鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 誓願

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    ギレアデ国内で権力を握るリディア小母。カナダで両親を謎の爆破事件で失ったデイジー。良き妻となるよう教育を受けたギレアデのアグネス。3人の異なる視点で描かれるギレアデ滅亡までのサバイバル。

    『侍女の物語』に出てきたリディア小母がまさかこんな事の糸を引いているとは、と驚きました。少しのミスが命取り、常に正しい選択をし続けなければ生き残れない熾烈な環境に、どれほどの胆力があればこんなに強く生きられるのだろうかと思わず眉間に皺を寄せながら読んでいました。3者それぞれに語り口が異なり、デイジーのセリフや文章が生き生きとしていて引き込まれました。

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    2025年08月21日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    p.165〜170が出色。
    家父長制やら父権制やらの生皮をベリベリ引っぺがす爽快感が素晴らしい。
    これが四半世紀前に書かれた作品だとは。
    アトウッドの炯眼に驚くばかり。

    巻末に古典劇や神話のなかで沈黙させられてきた女性たちが語る作品群が列挙されていて、そちらも興味深い。ぜひ、読んでみたい。

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    2025年08月16日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    そうそう、『レベッカ』ですけどね、私も、主人公は〇〇なんじゃないの?!と思いながら読んでいたので、なんか我が意を得たりと嬉しかった。

    名作の紹介ということで定番揃い。気がつけばたぶん全部読んだことがある作品だけれど、再読したくなる。
    読んだことのない人も、入りやすく、読みたくなるんじゃないかな。

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    2025年08月16日
  • ほんのささやかなこと

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    1996年までアイルランドに存在していた「マグダレン洗濯所」。ここは政府からの財政支援を受け、協会が運営していた。未婚や婚外関係で妊娠した女性が無償労働を強いられ、ひどい女性虐待が行われていたという。
    この物語には、この洗濯所をモデルとした施設が登場する。主人公ビルは、女子修道院に石炭を配達しにいった時にある少女と出会う。彼女がそこでずさんな扱いを受けているのを目にするのだ。
    彼自身、母親は未婚で彼を産み、父親を知らない。しかし運よく母が女中をしていた屋敷で育てられ、キリスト教徒として真面目に生きて来た。
    生活は決して豊かではないが、妻や娘たちに誠実なビルのセリフはいちいち心温まる。
    ラストは

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    2025年08月08日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    最初、小説だからと追うべきストーリーを探して読んでいるうちは意味がわからなかったけれど、読み方が違うのか❗️と納得してから、一気に読み進んだ。
    人の心の中は、こんなにも散らかっていて、面白い。
    ある意味、すごくリアルだなと思った。

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    2025年07月24日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    文学史を塗り替えた記念碑的作品という触れ込みだが、私には少々合わず。わずか二日のできごとを語り手の視点を目まぐるしく変えながら意識を流体のように繋ぐ表現手法は確かに素晴らしいと思うが、物語の全体像がいまいち掴めない。とはいえ、たしかに冒頭の「その影や光の射す一瞬を結晶のようにして」やP118の言い回しは著者の圧倒的な表現力を感じさせる。また、「窓」「時はゆく」「灯台」への変遷は、わずか二日のできごとにも関わらず、時の移ろいの儚さを巧みに描き出す。テンポや表現を楽しむような英国文学とはやや相性がよろしくなかった。

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    2025年07月23日
  • ほんのささやかなこと

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    クリスマスを目前に控えたアイルランドのお話
    愛する妻と5人の娘に恵まれ、石炭や薪など燃料の販売を商いとする中年男性ファーロングが主人公

    未婚の妊婦の収容施設、人身売買のような養子制度、カトリック教会と政府の癒着など、この本を読まなかったら知ることのなかった差別に驚いた
    解説までしっかり読むべきだと思った

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    2025年07月13日
  • 嵐が丘

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    世代に渡る話でとにかく長い。
    恋愛小説なのか、復讐劇なのか、喜劇なのか、なにを見させられているんだろうと思う。ヒースクリフについては徹底的に共感できない。最後までわからない。意外と人が人を想うってそういうものなのかもしれない、という話なのかもしれない。

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    2025年07月10日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    懐かしいものからどうにも読めなかったもの(怖いのだめ)歯が立たないもの苦手なもの読んでみたいものまで。さすがの文章。

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    2025年06月23日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    面白かった。アトウッド自身SF = Speculative Fictionと呼びたいと言われているのも納得。でもやはり自分にはまだまだ歴史的・文学的教養は全然足りないことも思い知らされる。

    タイトルがイリアス(イリアド)に絡めてペネロペイア→ペネロピアドになっているという点や、古典の舞台を思わせる幕間などやはり自分自身がもっと古典を知っていればもっと面白さも伝わるのだろうなともどかしくも思った。

