山形浩生のレビュー一覧
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経済ナラティブというのは、人々が経済的判断をするやり方を変えそうな、感染性の物語を指す。経済的判断とは、労働者を雇うか好機を待ち続けるか、事業でリスクを負うか慎重になるか、事業を立ち上げるか、変動の激しい投機的資産に投資するかといった判断だ。経済ナラティブは通常、流通している中で最も有力なものではないし、それを見極めるには、それが経済的行動を変える潜在力を見る必要がある。ビットコインの物語は成功した経済ナラティブの一例だ。きわめて感染性が高く、世界の相当部分でかなりの経済的変化をもたらしたからだ。本当の起業家的な情熱をもたらしただけではない。少なくともしばらくは、事業の安心感を茂樹したのだ。
■経済ナラティブ 7つの主張
1.流行は速度も規模も様々。流行の時間軸や規模には大きなばらつきがある。
2.重要な経済ナラティブは世間的な話題のごく一部でしかないこともある。ナラティブはあまり耳に入らなくても、経済的に重要かもしれない。
3.ナラティブ群は単独ナラティブのどれよりも影響が強い。群れが重要だ。
4.ナラティブの経済的な影響力は変化するかもしれない。ナラティブが時間とともに発達する中で変わる細部が重要だ。
5.虚偽のナラティブを止めるには、真実だけでは不十分。真実は重要ではあるが、それは本当に有無を言わせないくらい明らかなときだけ。
6.経済ナラティブの感染は反復機会を利用する。強化が重要。
7.ナラティブはつながりで栄える:人間的興味、アイデンティティ、愛国心が重要。
■繰り返さない経済ナラティブ
1.反復と変異
2.パニックと不安
3.倹約VS顕示的消費
4.金本位制VS金銀本位制
5.労働節約機械が多くの職を奪う
6.オートメーションと人口知能がほとんどの職を奪う
7.不動産バブルとその崩壊
8.株式市場バブル
9.ボイコット、不当利益、邪悪な企業
10.賃金物価スパイラルと邪悪な労働組合
本書で私は、一段落丸ごともある引用を異様なほど多用している。それは読者に、影響力を持ち、同じ言葉で繰り返されたら再び影響力を持ちそうな過去のナラティブについて、歴史的な感覚を示したかったからだ。ジョークや歌と同じで、効果的なナラティブは、単語とその語り口がちょうどよくなければいけない。
■訳者あとがき
…人々の経済行動を操る物語をどのようにして考えるべきか?特にミクロ経済レベルで個人がだまされたというレベルにとどまらず、マクロ経済的な景気循環にまでそうしたナラティブは影響しているのではないか?すると、社会全体に流通するナラティブの興亡をたどることで、その後の経済変動について示唆が得られるのではないか?特に現在、ニュースや新聞記事、書籍内の用語登場頻度の検索を通じて、世間的なナラティブの普及や流通について計測しやすくなっている。最近ではツイッターやSNSなどで、各種のナラティブの普及の様子を細かく追えるようになっている。これを使えば、各種の文化や概念的な流行と経済変動との関係を定量的に分析できるのではないか?
