【感想・ネタバレ】オーブランの少女のレビュー

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少女にまつわる幻想的で耽美な作品集。こう書くと、同じような短編が並んでいるように思えますが、一つ一つのベクトルが違っていて飽きないし、どれも独自の世界観で深くおもしろいです。深緑野分さんは初めて読みましたが、いい作家に巡り会えたと感じました。

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2021年04月11日

Posted by ブクログ

オーブランの少女(表題作)を含めた短編集です
オーブランの少女は描写が美しくてそれでいて残酷で最後までストーリーに意外性があるのに全体として纏まっているというかなりハイレベルな作品でした
これがデビュー作とは、、、才能があるのでしょうね。

とくに"オーブランの少女"と";氷の皇国"は美しい描写と残酷さ、起承転結の巧さが光っていました。

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2020年11月16日

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ネタバレ

短編集なのでいくつもの話を読んできたはずなのに、一番初めに読んだ本の題名にもなっている「オーブランの少女」が頭から離れない。始めに出てきた痩せて化け物になっていた人の正体がまさかあの人だったなんて、自分には最後の最後まで分からなかった。話の最後のシーンから、冒頭のシーンまでの間、どれだけの時間が流れたのか、あの化け物は下水の中で何を考えてきたのか等、色々と想像してしまう。読んでいて化け物の姿がありありと想像でき、頭にこびついてしまった。
綺麗だった人が醜く変貌していく様を描くのが上手なのかもしれない。この落差に惹かれてしまった。

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2019年10月01日

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短編集ながら読み応えがあり、楽しめた。
表題作は言わずもがな、「大雨とトマト」「氷の皇国」がとても印象的。訳あって長く積読本化しており、重い腰を上げたつもりがページを捲る手が止まらなかった。

表題作は思いつきで逆から読んでみたのだが、これがストーリー的にも思いのほか効果的で、最終的に「こういうことだったのか」と腹落ちした。

解説もとても良いのでおすすめです。

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2024年05月10日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ずっと気にはなっていたけど、深緑さんの作品は初めて読みました。短編集ですが共通点は「少女」が主役。個人的には最初と最後の「オーブランの少女」と「氷の皇国」が印象に残りました。前者はラストがとても怖く、後者は切ないながらも穏やかな時間を感じる作品。どれもとても面白かったです。

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2024年03月24日

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深緑先生のデビュー短編集。
まずそのバラエティ豊かさに驚かされる。第2次世界大戦下のフランス、ヴィクトリア朝時代のイギリス、昭和初期のの女学校の寄宿舎、中世北欧の辺境地と舞台も時代も自由自在だ。飽きることなく読ませていただきました。以下、特に印象に残った感想を

「オーブランの少女」
表題作。非常に映像喚起力の高い文章。
緑の庭園、白い館、マロニエ並木、キングサリの藤棚、白いスカート、青い瞳、赤いリボン、軋む歩行具。
なぜ海外が舞台?と思いましたが、なるほどこの残酷な世界はフランス郊外がしっくりきます。
そして残酷な世界には少女達がぴったりなのです。

「仮面」
本当に最終番になってから、ただ醜いとされてたアミラの秘密が記述されます。アミラとは決して分かり合えない隔たりを感じました。

「片想い」
昭和初期の女学校の寄宿舎が舞台。日本が舞台でも変わらず面白かったです。

「氷の皇国」
架空の国の辺境地。時代はわからないけど、多分中世の北欧がモデル(トナカイが住む、白夜と極夜が訪れる地)。最も読みごたえがありました。

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2023年02月22日

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本書収録の「オーブランの少女」で2010年に第7回ミステリーズ!新人賞で佳作に入選した深緑野分が2013年に発表した短編集「オーブランの少女」の文庫版。少女をテーマにした「オーブランの少女」「仮面」「大雨とトマト」「片想い」「氷の皇国」の5作品を収録。時代や場所を変えて描かれる少女たちは妖しい魅力に溢れています。基本はミステリーですが、作品ごとにホラー、ダークファンタジー、エスなど色々な要素が混じりあい独特の雰囲気を漂わせています。

