あらすじ
比類なく美しい庭園オーブランの女管理人が殺害された。犯人は狂気に冒された謎の老婆で、犯行動機もわからぬうちに、次いで管理人の妹が自ら命を絶つ。彼女の日記を手にした「私」は、オーブランに秘められた恐ろしい過去を知る……楽園崩壊に隠された驚愕の真相とは。第7回ミステリーズ!新人賞の佳作となった表題作の他、醜い姉と美しい妹を巡るヴィクトリア朝犯罪譚「仮面」、昭和初期の女学生たちに兆した淡い想いの意外な顛末を綴る「片想い」など、異なる場所、異なる時代を舞台に“少女”という謎(ミステリ)を描き上げた、瞠目のデビュー短編集。/解説=瀧井朝世
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Posted by ブクログ
海外の作品かなと思ってしまうくらい異国の描写がうまいです。かと思えば明治の文豪の作品みたいなのもあるし…ミステリーの内容も短編ながらもしっかりと組み立てられてます。
Posted by ブクログ
現在、ドはまり中の深緑野分。様々な書評を見ると、単行本デビューとなる本書「オーブランの少女」を推す声が多数見られたので読みたくなった。だいぶ出版が古くて書店では入手できなかったので、困った時のBOOKOFFで探したところ・・・ありました。
深緑野分のことについては殆ど何も知らないまま作品にのめり込んだので、巻末の瀧井朝世の解説は本当に参考になった。やはりこの本の位置づけはかなり重要なので、この時点で読んでおいて良かった。本としての全体像は実に多岐に亘っており、作者の文章構成力の高さを目の当たりにした。どんなジャンルの作品でも書ける実力が確実にある。本書は短編集なので、一つの作品を読み終える度に、次の作品では私をどの様な世界に連れて行ってくれるのかワクワクしながら作品を読み始めることができる。さて、個別に感想を述べたい。
〇 オーブランの少女
最初は普通の秘密の花園的な世界から入るのだが、急に不穏な世界に引きずり込まれてしまう。この良くあるパターンに知らず知らずのうち引き込まれ、結果として初めに戻る。
〇 仮面
もうアトキンソンが可哀そう過ぎる。医者になるくらい頭がいいはずなのだが、小娘に簡単に騙される。医者に必要な記憶力をいくら持っていても、頭の回転が悪いのではいずれ滅びる。まあ、結果的には嵌められて犯罪者となった訳だが、自分の能力をきちんと把握していないとこうなってしまうのだな。
〇 大雨とトマト
店主、いるよね、こんなオヤジ。でも、オヤジの色っぽい話で終わるのかと思ったら、よもやの募金箱の話で締め括るとは、これもどんでん返しの一種か?募金箱から金を抜いた犯人は、読者は判った。しかし、オヤジや妻は犯人を知らないまま今後も生きていく。オヤジが写真について息子に聞いても、普通なら息子がしらばっくれて終了。
〇 片思い
岩様は江戸時代だったらお岩さんか。でも名前の方が薫子さんとはね。あまりにもギャップが大き過ぎる。お岩さんだと、あまり良いイメージではない。最初は暗くて寡黙だったが、物語の後半では一転して迫力のある台詞が続く。さぞかし水野環ならぬ杉浦友子さんは怖かったでしょうね。題名から考えてもてっきりGLの話かと思ったのだが、さすがのどんでん返しが後半を盛り上げてくれた。
〇 氷の皇国
ありの~ままに~♪の世界の話かと思ったら、なんと、こてこてのミステリー、謎解きミステリーとは全く予想できなかった。しかし、杉下右京ばりの皇后陛下の推理で一件落着となるとは・・・もう素晴らしすぎて感動です。後日談も痛快痛快、満足の極みです。
深緑野分も麻薬・覚醒剤の様な作家。最近の私はいろいろな薬に手を出している。彩瀬まる、村山早紀、そして深緑野分。誰が大麻か、コカインか、LSDかは言及しないが、とにかく禁断症状を抑えるのに心底苦労している。うっかり連続摂取するものなら、知らないうちに長時間読み続けて睡眠時間が削られる・・・やっぱり麻薬・覚醒剤じゃないか!最近ではちょっとしたきっかけで伊坂幸太郎も使ってしまった。一時期やめていたのに・・・脱法ドラッグか?依存症って怖いですよね。もう抜け出せない。誰か助けて。おねがい。