ミクロ経済学の方面では、人が様々な物語などを聞いてプライミングされ、経済行動を変える話が行動経済学で大量に実証的に示されている。数字の上ではまったく同じ利得の選択でも、それをどういう文脈で、どういう言い方で提示するかにより、人々の選択は変わる。そしてそれを政策的にどう活かすかについても、…、各種の「ナッジ」戦略などが提起され、人々の健康保険加入や給与天引き式の年金貯金の促進など、具体的な成果も上がっている。
マクロでも同じことができるだろうか?著者はできると述べて、様々なナラティブとそれに影響された(と称する)景気変動の例を挙げ、ナラティブ経済学的なアプローチの重要性を指摘するとともに、今後のナラティブ経済学発展に向けた方向性について述べる。 -
Posted by ブクログ
1984年を読んだことがなかったので「まんがでわかる」シリーズで読んでみた。1984年自体は国家権力による、権力維持のための監視、情報操作、洗脳の方法が書かれている。1940年代のスターリン時代のソ連社会主義のやり方を見てきたオーウェルの未来予想的フィクションだと言うことがわかった。
その頃に比べて世の中の技術レベルが上がって、当時できなかったことも今ではその気になればできてしまうことに著者は警鐘を鳴らしている。
また行動を記録されるリスクを感じていながらスマホやSNSで自分で自分の行動を晒すこと、フェイクニュースがソーシャルの反応によって真実よりも力を持ち得ることにも警戒している。スノーデン事件のようなことが国家、民間で起こりえる状況だと言える。
村上春樹の1Q84と何らかの共通点があるのだと思って読んだのだがビッグブラザーとリトルピープルの語感以外は見当たらなかった。 -
Posted by ブクログ
『超訳~』の類には、おおよそロクなものがなく、これまで、読むに値する本は一冊も無かった。
だから、この本に対しても、期待値は限りなく低かった。
コソッと読んで、読まなかったことにしておこう、と思ったほどだが、山形浩生の解説はおもしろかった。
ケインズの『雇用、利子、お金の一般理論』は
第二次世界大戦後の世界の経済政策を一変させ、社会における政府の役割を徹底的に変えた。
第1章
強調したかったのは『一般理論』という部分。
古典派理論の公準は特殊なケースのみ当てはまり、一般には当てはまらない。
第2章
賃金は、労働力の需要と供給で調整されるはずで
賃金引き下げに労働者が応じないから失業が突く、というのは、何でも良いから仕事をくれという失業者で溢れた大恐慌当時の状況から見ておかしい。
「作ったものは、いずれ売るしか無いので、供給は需要を作り出す」
という話はおかしい。
第3章 有効需要の原理
ケインズ経済学のベースとなる「有効需要」の概念を述べる章。
経済全体で見ると、その期の総需要は、みんなが消費する分と、みんなが投資する分の合計。
これが有効需要。
有効需要が、雇用の量を決める。
それが少ないと、失業が起きる。
第4-5章
期待が、生産量と雇用を決める。
第6-7章
所得、貯蓄、投資の定義
この章では各種概念の定義を行う。
経済全体として見た場合、貯蓄と投資が透過となることを強調。
マクロ経済学の基礎を構築する章となる。
第8-9章 消費性向
雇用は有効需要で決まり
有効需要は消費と投資で決まる。
消費は客観的な要因と主観的な要因に左右される。
ただし、消費は、だいたい総所得の一定割合であまり変わらない。
とはいえ、それを減らすような財政規律論はダメ。
第10章 限界消費性向と乗数
雇用は有効需要で決まり
有効需要は消費と投資で決まる。
このうち、投資は乗数効果があるので、投資による直接雇用の何倍もの雇用が経済全体で発生する。
だから、失業をなくすためには投資を増やすのが効果的。
失業時には、ムダでも良いから公共投資を増やすべき。
ピラミッド建設でも、お金を埋めて掘り返す、でも良いから、公共投資を増やせ。
第11章 資本の限界収益率
社会全体の投資は、投資で見込まれる収益率が金利よりも高いと起こる。
つまり、投資を増やしたければ
投資収益率の見込み/期待を高める方法と
金利を下げる方法がある。
第12章
失業を減らすには、有効需要を増やすための投資が有効。
投資を増やすための手として、投資の収益率を上げる方法を検討する。
が、投資プロジェクトの収益未投資なんて、誰にも分からない。
みんな自分の勝手な思い込みや勢い(アニマルスピリット)や、その時の気分に支配されてるだけ。
収益未投資を冷静に分析するはずの株式市場も、じつは、美人コンテスト波のハラの探り合いにようる投機に堕し、目先の流行に流される。
だから、期待収益率の評価改善で投資を増やすのはつらい。
第13-14章 金利の理論
失業を減らすには、有効需要を増やすための投資が有効。
でも、期待収益率改善では投資を増やせない。
では、金利は?
