山形浩生のレビュー一覧
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この本の3分の1は、「21世紀の資本」という本の代名詞のようになっている r > g(資本利益は経済利益を上まわる)という式の解説である。残りの3分の2は、格差と資本集中の解消に資本に対する累進課税と、相続税への課税の有効性、政治と経済の関係についての考察である。とくに終わりにちかい50ページについては、EUの抱える問題点に言及がある。経済というと、様々な数式や、理論があるが、現実はどうだったのか。資料を集め精査し、経済理論の様々な色眼鏡を外してみると、事実が見えてきた。というかんじなのだ。いくつか、象徴的だと感じる瞬間が読んでいてある。たとえば、累進課税方式が格差をなくすための知恵の産物かと思いきや、大戦の戦費の穴埋めの目的で導入された事実などは、そう考えるとその結果は、偶然に近いものなのではないか。中間層があるのは、なにも、社会が進歩したというわけではない。放っておけば、いつかはもとの格差にもどるということなのか。考えることは、たくさんある。この本は、あまりに厚い。ここに書ききれないほどたくさん興味深いことが書かれているし、それぞれについて考えるとおもしろそうだ。私は、一回に読む量を小項目2こまでとし、一冊よみあげるまでに、ガイド本を2冊読んだ。途中で読んだ内容が、書かれている内容を読み取れているか、不安になったからだ。今、ウクライナとロシアの戦争は、経済に打撃と影響を与えているけれども、ピケテイは、どんなふうに考えるのだろう。
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歴史上、新たな技術などの”異質なもの”に対して「オープン」な姿勢で接した国家が成功してきた反面、それらの国々がいつしか「クローズ」になり、没落していったのはなぜか。人間の進化の過程を遡ってその要因を明らかにし、現代社会に影を落としつつある「クローズ」の脅威に立ち向かう方策を提唱する啓発書。
著者は、かつての古代ギリシャやローマ帝国から、8世紀以降のイスラム諸国、宋代の中国や近代オランダ帝国に至るまで、歴史上「帝国」と呼ばれた国々に共通する成功の根本要因は、”他所者”たちと能動的に交流する社交性や、それらがもたらす異文化や新技術などを認める寛容性と、既存の価値観に捉われずに新たなものを積極的に学び、模倣して取り入れる柔軟な精神にあったと分析する。
しかしそれらの国々が様々な要因で政治的・経済的に行き詰まると、社会生活が「ゼロサムゲーム」であった旧石器時代以来の人間の本能が呼び覚まされ、人々は”仲間”(オレたち)と”他所者”(ヤツら)を区別して後者を敵視し排外的になるとともに、未来の不確実性を嫌う一方で過去を美化し、古い安定的な価値観に執着するようになり、最終的には国全体が衰退することになるという。
著者は、17世紀以降のヨーロッパ啓蒙主義とイギリスの産業革命、それに続くアメリカを中心とした現代社会の繁栄が、今のところ歴史上「唯一の例外」であるが、それが今後も継続するかどうかは、「保守 vs リベラル」ではなく、「オープン vs クローズ」の対立軸を乗り越えられるかにかかっており、我々一人ひとりが本能的なクローズの誘惑を克服する必要があると説く。
誰もが頭では理解しているオープンさの重要性、それでも時にクローズになってしまう要因を、人類の歴史や人間の本能といった観点から丁寧に紐解き、説得力のある理論を展開しており、翻訳者のあと書きも含めて、「オープン」を読者一人ひとりが自分事としてより深く考えるきっかけとなる良書。 -
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ネタバレ「オープンな社会の方がクローズな社会よりも望ましい」という直感的にも納得感のある主張を、歴史を振り返りながら検証していくと同時に、なぜ人類はオープンな社会を維持できないのか/維持するにはどうすればいいのかについても考察された本。
人は、共感しやすい内集団と攻撃的に振る舞いがちな外集団をつくりだすが、内集団を広げて、多様性をどこまで取り込めるかが、オープン性にかかっているような気がした。
この内集団と外集団の境界は簡単に変化するもので、外集団と接して共通点を見つけるだけでも内集団は広がるし、逆に内集団内で疑心暗鬼が広がるだけでも内集団は狭まる。
オープン性を維持する方法は、シンプルに、外集団との接点を持つことと、内集団内での風通しをよくすることかもしれない。(もちろん、組織が大きくなればなるほど、このシンプルなことをやる/やり続けることは難しくなるが。。。)
あとは、ゼロサム思考が蔓延らないようにするということかもしれない。外集団の得は内集団の損というゼロサム思考は、なんとなく正しい気がしがちだが、必ずしもそうではない。(移民という外集団によって、仕事が奪われる/犯罪が増えるといった話は、数字を見ると必ずしも正しくない)
自由貿易や感染症に対するグローバルな対応等、オープン性を追求することで非ゼロサムの実現に繋がることに注目する必要がある気がした。 -
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ミルグラム実験については名前しか知らなかったが、近所の書店のフェアで表に出ていて気になったので購入して読んでみた。気持ちの良い話ではないが、とても興味深くて自分の場合はどうだろうかと考えさせられる本だった。
権威に服従するモードに入ると普段のその人がするとは思えないような残酷な行為でも命令に従って実行できてしまうという心理学実験。権威に服従するというとナチスなどを思い浮かべやすいが、学校で起きるいじめとかでも同じようなことが起きていると思うと、明確な命令がなくても容易に服従してしまうのではないかという気がする。訳者あとがきの批判にあったように人間は残虐性を社会規範という権威によって抑えるようにしているだけなのかもしれない。
