山形浩生のレビュー一覧
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ネタバレ修士課程卒で博士課程を経てはおらず学術的な業績がないにも関わらずMITメディアラボの所長になったという稀有な存在である筆者の行動原則が分かる。翻訳を山形浩生さんが行うという安定の布陣。
訳について評価が低いがインターネットや最先端技術について「知っている」ことが前提になっている本だということだと思う。そういうリテラシがないと何のことやらさっぱりという感じなのだろう。
異なる価値観や専門分野の人を結びつける能力にとにかく長けている。そこに気づく柔軟な発想力はどいういう原理に基づくのかという観点で綴られている。確かにそうなのだが、超大な量の対象を相手にし、その知識・知見がたくさんあるが故にできているということは忘れてはいけない。
プリンシパルズだけでは結果はでない。 -
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今日、先進国では「無形資産」への投資が増えている。この無形投資の台頭は何をもたらすのか。有形投資とは異なる特徴を述べ、経済や社会に及ぼす影響について解説した書籍。
無形資産とは、物理的なモノではなく、アイデアや知識、社会関係でできた資産のこと。あらゆる先進国で重要性を増しており、一部の国では有形投資を上回っている。
無形投資には、次の4つの特性がある。
・サンクコスト(埋没費用)
無形資産は売却することが難しい。そのため、サンクコストと呼ばれる回収不能な費用が生じやすい。
・スピルオーバー(波及効果)
無形資産は、他社が比較的簡単に活用できる。例えば、ほとんどのスマホは、アップル社のiPhoneを真似ている。
・スケーラブル(拡張可能)
無形資産はスケーラブルであることが多い。例えば、いったんチェーン店のマニュアルを作れば、それは全店舗で使える。
・シナジー
無形資産は、組み合わせることで価値が高まる。こうしたシナジーは、しばしば革新的で予想外の規模になる。
現在、経済学の分野で最も困った問題の1つが、投資と生産性の低下つまり「長期停滞」。「有形投資から無形投資への長期的なシフト」がそれを引き起こしている可能性がある。
金持ちは過去数十年でより豊かに、貧困者はより貧しくなった。無形投資の増大が、富と所得双方の格差を増大させている。
無形資産は、有形投資とは違う振る舞いをする。よって、無形資産が支配的な経済もまた、違う振る舞いをするだろう。 -
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SF界の巨匠・フィリップ・K・ディックによるSFサスペンス・ミステリー。未開の辺境惑星"デルマク・O"に集った14人の男女に降りかかる"死"、その真相とは――――。
外部との通信が断たれ、脱出することも出来ず、惑星に閉じ込められた男女が次々と"死"に誘われるという、なかなかのサスペンス・ミステリーが味わえる。惑星に存在する謎の構築物の正体は何か、「神が実在する」という設定がどう絡んでくるのか、ワクワクしながら読み進めることが出来た。
ディックの作品は、『ヴァリス』3部作を除けば比較的読み易いものが多いが、本作は特に読み易くまとまっている印象。ただ、その分尖った要素が少な目なので、少々物足りなく感じるかもしれない。 -
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ネタバレ帯の『ノーベル賞受賞者による衝撃作!』に大分釣られました笑。
私はそこまでの衝撃は感じませんでしたが笑、非常に”大人な”、バランスの取れた経済エッセーであると思います。ただ、全体的にはロジカルというわけでなく、事例集・論説集の雰囲気です。
本作は、(時に詐欺的ですらある)釣りという行為(合法的な引っ掛け!?)を切り口に、人が必ずしも合理的な選択・自己の厚生の最大化をもたらす選択をするわけではないという点にフォーカスし、警鐘を鳴らします。
ポテチは体に悪いとわかっているのに食べてしまう、広告側も消費者のニーズの有無ではなく欲求を喚起し購買をそそのかす等々。自由主義の下では、合法であるものの道義的に疑義がつきかねない事も広告や政治の世界で起こることを例証しています。
他方、こうした非合理的な選択ができる自由主義的社会を社会主義よりも評価し、穏健かつ進歩主義的な社会観を唱えているように見えます。確かに完全ではない自由主義だが(だます自由?だまされる自由?)、社会主義と比較すれば全体の厚生ははるかに大きく、それ故に・だからこそ(一定の厚生を維持し行きすぎがないよう)規制当局による公的な制限は必要だとしています。もちろん営利企業やロビー活動により規制当局が篭絡されたり、上部組織から圧力がかかることもあるでしょう。それでもなお、厚生という観点からだと自由主義が良いと言っているように聞こえます。
このように見ていくと、経済学は、経済モデルの構築や経済そのものの分析という従来の本分から、その経済のメインアクターである人間へと関心を移らせているように感じます。
自由主義はもはや完璧ではなく、またその不完全さや寛容こそが厚生を増大させる(自動車の普及、インターネットの普及、グローバリゼーション等々)とすると、そうした不完全な社会でもベターな制度やあり方を模索するのが学としての経済学の本分になるかもしれません。ただ、個人的にはそうした社会の在り方もさることながら、先生方は不合理な選択をしてしまう人間の性に関心が移ってきているようにも見えます。
