鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    物語が大きく動き出す。スカーレットが小生意気な少女から大人の女性へと変貌していく様が頼もしい。
    戦争の恐ろしさ、そして、絶対に必要のないものだということが改めて思い知らされた。

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    2015年10月15日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    数えてみたら高校生で読んで以来、ほぼ30年ぶりの再読である。数回読んではいるし、映画も観ているし、と思いつつ新訳で読み始め、旧訳・映画から受けていた印象がどんどんずれていくことに驚いた。
    とはいえ、スカーレット像はそのままである。なぜか。スカーレットの心情は包み隠さず、あけっぴろげに語られるからである。誰かが何か示唆的なことを語り、読者も神妙な気持ちになったとたんに、スカーレットは心の中で”何の話をしているのか、さっぱりわからない”とばっさり切り捨てるものだから、私も、小賢しく頷いちゃっていた自分が恥ずかしくなったりもする。
    ということで、高校生にも主人公の(単純な)心情は余すところなく理解できたのだろう。
    スカーレットのお向かいにいるのが「影の主人公」メラニー。対して彼女が本当は何を思い、どう考えていたのかは最後までベールに包まれたままだ。ただし、その行動には嘘がないので、読者もメラニーの人間性を理解し愛する(スカーレットは全く理解してなかったけど)。
    旧訳ではいかにも古い小説を読んでいる”ありがたさ”もあり、それも面白かったのだが、新訳は文章のリズムで読者の心を一気にその場に引っ張り込む。旧訳ではあまり印象に残らなかったスカーレットの「ダサさ」(敢えて言おう!)が際立ったのも非常によかった。
    ところで、映画の印象に引っ張られて当時は気づかなかったが、これは「戦争小説」でもある。最初は絵空ごとのように思えていた戦争が、やがて間近に迫り、わが身のこととして降りかかり、一般の市民すら、戦場でもないのに人を殺めることにもなる。
    背後に多くの物語を含む小説。訳者解説によると作者は「映画化は無理」と言っていたそう。映画はあくまで小説の一部分しか切り取っていない、だからこその傑作となりえたのだろう。語られていない部分を誰かと語り合いたいくなる(しかも熱を込めて)のは、各々の人物造形がしっかりとしているから。わたしが誰かと語り合いたいのはメラニーを後継者とする「聖母」の母、エレンである。

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    2015年08月13日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    レットとスカーレットの結婚生活での二人の気持ちの変化が絶妙に著されている。最後の名台詞も心にとめておきたい一文。

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    2015年07月27日
  • 風と共に去りぬ 第4巻

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    <タラ>や家族を救うため、フランクと結婚したスカーレットが実業家として、活躍する姿が読みどころ。まったく生活力のないアシュリやタラを救うためスカーレットが奔走する。

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    2015年07月21日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    スカーレットがメラニーのお産を援けるシーン、南部連合が敗れ四面楚歌のなか逃げ惑うシーンは、最高の読みどころ。

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    2015年07月06日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    主要4人の心の動き…とりわけ映画では今1つわからないままの最後のレットとスカーレットの、行ったり来たりの心の動きが丁寧に書き込まれていて、あれこれ納得する。もしや「風と共に去りぬ」はストーリーを楽しむ大河小説というよりも、”心理小説”なのかもね。。。

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    2015年07月04日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    南北戦争に翻弄されながら強く生きるものの、何もかも失った女性の物語。
    ありがちな「運命に翻弄されながらも地道に正直にコツコツ生きたヒロイン」とは訳が違う。戦争では敵兵を殺し、戦後混乱期には詐欺まがいの商法で金儲けし、奴隷さえ用いた。正直者はバカを見ると言わんばかりに、伝統や常識というものに唾を吐きかけて行く。
    戦争で既存の伝統・秩序がひっくり返る様の描写は見事というほかなく、是非読むべき長編小説である

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    2015年07月02日
  • 嵐が丘

    aaa

    訳者によってよみがえる名作

    翻訳なんて誰がやってもだいたい同じ…と思っていましたが、鴻巣友季子さんの新訳は全然違う!
    キャラクターはみずみずしく、ストーリーも臨場感に溢れ、風景もリアル。
    大学の授業で他の訳との読み比べもしましたが、翻訳の力を最も感じさせてくれました。
    有名だから題名だけは知っているしいつかは読もうと思っているけど…という人はぜひ鴻巣訳でどうぞ!