少女にまつわる幻想的で耽美な作品集。こう書くと、同じような短編が並んでいるように思えますが、一つ一つのベクトルが違っていて飽きないし、どれも独自の世界観で深くおもしろいです。深緑野分さんは初めて読みましたが、いい作家に巡り会えたと感じました。
Posted by ブクログ
オーブランの少女(表題作)を含めた短編集です
オーブランの少女は描写が美しくてそれでいて残酷で最後までストーリーに意外性があるのに全体として纏まっているというかなりハイレベルな作品でした
これがデビュー作とは、、、才能があるのでしょうね。
とくに"オーブランの少女"と"氷の皇国"は美しい描写と残酷さ、起承転結の巧さが光っていました。
Posted by ブクログ
【オーブランの少女】
大人たちの都合で少女たちは集められ
大人たちの都合で先行きを決められる
抗った二人の少女は……
人間 このおぞましい生き物
他者の命を奪った者には厳罰を与えるのに
戦で敵の命を奪う者は褒められる
何という矛盾
【仮面】
人は皆仮面を付けているのかもしれない
【大雨とトマト】
外は嵐、日曜日のレストランでの出来事
店主である父親の千々に乱れる想いがちょっと痛々しい
少女はどうするのだろう
【片想い】
高等女学校の寄宿舎、同室の二人の少女の想いと想いが若くて青くて良いなあ
【氷の皇国】
小さな漁村、網にかかったのは人の亡骸
二人の少女におきた出来事が
とても とても 悲しい……
Posted by ブクログ
短編集ながら読み応えがあり、楽しめた。
表題作は言わずもがな、「大雨とトマト」「氷の皇国」がとても印象的。訳あって長く積読本化しており、重い腰を上げたつもりがページを捲る手が止まらなかった。
表題作は思いつきで逆から読んでみたのだが、これがストーリー的にも思いのほか効果的で、最終的に「こういうことだったのか」と腹落ちした。
解説もとても良いのでおすすめです。
Posted by ブクログ
ずっと気にはなっていたけど、深緑さんの作品は初めて読みました。短編集ですが共通点は「少女」が主役。個人的には最初と最後の「オーブランの少女」と「氷の皇国」が印象に残りました。前者はラストがとても怖く、後者は切ないながらも穏やかな時間を感じる作品。どれもとても面白かったです。
Posted by ブクログ
深緑先生のデビュー短編集。
まずそのバラエティ豊かさに驚かされる。第2次世界大戦下のフランス、ヴィクトリア朝時代のイギリス、昭和初期のの女学校の寄宿舎、中世北欧の辺境地と舞台も時代も自由自在だ。飽きることなく読ませていただきました。以下、特に印象に残った感想を
「オーブランの少女」
表題作。非常に映像喚起力の高い文章。
緑の庭園、白い館、マロニエ並木、キングサリの藤棚、白いスカート、青い瞳、赤いリボン、軋む歩行具。
なぜ海外が舞台?と思いましたが、なるほどこの残酷な世界はフランス郊外がしっくりきます。
そして残酷な世界には少女達がぴったりなのです。
「仮面」
本当に最終番になってから、ただ醜いとされてたアミラの秘密が記述されます。アミラとは決して分かり合えない隔たりを感じました。
「片想い」
昭和初期の女学校の寄宿舎が舞台。日本が舞台でも変わらず面白かったです。
「氷の皇国」
架空の国の辺境地。時代はわからないけど、多分中世の北欧がモデル(トナカイが住む、白夜と極夜が訪れる地)。最も読みごたえがありました。
Posted by ブクログ
本書収録の「オーブランの少女」で2010年に第7回ミステリーズ!新人賞で佳作に入選した深緑野分が2013年に発表した短編集「オーブランの少女」の文庫版。少女をテーマにした「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」の5作品を収録。時代や場所を変えて描かれる少女たちは妖しい魅力に溢れています。基本はミステリーですが、作品ごとにホラー、ダークファンタジー、エスなど色々な要素が混じりあい独特の雰囲気を漂わせています。
Posted by ブクログ
ミステリーも短編小説も読んだことがなかったが、全て面白かった。