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2023年02月02日

Posted by ブクログ

ミステリーも短編小説も読んだことがなかったが、全て面白かった。
これがミステリーの醍醐味なのだと思うが、最初に読んだ時は全く気にも留めなかった一文が、最後、謎が解決した後で伏線だったと気づいた時の爽快感が素晴らしかった。
短編だからすぐに二度目を読み始めてどこに伏線が張られていたのか確認することができたのも良かった。
ミステリー沼第一歩としてはとても良い作品だったと思う。

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2023年01月30日

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「少女」をモチーフとした短編集。イギリスの、フランスの、北国の、大正時代のそれぞれの場所の描写も雰囲気が目に浮かぶし、ちょっとしたミステリーも粒が揃ってて良い感じ。初の深緑野分の本だったから最初の印象が強いのかな、表題作が一番好み。

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2023年01月15日

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友人に勧められ初めて読んだ作家だったが、文体も読みやすく面白かった。
時代も場所もバラバラな短編集で、全体的に仄暗い美しい描写が際立つ。

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2022年07月09日

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最初は怖かったですが、どんどん引き込まれました。これがデビュー短編集とは…その後のご活躍もうなずけます。

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2022年05月07日

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世界観の作り込みが見事で短編集とは思えないくらい濃かった。
読み終わった瞬間どっと疲れるほど物語に引き込まれた。
愛らしい少女はどこにもいない。
おぞましいのに読む手が止まらない表題作。
残酷で美しい「氷の皇国」。
ミステリー関係なく、少女小説として読んで欲しいくらい。

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2021年08月25日

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『オーブランの少女』
オーブランの美しい庭園で、ここの女管理人の老婆が殺される。その死体の近くにいた犯人とおぼしき人物は、人というにはあまりにも朽ち果てた姿で立っていた。たまたま娘と二人でこの庭園を散歩している途中、その惨劇に遭遇した「わたし」は、とある事情で入手した昔の日記を読み、ここで当時起きた恐ろしい出来事と、それが引き起こしたこの殺人の真相を知る。

『仮面』
霧深く、凍えるような寒さのロンドンの深夜。
貧乏で冴えない風采の町医者が、患者である女性を殺害するシーンから始まる。その動機は、あどけなく可憐な幼い踊り子の少女を救うため。彼に人殺しを持ちかけた人物の本当の目的は。。。

『大雨とトマト』
外は大雨。お客は常連の男性ひとり。そろそろ店を閉めたいオーナーだが、そこに一人の若い女性が入ってくる。彼女が注文したものは、トマトだけのサラダ。なぜ彼女はこんな大雨の中、わざわざこの店に入り、そしてトマトだけをひたすら食べ続けているのか。
彼女の顔をどこかで見たことがあるように思えてきたオーナーは、若かりし頃、一度だけ関係を持った美しい女性にどことなく面影が似ていると感じ始める。

『片思い』
昭和の香りが色濃く漂う作品。
物語の舞台は女子学生寮。一方は美しくみんなの憧れのお嬢様、もう一方はがっしりした体格の活発な女の子。正反対の見た目と性格の二人は、そのおかげなのか仲良くやっていた。あることがきっかけで、お嬢様の秘密が露見するまでは。
クラシカルなタイトルがいい。恐らく誰しもが一度ならずとも抱くこの思いが甘酸っぱい香りを放つのは、少年と少女のときだけなのかもしれないなと思う。

『氷の皇国』
イメージとしては極寒のロシア(行ったことないけど)。
ユヌースクの皇帝は、自国の民に対して非常に冷徹で残酷だ。
あるとき、彼の跡継ぎである息子が城内で毒殺される。食事後にすぐに死んだため、配膳係の二人の少女が疑われ、無実の罪を着せられる。
二人を待つのは、公衆の眼にさらされての死刑だ。
皇帝の息子を殺害したのは誰なのか。
犯人だといきなり告白した、少女の父親が真犯人なのだろうか。それとも、賢く美しい皇帝の娘が弟を殺害したのであろうか。それとも犯行を否定している少女のうち、どちらかが犯行に及んだのか。
その動機は切な過ぎるほど自分勝手で許しがたいものだったのだが。。。
ファンタジーとミステリーがほどよく溶け合う、味わい深い物語となった。
短編にしては長いのかもしれないが、その長さがほどよくいい。


