あらすじ
1944年6月、ノルマンディー降下作戦が僕らの初陣だった。特技兵(コック)でも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ。新兵ティムは、冷静沈着なリーダーのエドら同年代の兵士たちとともに過酷なヨーロッパ戦線を戦い抜く中、たびたび戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。忽然と消え失せた600箱の粉末卵の謎、オランダの民家で起きた夫婦怪死事件、塹壕戦の最中に聞こえる謎の怪音――常に死と隣あわせの状況で、若き兵士たちは気晴らしのため謎解きに興じるが。戦場の「日常の謎」を連作形式で描き、読書人の絶賛を浴びた著者初の長編ミステリ。【目次】プロローグ/第一章 ノルマンディー降下作戦/第二章 軍隊は胃袋で行進する/第三章 ミソサザイと鷲/第四章 幽霊たち/第五章 戦いの終わり/エピローグ/主要参考文献ほか/解説=杉江松恋
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Posted by ブクログ
アメリカ軍の若い兵士の視点から見た第二次世界大戦。
第二次世界大戦の話というと、日本の視点からの話を目にすることが多いので、アメリカの視点、しかもヨーロッパ戦線というのが新鮮でした。
アメリカ軍の後方基地様子では、こりゃ日本は負けるわと思うほど余裕のある設備や物資の数々がありました。
ヨーロッパにも焼夷弾を使った空襲があったのだということを知りました…あたり前だけど、焼け野原になった街は日本だけではなかったのだと改めて意識しました。一般人同士の疑心暗鬼や飢餓…国が違っても戦争中の様子はあまり変わらないのだと思いました。
軍の最前線で戦っているのは20歳前後の若い兵士ばかり…やっぱり戦争は嫌ですね…
ティム達が心に傷を負いながらも身近な仲間や戦争で傷ついた人々を大事にするための行動が素敵でした。
敵兵に対する葛藤もきっと末端兵士はどこの国もこんな感じなのだろうなとリアルに感じました。
Posted by ブクログ
タイトルから、戦火をくぐり抜け壮絶な環境で料理をする主人公の想像をしていたが、裏表紙および本文扉で「日常ミステリ」を描いたものだと知り、一体どんな話になるのだろうと期待半分、怖さ半分で読み始めた。
一章ごとにひとつの謎が提示されそれを解いていく形となるが、なるほど確かに戦場という非日常にありながらも、戦場という独自の環境ゆえの「日常の謎」が描かれており興味深く読み進めることができた。
一方で塹壕などの過酷な環境や次々といなくなっていく友人たちなど、戦場の悲惨さも、しかし読者の心の負担になりすぎない形ではありながらしっかりと描写されており、エピローグでは終戦後に残った友人たちで集まり過去を振り返る描写から平和の重さも噛みしめることができ、大変厚みのある作品であった。
途中で「これからどうなってしまうんだ」と思わされるストーリー展開もありハラハラさせられもし、内容が内容だけに「楽しい」というと語弊があるのだが、読み応えのある書籍であった。
Posted by ブクログ
17歳の少年が志願して戦争に行く
なぜ? と思いながら
彼の傍で共に進んでいた
戦場で 後方で
多くの仲間と 数人の友と
彼の想いに共感し反発もしながら
悔しいときは怒り 悲しいときは泣きながら
なぜ? そんなふうに思えるの?
そう思うのが彼なのだから とも思う
やっぱり 戦争は いやだね !