これがミステリーの醍醐味なのだと思うが、最初に読んだ時は全く気にも留めなかった一文が、最後、謎が解決した後で伏線だったと気づいた時の爽快感が素晴らしかった。
短編だからすぐに二度目を読み始めてどこに伏線が張られていたのか確認することができたのも良かった。
ミステリー沼第一歩としてはとても良い作品だったと思う。
Posted by ブクログ
「少女」をモチーフとした短編集。イギリスの、フランスの、北国の、大正時代のそれぞれの場所の描写も雰囲気が目に浮かぶし、ちょっとしたミステリーも粒が揃ってて良い感じ。初の深緑野分の本だったから最初の印象が強いのかな、表題作が一番好み。
Posted by ブクログ
世界観の作り込みが見事で短編集とは思えないくらい濃かった。
読み終わった瞬間どっと疲れるほど物語に引き込まれた。
愛らしい少女はどこにもいない。
おぞましいのに読む手が止まらない表題作。
残酷で美しい「氷の皇国」。
ミステリー関係なく、少女小説として読んで欲しいくらい。
Posted by ブクログ
『オーブランの少女』
オーブランの美しい庭園で、ここの女管理人の老婆が殺される。その死体の近くにいた犯人とおぼしき人物は、人というにはあまりにも朽ち果てた姿で立っていた。たまたま娘と二人でこの庭園を散歩している途中、その惨劇に遭遇した「わたし」は、とある事情で入手した昔の日記を読み、ここで当時起きた恐ろしい出来事と、それが引き起こしたこの殺人の真相を知る。
『仮面』
霧深く、凍えるような寒さのロンドンの深夜。
貧乏で冴えない風采の町医者が、患者である女性を殺害するシーンから始まる。その動機は、あどけなく可憐な幼い踊り子の少女を救うため。彼に人殺しを持ちかけた人物の本当の目的は。。。
『大雨とトマト』
外は大雨。お客は常連の男性ひとり。そろそろ店を閉めたいオーナーだが、そこに一人の若い女性が入ってくる。彼女が注文したものは、トマトだけのサラダ。なぜ彼女はこんな大雨の中、わざわざこの店に入り、そしてトマトだけをひたすら食べ続けているのか。
彼女の顔をどこかで見たことがあるように思えてきたオーナーは、若かりし頃、一度だけ関係を持った美しい女性にどことなく面影が似ていると感じ始める。
『片思い』
昭和の香りが色濃く漂う作品。
物語の舞台は女子学生寮。一方は美しくみんなの憧れのお嬢様、もう一方はがっしりした体格の活発な女の子。正反対の見た目と性格の二人は、そのおかげなのか仲良くやっていた。あることがきっかけで、お嬢様の秘密が露見するまでは。
クラシカルなタイトルがいい。恐らく誰しもが一度ならずとも抱くこの思いが甘酸っぱい香りを放つのは、少年と少女のときだけなのかもしれないなと思う。
『氷の皇国』
イメージとしては極寒のロシア(行ったことないけど)。
ユヌースクの皇帝は、自国の民に対して非常に冷徹で残酷だ。
あるとき、彼の跡継ぎである息子が城内で毒殺される。食事後にすぐに死んだため、配膳係の二人の少女が疑われ、無実の罪を着せられる。
二人を待つのは、公衆の眼にさらされての死刑だ。
皇帝の息子を殺害したのは誰なのか。
犯人だといきなり告白した、少女の父親が真犯人なのだろうか。それとも、賢く美しい皇帝の娘が弟を殺害したのであろうか。それとも犯行を否定している少女のうち、どちらかが犯行に及んだのか。
その動機は切な過ぎるほど自分勝手で許しがたいものだったのだが。。。
ファンタジーとミステリーがほどよく溶け合う、味わい深い物語となった。
短編にしては長いのかもしれないが、その長さがほどよくいい。
まるで海外の小説のような雰囲気を持つ5つの短編。本のタイトルにもなっている『オーブランの少女』に出てくるサナトリウムのような施設は、以前読んだカズオ•イシグロの『わたしを離さないで』を彷彿とさせた。
くすんだ鈍い色を放つ味わい深い陶器のような、そんな感じの本だと思った。
Posted by ブクログ
