深緑野分のレビュー一覧
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ネタバレあなたに伝えないといけないことがある。
連合国に占領されたベルリンで、アウグステはある人を探していた。お供は元俳優。アメリカ、ソビエト、ナチス、ユダヤ。戦争で家族を失い、自分を守るために人を殺した。「戦争」を終わらせるために、アウグステは行く。
アウグステが殺したというのはある程度わかるとして、その理由や方法が問題である。最後にジギの手紙があるのが救いのひとつ。アーリア人でありながら、ユダヤ人のように見える風貌を活かしてナチスのプロパガンダ映画に出ていたジギ。彼は自分かわいさのためにいつも逃げていた。最後の手紙でも迷っている。読者が一番共感できる人物ではないか。
皆脛に傷を持つ。戦争だか -
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『オーブランの少女』
オーブランの美しい庭園で、ここの女管理人の老婆が殺される。その死体の近くにいた犯人とおぼしき人物は、人というにはあまりにも朽ち果てた姿で立っていた。たまたま娘と二人でこの庭園を散歩している途中、その惨劇に遭遇した「わたし」は、とある事情で入手した昔の日記を読み、ここで当時起きた恐ろしい出来事と、それが引き起こしたこの殺人の真相を知る。
『仮面』
霧深く、凍えるような寒さのロンドンの深夜。
貧乏で冴えない風采の町医者が、患者である女性を殺害するシーンから始まる。その動機は、あどけなく可憐な幼い踊り子の少女を救うため。彼に人殺しを持ちかけた人物の本当の目的は。。。
『大雨 -
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料理をテーマにしたアンソロジー。
女性作家ばっかりかなと思ったけど、中村航さんは男性かな?色んなテイストの作品が詰まっていて、美味しくて嬉しいアンソロジーでした。
以下お気に入り作品。
柚木麻子「エルゴと不倫鮨」
不倫を嗜む男たちの隠れ家的鮨屋に、明らかに場違いなくたびれたおばさんが襲来する。そのおばさんはなぜかとても料理に詳しく、次々と美味しそうなオリジナル創作鮨をオーダーしはじめ…まさにタイトル通り注文の多い料理小説。ラストのオチも痛快でよい。
伊吹有喜「夏も近づく」
悠々自適な田舎暮らしをしている主人公が、兄から半ば押し付けられる形で甥っ子を預かることに。田舎の豊かな自然と触れ合うこ -
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重厚なストーリーと、細部までこだわった緻密な描写で定評のある深緑野分さんのデビュー作品集。深緑さんというと長編のイメージがあるけれど、本書はタイトル作品をはじめとする5編の短編小説で構成される。共通項は「少女」である。
大人でもなく、子どもでもない、どこか不安定な存在である少女。そして、大人の狡知と、子どもの残酷さを兼ね備えた存在である少女。本書は、時代も国も、はたまた住む世界さえ違う少女たちを描き、そのどれも高い物語性を帯びている。さすが深緑さん、デビュー作からしてこれか!
深緑さんの作品は、不思議とどこか海外文学のような雰囲気が漂う。考証を重ねて構築された世界観がそう感じさせるのか、ど -
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日本人が日本語で書いているはずなのに、
ディケンズの翻訳ものを読んでいるような
「高貴な」感じが漂っている。
舞台設定も、どことも分からぬ異国
(後に判明しますが)だったり、
大正時代(?)の女学校の寄宿舎だったりと、
今となっては誰も「正解」を知らない世界で...
中々の「異世界」感(^ ^;
でもその設定の中で、
揺れ動く登場人物の心象が丁寧に綴られており、
また日常の何気ない生活の一コマが
ありありと眼に浮かぶリアリティがあって(^ ^
ものすごい「名作感」がにじみ出ている(^ ^;
創元推理文庫だし、一応はミステリに分類しましたが、
「謎解き成分」は主ではない感じ。
何と言うか、 -
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「戦場のコックたち」を読んで、この本も読んでみたいと思った。
異なる時代、異なる場所を舞台にした“少女”を巡る5つの物語。
ひとつにテーマを決めて書くのはなかなか難しいと思うが、これが変幻自在。
どの話も捻りが利いているが、謎解き以前に、設定に合わせてガラリと変わる文体やせりふ回しでそれぞれの時代や舞台を醸し出す語り口に惹かれた。
オーブランの少女…「戦場のコックたち」を読んだ後なので、作者が第二次世界大戦下のヨーロッパについて何かしら書かねばならないという思いが強いことを改めて知れる。
仮面…時代の雰囲気といった点ではこの作品が一番。哀れな男とそれを利用する少女の強かさが際立つ。
大雨とト -