Posted by ブクログ
第二次世界大戦中、アメリカ軍の志願兵で特技兵(コック)となったティムのお話
以下、公式のあらすじ
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1944年6月、ノルマンディー上陸作戦が僕らの初陣だった。特技兵(コック)でも銃は持つが、主な武器はナイフとフライパンだ。新兵ティムは、冷静沈着なリーダーのエド、お調子者のディエゴ、調達の名人ライナスらとともに、度々戦場や基地で奇妙な事件に遭遇する。不思議な謎を見事に解き明かすのは、普段はおとなしいエドだった。忽然と消え失せた600箱の粉末卵の謎、オランダの民家で起きた夫婦怪死事件など、戦場の「日常の謎」を連作形式で描く、青春ミステリ長編。
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あらすじには日常の謎とあるし、実際に最初は「同僚が何故もう不要なはずのパラシュートを集めているのか?」という謎だけれども
戦地を転々としていく中でどんどんきな臭くなってくる
そして、最後に伏線回収される謎と、その解決法
冒頭からしてノルマンディー上陸作戦なので危ういと思ったけど
悲惨さが有名な方ではないビーチだった
そして最初の謎は前述の通り「同僚が何故もう不要なはずのパラシュートを集めているのか?」という謎
いきなり死体が出てくるし、決して安穏としていられる状況ではないにの何故か牧歌的な雰囲気も感じてしまう
しかし、物語が進むにつれて謎の深刻度が増していき
戦争があらゆる人の心を蝕むものだと思い知らされる
パラシュートの謎の他、大量の糧食が消えた謎、自殺した夫婦の手が組まれていた謎、戦場で聞こえる刺すような音の謎、そしてとある人物の来歴の謎
序盤はあれほど呑気だったティムも、終盤には敵国に対する見方が変わってくる
人の死だけではない、戦争が起こす悲惨さ
そりゃぁ荒みもするわなぁ
元々はアメリカの雑貨店の息子で、気の優しいむしろ気の弱い方だったであろうにね
あらすじを読んで、日常の謎と安易に考えてしまっていた自分が情けなく思う
確かに謎解きの部分は面白いのだけれども、その背景には戦場の悲惨さや理不尽などだし
そして謎が解決されたとしても爽快感を得られるものではない
最後の謎に関しては、すべてではないにしろ違和感を持っていたので何となく予感はしていた
そして、その解決のために、これまでに築き上げた友たちやその功績によって成し遂げられる様は、戦場でも捨てたものではない人間の営みが感じられる
エピローグでは戦場からの帰還が描かれているけれども
そこには生き延びた喜びではなく、生き延びてしまったという若干の罪悪感や、元々暮らしていた土地と変わってしまった自分との乖離
家族との再会を喜びながらも、心の底からのものではないものがある
そして、さらに後年のエピソード
亡くなった人はもう帰ってこないけれども、救いがあるとすれば、生き残った人たちはまた出会う事ができるという事でしょうねぇ
途中で悲惨な描写や展開がある戦勝小説だけれども
読後感はそんなに悪いものではない
まぁ、何のしこりもないとは言わないけど、悪くはない結末だと思う
Posted by ブクログ
子供のころからレシピ帖を眺めるのが大好きで、自宅の雑貨屋の店先で売るお惣菜が大人気の祖母の手料理で育ったティモシー。だけど、世界恐慌になると、食材は貧しくなり、父親は店を畳まざるを得なくなった。
第二次世界大戦にアメリカが参戦し、募兵ポスターが貼られるとティモシーは多くの若者と同様「給与」ともし自分が戦死した場合の「家族への見舞金」に惹かれて志願した。
しかし、訓練期間に早くも自分が軍人に向いていないことを悟ったティモシーは「コック兵増員」の貼紙を見て、志願した。コック兵、衛生兵、主計兵、通信兵など後方支援担当の「特技兵」は一般の兵から疎んじられ、軽んじられたが、彼らは気の合う仲間となった。
コックと言っても戦闘になれば銃を取り、普通の兵と一緒に前線で戦わねばならなかった。長い訓練を終えて、待ち侘びた戦場に赴いた。
最初の赴任地はフランスのノルマンディー地方。パラシュートにより、なんとか無事にエド達は上陸した(ノルマンディー降下作戦)が、敵襲に合って上陸に失敗した仲間は何千人もいた。そして、上陸したそのフランスの村もナチスにより凄惨な姿になっていた。それでも、連合軍の居留地として屋敷を貸してくれたフランス人がいて、そこにキッチンや野戦病院を設営していたが、敵襲に会い、収容されていた負傷者もティモシーの仲間も地元の住民も沢山死んだ。