「未知のものを怖ろしく思うとき、それを映しているのは自分の眼だということを忘れてはならない」ーーというようなことを自分に言い聞かせていなければ、無邪気に陶酔するか、恐怖でこころを凍りつかせてしまうかのどちらかだったと思う。精緻に組まれた謎はそれだけうつくしい。この特徴は表題作「オーブランの少女」と最後を飾る「氷の皇国」にひときわ目立った。
作者・深緑野分はたしかに、ひとのこころに「鮮烈な色」を刻んでいく作家だと感じた。
Posted by ブクログ
どのはなしの少女も、特別なものがあるわけではないのだけど、印象的。
「オーブランの少女」は、映画「エコール」ぽいなあと思ったら、やっぱり念頭にあったらしい。
「片想い」も、「倒立する塔の殺人」ぽい。
どちらも好みのモチーフ。対になる少女たちの関係性も好き。
あまりミステリとは思わずに読んだけれど、最後のはなしの謎解きはおもしろかった。
架空の国の設定もよかったし、作中で過去にあったこととして語られるのもいい。
初めて読んだ著者さんだったけど、他のものも読もうと思う。
Posted by ブクログ
少女が主要キャラとして出てくる以外、時代も国も舞台の異なるミステリ短編集。
風景描写が素晴らしく美しい。
特に表題作のキングサリや、最終作のランプの階段なんかは夢のよう。
なのに、起こる事件はえげつなく、その落差がまた面白い。
Posted by ブクログ
重厚なストーリーと、細部までこだわった緻密な描写で定評のある深緑野分さんのデビュー作品集。深緑さんというと長編のイメージがあるけれど、本書はタイトル作品をはじめとする5編の短編小説で構成される。共通項は「少女」である。
大人でもなく、子どもでもない、どこか不安定な存在である少女。そして、大人の狡知と、子どもの残酷さを兼ね備えた存在である少女。本書は、時代も国も、はたまた住む世界さえ違う少女たちを描き、そのどれも高い物語性を帯びている。さすが深緑さん、デビュー作からしてこれか!
深緑さんの作品は、不思議とどこか海外文学のような雰囲気が漂う。考証を重ねて構築された世界観がそう感じさせるのか、どこか突き放したような視点がそう感じさせるのか、最新作はこれまでとはまた違うテイストのようなので、読むのが今から楽しみで仕方がない。
Posted by ブクログ
日本人が日本語で書いているはずなのに、
ディケンズの翻訳ものを読んでいるような
「高貴な」感じが漂っている。
舞台設定も、どことも分からぬ異国
(後に判明しますが)だったり、
大正時代(?)の女学校の寄宿舎だったりと、
今となっては誰も「正解」を知らない世界で...
中々の「異世界」感(^ ^;
でもその設定の中で、
揺れ動く登場人物の心象が丁寧に綴られており、
また日常の何気ない生活の一コマが
ありありと眼に浮かぶリアリティがあって(^ ^
ものすごい「名作感」がにじみ出ている(^ ^;
創元推理文庫だし、一応はミステリに分類しましたが、
「謎解き成分」は主ではない感じ。
何と言うか、もっと「純文学感」が前面に出てる(^ ^;
...やたらと「感」が多いですが(^ ^;
それほど、読んでて色々と感じるところがある、
と言うことで、一つ(^ ^;
Posted by ブクログ
少女にまつわる5つの短編ミステリー。
それぞれ全く異なった時代や国を背景にし、その描かれる世界観が魅力的。ミステリーだけれどファンタジーを読んでいる気分になる。
とくに自然の風景を伴う描写が好きでした。
解説でモチーフや発想の起点となった作品が紹介されていたのも個人的に嬉しいポイントでした。
Posted by ブクログ
短編集だが、各話とも異なる世界観があり、長編になってもおかしくない。次は、どんな時代のどこの話だろうとワクワクしながら、読むことができる。
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「戦場のコックたち」を読んで、この本も読んでみたいと思った。
異なる時代、異なる場所を舞台にした“少女”を巡る5つの物語。
ひとつにテーマを決めて書くのはなかなか難しいと思うが、これが変幻自在。
どの話も捻りが利いているが、謎解き以前に、設定に合わせてガラリと変わる文体やせりふ回しでそれぞれの時代や舞台を醸し出す語り口に惹かれた。
