高橋源一郎のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
高橋源一郎氏の作家としての才には昔からよく親しんできて敬服する一方で時事問題への過度のナイーブさとそのナイーブさを誇示して恥じないかのような厭らしい扱い方には気になるところも多かった。果たして本書はその悪い部分が強く出た厳しい読後感となった。
高橋源一郎による超訳論語、というか小説化という試み自体は悪くなく、正確さよりリズムとノリを重視する砕けまくった文体もそこはいいのだが、あまりにメッセージ性が素朴かつ空疎すぎる。
論語という書物の性質上、現代政治や時事とある程度絡める超訳は翻案として悪いものではないですが、隙あらばどこからでも現代政治批判、現代政権批判に持ち込むのは優れた現代意識ではなくただの政治的スケベ根性というべきです。
加えてあまりに皮肉を言いたい、皮肉を指し示したいという著者の精神が本来古典の持つ多義性を貧困化しているところも感じられるし、また自分の超訳に自分で感心して合いの手を入れるのはあまりに滑り散らしており、またそれを滑っていることに気付けない、恥ずかしいのでは?という自己懐疑の欠片も見られないのはこの優れた作家にして政治的党派意識に染まるとなんと情けない姿を見せるものかと戦慄する。
孔子に現代政治への当てこすりを言わせて(さすがセンセイ、目のつけどころが違いますねえ)って高橋センセイ、その目のつけどころは今数行前にあなたが超訳して創造したものですよ……
この作家ならばある程度自己へのメタ的な視点も取り込めばもっと面白くできたはずだと思います。実に残念でした。 -
Posted by ブクログ
『さようなら、ギャングたち』を読んだのは、三年前の年末。その時は、何だかわからない衝撃を受けた。それから、著者の作品を何度か読もうとしたけど、続かなかった。
それから源一郎さんとは、疎遠な日々が続いていたが、吉祥寺の古書店で、この本をパラパラとめくっていた時、中上健次がタバコを咥えながら、野球帽をかぶってバットをかまえている写真が見えた。
「源一郎さんらしそうな本やな」と思って読まずに置いておくかもしれないのに、懲りずに買ってしまった。
内容はエッセイだが、今回は最後まで読めた、と言うよりやっぱり面白かった。80年代半ばの作品なので、懐古的な楽しさもあったが、この人は、当時の軽薄さを、今の人と同じように捉えていてちゃんと読み物に仕上げていた。
何だか元気づけられたような気もするのだ。 -
Posted by ブクログ
ラジオを聴いているので
読んでいて
そのままその声が再生される気がした
ラジオ同様紹介される本が面白そうで
いくつかメモした
実生活ではなかなか手に取らない
もしくは知る機会のないタイプの本もあり
ありがたい出会い
著者の本自体は
若い頃読んで
そんなに好きではなかったけど
この方自体は割と好き
おじさんながらに
アップデートしたり
頭を柔軟にしておきたいと思っているおじさんだと思う
マンガや聴く音楽も決して懐古趣味ではなく
新しかろうが若かろうが
好きなものは紹介するし
面白がる
というスタンスは
とてもいい
(余談だけどこの方の声?しゃべり方
山田五郎さんにちょっと似てると思います) -
Posted by ブクログ
『僕らの◯◯なんだぜ』が高橋氏のトレードマークになっているようで、この本では戦争にまつわる文学作品を取り上げて紹介し、様々思索したことを書き連ねている。その引用がものすごく多くて長く、旧仮名遣いや詩文など、普段読み慣れていない様式の引用文に苦労しながら読んだ。筆者の思索も哲学的かつとりとめのない印象で、もう少し整理してメリハリのあるを編集してくれるとよかったのに、と思った。
引用文の中で印象に残ったのは、ドイツの高校生用教科書で、ナチスが合法的に政権を取り独裁体制を敷いてファシズムに取り込まれる加害の歴史をきっちり記述していることだ。一度あったことは二度三度起こり得る、現在の問題であることを教えている。政府が検閲して加害の事実を隠蔽する国との相違は著しい。また、太宰治が戦時中世に傑作を出し続けた特異性、天才性も強く印象に残った。今まで戦争という視点で読んだことがなかったので、目から鱗だった。