鴻巣友季子のレビュー一覧

  • ほんのささやかなこと

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     主人公の男はアイルランドの地で、メイドの私生児として生まれ、女主人の厚意により奉公先で育てられた。十分な教育を受け、社会に出た男はまじめに働くこと、誠意を持ち他人と接することを信条に、燃料店を営み家族を持つに至る。本書ではその男の働きぶりや心の持ちようが描かれ、ささやかなことを積み上げる大切さが伝わってくる。その様子はクリスマスイブに従業員たちと訪れた食堂の女主人にかけられた言葉に良くあらわされている 『あんたはわたしと同じで一生懸命働いて、その場所にたどりついた。…』

     主人公の男は燃料の配達時に修道教会が運営する洗濯所の過酷な労働状況を目にする。町の人々はうっすらと何が行われているか気

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    2026年07月06日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    家族には絶対的な存在で逆らうことが許されない哲学者ラムジー氏、偉大な家長として頼られ崇められ、時には反発される。海の向こうに見える灯台へいこうという息子のジェイムスに、にべもなく「明日は晴れないだろう」という。美しくしっかりもので周囲からあがめられる8人の子持ちの理想的な母親ラムジー夫人、独身女性には結婚しなければいけないと解き、身近に集う若い男と女を結びつけようとする。

    独身の女性画家リリー・ブリスコウやウィリアム・バンクス、チャールズ・タンズリー、オーガスタス・カーマイケルなどもラムジー家のスカイ島の別荘に一緒に滞在している。

    第一部では、そんなラムジー家の別荘に集う人々の一日が描かれ

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    2026年07月05日
  • あずかりっ子

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    アイルランドの片田舎、あまり裕福とはいえない農家の子どもである少女は、お母ちゃんが弟を身籠ったことをきっかけに親戚の家に預けられる。
    少女の時点で描かれる物語は淡々としていて、最初はどこか頼りなさげで、少女と一緒に、この先どうなるのかやや不安に思いながら読んだ。
    すぐにあたたかさが感じられ、世界が色づいていく感じがする。やさしいおじさんとおばさん。色々なことを少女に教えてくれた。
    家に帰るとなって自分の気持ちに気づいた場面、最後の場面、寡黙な少女の、胸のうちにうずまく気持ち、その成長に、グッときた。

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    2026年06月20日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    人物がたくさん出てくるうえに語りの視点が次々と入れ替わって非常に読みづらく、新鮮な体験だった。
    途中は意味も分からずに義務的に文章を読んでいたけれど、度々出て来る美しい描写に出会えてよかった。
    個人的には好き。

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    2026年06月15日
  • 嵐が丘

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    若い頃読んだ一冊。

    何故かというと、メタルバンドANGRA(ブラジルかな確か)が、この物語を曲に書いていて壮大だったから。是非聴いて欲しい、壮大な曲!(本の感想を書く場所)

    なんだか、『ザリガニの鳴くところ』好きならハマるかも。ザ・ヒューマニズム。(本の感想短っ)

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    2026年06月10日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    なぜか日本文学より海外文学に惹かれがちな私。しかも鴻巣有季子さんの作品。気にならないわけがない。
    読んだことのある本もない本も含まれていたが、興味深く読んだ。
    サラサラっと読めた。

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    2026年06月09日
  • ほんのささやかなこと

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    この物語は、アイルランドの恥部ともいえる歴史を下地にして綴られている。
    舞台の地は、アイルランドの西南に位置する小さな町ニューロス。
    主人公のビル・ファーロングの母は、資産家の未亡人ウィルソン婦人の屋敷で女中として働いていた。
    その母親は16歳の時に、父親不明でファーロングを身ごもった。
    子がなかったウィルソン婦人は産後も引き続き母親を雇い続け、赤子のファーロングを可愛がった。
    そんなある日、母親が事故で亡くなるのだが、ウィルソン婦人は12歳に成長していたファーロングに教育を与え、結婚する時にはそこそこの大金を祝い金として渡してくれた。
    ファーロングは石炭や薪を商う燃料屋を起業し、アイリーンと

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    2026年06月04日
  • 嵐が丘

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    まず、この超大作を読めた達成感で一個満足。
    愛憎入り乱れる(憎しみマシマシ)狂気のラブストーリー面白かったです!!!

