山崎雅弘のレビュー一覧
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大学は勉強するところではない。大学とは、知識を商品のように学生に売るところではありません。知とはデジタルデータではなく、身体と感情を持った人間一人一人が身につけ、実践し、対話し、試行錯誤する中でしか役立たない。
あらかじめ用意された正解をたくさん覚えることが優秀だというのは、いわば知識ベースの勉強です。しかし、非常事態に対処するには、そんな勉強だけでは限界があります。そこで力を発揮するのが、物事をいろいろな角度から観察し、今までに知った事実と組み合わせて、全体の構造を考えるという知性ベースの学びです。
まだ答えがない問題への対処については、先生と生徒の立場は対等です。 -
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『鴻上尚史のほのぼの人生相談』での推しで読む。
歴史戦&思想戦に対する批判本。
歴史戦とは、大日本帝国による南京大虐殺や慰安婦などを擁護する産経新聞を始めとする論陣のこと。中国や韓国による歴史糾弾への戦いともいえそう。
それが大日本帝国による思想戦、政府主導のプロパガンダと同様だとする批判とともに、歴史戦を否定する。
被害者数や種々の事情の違いがあるにせよ南京大虐殺や慰安婦の不幸な事実から目を逸してはならないことは理解できる。しかし、日本側に歴史戦の論調が出てくる背景には、別の勢力からの歴史戦があるからではないだろうか。
歴史の動きには、それぞれの側に大義も事情もあるだろうから、一方の言い分だ -
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1935年の天皇機関説排撃事件については憲法学や歴史学にかなりの研究蓄積があるにもかかわらず、一般向けの手ごろな単著がなかっただけに、その一点でも本書は価値があるが、排撃運動を今日の立憲主義の解体状況や排外的ヘイトスピーチの隆盛と重ね合わせようとする問題意識が鮮明な分、事件の前提となる明治憲法をめぐる分析視角に問題がないではない。
特にあとがきで、かつて久野収が提起した「顕教」としての天皇主権説と「密教」としての天皇機関説という視点をあえて採用しなかったことを明示しているが、この視角がないと排撃運動と大衆社会との関係が不明瞭となり、明治憲法の「通説解釈」が一部の反動勢力の卑劣な暴力によっ -
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反憲法派の中心組織「日本会議」に関する著作が2016年に相次いで刊行されたが、本書は日本会議の刊行物や関係者(所属の政治家や言論人)の公表された言説の分析を通して、その思想と運動の特徴を抽出することに重きを置いており、ジャーナリストによる「内幕暴露」的な類書と一線を画している。
彼らの本質を「戦後」の全否定と戦時体制・国家神道体制への回帰とみなす視角は全面的に首肯しうるが、それに反駁するために、戦後の日本国憲法体制こそが「平和と繁栄」をもたらしたという認識を対置するのは、その「平和と繁栄」を享受できた世代・階層には通じても、そうではないバブル崩壊後に人格を形成した世代や繁栄から疎外された -
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ネタバレこれからを生きていく人へ贈るメッセージ。
日本の現状に危機感を抱いた内田樹が,中高生へとメッセージを送るために様々な人へ文章を書いてくれるよう依頼をした。統一感はあるような,ないような。しかし,皆,日本の現状に(というか,現政権に)危機感を覚えている人たちである。出版されたのは2016年7月なので,書かれたのはその少し前とすると,その後,イギリスEU離脱が国民投票で決まり,トランプ大統領が誕生し,また日本は重要法案を急いで通そうとしている。危機は加速しているのでは。
戦後の,戦後すぐの平和主義がそろそろ機能しなくなっている,そう感じる。軍隊を持たない,平和を守る国でありたい,でも,他国に攻 -
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目もくらむようなスーパー秀才エリートだった人たちが、声をそろえてもはや反対することができない空気があったと言っている。ドイツ語で日記を書けるような、言葉を自由自在にあやつることができるエリートたちが、一億人の運命を左右するような決めごとを、最後には言葉でなく空気を読んで身を委ねたと語っている。
福島の原発事故直後の危機を回避するための政府首脳の重大会議、40年以上も続いた政府の憲法解釈を内閣の形式的合議だけで大きく変えてしまった経緯、いずれも議事録が残っていない。それが僕たちの国の致命的な欠陥だ。これはもう病気と呼んでもさしつかえないと思う。かつて有名な政治学者はこれを壮大なる無責任体制と呼