金利は、現在の消費と将来の消費を均衡させるものであると同時に、手元に置く資産を利子のつかない現金で持つか、債権で持つかという選択を左右する。
この選択が流動性選好。
お金の量を増やすと、みんなの流動性ニーズが満たされるので、現金の需要が減少し、金利も下がる。
これは従来の古典派の理論では無視されてきた部分。
第15章
失業を減らすには、有効需要を増やすための投資が必要。
その投資を左右する金利は流動性選好
つまり人々が現金をどれだけ持ちたがるかで決まる、と前章で論じたが
ではなぜ、人々は現金を持ちたがるのか?
それは、将来の金利動向についての不透明性や自信のなさっからくる部分も大きい。
市場金利は株式市場と同じく、根拠のない付和雷同で動く部分も多い。
だから金融当局が、実現性ある施策による金利誘導をきっぱり宣言すれば、あっさりそれに流される可能性も高い。
ただし、金利ゼロや、ハイパーインフレーションなどで、誘導が効かない事態はあり得る。
第16章
投資が増えて資本設備が増えれば、収益率は下がってくる。
それに対応して投資を維持させるには金利も下がらざるを得ないだろう。
資本設備があふれて希少性がジワジワ下がったら?
いまは資本の希少性のおかげで儲けている金利生活者たちの不労所得もジワジワ下がり、この階級は安楽死するはずだ。
第17章
ではなぜ、お金はそんなに特別なのか?
先物取引などで利率にあたるものは他にも存在するのに。
それは、お金が勝手に作れない、他のものでは代替できない、保管費用がかからない、そしていま多くの価格がお金を基準に決まっているという性質のため。
それをみんなが求めすぎるから失業は起きる。
第18章 雇用の一般理論再説
各種投資の期待収益率と金利の関係で、経済の投資の量が変化する。
投資と消費の関係は乗数によりほぼ一定なので、投資にあわせて消費、そして総需要も、変化する。
そしてその総需要(有効需要)が雇用の量を決める。
第19章 名目賃金の変化
ケインズの主張はともかく
古典派が主張する、賃金が下がれば、失業はなくなるという見方はあり得る。
でも、名目賃金が下がると、消費も減る。
もっと下げるかも、という思惑が発生し、雇用改善が起きない。
賃下げが社会不安につながれば流動性選好が上がり、金利が上がって投資も減りかねず、これまた雇用を減らす。
独裁国でもない限り、一斉に名目賃金を下げる手段はない。
政策的にも賃金低下を図るのは悪手で、お金を増やしたりするほうが現実的。
第20章 雇用関数
産業によって雇用弾性は違う。
それによって、需要が増えたとき、その産業での雇用増につながるか、産業の製品価格上昇につながるか、変わる。
だから、有効需要の増大は、雇用増と物価上昇を同時に引き起こす。
完全雇用を超えると、物価上昇だけになる。
有効需要が減る場合はその逆になる。
第21章 価格の理論
経済の安定のためには、賃金を下げるよりは、お金を増やして失業を抑えつつ、物価と賃金はだんだん上がるようにするのが望ましい。
第22章
景気循環はなぜ起こるのか?
