あらすじ
『ほんのささやかなこと』著者が描く、ある少女のひと夏
赤ちゃんが生まれるまで、ひと夏の間、親戚の家に預けられた少女。怒らず優しく接してくれる親戚との生活は初めて知る愛に満ちていた。だがこの夏もやがて終わりの時が――映画「コット、はじまりの夏」原作。感情の深みを驚くほど静かに描き出す著者の代表作
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Posted by ブクログ
短い物語ですぐ終わってしまうので、大切に丁寧に読んでいく。
はじめから、心に響く文章がいくつも登場する。
秘密は恥。
黙っていることは良いことだ。
信じて良い人は見極める。
手をかけて育てる。
丁寧な言葉遣い。
礼儀正しく。
嘘をつかない。
ギャンブルをしない。
噂話をしない。
教養。
子供を亡くした夫婦で、崩壊する話はたくさんあるが、ここでは夫婦のお互いの愛情と優しさで支えあっている。
周りに噂好きの友人達がいても、自分さえしっかりと愛を持って生きていたら、腐らない。
黙っとく。
人生って、苦行ではなく、心のままに愛を感じる素晴らしい日々。
腐ってる人の家は散らかっていて、顔もキツい。
まずは、家の片付けとお手入れ、自分にもお手入れをする。
カズオイシグロの遠い山なみのひかりのラストと通じるものがあると、あとがきにあった。いつか読んでみたい。
想像通りのクレアキーガンの心地いい文章、良い作品でした。
今回もラストが読者に委ねられる。
ラストの父さん。父ちゃんのことを呼ぶことで、自分が成長して変化したことを表している。
実の父親に向かって父さんと呼びかけ、改まった、変化した自分が決意を言う。
また違う解釈が次に読む時に出来るのかもしれない。
またいつか読みたい。
その時に心に刺さる文章や感じ方はまた違っているだろうから。
イライラと日々を過ごすのでは無く、いろんな角度から物事を捉えることをし、大らかに実直に生きていこう。その方が同じ人生でも楽しい。
同じ物事をどれだけ柔軟に捉えられるかで人生の質も変わる。
人生には希望、愛、優しさが溢れている。
酷い人にあうこともあるが、それは一時。酷い人は四六時中、酷い自分と一緒にいなければいけない。私じゃない。どういう毎日を送るかは選択出来る。
閉鎖的な家庭、会社、村、コミュニティ、学校。
そこでしか生きてこなかった人にはわからないが、世界は広い。
Posted by ブクログ
ちょっと、西の魔女が死んだを思い出した。
子供にとってひと夏という短い時間が、一生の中でどれだけ大切なものになりうるかが、さらっと描かれた文章の中に詰まっている。
楽しいときを留めておけないくらいなら、いっそ素っ気なく振る舞う感じ。
願望や喜びの感情をあえてセーブすることで、避け難い現実からのダメージを大したことではないかのように、やり過ごす感じ。
そんな子どもならではの心の防衛反応が、あぁ分かるなーと思う。いろいろと思い出す。
だからラストの一言が、ぐっとくるね。
ここは、クレア・キーガンがうまい。実に鮮やか。
映像やセリフでは、この一言に込められた想いの半分も伝えられないのではないだろうか。
文字で、本で読むことで味わえる仕掛けだ。