【感想・ネタバレ】死の迷路のレビュー

あらすじ

目的も告げられずに、未開の辺境惑星デルマク・Oに送り込まれた14人の男女。使命を伝えるはずだった通信は未達のまま、外部との接触を絶たれてしまった彼らは、その惑星で奇怪な光景を目にすることになる。謎めいた構造物、歌う人工蠅、光線を発射するミニチュア・ビル、不完全な複製を作り出す生命体……。やがて、一人また一人とメンバーが奇怪な死を遂げ始める!? 緊迫感溢れる筆致で描かれる鬼才の異色サスペンスSF。

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Posted by ブクログ

クローズドサークル・ミステリというと、アガサ・クリスティーの『そして誰もいなくなった』を思い出しますが、それをディックがSFでやっているのが面白かったです。

あらすじ:
目的を告げられずに、未開の辺境惑星デルマク・Oに集められた14名の男女(男8女5+遅れて男1が参加)。その使命を伝えるはずのテープを再生すると、テープは勝手に消去されてしまいます。そして、誰もが着陸後は二度と飛び立てないノーザーという乗り物できていたことが判明。通信手段も持ち合わせていないことがわかるにいたり、機械とも生物とも分からない生物がいるこの奇妙な惑星に、完全に孤立してしまったことに気付きます。
そんな状況の中、集められたメンバーが一人また一人と謎の死を遂げていきます……。

とにかく一人目は「えっ?」て感じの突然の死に方でビックリ!「神はいる」という前提の世界観で、犯人は全てを破壊する形相破壊神か、本の裏表紙に14人と書かれていたから、まだ来ていない14人目の人物か、それとも謎の生命体の仕業なのか……と最初はいろいろ考えましたが、読み進めてみると、最後はSFらしいまとめ方。人類が宇宙に出て行くと、こういうこともあり得るだろうなと考えさせられました。また、目次にあたる、全く本文と無関係な長ったらしい章立てや、「神はいる」という前提の小説で、スピノザやヴォルテールの名前がでてくるなど、遊び心もあって面白かったです。

それにしても、3Dホログラムや3Dプリンタ、ソードアート・オンラインのナーヴギアのようなVRマシンや生成AIなど、よく1970年に考えついていたなと感心しました。個人的には,適当に開いたページが、その時の指針を啓示する、作中の「スペクトフスキーの書」がアナログちっくで好きですね。

正誤(初版)
P26の5-6行目
配送係はは疑わしそうににらんだ。

配送係は疑わしそうににらんだ。

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2024年06月29日

Posted by ブクログ

未開の辺境惑星に目的不明のまま送り込まれた男女14人が繰り広げる脱出劇。外部との通信は絶たれ、移動手段もない中、一人また一人と謎の死を遂げていく。どこかで見たようなサスペンス・ミステリーだが、ディックらしい独特の世界観とヒネリがきいていて、SFとしてもよく出来ている。あの「驚き」をもう少し引っ張ってほしかったという、ギミックを使い切れていない感もいつものことで、もはやご愛嬌。ラストで全部持っていったので、素直に楽しめた逸品。

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2021年03月06日

Posted by ブクログ

ネタバレ

氏の作品の中ではまたマシな方と評される、と解説で書かれているか、SFをあまり読まない自分にとってはかなり刺激的でした。
一番最初に主観的に描かれるベントールチーフがあっさり死んてしまいいきなり先が見えなくなり困惑しました。神が実在する設定もいいですね。作中で語られた、地球上での人間以外の生物から見れば確かに人間は極めて不完全な神なのかも。終盤に大きなどんでん返しが2つあって楽しい。最終盤でのセスの失踪についても深みを感じます。食料の心配はないのだろうか、例えばコーヒーはつきかけているらしいし。人を平気で殺してしまう人間の心理は理解できないが究極の環境下であれば、なのかもしれない。
途中意味不明な言葉がたくさん出てきてSF読みづらい感は否めないけどこれは慣れの問題かもしれないです。

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2022年05月03日

Posted by ブクログ

SF界の巨匠・フィリップ・K・ディックによるSFサスペンス・ミステリー。未開の辺境惑星"デルマク・O"に集った14人の男女に降りかかる"死"、その真相とは――――。

外部との通信が断たれ、脱出することも出来ず、惑星に閉じ込められた男女が次々と"死"に誘われるという、なかなかのサスペンス・ミステリーが味わえる。惑星に存在する謎の構築物の正体は何か、「神が実在する」という設定がどう絡んでくるのか、ワクワクしながら読み進めることが出来た。

ディックの作品は、『ヴァリス』3部作を除けば比較的読み易いものが多いが、本作は特に読み易くまとまっている印象。ただ、その分尖った要素が少な目なので、少々物足りなく感じるかもしれない。

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2021年05月27日

Posted by ブクログ

ネタバレ

神学とSFという、相反する領域が合わさっている特異なSF小説だった。更に仮想世界と殺人事件の要素も加わっていたので、お腹一杯になった。仮想世界は、今では映画やゲームでもお馴染みのアイデアだ。しかし、本書が発売された1970年当時の人々には珍しく、非常に驚いたのではないだろうか。もしかしたら本書は、仮想世界を初めて世に知らしめた本家本元なのかもしれない。誰か教えて!(笑)

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2019年10月19日

Posted by ブクログ

目的も告げられぬまま辺境の惑星「デルマク・O」に送り込まれた男女14名。彼らが目の当たりにする光景は、謎めいた構造物に人工蠅、不完全な複製を作り出す生命体などなど…奇妙な惑星を舞台に、ひとりまたひとりと不可解な死を迎えるメンバーたち…緊迫感溢れる展開で魅了する本書は、著者自身の神秘体験も交えたサスペンスSFです。

舞台となる惑星自体が奇妙であることに加え、何らかの欠陥を抱えた登場人物が時折遭遇する奇怪な体験(このうちのひとつが著者の神秘体験のようです)の影響もあってか、物語には常に異様な空気が漂っています。この辺りはディックが得意とする描写なのでしょうが、とにかく不安を抱きつつ読み進めることに。一方、賛否分かれそうな結末は、個人的には嫌いではありません。「現実の世界に戻れたと思った瞬間に、幻覚世界の住人が目の前を横切る」とは「パーマー・エルドリッチの三つの聖痕」でしたが、これに通じるところがあるかと。ただ、あちらのように前途ある作品とは到底思えません。薬物や神秘主義に囚われた人々の悲惨な末路を想起せざるを得ない作品です。

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2017年06月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

不思議な宗教に、不思議な星、不思議な登場事物たちと、飽きることなく次へ次へと読み進めてしまいます。
物語の最初に出てきた主人公かなと感じていた人物が一番最初に死ぬ、最後はやりきれない夢オチ…と私はなかなか楽しむことのできた一冊でした。
ただ、『高い城の男』『アンドロイドは電気羊の夢をみるか』に比べるとそれほど強く印象に残る一冊でもなかったというのが私の感想。

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2017年02月25日

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