まるで海外の小説のような雰囲気を持つ5つの短編。本のタイトルにもなっている『オーブランの少女』に出てくるサナトリウムのような施設は、以前読んだカズオ•イシグロの『わたしを離さないで』を彷彿とさせた。

くすんだ鈍い色を放つ味わい深い陶器のような、そんな感じの本だと思った。




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2021年08月16日

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ネタバレ

「未知のものを怖ろしく思うとき、それを映しているのは自分の眼だということを忘れてはならない」ーーというようなことを自分に言い聞かせていなければ、無邪気に陶酔するか、恐怖でこころを凍りつかせてしまうかのどちらかだったと思う。精緻に組まれた謎はそれだけうつくしい。この特徴は表題作「オーブランの少女」と最後を飾る「氷の皇国」にひときわ目立った。
作者・深緑野分はたしかに、ひとのこころに「鮮烈な色」を刻んでいく作家だと感じた。

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2021年05月04日

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ネタバレ

どのはなしの少女も、特別なものがあるわけではないのだけど、印象的。
「オーブランの少女」は、映画「エコール」ぽいなあと思ったら、やっぱり念頭にあったらしい。
「片想い」も、「倒立する塔の殺人」ぽい。
どちらも好みのモチーフ。対になる少女たちの関係性も好き。

あまりミステリとは思わずに読んだけれど、最後のはなしの謎解きはおもしろかった。
架空の国の設定もよかったし、作中で過去にあったこととして語られるのもいい。
初めて読んだ著者さんだったけど、他のものも読もうと思う。

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2021年03月15日

Posted by ブクログ

少女が主要キャラとして出てくる以外、時代も国も舞台の異なるミステリ短編集。
風景描写が素晴らしく美しい。
特に表題作のキングサリや、最終作のランプの階段なんかは夢のよう。
なのに、起こる事件はえげつなく、その落差がまた面白い。

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2021年01月30日

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重厚なストーリーと、細部までこだわった緻密な描写で定評のある深緑野分さんのデビュー作品集。深緑さんというと長編のイメージがあるけれど、本書はタイトル作品をはじめとする5編の短編小説で構成される。共通項は「少女」である。

大人でもなく、子どもでもない、どこか不安定な存在である少女。そして、大人の狡知と、子どもの残酷さを兼ね備えた存在である少女。本書は、時代も国も、はたまた住む世界さえ違う少女たちを描き、そのどれも高い物語性を帯びている。さすが深緑さん、デビュー作からしてこれか!

深緑さんの作品は、不思議とどこか海外文学のような雰囲気が漂う。考証を重ねて構築された世界観がそう感じさせるのか、どこか突き放したような視点がそう感じさせるのか、最新作はこれまでとはまた違うテイストのようなので、読むのが今から楽しみで仕方がない。

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2020年11月22日

Posted by ブクログ

日本人が日本語で書いているはずなのに、
ディケンズの翻訳ものを読んでいるような
「高貴な」感じが漂っている。

舞台設定も、どことも分からぬ異国
(後に判明しますが)だったり、
大正時代(?)の女学校の寄宿舎だったりと、
今となっては誰も「正解」を知らない世界で...
中々の「異世界」感(^ ^;

でもその設定の中で、
揺れ動く登場人物の心象が丁寧に綴られており、
また日常の何気ない生活の一コマが
ありありと眼に浮かぶリアリティがあって(^ ^
ものすごい「名作感」がにじみ出ている(^ ^;

創元推理文庫だし、一応はミステリに分類しましたが、
「謎解き成分」は主ではない感じ。
何と言うか、もっと「純文学感」が前面に出てる(^ ^;

...やたらと「感」が多いですが(^ ^;
それほど、読んでて色々と感じるところがある、
と言うことで、一つ(^ ^;

