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Posted by ブクログ
お母ちゃんに又子どもが出来た。少女は赤ちゃんが生まれるまで、親戚の家にあずけられることになる。大家族の中で育った少女には、子どものいない夫婦の暮らしは、自然に囲まれて贅沢ではないけれど豊かな暮らしだった。
夫婦にとっては、特別な事は何もしていない日常なのだろうが、ゆとりのない両親の元での暮らしている少女にとっては、新鮮な暮らし方だった。
そして、夫婦は男の子を事故で亡くしていた事がわかっていく。短い夏の日々は、弟の誕生とともに静かに幕を閉じる。
読み終わって、こんなに胸が熱くなるストーリーを久しぶりに読んだ。映画化されていることも知らなかった。映画も見てみたい。
Posted by ブクログ
7歳くらいだという女の子の視点で書かれているので、その子の理解が追いついていないために状況がよくわからないところもあり、女の子の不安や戸惑いが伝わってくる。たぶん、これまで彼女はあまり親に甘えられるような環境で育ってこなかったのだろう。でも、ひと夏の間、女の子を預かることになった親戚の夫婦は、彼女をちゃんとケアが必要な子どもとして接し、子どもらしくいられるようにする。訳者あとがきに、ケアの精神が自尊心を育み、他愛につながるとあった。女の子は、その家での生活がずっと続くものではないとはじめからわかっていて諦めているようなところもあったけれど、短い間でも育まれて彼女の中に残るものがあったと思いたい。
Posted by ブクログ
『ほんのささやかなこと』に続き、この著書を読んだ。全編を通じて語りすぎず、かと言ってそこはかとなくメタファーやが散りばめられていて、想像の翼を広げることができる。きつい労働、厳しい自然に黙々と生活する大人たち。そんな中で「手をかけられなかった」女の子が、悲しみの中に生きる夫婦に預かられ、自分に手をかけることの始まり知ってゆく。それは完璧な愛でもなく、むしろ不器用な、行ったり来たりの揺れる愛だ。それゆえにこの夏が、彼女の不思議な気持ちへの気づきに繋がり、人間味ある情緒の芽生えになったと分かる。読後は何やら暖かい気持ちが、自分の中に滲み出てくる。果たして彼女は今後どうなるのか、わからない、そして私たち読者もわからない生活に戻ってゆく。それが人生なのかもしれない。
Posted by ブクログ
こどもの時に憧れた海外の丁寧なくらし(摘んだベリーでジャムを作ったり、ハーブを摘んだり、動物のお世話をしたり)の描写と
主人公の感じている無力感や寂しさなどがないまぜになって
寂しいのにカラリというしている不思議な読後感がありした
現代の私たちの感覚で主人公のおかれた状況をみると、「この親はありえん!」と断罪したくなりますが、舞台となったアイルランドでは1980年代までカトリックの影響力がとても強く、避妊も中絶も困難なこと、農家では労働力として多子が望まれていたことなど今とは異なる背景があります
個人的には、優しい人も正しい人も心が豊かでない人も悪意がある人も、いろんな人がいるんだ、と主人公が知る瞬間が個人的に一番印象的でした。
人によってものすごく大きな違いがある、ということに気付いたけれど、それを良いも悪いとも決めずに「事実」として受け入れる。成長とも諦めとも言える。
気に入ったフレーズたち
P47 その日その日の卵料理と、マーマレードを塗ったトーストを食べる。
P53 おじさんはそれ以上なにしない。ただそこに突っ立って、自分の言葉が残した船跡にとらわれている。
P78 「なにも言わなくていい」と、おじさんは言う。「言う必要のないことだと覚えておけばいい。だいたいひとってのは、口を閉じておく完璧な機械を逃して多くのものを失うものなんだ」
P105 今はなしているのは実のお母ちゃんだけど、わたしはもうちゃんと成長して、いろんなことがわかっていたから、あそこで起きたことは言わなくていいことだってわかっている。「なにも言わないでいる」完璧な機械だった。
Posted by ブクログ
ちょっと、西の魔女が死んだを思い出した。
子供にとってひと夏という短い時間が、一生の中でどれだけ大切なものになりうるかが、さらっと描かれた文章の中に詰まっている。
楽しいときを留めておけないくらいなら、いっそ素っ気なく振る舞う感じ。
願望や喜びの感情をあえてセーブすることで、避け難い現実からのダメージを大したことではないかのように、やり過ごす感じ。
そんな子どもならではの心の防衛反応が、あぁ分かるなーと思う。いろいろと思い出す。
だからラストの一言が、ぐっとくるね。
ここは、クレア・キーガンがうまい。実に鮮やか。
映像やセリフでは、この一言に込められた想いの半分も伝えられないのではないだろうか。
文字で、本で読むことで味わえる仕掛けだ。
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