山形浩生のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
【由来】
・
【期待したもの】
・
【要約】
・これまでと同じ考え方では立ち行かなくなる、まわせなくなる。
【ノート】
・9つの原則というのは次の9つで、自分にとっては直感的に分かりやすいもの、よく分からないもの、分かるけど首肯しかねるものが混在している。
・権威より創発
・プッシュよりプル
・地図よりコンパス
・安全よりリスク
・従うより不服従
・理論より実践
・能力より多様性
・強さより回復力
・モノよりシステム
比較するフォーマットになっているのは、かつては通用していたパラダイムが変容しているということを端的に表現されている。自分はITベンチャーなど、小回りの聞く小さな組織ばかりに所属してきたので、そうだよねとうなづける項目が多い。envisionだったり、自分が個人的な思いで動いていることとのリンクを感じられて、嬉しいような凡庸なような。ただ、このような視点と言うか潮流への感度を大きな組織で維持、反映するのは大変だろうと思う。
・総じて「うちではずっとそうですが?」と言えることが多かったような印象だが、小さな組織だと、そうでないと続けてこれなかったというのもあるだろうし、後出しのバイアスがかかっている可能性も大いにあるだろうから謙虚でないと。
【目次】
1. 権威より創発
よく分からんかったがMITの垣根とか気にしないナイトという合成生物学の人のこと
2. プッシュよりプル
巻き込むってことか。「力を中心から周縁の動かし、ひらめきによる発見を可能にして、イノベーターたちが自分の情熱を探り出す機会を提供する。これは人々が自分の必要としていたものを見つけられるようにしてくれるだけでなく、自分が必要だとも知らなかったものを見つけさせてくれる」(P97)
イノベーションはいまやエッジで起こるようになっている。資源は必要に応じてプルされる。世界は「ストック」から「フロー」に移りつつある。
「プッシュよりプル」では、完全に意識を開き、その場にいて、探求と好奇心を通じたきわめて広いネットワークを開拓できなくてはいけない。さまざまな関心事のポートフォリオを持ち、機会や脅威に対してその都度素早く対応できる能力を持つ必要がある。過去ーまたは未来ーにこだわりすぎると視野が狭まり、変化や機会や脅威への対応力が弱まる。多くの点で、これは禅や格闘技の訓練と同じで、献身とオープンな心が求められるのだ。
3. 地図よりコンパス
方向性ーコンパスーを持つことの重要性と、複雑性や変化の世界を地図に落としたり計画したりする落とし穴(中略)成功への鍵はルールや、果ては戦略ではなく文化だ。道徳的な指針の話であれ、世界観の話であれ、感性や嗜好の話であれ、ぼくたちがこうしたコンパスをセットするのは自分たちが作り出した文化と、その文化をイベントやメールや会合やブログ投稿やルール作りや、果ては流す音楽を通じてどう伝えるかを通じてのことだ。それは、ミッションステートメントやスローガンよりは、むしろ神話体系のようなものだ。
*ここの含意には若干の危うさを感じる。
4. 安全よりリスク
中国の混沌とした市場のことが例として。「リスクと実験を受け入れるどころか喜ぶこと。そして失敗してゼロからやり直してもかまわないと思うこと」「もっとその場しのぎの付け焼き刃だった時代への復帰」(P157)
5. 従うより不服従
創造的な不服従。免疫系やインターネットなどは攻撃されると強さを増す。システムは適応して強くなる。その複雑性と、かれらが存在すらしないかもしれないものを探そうとしている事実をマネジメントする唯一の方法は、自己適応的なシステムを作ることだ。「自分で考えて権威を疑問視する」
「言われた通りにしていてノーベル賞を受賞できた人はいない」「頑健な不服従」
6. 理論より実践
それっぽい論文で試す(騙す)話。(P214)まるでどこか遠くの島だけで話されている言語で議論に勝っているようなものだ。
7. 能力より多様性
8. 強さより回復力
9. モノよりシステム -
Posted by ブクログ
現代の経済的不平等の解決策について、オックスフォード経済学者により書かれたもの。ピケティの「21世紀の資本」では富の実態を明らかにしたが、これに続き富の不平等を是正するための方策を具体的に述べている。所得税最高税率65%、児童手当や年金の増額など、社会主義に近い大きな政府を目指す政策を推奨していると思われる。論証は論理的かつ学術的であるが、労働者のインセンティブ維持が難しいように思う。イギリスを題材にしていることから、必ずしも日本に適用できない部分もあると思う。富の実態を詳細なデータで示したピケティの「21世紀の資本」の方が興味深かった。
「中国とインドのジニ係数は50%に近く、北欧諸国のおよそ2倍だ。ブラジル、メキシコといった中南米諸国も高く40%を超えている。その次に高いのがアメリカとイギリスだ」p25
「裕福な家庭は、世論調査の回答率が低い」p57
「失業は、不平等の源」p89
「企業は学習してその手段のやり方を改善し、生産コストは常に減少する」p102
「不平等の減少は、市場所得の不平等減少と効果的な再分配が組み合わさることで実現したことを歴史が示している」p127
「人間によるサービスの側面を軽視すると、予算削減は所得を労働者から資本に振り向けるのに貢献する(機械化が進む)」p135
「労働者の雇用性を増大するような方向を奨励し、サービス提供における人間的な側面を強調すべきである」p136