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2020年07月30日

Posted by ブクログ

少女にまつわる5つの短編ミステリー。
それぞれ全く異なった時代や国を背景にし、その描かれる世界観が魅力的。ミステリーだけれどファンタジーを読んでいる気分になる。
とくに自然の風景を伴う描写が好きでした。
解説でモチーフや発想の起点となった作品が紹介されていたのも個人的に嬉しいポイントでした。

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2020年06月17日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集だが、各話とも異なる世界観があり、長編になってもおかしくない。次は、どんな時代のどこの話だろうとワクワクしながら、読むことができる。

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2020年05月24日

Posted by ブクログ

「戦場のコックたち」を読んで、この本も読んでみたいと思った。
異なる時代、異なる場所を舞台にした“少女”を巡る5つの物語。
ひとつにテーマを決めて書くのはなかなか難しいと思うが、これが変幻自在。
どの話も捻りが利いているが、謎解き以前に、設定に合わせてガラリと変わる文体やせりふ回しでそれぞれの時代や舞台を醸し出す語り口に惹かれた。

オーブランの少女…「戦場のコックたち」を読んだ後なので、作者が第二次世界大戦下のヨーロッパについて何かしら書かねばならないという思いが強いことを改めて知れる。
仮面…時代の雰囲気といった点ではこの作品が一番。哀れな男とそれを利用する少女の強かさが際立つ。
大雨とトマト…ちょっと風変りなお話。登場人物の素性に意外性あり。
片思い…これも昭和初期の雰囲気を良く映す。謎解き以上になかなか男前な彼女の心情が佳い。
氷の皇国…長編のような人物や背景描写が多少かったるかったが、それを過ぎると一気の展開。良く練れたファンタジーの体で、ここに書かれた以外のエピソードも読んでみたいと思わす。

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2020年05月05日

Posted by ブクログ

解説にあった「物語の起爆剤としてのミステリー」という言葉がこの作品を表していると思う。

凝ったトリックやあっと驚く仕掛けだけがミステリではない。
物語に深みを与えるフレーバーとしてのミステリ要素はもっと評価されて欲しい。

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2020年03月09日

Posted by ブクログ

あれこれと雑事に時間をとられているうちに、すっかり久しぶりのブックレビューとなってしまいました。。
手元立て込みやすく、読書すすみ難し……などと、思わずマイ慣用句をつぶやいてしまいたくなりますが、負けずに、めげずに、今年も少しずつ読んで、書いていきたいと思いますっ!

というわけで、新年1冊目のレビューは深緑野分(ふかみどり のわき)『オーブランの少女』です。
もともと、皆川博子さんがインタビューで今気になる若手作家として名前を挙げられていて、読んでみたいな〜と思っていた作家さん。
本屋大賞にノミネートされていた『ベルリンは晴れているか』にもひかれつつ、ちょっと仕事や生活のタイミング的に大作に手を出しにくかったので、短編集・かつ・文庫版と気軽に挑戦できる要素が揃ったこちらから読んでみることにしました。

書名にもなっている「オーブランの少女」をはじめ、いずれも「少女」が主人公か、若しくは話の鍵を握る存在となっているミステリが集められた本書。
まず、私、昔からこの「少女」が美しく、儚く、一途でそれゆえ残酷さを発揮する、というお話がミステリを問わず大好きなんです〜〜。
そして、ミステリは謎解きのスリルも重要だけど、それが展開されるシチュエーションの美しさも大切にしたい派(え? そんな派閥あったっけ、というツッコミはおいておくとして)でありまして。
なので、その2つがバッチリ満たされた表題作「オーブランの少女」と本書のラストを飾る「氷の皇国」の2編が特に印象に残りました。

