鴻巣友季子のレビュー一覧

  • ほんのささやかなこと

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    妖精や魔女の国、アイルランドのクリスマス。
    カトリックの絶対支配の階級社会。
    その中で誠実に生きる労働者の男性。
    寒くて暗い中の仄明るいアイルランドのクリスマス。幻想的にも見えるクリスマスの様子が実態として浮かんでくる筆致がよい。
    精一杯労働し、家族との生活を守る1人の男性の虐げられた女性の救済への葛藤が読んでいて苦しい。(これまで必死で守ってきたものが絶対的な権力に抗うことで失ってしまうかもしれない、これは普遍的なテーマだろう。)
    キリスト教の暗部と共同体としての機能を明示しており、辺境の文学としての面白さもあった。アイルランドの空気感がよい。(イギリス児童文学への系譜を感じる。)

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    2025年11月01日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    小学校時代に読んだ児童文学がいっぱい。
    「あしながおじさん」「若草物語」「ジェイン・エア」
    「嵐が丘」は好きすぎて3回くらい読んだ。
    「風と共に去りぬ」は恋愛小説の枠を超えて、土地をめぐる不動産小説であり、世界が’ひっくり返る敗戦小説であり、女性同士の複雑な友情関係を描くシスターフッド小説であり、血縁関係にない家族を抱える介護扶養小説でもある、という分析にめっちゃ納得した。
    最近はもっぱらしか読んでないけど外国文学もまた読んでみたくなった。
    特にオースティンの「高慢と偏見」エドガー・アラン・ポーの「アッシャー家の崩壊」
    タイトルの塩漬けライムとは、酢漬けのピクルスの意。
    この頃まだピクルスは日

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    2025年10月21日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    結構長くてまじめな感想を書いていたのに誤操作で消えてしまい、心が折れて放置してしまった……
    改行は少ないわ主語は分かりにくいわ、読みやすさとは程遠い文体だし続きが気になるタイプの作品でもないのだが、鋭い人間観察眼があり、精細に描写された登場人物像は現代にも通じるところがあって、面白かった(と思う)

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    2025年10月11日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    自らが過去に受けた恩恵と助けを思い返し、「最終的に、この町の不正と犠牲を見てみぬ振りをしたまま、キリスト者として生きていけないとビルは結論する。自らの良心に従わず、沈黙を通して声をあげずにいるなら、個人の幸福は成り立たないと考えたのだ。」(「訳者あとがき」P.154)「…ファーロングはあらゆる感情を圧倒する恐れを感じつつも、おれたちならやり遂げるさ、と心のどこかで愚かしくも楽観するどころか、本気で信じているのだった。」(P.137)

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    2025年10月11日
  • ほんのささやかなこと

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     1985年、不景気で閉塞感漂うアイルランドの小さな町が舞台です。政治・宗教的な背景があるものの、簡潔な文章で分かりやすく、本編が130ページほどの中編小説です。その割に奥深く、当時の時代の空気感が上手く表現されていると感じました。

     当時のアイルランドには、カトリック教会が運営する母子収容施設と洗濯所があり、洗濯場では恵まれない少女や女性が監禁、労働、虐待を受けていた史実(「マグダレン洗濯所」の闇)があったようです。

     主人公は、40手前の石炭商を営むビル・ファーロング。妻と5人の娘がいて、家族思いで真面目に慎ましく暮らしています。ただ、彼の母親が未婚の母で、父親を知らないという出自があ

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    2025年10月10日
  • 恥辱

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    これすごい本かも。「恥辱」のレベルが二段階どころか三段階くらいに分けられていて、原始的共同体や女性の受動性の無条件の肯定さえも許さぬような気迫を感じた。

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    2025年10月01日
  • 老いぼれを燃やせ

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    どれも練られた短編で、最初はちょっととっつきにくいけど、アトウッドだから、このくらい読めなきゃとちょっと我慢してるとじわっと面白くなってきて、「ダークレディ」でレールに乗れた感じ
    にやにやしたり

    文学の素養があるともっと楽しめるんだろうとひしひしと感じられ、改めて古典も勉強したいと思わせてもらいました

    という真面目な話ではなく、軽いノリだと、老いぼれってこのくらい意地悪でもいいのね〜、とちょっと嬉しくなったりも

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    2025年09月25日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    翻訳家である著者が、海外文学の名作・代表作を紹介、名作たる由縁を解説する。
    翻訳家であるがゆえに、原作の英文が当時どのような背景があってこのように日本語に翻訳されたかなども述べられており、非常に興味深く、おもしろかった。
    海外文学好きには是非読んでいただきたい一冊だった。

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    2025年09月23日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    1985年クリスマス間近、アイルランド南東部の町ニューロスで燃料屋を営むファーロング。
    婚外子の自分を身ごもった女中の母だったが、仕えていたウィルソン夫人の計らいにより、その出自に比して最低限の困難で今の生活にたどり着くことが出来た。
    決して大金持ちでも大物でもないが、この不況の中、それなりの稼ぎもあり5人の娘にも恵まれ、望む教育を与えることができ、和やかで心温まるクリスマスを迎えることができている。
    ある日、燃料を届けに行った女子修道院で出会った少女達の姿に、この町の暗部に気付いてしまう。。。

    訳者鴻巣さんのあとがきでは5人の娘を育てる家庭像から若草物語への言及があったが、
    自分的には直近

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    2025年09月21日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    翻訳家の仕事は改めて大変そうだと思った。翻訳するには歴史的背景や原作者の意図することを読み解いていかなければならない。そんな翻訳家の英語文学の解説なので、大変参考になった。改めて全部読み直してみたくなった。

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    2025年09月17日
  • 別冊NHK100分de名著 フェミニズム

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    上野千鶴子の担当する章が興味深かった。

    ホモソーシャルな集団(往々にして男性中心のコミュニティを指す)では、同性愛嫌悪(ホモフォビア)とミソジニー(女性蔑視)を持つことで成員資格が与えられる。つまり、異性愛者として女性を性の対象として扱うことができてはじめて「仲間」として認められる。

    ホモソーシャルの考え方を使えば、非モテ男性や弱者男性、インセルといった現象も説明できる。
    冷静に考えたら別にモテなくて落ち込む必要はないのに女性に性的にモテなくて落ち込む人が存在する。
    それは実は女性にモテないのではなく、自分が男社会で「仲間」と認められないから落ち込むのではないだろうか?