オランダの国道とライン川を渡る橋を確保し、ドイツ入りするという「マーケット作戦」でも上層部の目論見は外れて苦戦を強いられた。そして陣地として家を貸してくれた家族の周辺にも密告されてナチスに捕まったユダヤ人や反ナチ宣言をして殺されたオランダ人がいたこと、更には「密告者」に対して住民たちは見せしめのように丸坊主にして罰を与えたという悲しい状況を知ることになった。
ベルギーのバストーニュでは雪の中何日と補給が途絶え、飢えと寒さの中での攻防だった。敵陣を全滅させる戦闘に加わった仲間は精神を病んでしまった。
ティモシーは分からなくなった。何のために命を賭し、心をすり減らして戦っているのか。「ドイツ兵を倒し、世界の平和を取り戻すため」という模範解答は心の中に用意できていたが、仲間や現地の市民が次々と虚しく命を落とす中で戦い続けているのは「一度呑まれた流れが速すぎて逆らえない」というだけだった。
敵も味方も区別がつきにくい真っ白な雪景色の中、そして生者が限りなく死者に近寄っていく極限状態の中、ティモシーは「早く家に帰って祖母の美味しいご飯が食べたい」と思った。仲間にも待っている家族がいるだろうと思い、話を聞いてみると、アル中の父親が亡くなってから家族はいない者や私生児として生まれて以来「家族」として認めてもらってない者など、そもそも帰るところさえない戦友がいてショックを受けた。人種(黒人、プエルトリコ人、ユダヤ人など)によっても背景も軍隊の中での扱いも違っていたのが現実だった。そういう、平時なら友達になれていたかどうかも分からない仲間と「家族」のような絆で結ばれていた。それはかけがえのないことだったが、戦争という状況はその友情で結ばれた「家族」をも引き裂いていった。
他のブク友さんも書かれていたが、私も初めは「南極料理人」のような料理中心の小説だと思っていたが、「料理」といえるものを作れるような状況ではない中で、何とか自分の団の仲間たちの胃袋を少しでも満たす策を考えながら敵と戦い、仲間を助けて生き延びる過酷な小説だった。そんな中で、ちょっとしたミステリーが起こり…例えば、使った後のパラシュートを大量に回収している仲間がいたり、粉末卵が大量に無くなったり、幽霊騒ぎが起こったり…それをコック仲間のリーダーのエドを中心に解決していく。そこからその頃の社会情勢や人種差別や戦争が人間に与えた影響など深い問題が見えてきた。
第二次世界大戦のことは日本が関わった太平洋戦争のことも殆ど知らない。ヨーロッパ側のことはホロコーストのことを少し知っているくらいだったが、フランスでもオランダでもベルギーでもドイツでも多数の住民を巻き込んだ悲惨な戦争であったと今さら知った。そしてドイツ側、連合国側それぞれの兵士が「軍人」になったのも必ずしも愛国心からばかりではない複雑な事情があったということも知った。
ジャーナリストかと思うくらい当時の戦争や社会状況のことを調べて、本当にその当時のティモシーの目でその時体験していた戦争を実況中継しているような(過去形ではあったが)臨場感のある小説だった。時代も国も自分とは異なる設定をここまで書き尽くせる筆力に感服!
チラッと出てきた「ドクター・ブロッコリー」の話。「この戦争は食糧をめぐる戦いだ。ドイツ第三帝国を広めるための生存圏拡大。肥沃な国土を持つウクライナへ侵攻し、略奪したのは食糧事情によるものだという」に全ての悲劇の元が語られている。元は「飢え」を防ぐための生存圏拡大に人種だとか正義だとかの大義名分がくっつき、何のための争いか分からない悲劇が拡大した。戦争をせずに、食べて生きていく努力が本当はとても大切なのだと思った。
Posted by ブクログ
南極料理人みたいな感じで戦場で供給される物資をなんとか算段つけてお料理するユーモア系の小説かと思ったら全然違った。
戦場にふとあらわれる小さな謎を解きながら、軽快なおしゃべりとユーモアも交えながら、深まりゆく戦況につれこのお話のテーマがゆっくりと姿を表す。
戦争というものについて。
失われた者は2度と戻らないということ。
人生について。
失われた信頼は2度と元通りにはならないということ。
読み始めてみて、どうみても翻訳小説なんだけど、あれ?作者の名前日本人じゃなかった?翻訳者の名前だっけ?と表紙を二度見しました。
ちょっとこの重厚さと背景描写の丁寧さは日本人の書いた小説とは信じられない。