中でも「オーブランの少女」は、冒頭の美しい花園を管理する謎めいた老女2人の描写から、夢のように美しく展開される少女たちの友情物語、そしてやがてそれを侵食する殺人事件と炙り出された歴史の怖さが圧巻で。
怖い描写の部分が恐ろし過ぎて、これ小さい頃に読んでたら絶対に夢に出てきて困っただろうなーと思いつつ、光あればこそ闇が際立つことも、改めて感じた作品でした。
そして、「オーブランの少女」も「氷の皇国」も、過酷な少女時代を生き抜いて、歳を重ねた老女の存在が描写されているのがいいな、と。
若くて、視野が狭くて、感情的にも未熟だった自分を何らかの形で受け止めて、人々から存在を半ば忘れ去られながらも淡々と暮らす老女もまた、「少女」という存在の一つの発展型なんじゃないか。
勝手な深読みかもしれませんが、人生はやがては実を結んでいくのだという作者のメッセージに思えて、まさに「少女」と「老女」の中間地点にいる自分には、不思議と明るい読後感が残りました。

次回は長編にも挑戦してみたいと思います。

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2020年01月05日

Posted by ブクログ

ネタバレ

少女が作り出す偏った世界が冷酷で甘美で、瞳を覗き込んでも窺い知ることのできない謎が広がっているようでした。‬
表題作の美しい庭園、白いワンピースを着て手首にリボンを結んだ少女たちが目に浮かぶ。少女たちの無垢な美しさに惹かれ、この世界に迷い込んでしまいたいような気持ちにさせられる。

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2019年10月12日

Posted by ブクログ

面白かったです。
初めて読んだ野分さんのお話ですが、再読でも惹き付けられました。
歴史ものや、日本の食堂での一夜、女学校、ファンタジーとバラエティー豊かなミステリでした。
どれもその世界にすっと入っていけます。
特に、「オーブランの少女」「氷の皇国」が好きでした。
オーブランの美しく病弱な少女たちは実は…とその壮絶な崩壊。序盤で書かれた悪鬼の正体がわかると恐いです。
氷の皇国は、ファンタジーでミステリな作品大好き…となりました。傲慢な皇女も、それを軽くあしらう皇后ヴェータも良いです。
野分さんはこの短編集ですっかり虜になり、「戦場のコックたち」が文庫化されたのでいそいそと買いました。読むのが楽しみです。

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2019年08月15日

Posted by ブクログ

2013年版は装丁が好みじゃないので誰かが紹介してくれなかったら手に取らなかったと思う。

表題作「オーブランの少女」はナチスドイツの侵攻が始まったフランスに作られた訳ありのサナトリウム。「仮面」ヴィクトリア朝時代イギリスが舞台。「大雨とトマト」大雨の日、安食堂にやってきた常連客と突然やってきた少女。「片思い」女学校。駆け落ち。身代わり。「氷の皇国」北の辺境にある漁村に流れ着いた首のない死体。ガラス細工。

欲しいものを手に入れるために少女は衝動的になり、残酷にもなる。怖い。

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2023年01月24日

Posted by ブクログ

ネタバレ

――

 深緑さんの書く残酷な少女性、というのはきっと今後、ひとつの象徴となっていくんじゃないだろうか。



 良くも悪くも、原石のような短編集でした。
 テーマ設定やプロットは完成されていて、けれど魅せかたやストーリーテリングなど、技術的な部分に硬さや甘さが見える。それでも、作家自身の魅力がしっかり現れているというのは流石だなぁと思いました。出るべくして出る、とはこういうことなんだろうなぁ。
 特に感じるのはなんというか、ミステリセンス? みたいな部分。ハコのデザインと、ひとつの真実で世界が一変する快感のつくりかたは抜群。まぁ読んでいる方は快感でも、登場人物にしてみれば幸不幸が判然としなかったりするんだけれど、そういう、真実の善性みたいなところも描きどころではある。腕の見せどころ、というか。
 その分設定偏重なところで、唐突さやガイドバイアスの強さを感じてちょっと読みが躓く部分もあったりするんだけれど、そこはもうちょい。

 一変する世界、反転する世界という点で、ミステリに少女はよく似合う。なるほどそう云われるとそんなのばっかり読んでいるかもしれない。
 これからも、楽しみです。星3.3

