鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    ずいぶん前に映画を見た時は、主人公のスカーレットが性悪でキツイ性格だという印象しか残っていなかった。
    なぜ世の中でこれほどまでにスカーレットが憧れの対象になっているのかがわからず、原作を読み始めた。
    1巻は南北戦争前の平和な頃の話。
    ひたすら登場人物の説明ばかりで、少々読むのが苦痛にもなったがレット・バトラーの登場くらいからは今後の展開にワクワクした。
    まだまだ先は長いが、全巻完走したい。

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    2025年03月08日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    土瓶さんの『夜の記憶』のレビューに触発されてトマス・H.クックを初読み。

    平穏な村に美しい女性教師が訪れたことによって起こった事件は、どんな悲劇だったのか…

    いや〜焦らされる。
    こうして思い出すと…、あの時はまだ…、こんな恐ろしいことになろうとは…みたいな思わせぶりにずっと焦らされる。
    「一体何が起きたのよ〜、早く教えて!」という思いからどんどん先へと読まされていく。

    ヒロインの登場シーンは、色や音や空気感までもが映画のスローモーションのようにゆっくり描写されている。

    クック作品の比喩で「雪崩を精緻なスローモーションで再現するような」と言われているのがすごい納得できる。

    描写や言葉一

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    2025年02月22日
  • わたしたちの担うもの

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    アマンダ・ゴーマンさんの詩集ですね。
    アマンダ・ゴーマンさん(1998年、アメリカ生まれ)
    詩人、活動家。全米青年桂冠詩人受賞。
    2021年1月、ジョー・バイデン大統領の就任式で、自作の「わたしたちの登る丘」を朗読。
    訳は、鴻巣友季子さん(1963生まれ)
    翻訳家、文芸評論家、エッセイスト。

     アマンダ・ゴーマンの第一詩集。
    『彼女の詩は苦難の瞬間をとらえ、希望と癒しのりリックに変える。歴史、言語、アイデンティティをかけめぐり、想像力豊かに、そして親密に、ことばをコラージュし、ときに消去する。パンデミックの悲嘆をうけとめ、悲痛のときに光をあてる。彼女はわたしたちの過去からのメッセンジャー、未

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    2025年02月21日
  • NHK「100分de名著」ブックス マーガレット・ミッチェル 風と共に去りぬ 世紀の大ベストセラーの誤解をとく

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    さらっとしか読んだことがなかった本作だが、スカーレットとメラニーの友情、レッドバトラーの愛、また南北戦争に敗れた南部を襲う苦難とKKKの台頭など、いくつものテーマが織り交ぜられた名作だと再認識。

    スカーレット・オハラの "Tomorrow is another day." (明日という日は今日より必ずいい日にしてみせるわ)こそが「風とともに去りぬ」のキーワード。

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    2025年02月09日
  • ほんのささやかなこと

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    世界の中に、このようなものの感じ方をする人間がいて、それを小説として世に出してくれて、極東の国で翻訳され、噛み締めることができる、という奇跡。

    さらに映画化もされ、来年公開されるという。
    昨年見た映画「コット、はじまりの夏」の原作者だと知って、膝を打った。いい映画だった。親からの愛を感じられない少女が過ごす一夏の叔母夫婦での思い出。机のビスケットが繋ぐ叔父との心の交流。
    あの静謐な作品と確かにテイストは似ている。
    予告編を見たけど、映画を見るのが今から楽しみだ。

    こういう小説を読むと世界は繋がっているなと思う。アイルランドの「マグダレン洗濯所」の歴史を知ることもでき、クレア・キーガンの見つ

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    2025年01月19日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    複数の翻訳を読むことでいろいろな解釈が読み手の中で重なり〜と訳者あとがきにもあったことだし、岩波版も読んでみようかな
    掴みきれなかった、で終わらすのはもったいないような気がするんですよね

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    2025年01月12日
  • ほんのささやかなこと

