深緑野分のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
1945年7月のベルリンを舞台に、主人公の17歳の女性が、ソヴィエト側の命令を受け恩人の男性が毒殺された犯人を探す旅に出るというストーリーです。
章の合間に主人公の過去が振り返られ、徐々にナチスドイツの勢いによって一般人の主人公やその家族周辺の人たちが生き方や考え方を変えないと生きていけなくなっていく過程が描かれていきます。
一人ひとりの思想が統制される時代を経て、敗戦によって立場が逆転したり自分のしてしまったことに後悔を抱える人など、それぞれの生き方が戦争によって左右されていく様が、読んでいて辛く感じる場面もありました。
本編の流れは中盤以降一気に動いていきます。
それも私は驚きながら -
Posted by ブクログ
何故かノンフィクションと思い違いして購入した本作。普段小説はあまり読まないのでどうかなと思ったけど、案外ハマり、比較的分厚い本だがあっという間に読み終えた。
タイトルと表紙のイラストから、戦場メシ的なのほほんな話を想像していたが全く違った。しっかり戦争小説。ノルマンディー上陸作戦からベルリン崩落までのヨーロッパ戦線を、コック兵の視点から描く。
序盤は謎解き部分含め比較的穏やかな感じだが、物語が進むにつれ、謎解きの内容も次第に重くなっていく。ショッキングな出来事が起こると、もちろん重々しい感じになるが、それと同時に淡々と進む印象もあり、もしかすると戦場の兵士たちはこんな感じなのかなと想像させ -
Posted by ブクログ
ロシアによるウクライナ侵攻が勃発してしばらく経った時、書店で今読んで欲しい本として並べられていた本作。
物語はノルマンディー降下作戦で初陣を果たす合衆国陸軍のコック、19歳のティムと彼の仲間たちが戦地で起こる不可解な出来事を謎解いていくミステリー。表紙の絵とあらすじから、もっとポップなものかと思いきや、ずっしりしっかり重い戦争の物語でした。
前半は比較的ライトで、ティムを始めとするコックたちの日常や戦地での謎解きが楽しいと感じました。ただ後半に進み、戦況が悪化していくにつれ、ティム自身もどっぷり戦争に浸かっていってしまい、こちらも本当にキツかった。ある種ティムたちの成長と青春群像劇のようで -
少女にまつわる幻想的で耽美な作品集。こう書くと、同じような短編が並んでいるように思えますが、一つ一つのベクトルが違っていて飽きないし、どれも独自の世界観で深くおもしろいです。深緑野分さんは初めて読みましたが、いい作家に巡り会えたと感じました。
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購入済み
映像の世紀
読了したのは、もうずいぶん前の事ですが、数年後テレビ放送を見ていて、ある種の既視感を覚えました。
それは「NHKスペシャル映像の世紀」という番組でした。
ヒトラーやナチスドイツをフィーチャーした再放送でしたが、以前に観た記憶は無く不思議でした。
しかし番組が進むにつれ、それが漸く本書「ベルリンは晴れているか」の幾多の文章が紡ぎ出した舞台だという事に気づきました。
白黒フィルムが映し出す、ベルリンの悲惨な光景……
それは、本書を読んでいた時に頭の中で描いた世界と寸分違わぬ物でした。
おそらく深緑野分さんは、この映像をご覧になっていくつかの場面を執筆されたのでしょう。巻末の主要参考文献一覧に、この -
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帯には「最旬の作家たちが旅をテーマに競作したアンソロジー」と書かれている。この最旬の作家たち6人のうち5人が有名なSF作家だった。この様なアンソロジーには必ず読んだことがある作品が紛れ込んでいるもの。しかし、しょうがない。忘れている作品もあるだろうから、復習も兼ねてサラっと読んで行こう。SF作家が「旅」と言えば、時間旅行、宇宙旅行が定番、全くつまらないと言うことはないだろう。まさか、普通の旅行小説なのか?と、ワクワクしながら読むのも一興だ。さあ、個別にコメントしよう。
〇 国境の子/宮内悠介
講談社の短編集「国家を作った男」で既読。何回読んでも心に染み入る作品。主人公が大人しいだけに、その範 -
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豪華作家陣が想像力と食欲を刺激する、新世紀のごはん小説。
日常SFから遠未来SFまで8編を収録。
「人類と食」にまつわるSF小説アンソロジーです。
「食」は人間が生きるうえで欠かせない大切なもの。生きるのに不可欠……というだけでなく、いつしかそれは娯楽となり、美食を求め奇食を追い、飽食に飽き、ある種の歪さを孕んでいるようにも感じる昨今。食のポジティブな面だけではない部分に目を向けた一冊。
具体的に言えばディストピア飯やオルタナティブフードなどをテーマに扱ったものが多いです
美味しいものが大好きな私としては、こんな未来が来ないことを祈るばかり。
個人的に好きだった話は、『E・ルイスがいた