関東の情勢は風雲急を告げ、氏綱に請われ、小太郎は四年半で足利学校を去ることになる。
氏綱やその家臣たちに、大いなる期待とともに迎え入れられたものの、すぐには表立った働きを命ぜられることもなく…
そう、下巻にいたっても、小太郎がすぐに獅子奮迅の活躍をするわけではないのです。
むしろ、目立つ働きという意
...続きを読む味でいえば冬之助。
扇谷上杉の軍配者として北条を脅かします。
ただ、それでも小太郎の影が薄いのかと言うとそうではないんですね。
自身が主たる軍配者ではないものの、戦場で、あるいは城内で、すばらしい判断と決断をもって味方を救っていきます。
そしてそれ以上に、小太郎に魅きつけられるのは、彼の人としての素直さや穢れのなさ、若いのにしっかり備わった品格のためかと思うのです。
常に弱者の側にたった視点をもち、決して奢らず、他者を理解しようと努める。
そんな彼の姿が、混沌を極める乱世の時代に、ひときわ輝いて見えます。
エンディングで、亡き早雲の願いどおり、氏康の軍配者として主君の初陣に臨む小太郎。
その後、数々の目覚ましい活躍をするだろうと予想はつくけど、やっぱりその活躍ぶりをもっと見たいなと思いつつ、名残惜しく読み終えるのでした。