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    「知ること」の大切さ。

    こんな話を聞いたことがある。
    関心のない国や土地については、地名は知っていても、地図で書いたり場所を指し示したりすることができない。つまり、自分の世界ではその土地がなかったことになっている。

    これは見事に自分に当てはまっていて、知っているつもりでいたこと恥ずかしく、また恐ろしくも感じた。関心がないということは、無視しているのと同じことなのだと。

    この本は、訳者・鴻巣友季子さんのX投稿で知った。
    1985年のアイルランド話。それは1996年まで続いていた。中世の出来事でない。
    だからこそ驚いた。

    この知らなかったことを知る驚きは、
    韓国の映画「タクシー運転手」でも

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    2024年12月29日
  • ほんのささやかなこと

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    著者はアイルランドの代表的な現代作家さんらしい。

    舞台はアイルランドのとある都市、1985年のクリスマス。
    ファーロングは父を知らぬ私生児として育ったものの、今は燃料店を切り盛りし、
    妻と五人の娘に恵まれている。
    ところが、クリスマスの直前、女子修道会に付属する施設で
    その実態を目の当たりにしてしまい・・・
    自らの生い立ちと重ねつつ、葛藤する・・・

    アイルランドには、1996年まで各地に「マグダレン洗濯所」という
    施設があった。
    母子収容所を併設し、政府の財政援助を受けながら運営されていたものの
    実態は女性への虐待と労働力の搾取・・・名ばかりの職業訓練所だったとか。
    ファーロングは、その実

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    2024年12月20日
  • 老いぼれを燃やせ

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    おっさんおばさんはみんな読むと良いと思う。単なる懐古趣味や昔は良かったではなく、痛快で小気味良いのにしみじみと時の流れの恐ろしさを感じてしまう不思議な読後感を味わえる。
    かなり好き嫌いが出る作品がほとんどだと思うが、おっさんである私は十分楽しめた。

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    2024年12月04日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    とにかく夢想と回想がたくさん描写され、一人の人間が様々な思いを巡らしているかと思っていたら、いつのまにか別の人物へと視点が変わりその人の心に入り込んでいるのだが、訳文がとても読み易くて「今、誰が語っているんだっけ?」と見失うことはなかった。読むのに時間かかちゃったけど。
    一人の人間には多くの感情や考えが入り混じっており、そんな多くを抱えた複雑な人間同士がコミュニケーションするのだから、そう易々とうまくいくわけがない。こうしてほしい、褒めて欲しい、あの人と仲良くしてほしい等、様々な思惑があり、誰かの言葉や態度が憎くて許せなくて長年恨むようなこともある。あの人のあそこが許せないにおける“あの人”と

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    2024年11月28日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    最初は退屈な物語かも、と思った。
    登場人物がお互いに心に思ってることをひたすらモノローグで繋いでいって、一向に何か起きる気配がないから。
    悪人も完璧な人もいない。
    美しい母親と、ちょっとエキセントリックなお父さん。尊敬もされてるけど面倒くさい。
    子供たち、書生、家庭教師。
    登場人物同士の愛憎入り混じる感情、自己愛と愛。

    モノローグでお互いの気持ちをふわふわと漂っているうちに、いつの間にか登場人物とともに歳をとって、彼らをお屋敷の物陰から覗いている、そんな感じ。
    三部の美しさ、悲哀はちょっと筆舌に尽くしがたい。

    あと、めちゃくちゃ共感したフレーズ。
    「どうやら本というのはひとりでに増殖するも

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    2024年11月27日
  • 誓願

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    侍女の物語よりは読みやすかった。そして、希望がある。

    今世界中で、学校や世の中で、読み書きや社会について知ることを禁じられている人たちは、どれだけいるのだろう。
    今さえよければとか、自分が生き残るためになどの理由で、してはいけないとわかっていることをやってしまう人たちは、どれだけいるのだろう。

    善人が安心して生きていける世の中であってほしい。

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    2024年11月23日
  • 老いぼれを燃やせ