投資が大きく変動するから。
変動の鍵は、投資の期待収益率。
根拠のない付和雷同の気分に左右されるので、みんなが不安にかられると投資は激減する。
不安に駆られた投資家は現金に走る。
流動性選好も高まって金利も上がるので、投資激減に拍車がかかる。
お金を増やして金利を操作するだけでは対処しきれないし、不安解消には時間がかかる。
だから、律儀にバブル潰しをやるより、金利を抑えて、軽いバブル状態を保つほうが最適。
第23章
余談のような章。
第24章 『一般理論』から導かれそうな社会哲学
これまでの理論が社会に持つ意味について考察の章。
◆投資促進のために金利を下げようと主張してきた。
すると金利生活者の安楽死をもたらし
格差もなくなる。
◆公共の役割を大きくし拡大しろという理論だが
社会主義とは違い
個人や民間の自由な活動余地は十分に残してる。
◆自国だけで完全雇用を実現できるようになるから
外国市場をめぐる戦争の要因もなくなり
平和に貢献する。
翻訳者の解説
160
ケインズには、イギリスの階級社会における、上級国民特有の、イヤミったらしさがある。
これは、『素晴らしい新世界』を書いたハクスリーにも通じる、イギリス人特有の階級意識。
ジョン・ヒックスは、ケインズ派の重鎮で
IS-LMモデルの考案により、ケインズ本人よりも、ケインズ理論の普及に貢献した人物。
そのヒックスにさえ
ケインズの「イヤミったらしさ」は指摘されている。
そのイヤミったらさいさを、モロにくらったのが
アーサー・セシル・ピグーだ。
古典派のドンであるアルフレッド・マーシャルの門下生であり、ケインズの大先輩の兄弟子格で、若い頃からずっと友人だったのに
『一般理論』では、一章まるごと使って、ボケ役として嘲笑されている。あまりの仕打ちに、ピグーは大ショックを受け、その後ずっと立ち直れなかった。
165
ケインズのお金の理論は
MMTや、経済における決済機能を重視するメーリングなどのマネービューの考え方にも影響を与えた。
本書で登場する「アニマルスピリット」は、ジョージ・アカロフとロバート・シラーに影響を与えた。
167
ケインズ経済学が現実の世界でたどった道。
大規模公共投資による景気回復という政策。
1930年代にルーズヴェルト大統領のニューディール政策につながったが、決定的な景気回復には至らなかった。
だが、その後
第二次世界大戦という壮絶な公共投資と、それに伴う金融緩和がまさにケインズの言う通り
経済を完全雇用に戻した。
ケインズが一役買った
ブレトン=ウッズ体制が戦後の国際経済の基盤となる。
各国の経済政策は基本的にケインズ理論に基づき、政府が公共投資と金利引下げで完全雇用を実現する。
これが1950-60年代の世界経済の安定と繁栄を生み出した。
(続く) -
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古典派理論への反論=賃金が下がっても働く気はなくならない(供給は減らない)。賃金は互いの交渉で決まる。需要総額は供給総額に等しい、ということはない。
貯蓄量と投資量は等価である。みんなが貯蓄することはできない。消費が減って雇用がなくなるから。
雇用は有効需要で決まり、有効需要は消費と投資で決まる。投資は乗数効果があるので、直接費用の何倍かの雇用が増える。
節約が国を豊かにする、という考えは、個人に対する考えを誤って適用したもの。国は投資をする必要がある。
一律に賃金を下げる方法はない。一様な賃下げが実現するまでに一部で悲惨な状態が生じる。それに対して金利は調整可能。
有効需要の増大は、雇用増と物価上昇を引き起こす。完全雇用を超えると、物価上昇だけになる。
景気の循環は、投資が大きく変動するために起きる。投資の期待収益率ははっきりとわかるものではなく雰囲気に左右されやすい。金利を下げるだけでは追い付かない景気後退を生む。
ゲゼルの印紙紙幣は、その他の流動性のある代替品が存在するので成り立たない。
高金利で金持ちが貯蓄に走ると、資本形成には有害。金利を下げると投資が増える。資本の収益率は下がるから、平等になる。
1930年当時は、金利を上げれば貯蓄が増え、投資が増えて景気回復する、と考えられていた。格差を増やして金持ちに貯蓄してもらうほうがいい、と考えられていた。
ぜんたいにおおざっぱ。数式モデル化されていないが、そのほうがいいと考えていた。
株価はすべての情報を反映する、はうそ。