集団を作って生きていく上では服従の全てが悪というわけでもないが、会社でも、社会でも、自分が自律して行動できているのかどうか、服従モードに入っていないか、自分に問うていきたいと思った。 -
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異常に興味深い。
組織で言われる主体性が必要だ云々という話を前提からひっくり返す話でもある。
そもそも人は権威に従属するものであり、そういった進化を辿ってきている。
それは進化の過程で必須の要素であり、進化を経て強化された。
自律モードと、組織モードがあり、組織モードを「エージェント状態」と言い、
自身の価値観に関わらず盲信的に権威に従ってしまう状態で、これは社会的な動物としての生存有利性から発生していると。
一方道徳心・良心などといった個人に属するもの(と筆者はいい、訳者はそれも社会的な権威であるというし、それが正しいと思う)は、2次的なものになると。
訳者が権威をそもそも定義していないという話はその通りで,自身の感覚も含めると、権威とは「自分が知らないもっと上段の崇高な目的を知っていて状況に合わせて正しい判断ができる。またイレギュラーな決断においても責任が取れる」ということのみであり、単純に白衣を着てればおkということでもないと思う。
かなり示唆深いし、とくに「エージェント状態」の言語化は俊逸以外の何者でもない。 -
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みすず書房 ノーベル経済学者 バナジー &デュフロ 訳 山形浩生 「 貧乏人の経済学 」
行動経済学の立場から 貧困原因を検証した本。個人が貧乏から脱却するための行動をし、まわりが それを支援をすれば、国の貧困も解消されるという論調。タイトルの「貧乏人」とは 開発支援が必要な国の国民を意味
貧乏脱却例の数々は 当たり前の事を言っているように思うが、言うは易し行うは難し
*食事は美味しさより 栄養素を重視せよ
*健康は 高くつく治療より、安く済む予防に支出せよ
*教育について投資効果を期待をするな、子供の学習を諦めるな
*保険で備えろ、貯蓄をしろ
「貧乏人は 大量のリスクを抱えている〜重要な情報を持っておらず、金融機関の融資や専門家の意見を受けられず、自分ですべて背負わなければならない」とある。ソーシャルビジネスは かなり厳しい環境と感じた
名言「家族は、完全な調和で結ばれているわけでなく〜他のメンバーに対する責任を規定した契約〜 不完全、粗雑、とても緩い〜でまとまっている」
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ネタバレ氏の作品の中ではまたマシな方と評される、と解説で書かれているか、SFをあまり読まない自分にとってはかなり刺激的でした。
一番最初に主観的に描かれるベントールチーフがあっさり死んてしまいいきなり先が見えなくなり困惑しました。神が実在する設定もいいですね。作中で語られた、地球上での人間以外の生物から見れば確かに人間は極めて不完全な神なのかも。終盤に大きなどんでん返しが2つあって楽しい。最終盤でのセスの失踪についても深みを感じます。食料の心配はないのだろうか、例えばコーヒーはつきかけているらしいし。人を平気で殺してしまう人間の心理は理解できないが究極の環境下であれば、なのかもしれない。
途中意味不明な言葉がたくさん出てきてSF読みづらい感は否めないけどこれは慣れの問題かもしれないです。 -
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クルーグマンからのアベノミクスへの応援歌です。
<アベノミクス:おさらい>
第1の矢 大胆な金融政策 異次元緩和 日銀黒田総裁
第2の矢 機動的な財政政策 10兆円の経済対策 麻生金融担当大臣
第3の矢 規制緩和、民間投資を喚起する成長戦略 菅官房長官
<クルーグマンが指摘するアベノミクスの優位点>
・実質金利を抑えながら、財政政策をすすめながら、財政赤字を軽減する
・デフレ脱却のために、政権とセントラルバンクが協調
・金融緩和とともに、財政出動の実施
<結論>
・日本よ!たちあがれ、そして世界の手本になれ
構成は以下
プロローグ
第1章 「失われた20年」は人為的な問題だ
第2章 デフレ期待をただちに払拭せよ
第3章 中央銀行に「独立性」はいらない
第4章 インフレ率2パーセント達成後の日本
第5章 10年後の世界経済はこう変わる
エピローグ -
Posted by ブクログ
最初に読んだとき、難しすぎて、よく理解できなかった。
ナニコレ?って思って、2021年11月21日の時点では
★ という評価にしたんだけど。。。
2022年1月19日
マイクロソフトが、米ゲーム大手アクティビジョン・ブリザードを687億ドル(約7兆8700億円)で買収する、というニュースが世界中を駆け巡った。
メタバースへの先行投資で、その朝、日経新聞を読んでて
「あ、この前読んだ、本に書いてあったヤツだ」
って気づいた。
アメリカの有形資産と無形資産の推移のグラフを見て、すぐにピンときた。
かつては、先進国ですら、無形資産は添え物でしかなかった。
しかし、アメリカでは、1990年代半ばに、無形投資が有形投資を追い抜く。
そのことが、この本には書いてあるし
2ヶ月後に読んだ日経新聞の記事にも同じことが書いてあった。
日経新聞の記事をまとめると
マイクロソフトは、なぜ687億ドル(約7兆8000億円)もの金額で、ゲーム会社を買収しなければならなかったのか?