Posted by ブクログ
臨場感あふれる描写、詳細な書き込み、魅力的なキャラクター、ミステリとしての面白さ。
これらを兼ね備えつつも、決して単なるエンタメ小説ではないと感じました。
本作はノルマンディー上陸作戦に始まり、第二次世界大戦のヨーロッパを進軍するアメリカ陸軍のコック兵、ティムの視点で進みます。
次第に語られる登場人物たちのバックグラウンド、主人公たちの過酷な体験、戦場で目にする凄惨な光景。
読み進めていくとやがて、戦争はなぜ絶えないのか、人間はなぜ憎悪し合うのかという命題に突き当たります。
非常に重厚な一冊でした。
Posted by ブクログ
何故かノンフィクションと思い違いして購入した本作。普段小説はあまり読まないのでどうかなと思ったけど、案外ハマり、比較的分厚い本だがあっという間に読み終えた。
タイトルと表紙のイラストから、戦場メシ的なのほほんな話を想像していたが全く違った。しっかり戦争小説。ノルマンディー上陸作戦からベルリン崩落までのヨーロッパ戦線を、コック兵の視点から描く。
序盤は謎解き部分含め比較的穏やかな感じだが、物語が進むにつれ、謎解きの内容も次第に重くなっていく。ショッキングな出来事が起こると、もちろん重々しい感じになるが、それと同時に淡々と進む印象もあり、もしかすると戦場の兵士たちはこんな感じなのかなと想像させられた。凄惨な出来事に傷を負いつつも、消化する暇もなく進まざるを得ず、次第に心が病んでいくような描写が非常に上手いと感じた。
それから、ドイツ兵について。ナチスの行った蛮行については擁護する余地はないが、ドイツ兵の中にも戦いたくなかった人、死にたくなかった人は絶対にいたであろうし、その点では敵味方など関係なく、結局みんな人間なんだと改めて思わせられた。その内容も上手く盛り込んであると思う。
この物語は完全なハッピーエンドとは言えないと思うが、救われる部分もあったので、読後感は悪くなく、なんだか不思議な感じがした。切なさもある。
Posted by ブクログ
戦争の凄惨さだけでなく、兵士として従軍した人の精神の変化も感じられて辛くなった。
でも、今読むことに意味のある本だと思ったし、読んでよかった。
とりあえず今はクラムチャウダーが食べたい。
解説に感じたことがまとまっていた。
Posted by ブクログ
2019/8/11 喜久屋書店北神戸店にて購入。
2025/5/20〜5/31
2016年度のミステリランキングを賑わした本作。ようやく読むことができた。ノルマンディー上陸作戦からドイツの降伏まで、コックとして兵役についたキッドことティモシーを主人公に、戦争の悲惨さ、兵士の複雑な感情などを描きながら、周辺で起こる不思議な事件を、キッドの親友エドが解き明かす。
単なる謎解きに収まらず、重厚なテーマをぐいぐい読ませる。エピローグがあることによって作品の厚みがさらに増している。名作。
Posted by ブクログ
タイトルが気になり、手に取る。
ミステリー要素を絡めた戦争ロードムービー形式の作品。
ミステリー要素は薄いが、終始作品の軸にある。
戦争が一人の市民にどれだけ深い傷をつけるのか、青年は経験からいかに学ぶのか、長編の中で語られていた。
欧州戦線や軍隊についての説明が、やや冗長なのが気になる。
一人の青年の成長譚として読んだ。
Posted by ブクログ
19歳という若さで戦場のコック、ティム。彼が経験し、目にしてきたものは。
作者の戦争に対する表現はとても胸に刺さるものがあった。一部抜粋すると。
「人間は忘れる生き物だ。やがて明らかな過ちさえ正当化する。誰かが勝てば誰かが負け、自由のために戦う者を、別の自由のために戦う者が潰し、そうして憎しみは連鎖していく」
それでも平和であることを祈るしかない。
Posted by ブクログ
食べることと料理が好きなティムが特技兵(コック)として戦場に出る物語。
料理を提供し、仲間と過ごし、不可解な謎を解き、時には敵を殺す。
死はいつ訪れるかわからないが、この瞬間にも死ぬかもしれない戦場は現代人からしたら遠い話のようで想像できなくはない現実だなと思う。
抗えないことに対抗するのではなく、
抗えないことの中で必死に生き(そして染まっていく)、非日常を日常に昇華する兵士たちは、帰還後に見慣れていたはずの生活に違和感を覚えるのは当然なのか。
何というのか、言語化できない思いが残る小説だった。
Posted by ブクログ
美味しい食事でも紹介してくれるような本なのかと思ったら...