ほどほどに抜け穴を作って小さなバブルが起きたほうがよい。
ヒックス=ISLMモデル。ケインズモデルを単純化した。
「長期的には我々は死んでいる」(貨幣改革論)貨幣数量説を批判した者。
マクロ経済は精緻にコントロールできない。そのときの問題に合わせておおざっぱな理論とモデルで政策を決めるべき。 -
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ネタバレ修士課程卒で博士課程を経てはおらず学術的な業績がないにも関わらずMITメディアラボの所長になったという稀有な存在である筆者の行動原則が分かる。翻訳を山形浩生さんが行うという安定の布陣。
訳について評価が低いがインターネットや最先端技術について「知っている」ことが前提になっている本だということだと思う。そういうリテラシがないと何のことやらさっぱりという感じなのだろう。
異なる価値観や専門分野の人を結びつける能力にとにかく長けている。そこに気づく柔軟な発想力はどいういう原理に基づくのかという観点で綴られている。確かにそうなのだが、超大な量の対象を相手にし、その知識・知見がたくさんあるが故にできているということは忘れてはいけない。
プリンシパルズだけでは結果はでない。 -
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今日、先進国では「無形資産」への投資が増えている。この無形投資の台頭は何をもたらすのか。有形投資とは異なる特徴を述べ、経済や社会に及ぼす影響について解説した書籍。
無形資産とは、物理的なモノではなく、アイデアや知識、社会関係でできた資産のこと。あらゆる先進国で重要性を増しており、一部の国では有形投資を上回っている。
無形投資には、次の4つの特性がある。
・サンクコスト(埋没費用)
無形資産は売却することが難しい。そのため、サンクコストと呼ばれる回収不能な費用が生じやすい。
・スピルオーバー(波及効果)
無形資産は、他社が比較的簡単に活用できる。例えば、ほとんどのスマホは、アップル社のiPhoneを真似ている。
・スケーラブル(拡張可能)
無形資産はスケーラブルであることが多い。例えば、いったんチェーン店のマニュアルを作れば、それは全店舗で使える。
・シナジー
無形資産は、組み合わせることで価値が高まる。こうしたシナジーは、しばしば革新的で予想外の規模になる。
現在、経済学の分野で最も困った問題の1つが、投資と生産性の低下つまり「長期停滞」。「有形投資から無形投資への長期的なシフト」がそれを引き起こしている可能性がある。
金持ちは過去数十年でより豊かに、貧困者はより貧しくなった。無形投資の増大が、富と所得双方の格差を増大させている。
無形資産は、有形投資とは違う振る舞いをする。よって、無形資産が支配的な経済もまた、違う振る舞いをするだろう。 -
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SF界の巨匠・フィリップ・K・ディックによるSFサスペンス・ミステリー。未開の辺境惑星"デルマク・O"に集った14人の男女に降りかかる"死"、その真相とは――――。
外部との通信が断たれ、脱出することも出来ず、惑星に閉じ込められた男女が次々と"死"に誘われるという、なかなかのサスペンス・ミステリーが味わえる。惑星に存在する謎の構築物の正体は何か、「神が実在する」という設定がどう絡んでくるのか、ワクワクしながら読み進めることが出来た。
ディックの作品は、『ヴァリス』3部作を除けば比較的読み易いものが多いが、本作は特に読み易くまとまっている印象。ただ、その分尖った要素が少な目なので、少々物足りなく感じるかもしれない。 -
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ネタバレ帯の『ノーベル賞受賞者による衝撃作!』に大分釣られました笑。
私はそこまでの衝撃は感じませんでしたが笑、非常に”大人な”、バランスの取れた経済エッセーであると思います。ただ、全体的にはロジカルというわけでなく、事例集・論説集の雰囲気です。
本作は、(時に詐欺的ですらある)釣りという行為(合法的な引っ掛け!?)を切り口に、人が必ずしも合理的な選択・自己の厚生の最大化をもたらす選択をするわけではないという点にフォーカスし、警鐘を鳴らします。