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    表題の『老いぼれを燃やせ』がなんというか非常にタイムリーで、鴻巣さんがよく言っている「予言する作家」としてのアトウッドの凄さがよくわかる。
    他の短編はまあまあ、突き抜けておもしろい作品があるわけでもなかった。

    一箇所気になったのが、カベルネソーヴィニヨンの白が出てくるところがあって、そんなのあるの?と思った。調べたら一応あるらしいけど、そんな珍しいワインを登場させる意味があったんだろうか。

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    2024年11月03日
  • ほんのささやかなこと

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    「青い野を歩く」の著者の新刊と聞き、楽しみに購入。あとがきに〝ブッカー賞候補史上もっとも小さな本の一つ〟と書かれている通り、読み始めたら薄い上に字も大きい。ただ最後数ページはまさに圧巻。

    堅実で慎ましやかながら、幸せな家族との暮らしの中で、世の中の影に気づいた時、私たちはどうすべきだろう?

    この本に書かれた影、〝マグダレン洗濯所〟のような場所は、世界に、日本にもまだあるかもしれない中、主人公の周りの人々のように、自分はなっていないだろうか。

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    2024年10月25日
  • 誓願

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    ディストピア小説。女性は階級に分けられ、性の道具として扱われる。
    ジョージ・オーウェルの監視社会のほうが好み。

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    2024年10月17日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ヴァージニアウルフの本を一度読んでみたいと思い、9月に新訳で文庫化されたこともあり購入。前知識なく読んだので、正直、第一部は読むのがすごくしんどかった。あまりにもしんどかったので一体、どういう本なのか調べたら、「意識の流れ」という手法であることが分かり、そこから文体の流れに思考を任せるつもりで読み進めると不思議と読みやすくなった。最後はキャムやリリーの意識の中にいるような不思議な気持ちになり、爽快な気持ちで読み終えた。訳者あと書きもとても興味深かった。

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    2024年10月11日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    ミステリーに分類されているが、ネタバレや謎解きに重きが置かれている訳ではない。
    事件発生までの時系列に加えて、主人公の少年が老齢になった現代の描写や裁判の公判での証言を織り交ぜることで飽きの来ない展開がされている。
    少年の一途な心理が描かれているが、大人の自分としては、彼が興醒めする大人側の視点で考えてしまう。学校長の父親に対する評価が、主人公の少年と女性教師で違っていたことが判明し、彼自身の成長に併せてそれも変遷していくことが描かれている。美人教師の赴任に端を発する事件の裏で展開される、親子や家族関係がテーマなのだろう。
    一つ気になったのは、主人公の心理描写と重ねられて陰鬱に描かれているチャ

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    2024年09月26日
  • 恥辱

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    ノーベル文学賞を受賞したJ•M•クッツェー、1999年のブッカー賞受賞作品。南アフリカ、隷属、支配、尊厳、生命‥‥考えさせられることは多い。

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    2024年07月10日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    「雪崩を精緻なスローモーションで表現するような」と解説にあったが、まさにその通りです。悲劇にじんわりじんわり向かっていくのが怖い。

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    2024年04月30日
  • 翻訳ってなんだろう? ──あの名作を訳してみる

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    ネタバレ

    箸休め的に軽めの一冊。
    翻訳本は結構読むけど、こういった視線は新鮮だったり。

    筆者のスタンスは序章に言い切ってしまっていて「翻訳とは一種の批評なのです。しかし翻訳者が書くのは、その作品の論評ではありません。作品そのものを書くのです」という文に集約される。いやー、あまりに正鵠を射た意見すぎて何も付けたせない…。
    学芸書も同じように翻訳本が結構あるわけだけど、ああいったのもキチンと専門家が訳してくれている意義があるわけだ。いやぁ、ホントありがたいなぁ。

    そういえば各章に英語本文を持ってきて、どちらかというと翻訳者を目指す人向けではあるんだけど、どういう思考で翻訳をするかという視点の読み物でもあ

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    2024年03月07日