高橋源一郎のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
著者名だけを見て、対談集だと思い込み内容を知らずに
手に取ったのですが、これが存外面白かった。
「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」は知っていたけど、日本でも
内田先生がこのような企画をされていたんですね。知らなかった。
文章のうまい下手ではなくて、とにかく書かれている内容そのものに
力があるなと感じますね。だから川柳以下の文字数で綴られたような
極短の文章であってもグッと迫るものがある。
選者である内田樹先生と高橋源一郎先生の、それぞれ選んだ作品に
印を押しているのですが、お二人の選ぶ傾向が全く違っていることが
わかるのもまた面白い。
巻末に内田先生と、本家の「ナショナル・ストーリー・プロジェクト」の翻訳をされた柴田元幸先生の対談が掲載されていますが、これがまた面白い。
お二方が対談で話されているように、確かに本家版と日本版では
内容への迫り方や文体など型が違います。
そこを思いながらもう一度本家版を読み返すのも面白いかと思います。
まだこのプロジェクト続いているようですね。もっとたくさんの嘘のような
本当の話を読んでみたい。できることならそして私も投稿して参加してみたいと思いました。 -
Posted by ブクログ
高橋源一郎が、野球について書くことで日本人の心のありようを描こうとした作品。
野球が消えてしまった世界で、野球に関して書かれた文章を探す者、野球選手になるため野球について知ろうとする少年、元野球の監督、そして1985年に優勝したとされている阪神タイガースの元選手たち……。
以前、友人の一人が檀一雄について書かれたエッセイや評論を読んでいて、でも檀一雄の作品はひとつも読んだことがなくて、それで檀一雄についてやたらと詳しく語っていた。
友人曰く「俺は堀を見て城を想像するのが好きなんだ」。
この作品で高橋源一郎がやろうとしたのも同じようなことなんじゃないだろうか。
高橋源一郎「いや、むしろ僕がやろうとしたのは屋敷を見てトレーシーを知るって感じですね」
と答えてくれたら面白いかなと思ったが、自分でも書いていて意味不明なのでこれはこれで終了。
僕は少し前から高橋源一郎信者で、要するに彼の書く文章に参ってしまってこれはもう全部読まなくちゃと、とりあえず今のところ変わらぬ決心をしたので買いやすいものから順に彼の著作を買っている。
その文体だが、やっぱり何度読んでも心地良い。
単純に僕の好みなのだ。合ってるのだ。
距離感というか、文章と文章の間にあるスリット部分の幅と深さがちょうどいい感じでもういくらでも読んでいられる気分だ。
野球よりサッカーが好きで、高木豊にも屋敷にもトレーシーにも若菜にも阪神タイガーズにも興味がない僕がこれだけ楽しく読めるのはひとえに高橋源一郎のおかげです。
どうもありがとう。 -
Posted by ブクログ
高橋源一郎の連作短編集。バラバラに書かれているように見えるが、実はつながっている。
タイトルになっている『さようならクリストファー・ロビンソン』は3.11の前に書かれたものでもあるのだが、他は3.11以降に書かれている。『恋する原発』と並行して書かれたであろうこれらの連作に3.11の影響を見るべきなのだろうか。「アトム」がモチーフとして取上げられているのは関係があると見るべきなのだろうか。一方そこに余計な関係性や時間性を見ることは避けるべきなのかもしれない。いずれにせよ高橋さんの小説について上手く説明する自信はないのだけれど。
いずれにしても、どれもこれも実在と喪失について書かれているように勝手に思われる。かつていた人、これから来たる人、それら不在の他者に対する倫理について考え感じることを望んでいるのだろうか。
引用文献にも興味を惹かれた。
プラトンの「国家」、ヤスパースの「哲学」などが挙げられている。自分には見つけられなかったが、どこにその影があるのか探すのも一興かもしれない。 -
Posted by ブクログ
「小説家は小説を書くことで考えるんですよ」
高橋源一郎がニコ生思想地図において東浩紀に言った言葉だ。
聞いた瞬間、ずっと前から持っていた宝箱が開いたような気がした。
そうか、てっきり僕は考えてから書くんだと思ってた。
細胞が分裂するように言葉を生み出し、突然変異を待つ。
とにかく一所懸命、分裂、分裂、なのだ。
高橋源一郎は真面目な人だと思う。
室井佑月にとってはどうだか知らないが。
最初に読んだ高橋源一郎作品は「ジョン・レノン対火星人」で詩のような印象を受けた。
あとがきに、本作を最初に読んだとき詩のようだと思ったと書かれたいたが、僕は「ジョン・レノン対火星人」を読んでいたせいか、これは小説だと開始一行目から最後の一行まで思って読んだ。
高橋源一郎の文は、ざっくばらんでそれでいてよく見るとキレイな木目をしている薪みたいだ。
言葉のひとつひとつが宝石ってわけじゃないんだけれど、並べて叩くといい音がしそう。
そんな小説ですよ。 -
Posted by ブクログ
日本人の「嘘みたいな本当の話」を集めることで、日本とは何かを見出そうとした、日本版ナショナル・ストーリープロジェクト。
収録されているそれぞれのストーリーももちろん面白いのだけれども、それ以上に内田樹氏の解説と、最後の批評的対談が面白い。
ポール・オースターのナショナル・ストーリー・プロジェクトでは、その人独自の社会・文化的背景を持つ個人が、それぞれのストーリーの中から浮かび上がってきたのに対し、本書の中で紹介されている日本人たちのストーリーは、ほとんど同じ形式を持ち、他の人にも共感してもらえること=「あるある!」と共感を持って読んでもらえるようなストーリー。
このことは、本書に収録されている対談の中でも語られている。
自分自身のストーリーを語ろうとしたときに、なぜ、みんなが共感できるような、同じようなストーリーを語ろうとしてしまうのか。このテーマは、日本人というものを考える際にとても興味深いと思う。授業でも紹介してみたい。