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    2026年06月03日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    とても難解だった。
    最初は心情描写がトリッキーな作品なのかなと思ったけど、
    途中からガラッと変化した。
    帯にある通り、小説でこんなことできるんだという感想。
    難しくて読むのに時間がかかったけど、読んで良かったと思えた作品。

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    2026年06月01日
  • あずかりっ子

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    こどもの時に憧れた海外の丁寧なくらし(摘んだベリーでジャムを作ったり、ハーブを摘んだり、動物のお世話をしたり)の描写と
    主人公の感じている無力感や寂しさなどがないまぜになって
    寂しいのにカラリというしている不思議な読後感がありした

    現代の私たちの感覚で主人公のおかれた状況をみると、「この親はありえん!」と断罪したくなりますが、舞台となったアイルランドでは1980年代までカトリックの影響力がとても強く、避妊も中絶も困難なこと、農家では労働力として多子が望まれていたことなど今とは異なる背景があります

    個人的には、優しい人も正しい人も心が豊かでない人も悪意がある人も、いろんな人がいるんだ、と主人

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    2026年05月31日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    日常の出来事のなかで登場人物が感じる思考をすべて文章化しているのではないかと思うくらい話の進み方がゆっくりしています。
    全体的に例えの表現が多く、私のイメージの範囲が狭いせいもありページを進めるのに時間がかかりました。
    ラムジー夫人が、自分の子供達の今の瞬間をそのままにしておきたい、という感情にとても共感し読んでいて胸が熱くなりました。
    第一次世界大戦の頃なので100年ほど前の話になりますが現代とは違うゆったりとした空気感にとても穏やかな気持ちになりました。
    こういったじっくりと味わう物語をまた読んでみようと思います。

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    2026年05月23日
  • 嵐が丘

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    ネタバレ

    ネタバレ全開の感想につきご注意です。

    おもしろかったし、人生で読んでおいて良かったな〜と感じる小説だった。2回目読んだら1回目より面白かったという人もいる。
    なんか演劇とかミュージカルぽかったな。美しい自然と荒廃した館の情景とか映画版のレ・ミゼラブルみたいな感じだったらすごく自分が好きそう。

    登場人物たちみんな、語り手含めて激情型だったり、結構畜生な発言とかあって、モラル薄いのが結構笑ってしまった。
    恋愛小説だと思って気軽に読むと結構重めの復讐劇、愛憎劇で心にずっしりとくる。
    重い話なのだけれど、会話や行動がどこかコミカルなところもあってそのバランスと抑揚が絶妙だった。

    小説に共感を求

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    2026年05月22日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    本屋の棚に割と目立つように展示していたので、購入。

    登場人物が考えていることが長々と綴られていく。いつの間にか、その叙述が別の人間の考えになっていたりする。その点については、あれ、と感じるが、読みづらくは感じない。
    ただ、何かが起こるというより、登場人物の頭の中の考えをずっと読まさせていくのは、すごく疲れた。ページが進まない。前半はほんの半日の話なのに、だいぶ時間が掛かってしまった。
    登場人物たちについて説明的な記述がある訳ではないので、哲学者ラムジー、美貌のラムジー夫人、その子供たち、夫妻の別荘に集う独身主義の画家リリー・ブリスコウ、学者、詩人達の人となりが判ってくるまで、ずいぶん時間が掛

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    2026年05月12日
  • 嵐が丘

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    求めているのに誰ひとり幸せそうではなくて、最後まで報われないのかもしれないと思った。
    小説の大半は家政婦の語りで進んでいきますが、その家政婦の話していることは実は本当はすべてが嘘なんじゃないかと疑う気持ちも出てきたり、本当は破滅を望んでいるんじゃないのかと思ってしまったり、誰よりも優しく感じたり、でも嘘をついたり欺いたり。進むごとに不安が増していきました。
    カズオ・イシグロさんの「信用できない語り手」と似た雰囲気を感じます。
    人物に関しては、二つの邸に住む家族と使用人、医者以外は登場しないのにこんなに入り乱れて複雑な小説ってあまりないように感じます。構成が面白い!
    解説を読むとさらに。