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さて纏めますと、この経済エッセー(と呼ぶには分厚い)は、内容的も面白く、筆者の人間的な円熟味が感じられる本であると思います。時間が取れる方、人間の非合理的側面に興味のある方、金融や経済に興味がある方にはおすすめできそうです。ただし、専門的な内容も多くややわかりづらく、また専門家的には新たな事実はないとのことです笑(解説参照)。 -
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「狂気と正気の区別はカミソリの刃よりも細く、犬の歯よりも鋭く、牡鹿よりも身軽だ」
自伝的要素を含むディック晩年の宗教的・哲学的小説。
精神病者の魂の放浪?のようなストーリーだが、主人公は2人??? 一人称なのか三人称なのかわかりにくい叙述が混乱をまねく上、繰り返される神学談義が難解。この方面の知識がないとついていけないのかもしれないが、ディックという作家が持つテーマを掘り下げる内容になっているのはわかる気がする。
とある映画に誘われるところから物語は急展開。登場人物たちの反応は、アニメ「エヴァンゲリオン」を見た時の感覚を彷彿とさせる。あまりにも情報量の多い映像を何度も反芻して真意を汲み取ろうとする、あの体験を思い出した。仏陀、ゾロアスター、イエス、モハメットに続く第五の救済者を探し求める主人公が見出すものとは何か。結末をむかえても消化不良で、繰り返し読まなければならない本だと感じた。
作中で引用される釈義「トラクタテ」は巻末に全文が載っているが、あまりに難解で、ざっと読み飛ばした(汗)。いつか再読に挑戦したい。 -
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記述型経済学=政策には関係なく、パターンを理解しようとする。
規範的経済学=どういうふうに動くべきかを考える。
公共財=企業に供給のインセンティブがない=皆保険制度、退職年金、など。
アメリカの退役軍人保険局は成功している。
ケインズ政策のおかげで、不景気はなくなりはしないが、ましになった。
政府支出は中途半端にやると、効かない。
MMTの機能性ファイナンスの理論は正しいが、増税や支出削減が政治的には困難なことを見逃している。
緊縮策は信頼と安心感をもたらすから経済回復を阻害しない、というのは嘘。アイルランド、ラトヴィア、エストニアなどの例。
求人と失業者との技能ギャップは嘘。本当に困っているなら教育が進むはず。
もっともはやく求人が回復するのは、当初最も打撃を受けた職業。これは、構造的なものではなく循環的なものであることの証拠。
ユーロはセーフティーネットが最初からなかった。
自前の通貨がないから、内的減価=賃金と物価をカットする、しかない。
デンマーク人の満足度が高いのは、福祉国家としての所得移転と高い政府消費があるから。
暗号通貨への懐疑論=取引費用がかかることと、係留策がない。暗号通貨の使用はシグナリングのため。 -
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はじめに
第1部 所得と資本
第1章 所得と算出
第2章 経済成長―幻想と現実
第2部 資本/所得比率の動学
第3章 資本の変化
第4章 古いヨーロッパから新世界へ
第5章 長期的に見た資本/所得比率
第6章 21世紀における資本と労働の分配
第3部 格差の構造
第7章 格差と集中―予備的な見通し
第8章 二つの世界
第9章 労働所得の格差
第10章 資本所有の格差
第11章 長期的に見た能力と相続
第12章 21世紀における世界的な富の格差
第4部 21世紀の資本規制
第13章 21世紀の社会国家
第14章 累進所得税再考
第15章 世界的な資本税
第16章 公的債務の問題
おわりに
凡例
図表一覧
原注
索引 -
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ネタバレ本作はSFの巨匠、フィリップ・K・ディックの遺作。SFでは映像化作品も多く、圧倒的な知名度を誇る著者であるが、本作はSF要素がない所謂「一般小説」となる。「ヴァリス」、「聖なる侵入」と合わせて「ヴァリス3部作」とも言われているが、SF的要素のある前2作とは形を異にしている。
そして前2作と本作とでは語られる視点に大きな違いがある。3作とも共通のテーマとして「神秘体験」があるが、前2作は体験した者の視点で描かれるのに対して、本作は体験した者を客観的に観察する立場から描かれる。
本作では、「神秘体験」をした者(ティム、キルスティン)は悉く悲惨な末路(死)を辿っており、そこから救うことができなかった主人公(エンジェル)は自身の行動・判断を嘆く。そして彼らの死後、新たに「神秘体験」の当事者となったキルスティンの息子であるビル(ティムが転生して自身に宿っていると言う)を、今度こそは救済すると決意して物語を終える。
前2作と違い、本作は神秘体験・宗教・信仰という名の迷宮に陥った者を、他者が救い出すという希望が描かれているのが特徴的である。
「ヴァリス3部作」はディック自身の神秘体験をきっかけに著されたというが、元々彼の作品には「現実と虚構の曖昧さ」や「自己疑念」をテーマにしたものが多く、著者自身の永遠のテーマでもあったのではないかと思う。「神秘体験(=超自然的なもの。現実と虚構を曖昧にするもの。)」で心惑わされた者へ救済の手を差し伸べるラストを描いた本作が遺作というのは、どこか考えさせられるものがある。