富樫倫太郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
必ずしも表立った記録に現れるでもないが、実在した可能性も高い、重要な役割を担ったであろう人物達を主役に据えて物語を展開…或いは“時代モノ”の「最も面白いパターンの一つ」のように思う…
そうした系譜の作品で、永く“名作”として読み継がれる可能性も在るような作品に出逢った…
本作の主人公は、その“軍配者”となって行く若者である。かの北条早雲こと伊勢宗瑞に見出される若者、風摩小太郎が主人公だ。
“風摩小太郎”?色々な小説にも登場する「北条家の仕事を請けた忍者の棟梁、風魔小太郎」というのはお馴染みかもしれないが…その辺りの“事情”は是非本作で… -
Posted by ブクログ
富樫倫太郎『ちぎれ雲 四 血旅の剣』中公文庫。
大身旗本の次男坊に生まれ、『猪母真羅』持ちの美丈夫にして放蕩三昧の暮らしを送る、放念無慚流の達人、麗門愛之助を主人公にした時代小説シリーズの第四巻。今回も文庫書下ろし。
痛快無比のエロ時代剣豪小説といったところだろうか。
麗門愛之助たちの活躍で、煬帝一派による将軍吉宗暗殺はからくも阻止されたが、煬帝は禁書である『徳川申命記』を持って京へと逃れる。老中本多忠良は、吉宗の命を受けて、煬帝討伐と『徳川申命記』奪還を愛之助に命ずる。
愛之助は孔雀の双子の妹、朱雀と共に東海道より京を目指すのだが、次々と事件に巻き込まれる。愛之助は剣の腕で何とか困 -
Posted by ブクログ
シリーズ最終巻。前半の大部分が丁稚いじめに割かれており、その内容は吉左衛門のときよりも遥かに悪質。加えて、見所と期待していた吉左衛門との絡みがほとんどなく、拍子抜けした印象が強い。総じて、残念な終わり方だったと言わざるを得ない。
一方で、中盤以降は物語のテンポがぐっと上がり、一気読みさせる力があるのは、やはり作者の筆の巧みさだと感じた。
キャラクター面では、万吉は吉左と比べて頑固で横暴な性格が目立ち、共感しづらい。また、彼が藤兵衛を「優しい」と評する場面もあるが、むしろその本質は「狡さ」に思える。山代屋時代の藤兵衛は、店の行く末に真摯に向き合っていた吉左と対照的に、自らの将来(実家を継ぐ