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2022年01月02日

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「オーブランの少女」☆☆☆☆
 病気を抱えた少女たちが集められるサナトリウム(療養施設)があった。そこでは治療と同時に教育も受けられる。しかし、そこでは少女たちは本名ではなく花の名前で呼ばれ、家族を含めて外界と隔絶された生活を送っていた。
 どうやら施設には秘密があるらしい。安易に人身売買のための施設かと考えたが、それでは説明のいかないことも多い。果たして真相は?
 オーブランの庭園の描写がきれいだった。緑豊かな様子、庭園に差す光。『この本を盗むものは』で見られた色彩豊かな情景描写の原点はここにあったのだな。

「仮面」☆☆
 主人公の男アトキンソンは医者をしている。ある患者のメイドの妹はとても美しい少女で、彼は恋をしてしまう。そして、メイド姉妹がひどい扱いを受けていることを知った男は主人の殺害を計画する。
 なんとなくオチが読めてしまうのと、悪意に塗れただけの世界が好きになれなかった。

「大雨とトマト」☆☆
 男が営む飲食店に少女がやってきて、「父を探している」という。男には妻子がいるが、むかし一夜だけ関係を持った女がいて……。
 またもオチが読めてしまううえにイヤミス。

「片想い」☆☆☆
 主人公の少女は女学校に通っており、同室には同級生にも下級生にも慕われる人気者の友人がいた。二人は親友関係にあったが、友人は何か隠し事をしているらしい。
 オチは読めるが後味は悪くない。

「氷の皇国」☆☆☆
 ある皇国で、皇位継承権のために皇女が弟である皇子を殺害する事件が起きた。しかも皇女はその責任をメイドや兵士になすりつけて処刑しようとする。弁明しようにも、裁定人となる皇帝もまた傍若無人で、憶測による皇族への反論を許さない。
 皇女が犯人であることが明らかな殺人事件において、禁止カードが多い中でどうやって皇女の罪を明らかにするかと考えるのが面白い。ただ、最終的な解決策が禁止カードの一つで、「実はこれ禁止じゃないんですよね」という感じで出てくるのが納得いかなかった。それでも、閉ざされた国の寒々しい情景は印象に残った。深緑さんにはやはり情景描写が生きる作品を書いてほしい。

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2021年09月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

短編集
・オーブランの少女
少女たちの幼くもあり美しい。花など情景の描写も美しい。しかし内容はおぞましく読み終わったあと最初の方をもう一度読み返した
ナチス表題にしてるのねーお姉さん生きてたのスゴすぎる。生命力すご
序盤で約ネバやん!?てなった
百合感あるよね

・仮面
姉妹愛
そんなおもしろくはな

・大雨とトマト
オチで少しえー!てなる
どんでん返しではないけど
息子かえってきてたらどうなってたんや

・片想い
環様と岩本様の百合小説?
って思ったけど、、色々な百合展開でワーとなった。
時代は違えどやっぱ女子校だとこういうのありそうーてかあるよねって思った

・氷の皇国
途中で飽きた
面白くない

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2021年09月02日

Posted by ブクログ

これがデビュー作だなんてすごい。
あらすじにあるとおり時代も国も違う少女たちを主人公に、
テイストがこんなにも違う五つの物語が収録されているのに驚きです。
表題の「オーブランの少女」とトリの「氷の皇国」が衝撃的で濃くて
特に心に残りました。
北村薫さんのベッキーさんシリーズが好きなので「片思い」も良かったな。
環さんを守りたい岩様が可愛らしかったです。

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2021年08月30日

Posted by ブクログ

デビュー作である表題作ほか、少女を切り口にした短編を5話収録した作品集。

ヨーロッパや日本、架空の北の国など舞台となる場所は様々だが、いずれも現代ではなく古めかしい時代設定。甘やかな秘密の気配と、その裏にある残酷で哀しい真相をうまく取り合わせてミステリー仕立てにしているものが多い。
それぞれの雰囲気がよく出ていて、海外の作品を読んでいるような気分に。最後の「氷の皇国」はファンタジーの長編にもなりそう。

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2019年08月16日

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