あらすじ
外宇宙の惑星で処女懐胎によって生をうけたエマニュエルは、地球に帰還中の事故で両親を失い、自らも過去の記憶を失ってしまう。帰還後、特殊学校で少女ジーナと出会ったエマニュエルは、彼女の導きで自らの役割に覚醒していく……。自身の神秘体験を元に『ヴァリス』の世界観を展開させた三部作新訳版・第二弾。
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Posted by ブクログ
〈ヴァリス〉三部作の第二弾。
難解な神学談義が続いた前作に比べ、まずSFとしてストーリーを楽しめたのが大きい。辺境惑星、冷凍生命停止、巨大人工知能システム、飛行タクシー、スマホ(のような端末)などが存在する未来世界の中での、『覚醒』をめぐる宗教的・スピリチャル的な物語。難しそうに思えるテーマだが、文章も読みやすく、筋運びそのものが素直に面白かったといえる。その上で、聖書の世界観を通じて語られる「世界」「神」「人」などについての論議は学ぶことが多く、たくさんのメモを取りながら読むことになった。自分はやはり知識が追いつかないところもあったが、聖書に興味がわき読みたくなったことがかえって嬉しい。
さらに良かったのが、巻末の訳者あとがきがとても秀逸なこと。作品の全体像をわかりやすく再確認させてくれる上、これだけでひとつの読み物になっていて面白かった(※ネタバレ全開なので先に読む場合は注意)。
ディック教?における、ある種の到達点といえるだろうか。個人的にかなり収穫のあった一冊。