    そういうのは本当

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    2025年09月14日
  • ほんのささやかなこと

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    アイルランドでの実際にあった大規模で長期にわたる人権侵害を題材にとった中編。人間は神の名の下にいくらでも残酷になれるが、神の名の下に善意を発揮することもできる。

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    2025年09月06日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    翻訳家の鴻巣友季子さんが海外文学の名作を紹介している。小説の形態や技法、時代背景などはもちろんのこと、翻訳家なので原文の英語についても説明されていておもしろい。little 、young といった簡単な単語やwish+仮定法過去完了が持つニュアンスを知ると、印象が少し変わったり、より深く作品を味わうことができて興味深かった。
    これらの作品は、著者にとってはなつかしい再会の書が多いそうで、30年ぶりに読み返してやっと真意がわかったということもあったそうだ。その感動をこの本で伝えてくれている著者の「『わからない』は一生の宝」という言葉には説得力があるなあと思う。ほとんどの作品は、読み返したくなった

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    2025年08月28日
  • 誓願

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    ギレアデ国内で権力を握るリディア小母。カナダで両親を謎の爆破事件で失ったデイジー。良き妻となるよう教育を受けたギレアデのアグネス。3人の異なる視点で描かれるギレアデ滅亡までのサバイバル。

    『侍女の物語』に出てきたリディア小母がまさかこんな事の糸を引いているとは、と驚きました。少しのミスが命取り、常に正しい選択をし続けなければ生き残れない熾烈な環境に、どれほどの胆力があればこんなに強く生きられるのだろうかと思わず眉間に皺を寄せながら読んでいました。3者それぞれに語り口が異なり、デイジーのセリフや文章が生き生きとしていて引き込まれました。

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    2025年08月21日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    p.165〜170が出色。
    家父長制やら父権制やらの生皮をベリベリ引っぺがす爽快感が素晴らしい。
    これが四半世紀前に書かれた作品だとは。
    アトウッドの炯眼に驚くばかり。

    巻末に古典劇や神話のなかで沈黙させられてきた女性たちが語る作品群が列挙されていて、そちらも興味深い。ぜひ、読んでみたい。

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    2025年08月16日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    そうそう、『レベッカ』ですけどね、私も、主人公は〇〇なんじゃないの?!と思いながら読んでいたので、なんか我が意を得たりと嬉しかった。

    名作の紹介ということで定番揃い。気がつけばたぶん全部読んだことがある作品だけれど、再読したくなる。
    読んだことのない人も、入りやすく、読みたくなるんじゃないかな。

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    2025年08月16日
  • ほんのささやかなこと

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    1996年までアイルランドに存在していた「マグダレン洗濯所」。ここは政府からの財政支援を受け、協会が運営していた。未婚や婚外関係で妊娠した女性が無償労働を強いられ、ひどい女性虐待が行われていたという。
    この物語には、この洗濯所をモデルとした施設が登場する。主人公ビルは、女子修道院に石炭を配達しにいった時にある少女と出会う。彼女がそこでずさんな扱いを受けているのを目にするのだ。
    彼自身、母親は未婚で彼を産み、父親を知らない。しかし運よく母が女中をしていた屋敷で育てられ、キリスト教徒として真面目に生きて来た。
    生活は決して豊かではないが、妻や娘たちに誠実なビルのセリフはいちいち心温まる。
    ラストは

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    2025年08月08日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    最初、小説だからと追うべきストーリーを探して読んでいるうちは意味がわからなかったけれど、読み方が違うのか❗️と納得してから、一気に読み進んだ。
    人の心の中は、こんなにも散らかっていて、面白い。
    ある意味、すごくリアルだなと思った。

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    2025年07月24日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    文学史を塗り替えた記念碑的作品という触れ込みだが、私には少々合わず。わずか二日のできごとを語り手の視点を目まぐるしく変えながら意識を流体のように繋ぐ表現手法は確かに素晴らしいと思うが、物語の全体像がいまいち掴めない。とはいえ、たしかに冒頭の「その影や光の射す一瞬を結晶のようにして」やP118の言い回しは著者の圧倒的な表現力を感じさせる。また、「窓」「時はゆく」「灯台」への変遷は、わずか二日のできごとにも関わらず、時の移ろいの儚さを巧みに描き出す。テンポや表現を楽しむような英国文学とはやや相性がよろしくなかった。

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    2025年07月23日
  • ほんのささやかなこと

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    クリスマスを目前に控えたアイルランドのお話
    愛する妻と5人の娘に恵まれ、石炭や薪など燃料の販売を商いとする中年男性ファーロングが主人公

    未婚の妊婦の収容施設、人身売買のような養子制度、カトリック教会と政府の癒着など、この本を読まなかったら知ることのなかった差別に驚いた
    解説までしっかり読むべきだと思った

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    2025年07月13日