鴻巣友季子のレビュー一覧
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実はしばらく時間を置いてから感想を書き始めました。内容が難しかったからではなく、「自分はもう答えを知っていると思い込んでいた」問題を改めて見直すきっかけになったからです。
私たちの直感では、日本文学が英米で人気な理由は、村上春樹、異国情緒、禅的感覚、孤独、美学の違いなど、いくつかのキーワードに集約されがちです。しかし、この本の素晴らしいところは、結論を急がず、こうした「一見合理的だけれど過度に単純化された」説明を丁寧に分解していく点です。読み進めるうちに、著者が本当に関心を持っているのは「日本文学がどれだけ特別か」ではなく、「英米の文学体系がどのように日本文学を読み、必要としているか」である -
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ネタバレチャタム校に赴任してきた女性教師エリザベス・チャニング。懸想するリード。そばで彼らを見続ける主人公ヘンリー。老ヘンリーの回想で物語が進んでいくのだけど、この「におわせ」が苦手な人もいるだろうなと思いながら読んだ。
結局、男のロマンと女の嫉妬で正気のチャニングは破滅してしまうんだけど、一番かわいそうなのは前向きに勉強していたサラかなと。しかも主人公サラと良い仲になってるにも関わらず、事件が過ぎた後もチャニングのことばかり考えててなかなか理解できない。男尊女卑の時代の話なので貧乏くじを引くのは女性、というのはわかるけどあまりにも救いがないなあと思う。メアリとの最終章も男(ヘンリー)にやさしいだけ。 -
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タイトルがいい。
確かに子供のころ読んだ海外作品の中には、なんだかわからないけど、おいしそう、素敵っぽいと思った言葉がたくさんあった。
昔の作品から最近の作品まで紹介されている、内容も翻訳家さんならではの内容で、訳し方やその時代の背景なども書かれていて興味深かった。
youngを若きと訳すのか若いと訳すかでニュアンスが変わるという部分は、なるほど!と思ってしまった。翻訳家は日本語にも通じていないとできない職業だと感じた。
あとがきに書かれていた、読書は本を閉じておしまいではない。私たちの中に入ってから育ちつづけていくのだという部分にはおもわず頷いてしまった。確かに、本を閉じた後も、その本につ -
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ネタバレ文学史に燦然と輝く、モダニズム文学の傑作。
本当に読んでよかった。
第一部では、主にラムジー夫人の視点から、孤島の別荘を取り巻く人間模様と夫人の思考(意識の流れ)をひたすらに描写し続ける。描かれるのはたった1日なのに、情景と思考の記述が膨大で、この時点で文字どおり「実写化不可能」な作品だと思い知らされる。
1920年代に書かれた作品にも関わらず、男性像と女性像に対して赤裸々な描写が見られ、フェミニズム文学としても記念碑的作品だと言える。
読み始めてしばらくは面白さが全然わからなかったものの、チャプター17の全員での会食から突然面白くなった。ここで描かれる人物像がとても丁寧で、「どこかが残念な -
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かつてアイルランドにあった「ふしだらな娘」の収容所に閉じ込められた少女をみた主人公が……の話。
アトウッドの「侍女の物語」とは違って、これは100%真実。
最近も、この種の施設から乳幼児数百人の遺体が見つかったらしい。
1996年まで実在していたそうで、私が最初の妊娠をした時にもあったんだと思うと恐ろしい。
自分の家族が不利益を被るとしたら、私はどう行動するだろうか……と思う。
ファーロングは、自分自身が「助けられた」ことを理解していたからこんな行動ができた。
「ウィルソンさんがいなければ、うちの母さんは十中八九、あの施設に入れられていただろう。自分がもっと昔に生まれていたら、いま助けよ -
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妖精や魔女の国、アイルランドのクリスマス。
カトリックの絶対支配の階級社会。
その中で誠実に生きる労働者の男性。
寒くて暗い中の仄明るいアイルランドのクリスマス。幻想的にも見えるクリスマスの様子が実態として浮かんでくる筆致がよい。
精一杯労働し、家族との生活を守る1人の男性の虐げられた女性の救済への葛藤が読んでいて苦しい。(これまで必死で守ってきたものが絶対的な権力に抗うことで失ってしまうかもしれない、これは普遍的なテーマだろう。)
キリスト教の暗部と共同体としての機能を明示しており、辺境の文学としての面白さもあった。アイルランドの空気感がよい。(イギリス児童文学への系譜を感じる。) -
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小学校時代に読んだ児童文学がいっぱい。
「あしながおじさん」「若草物語」「ジェイン・エア」
「嵐が丘」は好きすぎて3回くらい読んだ。
「風と共に去りぬ」は恋愛小説の枠を超えて、土地をめぐる不動産小説であり、世界が’ひっくり返る敗戦小説であり、女性同士の複雑な友情関係を描くシスターフッド小説であり、血縁関係にない家族を抱える介護扶養小説でもある、という分析にめっちゃ納得した。
最近はもっぱらしか読んでないけど外国文学もまた読んでみたくなった。
特にオースティンの「高慢と偏見」エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」
タイトルの塩漬けライムとは、酢漬けのピクルスの意。
この頃まだピクルスは日 -
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1985年、不景気で閉塞感漂うアイルランドの小さな町が舞台です。政治・宗教的な背景があるものの、簡潔な文章で分かりやすく、本編が130ページほどの中編小説です。その割に奥深く、当時の時代の空気感が上手く表現されていると感じました。
当時のアイルランドには、カトリック教会が運営する母子収容施設と洗濯所があり、洗濯場では恵まれない少女や女性が監禁、労働、虐待を受けていた史実(「マグダレン洗濯所」の闇)があったようです。
主人公は、40手前の石炭商を営むビル・ファーロング。妻と5人の娘がいて、家族思いで真面目に慎ましく暮らしています。ただ、彼の母親が未婚の母で、父親を知らないという出自があ