、もっと素敵な本になったのかなあ、と思ったりしました。
(まあ、あと、それぞれにもうちょっと突っ込んでいけないかなあ、とは思いますけど…。経歴なぞってちょこっと自慢話、というパターンが多いんでね)
16人それぞれの発言内容は、まあハッキリ言って、「きれいごとに終始するところは、読み手としては面白くない」という一言に尽きますね(笑)。
演技論的なことでいうと、それぞれいうことは正反対のバランバラン(笑)。まあ、どういう修業出自から来ているか、ということの多様さが判って素敵なんですけど。
そもそも、知らない人の話は面白くない訳ですが、もし多少でも「あ、あの人なんだな」とわかるのなら、
夏八木さん、蟹江さん、前田さん、平泉さん、綿引さん、あたりは、こういう切り口でちゃんと取り上げられることが多くは無いので、新鮮さ、ありますね。
個人的には、蟹江敬三さん、平幹二朗さん、林与一さん、近藤正臣さん、前田吟さん、平泉成さん、田村亮さん、あたりが比較的に面白かった気がします。
●近藤正臣さんって、売れるまで大変やってんなあ
●前田吟さんは、とにかく稼ぐっていうことをちゃんと言う人なんやなあ
●やっぱりこの世代の、この16人には?深作欣二、山田洋次、そしてなにより「テレビドラマ」っていうのは巨大な存在やなあ。
(東映系の男優が多いっていうのが大きいんですけどね)
というのが面白かった感じですかね。
気負わず軽く読めました。