オーブランの少女…「戦場のコックたち」を読んだ後なので、作者が第二次世界大戦下のヨーロッパについて何かしら書かねばならないという思いが強いことを改めて知れる。
仮面…時代の雰囲気といった点ではこの作品が一番。哀れな男とそれを利用する少女の強かさが際立つ。
大雨とトマト…ちょっと風変りなお話。登場人物の素性に意外性あり。
片思い…これも昭和初期の雰囲気を良く映す。謎解き以上になかなか男前な彼女の心情が佳い。
氷の皇国…長編のような人物や背景描写が多少かったるかったが、それを過ぎると一気の展開。良く練れたファンタジーの体で、ここに書かれた以外のエピソードも読んでみたいと思わす。
Posted by ブクログ
解説にあった「物語の起爆剤としてのミステリー」という言葉がこの作品を表していると思う。
凝ったトリックやあっと驚く仕掛けだけがミステリではない。
物語に深みを与えるフレーバーとしてのミステリ要素はもっと評価されて欲しい。
Posted by ブクログ
あれこれと雑事に時間をとられているうちに、すっかり久しぶりのブックレビューとなってしまいました。。
手元立て込みやすく、読書すすみ難し……などと、思わずマイ慣用句をつぶやいてしまいたくなりますが、負けずに、めげずに、今年も少しずつ読んで、書いていきたいと思いますっ!
というわけで、新年1冊目のレビューは深緑野分(ふかみどり のわき)『オーブランの少女』です。
もともと、皆川博子さんがインタビューで今気になる若手作家として名前を挙げられていて、読んでみたいな〜と思っていた作家さん。
本屋大賞にノミネートされていた『ベルリンは晴れているか』にもひかれつつ、ちょっと仕事や生活のタイミング的に大作に手を出しにくかったので、短編集・かつ・文庫版と気軽に挑戦できる要素が揃ったこちらから読んでみることにしました。
書名にもなっている「オーブランの少女」をはじめ、いずれも「少女」が主人公か、若しくは話の鍵を握る存在となっているミステリが集められた本書。
まず、私、昔からこの「少女」が美しく、儚く、一途でそれゆえ残酷さを発揮する、というお話がミステリを問わず大好きなんです〜〜。
そして、ミステリは謎解きのスリルも重要だけど、それが展開されるシチュエーションの美しさも大切にしたい派(え? そんな派閥あったっけ、というツッコミはおいておくとして)でありまして。
なので、その2つがバッチリ満たされた表題作「オーブランの少女」と本書のラストを飾る「氷の皇国」の2編が特に印象に残りました。
中でも「オーブランの少女」は、冒頭の美しい花園を管理する謎めいた老女2人の描写から、夢のように美しく展開される少女たちの友情物語、そしてやがてそれを侵食する殺人事件と炙り出された歴史の怖さが圧巻で。
怖い描写の部分が恐ろし過ぎて、これ小さい頃に読んでたら絶対に夢に出てきて困っただろうなーと思いつつ、光あればこそ闇が際立つことも、改めて感じた作品でした。
そして、「オーブランの少女」も「氷の皇国」も、過酷な少女時代を生き抜いて、歳を重ねた老女の存在が描写されているのがいいな、と。
若くて、視野が狭くて、感情的にも未熟だった自分を何らかの形で受け止めて、人々から存在を半ば忘れ去られながらも淡々と暮らす老女もまた、「少女」という存在の一つの発展型なんじゃないか。
勝手な深読みかもしれませんが、人生はやがては実を結んでいくのだという作者のメッセージに思えて、まさに「少女」と「老女」の中間地点にいる自分には、不思議と明るい読後感が残りました。
次回は長編にも挑戦してみたいと思います。
Posted by ブクログ
2013年版は装丁が好みじゃないので誰かが紹介してくれなかったら手に取らなかったと思う。
表題作「オーブランの少女」はナチスドイツの侵攻が始まったフランスに作られた訳ありのサナトリウム。「仮面」ヴィクトリア朝時代イギリスが舞台。「大雨とトマト」大雨の日、安食堂にやってきた常連客と突然やってきた少女。「片思い」女学校。駆け落ち。身代わり。「氷の皇国」北の辺境にある漁村に流れ着いた首のない死体。ガラス細工。