財務諸表を見ても、よく分からない。
アクティビジョンは株式上場企業で、2021年9月末時点の純資産が
1兆9000億円。
買収額がそれを超えた部分
つまりマイクロソフトが支払うプレミアム(のれん)は6兆円弱にものぼる。
ここ10年で6件以上の企業を買収したマイクロソフトにはすでに
5兆7000億円ののれんがあり
新たな買収でそれが2倍以上に増える。
「払い過ぎだ」との声がある一方
「現在の財務諸表を基準にする点にこそ問題がある」との見方もできる。
のれんとは「会計監査で認識できない見えない資産」
現在の会計基準は製造業が主役だった時代に基礎ができたため
無形資産を計測しにくい。
有形資産の少ないIT企業は純資産が小さくなり
買収される際はプレミアムが大きく見えやすい。
アクティビジョンも本当の価値は1兆9000億円と7兆8000億円の間
マイクロソフトはメタバースのもたらす成長余地に期待を寄せ
デューデリジェンス(資産査定)の結果を受けて
のれん部分の6兆円弱を明確な無形資産だと考えた。
逆に言えばIT企業の無形資産がどの程度になるかは定期的な会計監査ではなく
M&A(合併・買収)の際に初めて顕在化する。
他のIT企業にも似た動きはあろうが
注目すべきは財務諸表には映らない「見えないメタバースの資産価値」になる。
この記事を書いた人
日経新聞コメンテーター:中山 淳史
自動車、電機など産業動向、経営トレンドに精通。編集委員、論説委員などを経て
2017年2月より現職。「GEと東芝」「移動の未来」などで講演多数。
2001年の米同時テロをニューヨーク駐在時に取材。アルゼンチン留学も。
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本を読んだだけでは、オレには内容が理解できなかったんだけど
日経新聞のこの記事読んで、やっと、意味が分かったわー。
この本の評価を、★ から ★★★★ に引き上げた。
これは、重要な本だ。
さて、本書の内容に戻る。
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図2-1 アメリカの有形資産と無形資産の推移
かつては、最先進国ですら無形資産というのは添え物でしかなかった。
アメリカでは、どうも、1990年代半ばに、無形投資が有形投資を追い抜いたらしい。
53
知識生産もGDPを引き上げる
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なぜ無形投資はスケーラブルなのか
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ウーバーの運転手やAirbnbホストやインスタグラム利用者のネットワークやHTMLのちからや、ウェブの元となっている無数の規格は、無形資産であり有形資産ではない。
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グーグル、MS、フェイスブックは、かつての製造業の巨人に比べて必要な有形資産が少ない。
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グーグルの検索はアルゴリズムが最高でほぼ無限にスケーラブルなら、ヤフー検索なんか使う理由はあるだろうか?勝者総取りシナリオが普通になるだろう。
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スピルオーバー
ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典「スピルオーバー効果」の解説
スピルオーバー効果
spillover effect
漏出効果,拡散効果という。
元来,公共経済学の分野での用語であり,公共サービスの便益が,給付を行なった公共体の行政区域を超えて拡散し,費用負担をしていない周辺の公共体もその便益を享受する現象であり,ある種の外部経済効果である。
たとえば,公園,公共施設の便益が周辺に及ぶ場合のほか,河川の水質規制の強化が下流域の他の公共体にその便益が拡散する場合などがあげられる。
最近では,技術開発の分野で,その効果が本来意図した業種を超えて他の関連業種にまで波及することを指していうこともある。
まとめ
グラフがいっぱいあるのは、視覚的に理解できるので分かりやすかった。
カタカナになった英語が、分からないものが多かった。
オレはモノを知らなさすぎる。