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    2013年10月10日
  • 全身翻訳家

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    大変楽しく読ませていただきました。
    言葉や発音についても考えさせられる。
    言葉が発生するところが見られるという点で、子どもが欲しいなあと思った。

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    2013年01月07日
  • 全身翻訳家

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    「やみくも」を全面組み替え、加筆訂正、そして新しいものをプラス。
    ということで、「やみくも」を買った人でも、損はなし。

    翻訳や言葉についてのあれこれを真摯に突き詰めるかと思うと、日常で出合った出来事にプチあっと驚く結末?があったり、思わぬ切り口での考察で「そうなのか」と発見させられたり、かと思うとちょっとしんみりしてみたり。
    どのエッセイも中身がギュッと詰まって、「いずれの地もそれぞれ」に楽しい。

    青山南さんといい岸本佐知子さんといい鴻巣さんといい、翻訳家の人はエッセイの巧い人が多い、と思う。
言葉とじっくり向き合っているせいなのか、独りであれこれ考えることが習慣になっているせいか。
    鴻巣さんの場合は、発想のユニークさというよりも、言葉へのこだわり豊富さが、面白さを生んでいるようである。
    「翻訳というのは、ひとことで言うと、〈解釈〉のことだ。」(P208)とするならば、鴻巣さんは世界をこういうふうに解釈しているのね、ということでもある。

    しかしやっぱり、久世光彦の項が出色の出来、と思う。
    「面白うてやがてかなしき」が、小説やエッセイの一つの理想だと思っているのだけれど、この久世さんの項がそれ。久世作品を喩えて、リキュールボンボンとは、なんとも見事。やっぱりこの項が一番好きだな。

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    2011年08月15日
  • 嵐が丘

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    話は途中から面白くて引き込まれるのに、登場人物すべて口や態度が悪く疲弊して一旦本を閉じるという、かなりのエネルギーを消費する独特の作品だった。
    人に勧められないが、この作品でしか感じられない心の生々しさと複雑な環境があり、確実に読んでよかった。
    リンバスカンパニーの元ネタを知ろうと読んだ本で、長かったが面白く読めた。ネリーの語り口がなければ読み切れなかっただろうし、そのくらい彼女の語りが上手い。

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    2026年10月06日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    自分の心が抜け出して、本の中の人物たちに憑依している感覚。
    いろんな人物が出てくるが、不思議とそれぞれに憑依体験ができる。そのせいで、クライマックスでラムジーが息子を一言褒めるシーンでは感無量に。
    人の心の動きをここまで取り出すことに成功している作品は稀有。読んでいて先が気になる!とか、ワクワクするとか、そういう作品ではないけれど、凄いものを見た感覚は残る。

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    2026年10月05日
  • ほんのささやかなこと

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    非常に短い作品だが、それ故に物語が閉じていない。これまでのこと、これから起こることに思いを巡らされるのは、同著者の『あずかりっ子』と同様だ。ほんのささやかなこと、ささやかな行動や言葉が、人の運命を変え、人を形作る。しかし世間の空気に抗い、少なからぬ犠牲が予期される中でなされるささやかなことに、どれだけ人の愛や勇気、人間性のなかのもっとも偉大なものが宿るか。こんなにも短いのに、物足りなさなく伝えている。

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    2026年10月04日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    ネタバレ

    ホメロスの『オデュッセイア』を知らないまま読んだけれど、なんとなく分かる程度には説明があってよかった。あくまでも現代的に読みやすく語られていて、女たちの声が身近に感じられるつくりになっていた。
    それだけに若い女中たちが見世物のように罰せられるシーンは心理的に抵抗を感じる箇所でもあり、冒頭の『オデュッセイア』の引用では震え上がった。
    20年もの長期に渡る王の不在を、ペネロペイアひとりで守り切ることはできなかっただろう。ペネロペイアの手足となって働いていたはずの女中たちをこのように処する神経とは……。女は家の持ち物でしかないのだ。著者が女中の絞首に疑問を抱くのも理解できた。
    けれど印象的な数字などから、もっと象徴的な出来事や信仰を描いたものかもしれないという考察もあり、神話の世界って大変だなと思った。そもそも国に帰れない期間が長すぎる。
    ペネロペイアが自由に語ってくれるので堅苦しくなく読めたのはよかった。でも私が心を寄せるのはやはり女中のほうだった。

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    2026年10月04日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    まだ触れていない海外文学のあれやこれ。翻訳という視点にもふれることができ、ちゃんと読み直したいとも思える。