欲しいものを手に入れるために少女は衝動的になり、残酷にもなる。怖い。
Posted by ブクログ
――
深緑さんの書く残酷な少女性、というのはきっと今後、ひとつの象徴となっていくんじゃないだろうか。
良くも悪くも、原石のような短編集でした。
テーマ設定やプロットは完成されていて、けれど魅せかたやストーリーテリングなど、技術的な部分に硬さや甘さが見える。それでも、作家自身の魅力がしっかり現れているというのは流石だなぁと思いました。出るべくして出る、とはこういうことなんだろうなぁ。
特に感じるのはなんというか、ミステリセンス? みたいな部分。ハコのデザインと、ひとつの真実で世界が一変する快感のつくりかたは抜群。まぁ読んでいる方は快感でも、登場人物にしてみれば幸不幸が判然としなかったりするんだけれど、そういう、真実の善性みたいなところも描きどころではある。腕の見せどころ、というか。
その分設定偏重なところで、唐突さやガイドバイアスの強さを感じてちょっと読みが躓く部分もあったりするんだけれど、そこはもうちょい。
一変する世界、反転する世界という点で、ミステリに少女はよく似合う。なるほどそう云われるとそんなのばっかり読んでいるかもしれない。
これからも、楽しみです。星3.3
Posted by ブクログ
「オーブランの少女」☆☆☆☆
病気を抱えた少女たちが集められるサナトリウム(療養施設)があった。そこでは治療と同時に教育も受けられる。しかし、そこでは少女たちは本名ではなく花の名前で呼ばれ、家族を含めて外界と隔絶された生活を送っていた。
どうやら施設には秘密があるらしい。安易に人身売買のための施設かと考えたが、それでは説明のいかないことも多い。果たして真相は?
オーブランの庭園の描写がきれいだった。緑豊かな様子、庭園に差す光。『この本を盗むものは』で見られた色彩豊かな情景描写の原点はここにあったのだな。
「仮面」☆☆
主人公の男アトキンソンは医者をしている。ある患者のメイドの妹はとても美しい少女で、彼は恋をしてしまう。そして、メイド姉妹がひどい扱いを受けていることを知った男は主人の殺害を計画する。
なんとなくオチが読めてしまうのと、悪意に塗れただけの世界が好きになれなかった。
「大雨とトマト」☆☆
男が営む飲食店に少女がやってきて、「父を探している」という。男には妻子がいるが、むかし一夜だけ関係を持った女がいて……。
またもオチが読めてしまううえにイヤミス。
「片想い」☆☆☆
主人公の少女は女学校に通っており、同室には同級生にも下級生にも慕われる人気者の友人がいた。二人は親友関係にあったが、友人は何か隠し事をしているらしい。
オチは読めるが後味は悪くない。
「氷の皇国」☆☆☆
ある皇国で、皇位継承権のために皇女が弟である皇子を殺害する事件が起きた。しかも皇女はその責任をメイドや兵士になすりつけて処刑しようとする。弁明しようにも、裁定人となる皇帝もまた傍若無人で、憶測による皇族への反論を許さない。
皇女が犯人であることが明らかな殺人事件において、禁止カードが多い中でどうやって皇女の罪を明らかにするかと考えるのが面白い。ただ、最終的な解決策が禁止カードの一つで、「実はこれ禁止じゃないんですよね」という感じで出てくるのが納得いかなかった。それでも、閉ざされた国の寒々しい情景は印象に残った。深緑さんにはやはり情景描写が生きる作品を書いてほしい。
Posted by ブクログ
短編集
・オーブランの少女
少女たちの幼くもあり美しい。花など情景の描写も美しい。しかし内容はおぞましく読み終わったあと最初の方をもう一度読み返した
ナチス表題にしてるのねーお姉さん生きてたのスゴすぎる。生命力すご
序盤で約ネバやん!?てなった
百合感あるよね
・仮面
姉妹愛
そんなおもしろくはない
・大雨とトマト
オチで少しえー!てなる
どんでん返しではないけど
息子かえってきてたらどうなってたんや
・片想い
環様と岩本様の百合小説?
って思ったけど、、色々な百合展開でワーとなった。
時代は違えどやっぱ女子校だとこういうのありそうーてかあるよねって思った
・氷の皇国
途中で飽きた
面白くない