頭の良い翻訳というのは、ムダに、分かりにくい表現は使わない、ということを、山形浩生は分かっているはずなのに、どーして、こんな日本語になっていないカタカナ英語を多用するの? -
Posted by ブクログ
トライアンドエラーを繰り返す土壌ができた深セン、
品質テストを実施して品質担保してから出荷する日本では
スタートアップのスピード感が異なる。
「製品の新機能が正しく動くよりも、その機能が受け入れられるかを見るほうが大切」
深センはサプライヤーも集結しているので、
低価格の部品がすぐ手に入りやすく低ロットでのモノ作りにコストや時間がかからない。
手を動かすことでトライアンドエラーを繰り返し、コミュニティが形成されていったことで深センはテクノロジー都市になっていった。
元々深センは工業都市で、サムスンやフォックスコンなどの外資の下請工場が存在していた。
下請製造で得た知識で大手の模倣品を作り低価格で売り出すことで利益を得て成長していった。
底辺から1発当ててやろうという野心のある企業家や技術者が集まり今の深センが形作られた。
ソフトウェアはオープンソースの物も増えているので、新興国先進国関係なく同じレベルの物を享受できる。
ソフトウェアの分野は今後も各国で熾烈な争いを繰り広げるのだろうという気がしました。 -
Posted by ブクログ
トマ・ピケティ(1971年~)は、フランスの経済学者。2002年にフランス最優秀若手経済学者賞を受賞。パリ経済学院設立の中心人物、教授。社会科学高等研究院の研究部門代表者。
本書は、2013年にフランス語で発表され、2014年4月に英語版が発売されるやベストセラーとなり、同年12月には日本語版が出版されブームとなった。30ヶ国以上で翻訳され、経済学書では異例の300万部以上を売り上げている。また、2019年には、ピケティ本人が出演するドキュメンタリー映画が公開された。
私は従前より、世界中で格差を広げる資本主義に問題意識を持っており、これまでも、ジョセフ・スティグリッツ、水野和夫、広井良典(社会学者)らの本を読んできたが、近年の斎藤幸平のベストセラー『人新世の「資本論」』を読むに至り、あまりの大部であるがために敬遠していた本書を手に取ってみた。実際には、予めネットで本書のポイントを押さえ、その部分を中心に飛ばし読みをしたが、著者の言いたいことは極めて明確なので十分だったように思う。
論旨は概ね以下である。
◆長期的なデータによると、資本収益率(r)は概ね4~5%、先進国の国民所得の成長率(g)は1.5%程度であり、r>gである。これは、資本(不動産や金融商品)の増加率は所得の増加率を上回っている、即ち、資本で稼ぐ人と所得で稼ぐ人の格差は広がっていることを示し、これが資本主義の根本的矛盾である。また、<資本主義の第1基本法則>資本分配率(α)=r×資本ストック(β)なので、先進国のβを概ね国民所得の6倍程度であり、r=5%とすると、α=30%となり、国民所得の分配は、労働による所得:資本による所得=70%:30%となる。
◆また、<資本主義の第2基本法則>β=貯蓄率(s)/gなので、国民所得の成長率(g)が低くなるほど資本ストック(β)は増え、資本分配率が上がり、格差が拡大する。
◆格差の拡大という矛盾を解消するためには、(ユートピア的提案ではあるが)保有資産の透明化や、巨額の資産への世界共通の累進資本課税が必要である。
本書の特徴は、著者が15年をかけて収集した20ヶ国/300年分のビッグデータ(このデータだけでノーベル賞の価値があるという研究者すらいる)に基づく分析にある。理論的ではないとの批判もあるようだが、著者は、経済学者の多くが数理的な理論の研究に偏りがちであることに疑問を呈し、「(歴史的に)実際の数値はどうだったのか」を知ることに立ち戻るべきと語っており、まさにその点が本書の狙いだったのだ。
また、『資本論』を想起させる題名にもかかわらず、マルクスの主張とは大きく異なる(資本主義には不平等が内在しているという点のみ共通している)ものであるし、資本主義システム自体を否定してもいない。しかし、格差の拡大という資本主義の抱える最大の問題のひとつをデータで明らかにしており、ジョセフ・スティグリッツ、ポール・クルーグマンらニューケインジアン左派の経済学者の主張に近く(実際に本書は彼らからも称賛されている)、延いては『人新世の「資本論」』とも親和性があると言えるだろう。
資本主義の矛盾・限界と、修正のアプローチの一つとして、概要だけでも知っておく意味はある。