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    2026年09月28日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    読書会のため。以前読んだのは中村佐喜子訳。次々変わる主体、時間の行き来、一定しない時間の流れなども慣れてくると途中からぐんと面白くなる。反復の多さが、読む側の意識を揺さぶってくるところも。3部では1部のいろいろを回収。リリーにはびっくりさせられたり。

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    2026年09月27日
  • ほんのささやかなこと

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    1986年のアイルランド。修道院で行われていた若い女性への酷い搾取と、それを知ってしまった一人の善良な中年男性。身近なところにある不正や苦しんでいる人にどう接するか、読み手にもそっと問いかけてくる。

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    2026年09月26日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    初ヴァージニア・ウルフである。

    イギリスアメリカの本や映画によく引用されたり、名前が上がってくるので、もちろん名前は知っていた。「ヴァージニア・ウルフなんかこわくない」という映画もあるほどである。

    友人がSNS で勧めているのを見て読んでみた。

    基本は、登場人物たちが何を感じて考えているかの頭の中を文章にしたもの。主人公であるラムジー夫人のものが一番多いが、ラムジー夫人の考えを意識について書いていたかと思うと、次に別な登場人物の意識や考えに変わっていたりする。

    この前読んだ「長い一日」はこれであったかと改めて思った。「意識の流れ」という、20世紀のモダニズム文学の手法であると、何かのレビューで読んだ。

    確かにプルーストの「失われた時を求めて」はこんな感じである。今となっては当たり前と思われる手法が、実はある時代において、新しいものであったということに、まずは驚いた。

    この作品については集中して読んてしまうところと結構読み飛ばすところがあった。主にラムジー夫人が夫について考えてることや別の登場人物であるリリーの思考などが私の興味を引いたようだ。

    そして、私自身の意識や思考や感情も考えてみると、絶え間なく流れている。いろんな新しいことを考えている。ずっとまっすぐに同じことを考えてるのではなく、いろんなことが入ってくる。例えば、仕事で1つの大きいこと考えたとしても、「あ、そういえば昨日の夕ご飯何食べたっけ?」とか「あの人のあの言葉ムカついたんだ」とか、いろんなことをちょいちょい思い出しながら、メインのストリームに戻っていく。メインのストリームがあることもあれば、それすらもなくて、細切れの考えが次から次へと、しりとりのように動いていくこともあるし、全然関係ないものが動いていくこともある。

    これを表現した作品らしい。2章があることによって、意識の流れの羅列に大きなメリハリがつく。

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    2026年09月21日
  • ほんのささやかなこと

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    2022年オーウェル政治小説賞
    2022年ケリー賞(アイルランド文学部門)

    誰かのほんのささやかな善意の積み重ねでいまの自分がいるんだと思える本だった。
    1996年までの、アイルランドのカトリック教会と国家の政治腐敗の実態と、母子収容施設で亡くなった人の多さに驚いた。
    町の不正と犠牲を見過ごしながらキリスト教徒として生きることに葛藤するファーロングの心情が胸に迫った。

    作中に出てきたアイルランドの伝統的なクリスマス菓子、ミンスパイを食べてみたい。

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    2026年09月18日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    チャレンジの気持ちで読みました。近代文学。

    感想。めっちゃ味わいのある面白さ。唯一無二。
    1番印象的だったのは、その独特な筆致。"〇〇が恭しく言った"とかわざわざ書かない。こんなに流れるように人物の視点が変わりがわりするんだ!ととっても驚きました。でもそれが非常にクセになるんです。気がつくと同じ文なのに主語が入れ替わってる。なんてことが沢山ある。この"アクションを起こす主体が入れ替わる立ち替わりする妙技"を、この一度目の読書の中で多分に感じて面白かったのは、家族が揃って同じ卓で夕食を取るシーンでした。
    このスタイルなのに全体通した感想が"読みにくくて分かんないなぁ"という感想にならないのが凄い…

    あとは
    "灯台"というのが登場人物全員から"心理的距離があるもの"として描かれている感じもあり、なんというか"この本の灯台って実は読んでいる自分たちが思い描いてる灯台の形を思い描いて書かれていないんじゃないか?"と予想でき得る感覚を得て、そこも面白ポイントだった。

    近代文学なので表現が文語的なところもあり、(多分他に比べたら全然マシな方だと思うけど)そこには読書経験のなさから苦戦はしたところはある。しかし間違いなく"また読みたいな。絶対また時間作って読もう!"って思えた作品だった。2回目読んだ時には感想はまた変わると思う…

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    2026年09月10日