浅はかな思いで読み始めた自分を一喝したい。
戦禍の中で起こるちょっとした謎をコック仲間と一緒に解きながら話が進んでいく。
戦争は、なんでも奪っていってしまう。
家族も家も居場所も思い出すらも。
戦い、引き金を引くということは
誰かの家族を奪うこと。
それに気づいた時の気持ちなんて、私には一生わからない。
読んでいて凄く胸が苦しくなる話だった。
それでも、希望を見出せる結末もいくつかあってよかった。
胸にグッと来た文章
「家族が笑っていられるのは、レンズの先にはお前がいると知っているからだ。お前がこの世からいなくなったら、永遠にこんな写真は撮れないだろう。だから生きねば。」
Posted by ブクログ
戦争は日常の隣にある。
17歳のアメリカの青年が、まるでイベントにでも参加するかのように志願し、戦争へ赴く。
昨日まで、横にいた仲間が死んでいく。
昨日まで、ただ普通に生活していただけの人が死んでいく。
現実の戦争が、かの国で起きている。
戦争が無くならないことを知ってしまった今、読み続けるのは辛かった。
今この瞬間にも、ティムたちのような思いをしている人々がいるのだと思うと、胸が苦しい。
Posted by ブクログ
表紙はポップで可愛らしい感じだけど、その名の通り戦争のお話。ただの料理本だと思ったら痛い目をみる。料理本にしては出てくる料理がどれもこれも不味そう。過激な表現も沢山あるのでそういうのが苦手な方にはおすすめしない。
第二次世界大戦の様子がアメリカ兵の視点で描かれている。これを日本人の作家が考えてるっていうのに驚き。
兵隊の戦争に対する向き合い方や思いは、みんなやりたくないとか、行きたくないとか、そういうものだと思っていたけど、これを読んでから覆った。実際に戦場にいた人にしか分からない意外な考え方を知れる。
Posted by ブクログ
一つ前に読んだ物よりもこちらの方が良く思えた。映画のように映像が立ち上がってくるようだった。重く苦しい感情が揺さぶられたし、気分良く終わる話ではないけど、物語として完成されていると思う。
Posted by ブクログ
第二次世界大戦、アメリカ兵として志願するティムは、味音痴のエドと知り合い技術兵(コック)に所属することになる。戦線に出て兵士として活動しながら、仲間の腹を満たすコックとしても活動する。見下されながらも、祖母のレシピをお守りにして仲間と過ごしていた。
ノルマンディー作戦や、名前は忘れたけど失敗に終わった壮絶な作戦を実行していたメンツだということにトリハダが立つ。その中で少しホッとするようなミステリーを解決することがティムの心の拠り所だった(実際に答えを出してるのはエドだが)。
おかしなことに、戦争が結びつけてくれた仲間の絆を感じられた。明日(ていうか今この瞬間)命を落とすかもしれないのに、一緒に過ごしている。極限の中のつながりは早々切れないし、あたたかく残るものもあれば苦々しく引っ掻き傷のようになるものもある。
ティムの祖母は本当に大事なことを孫に教えて育ててきた。エドもまた本当に大事なことを知って仲間と接してきた。言葉として出てしまったものは取り返しがつかない。言葉を、相手を考えながら私も生きていきたいな、としんみり最後は思ってしまった。
Posted by ブクログ
身内に勧められて読みましたが、本のタイトルから想像するお話とは少し違いました。本書にも描かれているように人間の憎悪は連鎖し止まることはなく、同じことを何度も繰り返すのが人間の性であるのだと思います。
Posted by ブクログ
戦争とコック。あまり見慣れない言葉の組み合わせに惹かれて購入しました。コックといえども現場は戦場。激しい戦争の光景に、胸が痛む場面も多いですが、戦争を他とは異なる視点から知れる一冊だと思います。
Posted by ブクログ
戦時中の謎を追いかける若者たち、とはいえ謎自体は小さなものではあるが隊の行方を左右する大事なもの。そこに触れながら成長し、疲弊していく兵隊たちがリアルに感じられる