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    2025年06月22日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    美しい美術教師が村にやってきたことから、
    始まる事件。
    いやー。何が起こったの?
    全貌が全然見えないなか、
    何かよくないことが起きたのは確かで。
    じわりじわり、見えて来た頃には、
    なんてことに!
    と、深いところに落っこちたような
    感覚になった。

    後戻りできない今となって、
    ヘンリーの心に横たわった闇。
    最後のアリスとのシーン、辛かった。

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    2025年06月19日
  • ほんのささやかなこと

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    著者の名は知らなかったが、役者の鴻巣友季子さんのお名前に見覚えがあったので手に取った。思っていた以上の良書。私が訪れたアイルランドはよく晴れた空にミモザがここにもそこにも咲溢れていたが、この小説からは薄暗い曇り空と寒風を感じる。身近な人の愛情に育てられた主人公が、自らの手で掴み取った平凡な幸せに飽き足らず、言われない苦しみを味わっている少女を救済すべく一歩踏み出す。現実にも似たようなことがかつて起こっていたと知り、憤りを覚える。特に、女性が、なぜ同性の庇護すべき存在を虐待するのか、理解に苦しむ。

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    2025年05月27日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    過去の追憶から始まる物語。主人公は、とある村の校長の息子。
    物語は、彼の記憶をたどる形で、かつて村で起きた事件が描かれていく。

    ミステリー要素はないものの、随所に散りばめられた不穏な描写が印象的で、最後に明かされる事実と、それまでの出来事が一つにつながる構成がとても面白かった。

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    2025年05月08日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    意識の流れ文学というジャンルがあることを知らず読み始めたので20ページくらいまでは全然内容が入ってこず、挫折しそうになった。あまりにも難しくてネットで調べて、予備知識を入れてから読み始めるとかなり読みやすくなった。

    語り手の内面描写(心情、回想、幻想)がグラデーションのように滑らかに描かれ、あえて語り手が判然としない文章がはさまったり、いつのまにか語り手が変わっていたり、斬新な比喩が出てきたり、集中して読まないと話がわからなくなってくるが、集中して読んでいるとどんどん話に引き込まれて、読むのがやめられなくなる。
    普段、自分の思考の流れを意識したことはないが、何かを考えているときに他に意識がそ

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    2025年05月01日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    文体が面白かった。最初に語っていた人物が話しかけると、その後は話しかけられた人から見た文体になっていて、また何かをきっかけにある人へと変わる。その繰り返しなのだが、私にはとても読みやすくて楽しかった。もっと難しい小説だと思っていたが、その文体が楽しくて一気に読んだ。内容を語れるわけはないが、なんというか好きな世界観だった。心地良い小説。

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    2025年04月29日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    この世は立体世界
    だから端と端は一致する。
    スカーレットとメラニーは両極端であるからこそ近しい。

    レットに世の中を語らせ、スカーレットの滑稽さと逞しさに先進性を潜ませ、真の強い普遍な存在のメラニーに“神”を感じさせる。

    立派なひとは一人もいない、アクの強い人たちが繰り広げる壮大なゴシップ物語

    ただ、物語の世界ではおおよそは異端児だったレットも、娘ができた途端に普通の人であることを暴露した。

    やっぱりこの世界は女性のものだ。

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    2025年04月23日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    最終巻で感想を書く

    南北戦争の影に隠れた本当の戦い、それは「何をしても生きる」というスカーレットの壮絶な戦い

    「明日考えよう」
    ちっともヒロインらしくない、
    憎らしいほどのこの主人公が愛おしい
    さぁ、後半へ突入

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    2025年04月16日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    文体に最初なれず、投げ出そうかとも思いましたが、読むうちにどっぷりハマってしまいました。そうそう。人を見る、人に見られるってこうだよねっていうこと。結局自然の一部である人間ってアイデンティティというよりもこう行き来する存在なのだという考え方もあるのねと。

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    2025年04月13日
  • ほんのささやかなこと

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    ファーロングという男性が、不遇の女性(少女)のために行動を起こすのがよかった。そこに至るまでの彼の過去、現在を丁寧に中編にまとめているのもよかった。彼が未婚の母のもとに生まれながらもウィルソン夫人たちの加護のもとに育ったこと、家族を持てたことで問題意識をフラットに、熟慮することができたのも大きいのではないかもしれない。声高に日々、活動する訳では無いが「ささやか」ではあるものの、それが誰かの心や命を守る大きな一歩だと感じた。

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    2025年04月04日
  • ほんのささやかなこと

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    アイルランドの小さな町で日々働いて一家を養う主人公ファーロング。彼の出自以外は退屈といってもいいくらいのささやかな日常生活が淡々と語られるのだけれど、どこか落ち着かないというか不穏なものを感じさせられる。
    最初はファーロング自身が抱える自分の来し方や将来への漠然とした不安なのかと思っていたが、それだけではなかったことに驚き。そして実話を元にしていることにまた驚き。
    ラスト、決然と一歩踏み出したファーロングの姿に勇気づけられた。

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    2025年03月17日