「(金融サービスが儲かる理由)常識では、仮に閉じられた集団内で人々が紙片を交換し続けたとしても、これらの紙片の総価値はそれほど、いやまったく変化しない。もしその閉じられた集団の中の誰かが桁外れな利益をあげたとすると、これらの利益は他のメンバーの犠牲の上のみで成立する」p189
「EUをめぐる最近の政治論争の多くは、その根底に国際リーダーシップ喪失をめぐる懸念がある」p274
「単一企業とは違い、国には対外的な不均衡に対する調整プロセスがある。輸出が減って輸入が増えれば、為替レートは下がり、輸出業者や財やサービスを、輸出市場と見合いの価格で売れるようになる。同じく、為替レートが下がると輸入財が国内価格で高価になり、その価格を適正な水準にする」p316 -
Posted by ブクログ
タイトルでもある「アニマルスピリット」という言葉は、書中に何度も出てくるが、訳者によればケインズの「一般理論」において出てくる言葉であるという。元々の邦訳では「血気」と訳されていたようであるが、本書においては、経済的合理性だけで行動することができない人間の意味で使われているため、言葉の持つ印象と乖離することからそのまま、「アニマルスピリット」としてそのまま引用されている。
さて、そのアニマルスピリットであるが、基本的に5つに分類されている。
1.安心
2. 公平さ
3.腐敗と背信
4. 貨幣錯覚
5. 物語
こうした要素が人々の合理的な判断を限定的なものにし、ときに非合理的な行動をもたらすという。
本書は、著者が書中でも述べているようにマクロ経済学の本であり、行動経済学が主たるテーマとして書かれているわけではない。したがって、R/セイラーのような、実験に基づく人々の非合理的行動のケーススタディはあまりなく、非合理行動をより一般化したものである。それだけに抽象的で難解である。それだけに、読者が投資や実務などの実社会での活動にここで書かれていることを直接役立てるようなことは期待すべきではない、極めて理論的な内容である。
基本的は、フィリップス曲線やインフレなどのマクロ経済の基礎知識がないと理解が難しいであろう。 -
Posted by ブクログ
期待していたほど面白くはなかった。自由競争による市場最適化という概念は行動経済学の普及によって華々しく否定されたわけだが、ここでは一歩進んで(後退して?)「自由競争」の中では詐欺や犯罪者も同じラインで競争していて、均衡状態の一部になると主張される。そんなことは言われなくても当たり前の話だが、言われなくても当たり前の話に気付かないところが経済学の本領発揮なので、それはいい。しかし、ありとあらゆるマーケティング活動を詐欺同然に告発し、あまつさえ言論の自由まで脅かす主張には与せない。大切なのは、様々な心理的バイアスを理解し啓蒙することで、均衡の中に含まれる間違いや犯罪を減らしていくことであって、全ての利己的表現手法を悪者扱いすることは不毛だ。
もう一つ指摘しておきたいのは、Phising はインターネット上の詐欺行為を指す言葉として定着した用語であり、これを一般的な詐欺を表す用語として使用するのは誤謬を招くということだ。マイケル・ミルケンを同様の行為で批判しておきながら、Phising とフライドポテトの味付けを同じ Phising という名前で呼ぶ態度はいかがなものか。 -
Posted by ブクログ
言いたいことの核となる部分は理解できるのですが、やたらクドイ印象です。
また、目次を見て、「9つの原理と、実例を用いた原理の説明からなる構成」を想定して読み始めたのですが、「原理」と「説明」は、必ずしも対応しているようには見えませんし、話も、あっちこっちに飛び移って(たとえば、ある「原理」のところに、他の「原理」の「説明」となっている部分が多々ある印象)、非常に読みづらかったです。
自分がバカなだけなのかもしれませんが、あまり、読み手を意識していない印象を受けました。
書き手が悪いのか、企画がまずいのか、編集者がダメなのか、原因はよくわかりませんが、つぎ込んだリソースに対し、このアウトプットでは、いろんな意味で、割に合わないように思いました。
残念…。 -
Posted by ブクログ
異星間同士の戦争に巻き込まれ、リーグ星人と泥沼の交戦状態にあった人類。そんな人類の独裁的指導者モリナーリの主治医となったエリックは、妻キャシーに騙されて新型のドラッグJJ-180を飲んでしまう。ドラッグを飲んだエリックの意識は遠く1年後の未来に飛ばされ…
物語の展開が継ぎ接ぎ的な印象だったり、回収されない伏線があったりと、正直腑に落ちないところもある本書ですが(むしろディックらしい?)、訳者あとがきで詳しく解説されており、理解の助けになりました。リーグ星人との異星間戦争という大きな動きに隠れて、エリックと妻キャシーとのとてもプライベートな問題に焦点をあてた本書。あらためて考えてみると、本書のような登場人物のプライベートな問題を物語の芯に据えた作品は、ディックのこれまで読んだ作品のなかでもあまり思いつきませんでした(読み足りないだけでしょうが…)。それだけ離婚寸前の状況が苦しかったのか、と愚察してしまうところですが、現実のディックと本書で示されるラストの示唆が対照的であることは、どうにも気になるところ。「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」でディックが示したような前向きさが本書でも表現されたのか、あるいは、現実逃避を本書で図ったのか。凡人には理解の及ぶところではありません。