Posted by ブクログ
第一次世界大戦、ノルマンディに上陸したアメリカ兵の2年間を描いた物語。
表紙とタイトルはほのぼのしているし、17、8歳くらいののんびりした男の子が一人称で語る物語なので、最初は牧歌的ですらある。冒険に行くみたいに呑気だ。
しかしやはり内容が内容なので、どんどんハードになっていく。
料理もレーション(糧食、野戦で食べる缶詰など保存がきくもの)ばかりで、美味しそうじゃない。主人公はコックさんだが、彼が腕を振るうシーンは少ない。
最初は謎解きがいくつかあり、それを通して読者も登場人物に親しみが湧くのだか、すっかり愛着の湧いた頃に、衝撃が襲ってくる。喪失感半端ない。
おっとりして暖かな性格の彼がこの戦争に染まっていくところがリアルで悲しい。
戦争体験者のPTSDなどにも触れられていたが、希望のもてるエピローグでほっとした。
それにしても「ベルリンは晴れていたか」でも感じたが、作者の風景を再現する筆力がすごい。日本人でまだ若い作者が、まるで当時の外国を見てきたかのように再現できるのは才能もあるのだろうけど、膨大な調査力もあるのかなと思った。
Posted by ブクログ
戦場のコックたち
**著者**: 深緑野分
1944年6月、ノルマンディー降下作戦**から始まるこの物語は、特技兵(コック)として戦場に立つ新兵ティムと同年代の兵士たちの過酷なヨーロッパ戦線での経験を描いています。冷静沈着なリーダーのエドとともに、彼らは戦場や基地で奇妙な事件に遭遇し、時には謎解きに興じます。
ティムたちは戦場で、忽然と消えた600箱の粉末卵の謎、オランダの民家で起きた夫婦怪死事件、塹壕戦の最中に聞こえる謎の怪音など、様々な不可解な出来事に直面します。死と隣り合わせの状況で、若き兵士たちは戦場の「日常の謎」を解き明かすことで気晴らしを見つけます。
戦場という過酷な背景の中で、登場人物たちの人間らしさや仲間思いの姿が描かれ、心温まるシーンが多く含まれています。その一方で、戦争の悲惨さをリアルに描写し、読者に歴史の重みを伝えます。深緑野分氏の初の長編ミステリとして、戦争とミステリの融合が見事に表現された作品です。
※出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』
第二次世界大戦(だいにじせかいたいせん、英: World War II、略称:WWII)は、1939年(昭和14年)9月1日から1945年(昭和20年)9月2日[35]まで約6年にわたって続いたドイツ・イタリア・日本などの日独伊三国同盟を中心とする枢軸国陣営と、イギリス・フランス・中華民国・アメリカ・ソビエト連邦などを中心とする連合国陣営との間で戦われた戦争である。また、中立国も存在した。最終的には連合国陣営の勝利に終わったが、第一次世界大戦以来の世界大戦となり、人類史上最大の死傷者を生んだ。
Posted by ブクログ
前情報なしで読みました。
コックとタイトルにもあったように、料理系の小説かと思いましたが、戦争とその中の友情がメインでした
戦争。ナチスとの戦いを書いていて、仲間が死んでいく辛さも生と死が隣り合わせの状況で最後らへんは涙が止まりませんでした。
ただ、推理小説なのか、戦争小説なのか、料理小説なのか。曖昧な感じでした。
Posted by ブクログ
戦争物でもあまり取り上げられることのない特技兵(コック)を中心とした日常系ミステリー。しかしながら戦場は日常からかけ離れた世界であり、、、前作「オーブランの少女」で見せた、そういった非日常の世界を目の前に現出させる筆力が十分に生かされている。過酷な戦場での重い話を、どうでも良い(失礼)謎解きが推進力となってグイグイと読み進めていく。面白い組み合わせだ。
戦時下の裏切り、報復、処刑、慰安婦、強姦と言った暗部はドライに書きあらわされるのだが、人種差別については丁寧に語られており、作者のこだわりが感じられた。