ポテチは体に悪いとわかっているのに食べてしまう、広告側も消費者のニーズの有無ではなく欲求を喚起し購買をそそのかす等々。自由主義の下では、合法であるものの道義的に疑義がつきかねない事も広告や政治の世界で起こることを例証しています。
他方、こうした非合理的な選択ができる自由主義的社会を社会主義よりも評価し、穏健かつ進歩主義的な社会観を唱えているように見えます。確かに完全ではない自由主義だが(だます自由?だまされる自由?)、社会主義と比較すれば全体の厚生ははるかに大きく、それ故に・だからこそ(一定の厚生を維持し行きすぎがないよう)規制当局による公的な制限は必要だとしています。もちろん営利企業やロビー活動により規制当局が篭絡されたり、上部組織から圧力がかかることもあるでしょう。それでもなお、厚生という観点からだと自由主義が良いと言っているように聞こえます。
このように見ていくと、経済学は、経済モデルの構築や経済そのものの分析という従来の本分から、その経済のメインアクターである人間へと関心を移らせているように感じます。
自由主義はもはや完璧ではなく、またその不完全さや寛容こそが厚生を増大させる(自動車の普及、インターネットの普及、グローバリゼーション等々)とすると、そうした不完全な社会でもベターな制度やあり方を模索するのが学としての経済学の本分になるかもしれません。ただ、個人的にはそうした社会の在り方もさることながら、先生方は不合理な選択をしてしまう人間の性に関心が移ってきているようにも見えます。
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さて纏めますと、この経済エッセー(と呼ぶには分厚い)は、内容的も面白く、筆者の人間的な円熟味が感じられる本であると思います。時間が取れる方、人間の非合理的側面に興味のある方、金融や経済に興味がある方にはおすすめできそうです。ただし、専門的な内容も多くややわかりづらく、また専門家的には新たな事実はないとのことです笑(解説参照)。 -
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「狂気と正気の区別はカミソリの刃よりも細く、犬の歯よりも鋭く、牡鹿よりも身軽だ」
自伝的要素を含むディック晩年の宗教的・哲学的小説。
精神病者の魂の放浪?のようなストーリーだが、主人公は2人??? 一人称なのか三人称なのかわかりにくい叙述が混乱をまねく上、繰り返される神学談義が難解。この方面の知識がないとついていけないのかもしれないが、ディックという作家が持つテーマを掘り下げる内容になっているのはわかる気がする。
とある映画に誘われるところから物語は急展開。登場人物たちの反応は、アニメ「エヴァンゲリオン」を見た時の感覚を彷彿とさせる。あまりにも情報量の多い映像を何度も反芻して真意を汲み取ろうとする、あの体験を思い出した。仏陀、ゾロアスター、イエス、モハメットに続く第五の救済者を探し求める主人公が見出すものとは何か。結末をむかえても消化不良で、繰り返し読まなければならない本だと感じた。
作中で引用される釈義「トラクタテ」は巻末に全文が載っているが、あまりに難解で、ざっと読み飛ばした(汗)。いつか再読に挑戦したい。 -
Posted by ブクログ
記述型経済学=政策には関係なく、パターンを理解しようとする。
規範的経済学=どういうふうに動くべきかを考える。
公共財=企業に供給のインセンティブがない=皆保険制度、退職年金、など。
アメリカの退役軍人保険局は成功している。
ケインズ政策のおかげで、不景気はなくなりはしないが、ましになった。
政府支出は中途半端にやると、効かない。
MMTの機能性ファイナンスの理論は正しいが、増税や支出削減が政治的には困難なことを見逃している。
緊縮策は信頼と安心感をもたらすから経済回復を阻害しない、というのは嘘。アイルランド、ラトヴィア、エストニアなどの例。
求人と失業者との技能ギャップは嘘。本当に困っているなら教育が進むはず。
もっともはやく求人が回復するのは、当初最も打撃を受けた職業。これは、構造的なものではなく循環的なものであることの証拠。
ユーロはセーフティーネットが最初からなかった。
自前の通貨がないから、内的減価=賃金と物価をカットする、しかない。
デンマーク人の満足度が高いのは、福祉国家としての所得移転と高い政府消費があるから。
暗号通貨への懐疑論=取引費用がかかることと、係留策がない。暗号通貨の使用はシグナリングのため。