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    2026年05月05日
  • ほんのささやかなこと

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    冒頭に「アイルランド母子収容施設で苦難を経験した人々へ捧げる」という献辞と、全国民に自由と平等を謳う「アイルランド共和国宣言」が引用されている。
    この部分で「こんな宣言しておいて、実態はこんなことをやっていたではないか」という問題提起小説で、登場人物にはきっと不幸が訪れるんだろうなあ、と気持ちを引き締めながら読み始める。


    時代は1980年代のクリスマス前の数日間で、主人公はアイルランドの南東部のニューロス町で石炭と木材を商う中年男ウィリアム(ビル)・ファーロング。ファーロングは自分の父を、というより当時16歳だった母を妊娠させた男を知らない。町では母のような女はふしだらな女と見られるが、母

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    2026年04月25日
  • ほんのささやかなこと

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    "正しい”と思われる選択が、幸福に繋がるとは限らない。
    その正しさが他者を不幸にする可能性もある場合、それでもその正しさを選ぶことができるのか。
    その選択は傲慢ではないか。という葛藤
    ほんのささやかなことの積み重ねによって作れてきたファーロングの人生が彼に与えた決断。
    クリスマス前の美しい描写と残酷な歴史との対比が突き刺さる。

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    2026年04月25日
  • 嵐が丘

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    今年公開された新たな映画版「嵐が丘」を観たので、原作が気になり読んでみた。
    映画はかなり改変されていると聞いたが思った以上に全然違ってびっくり!違うというか、原作の要素をかいつまんでまとめるとああなったというか。
    みんな性格に難ありだな〜と思っていたけど、原作は映画の倍くらい難ある登場人物が出てくる(笑)

    キャサリンは新旧どちらもヒステリーすぎてマジで一回ちょっと落ち着けよと思うし、ヒースクリフはサイコパスすぎるし、ジョウゼフも気狂いジジイだし、淡々と喋ってるネリーも絶対自分では語らないヤバい部分山ほどありそうだし、一行も気が抜けなくて楽しめた。

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    2026年04月20日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    SL 2026.4.15-2026.4.16
    1985年のアイルランド、クリスマスの時季の中篇。カトリック修道院での信じられないほどの人権侵害。しかも政府はそれを容認。
    アイルランドに実在のマグダレン洗濯所をモデルにしているとのこと。
    こんな非人間的なことが1996年まで現実として行われていたのかと驚くと同時に、大きな権力の前には倫理などどうにでもなってしまうんだという諦観もある。それは21世紀の今でも人知れず世界のどこかにはあるのではないかと。

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    2026年04月16日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    ネタバレ

    初めはすごく好きだったスカーレット、戦争の中メラニーの出産を助け、その後のヤンキーたちからタラを守る姿はカッコ良すぎて痺れた。だが、そこからのスカーレットには感情移入できる部分が少なかった。特にレットと結婚した後のスカーレットに対しては作中で最も嫌いなキャラになってしまった。
    ラストシーンではレットのスカーレットへの愛情とレッド以外を失ったスカーレットの対話は素晴らしかった。
    最後の1日はメラニーとアシュリ、レットの最愛の人3人を失ってもまだ明日にはなんとかなると考える。

    スカーレットはきっとこれからも自分を支えてくれた人や自分が愛した人がどんどんいなくなってもそれに気づくことなく人生を歩ん

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    2026年04月08日
  • 嵐が丘

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    光文社版より新潮版の方が好みだ。
    もちろん2度目なので、背景や人間関係もわかったうえで読んでいる。作品への没入感が高まっているためもあるけど。
    で、腰巻きには「全てを破滅させる恋ー」とあるけど、やっぱり人間のエゴと心理をリアルに抉る作品なんだね。誰かが「ヒースクリフほど純粋なヒーローはいない」って評していたけど、これ納得できるんだな。

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    2026年04月08日