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1985年、アイルランドの小さな町。寒さが厳しくなり石炭の販売に忙しいビル・ファーロングは、町が見て見ぬふりをしていた女子修道院の〝秘密″を目撃し――優しく静謐な文体で多くの読者に愛される現代アイルランド文学の旗手が贈る、史実に基づいた傑作中篇
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Posted by ブクログ
なんだろう。読み終えた時は、そこで終わるのという感じだったが、少しづつなんとも言えない気持ちになってきた。 これからが大変になるのは目に見えるだけに、とても心に刺さる小説でした
とてもよかった。映画も楽しみ。『青い野を歩く』、「コット、はじまりの夏」、「マグダレンの祈り」にも触れたい。
どの社会も抱えているような暗部とそれに向き合う人間のあり方を、言葉少なでシンプルなストーリーに凝縮させて提示している。作品としての完成度がすごい。ただ訳文に日本語としてゴツゴツしている部分が散見されやや違和感があった。(有名な訳者のものなので、原文のテイストに合わせた意図的なものかもしれないが)。
『ウェクスフォード県のニューロスの町では、煙突が煙を吐きだし、それが薄く流れてもわもわと長くたなびき、埠頭のあたりで霧消する時季になると、じきに雨が降り、バロー川はスタウトビールほど黒く濁って水嵩を増した。町の人びとの大半はため息をつきながらこの悪天に耐えた』―『第一章』 ふわふわと思考は漂ってゆ...続きを読むく。初めての長期の英国出張。滞在先近くのコンビニで買うギネスのロング缶。パブで飲む泡の細かい常温の黒ビール。冷たい雨。鼻の長い二階建てバス。『汽車に乗って、あいるらんどのような田舎へ行こう』という詩の断片。牧歌的と言ってもよい雰囲気でこの一冊は始まる。 そんな風に連想に誘われる文章は、一読すると熱量の低い淡々とした言葉が並ぶだけのようにも見える。読むものの感情を意図的に揺さぶるようなところはない。そんな筆致で、オー・ヘンリーの「賢者の贈り物」のような物語が紡がれていくのだろうかと思わせる文章。しかし、クレア・キーガンの描こうとしているものはそんな生半可なものではないことが徐々に明らかとなる。 本当は複数の本を同時並行で読むのは好きではないのだけれど、ポール・オースターの最後の一冊が余りに大部なものだから、そして随分順番待ちをした本が届いてしまったから、オースターを一旦脇に置いて読み始めた。行間もポイントも大きい薄手の一冊を読み切るのに時間は掛からない。小さなポイントで二段組みかつ800頁弱のオースターとの対比。しかし、読みかけの本のことを忘れてしまうくらいの衝撃が詰まっている。 それは、どんな社会にもあり、大っぴらに明かされていないだけの闇。日本の事例で例えてみれば、ハンセン病患者の隔離、優生保護法、あるいは女工哀史。幾つかの物語の流れの中、その不穏なものの存在は噂程度の話として先ず語られ、ある男の日常の営みの中じわじわと核心に近づいていく。紆余曲折がある訳では無いが、日常の中にある善と悪は単純に割り切れない程人々の生活に根を張り合って縺れている。そしてその後に続く修羅の道のことを思えば、決して予定調和でも大団円でもないが、ぐっと歯を喰いしばりながら最後の一文を読み終わる。胸の中にふつふつと沸き上がる感情の正体を自分でも図りかねなから。
世界の中に、このようなものの感じ方をする人間がいて、それを小説として世に出してくれて、極東の国で翻訳され、噛み締めることができる、という奇跡。 さらに映画化もされ、来年公開されるという。 昨年見た映画「コット、はじまりの夏」の原作者だと知って、膝を打った。いい映画だった。親からの愛を感じられない少...続きを読む女が過ごす一夏の叔母夫婦での思い出。机のビスケットが繋ぐ叔父との心の交流。 あの静謐な作品と確かにテイストは似ている。 予告編を見たけど、映画を見るのが今から楽しみだ。 こういう小説を読むと世界は繋がっているなと思う。アイルランドの「マグダレン洗濯所」の歴史を知ることもでき、クレア・キーガンの見つめる世界を、自分も見ることができたことに、小さな感動。
著者の名は知らなかったが、役者の鴻巣友季子さんのお名前に見覚えがあったので手に取った。思っていた以上の良書。私が訪れたアイルランドはよく晴れた空にミモザがここにもそこにも咲溢れていたが、この小説からは薄暗い曇り空と寒風を感じる。身近な人の愛情に育てられた主人公が、自らの手で掴み取った平凡な幸せに飽き...続きを読む足らず、言われない苦しみを味わっている少女を救済すべく一歩踏み出す。現実にも似たようなことがかつて起こっていたと知り、憤りを覚える。特に、女性が、なぜ同性の庇護すべき存在を虐待するのか、理解に苦しむ。
ファーロングという男性が、不遇の女性(少女)のために行動を起こすのがよかった。そこに至るまでの彼の過去、現在を丁寧に中編にまとめているのもよかった。彼が未婚の母のもとに生まれながらもウィルソン夫人たちの加護のもとに育ったこと、家族を持てたことで問題意識をフラットに、熟慮することができたのも大きいので...続きを読むはないかもしれない。声高に日々、活動する訳では無いが「ささやか」ではあるものの、それが誰かの心や命を守る大きな一歩だと感じた。
アイルランドの小さな町で日々働いて一家を養う主人公ファーロング。彼の出自以外は退屈といってもいいくらいのささやかな日常生活が淡々と語られるのだけれど、どこか落ち着かないというか不穏なものを感じさせられる。 最初はファーロング自身が抱える自分の来し方や将来への漠然とした不安なのかと思っていたが、それだ...続きを読むけではなかったことに驚き。そして実話を元にしていることにまた驚き。 ラスト、決然と一歩踏み出したファーロングの姿に勇気づけられた。
「知ること」の大切さ。 こんな話を聞いたことがある。 関心のない国や土地については、地名は知っていても、地図で書いたり場所を指し示したりすることができない。つまり、自分の世界ではその土地がなかったことになっている。 これは見事に自分に当てはまっていて、知っているつもりでいたこと恥ずかしく、また恐...続きを読むろしくも感じた。関心がないということは、無視しているのと同じことなのだと。 この本は、訳者・鴻巣友季子さんのX投稿で知った。 1985年のアイルランド話。それは1996年まで続いていた。中世の出来事でない。 だからこそ驚いた。 この知らなかったことを知る驚きは、 韓国の映画「タクシー運転手」でも体験した。 隣の国でこんなことが起きていたなんて。 知ることには偶然といものがある。 たまたま手に取った本との出会いで知ることは、今後も大切にしていきたい。 そして、知ったらもう無視などできない。
著者はアイルランドの代表的な現代作家さんらしい。 舞台はアイルランドのとある都市、1985年のクリスマス。 ファーロングは父を知らぬ私生児として育ったものの、今は燃料店を切り盛りし、 妻と五人の娘に恵まれている。 ところが、クリスマスの直前、女子修道会に付属する施設で その実態を目の当たりにしてし...続きを読むまい・・・ 自らの生い立ちと重ねつつ、葛藤する・・・ アイルランドには、1996年まで各地に「マグダレン洗濯所」という 施設があった。 母子収容所を併設し、政府の財政援助を受けながら運営されていたものの 実態は女性への虐待と労働力の搾取・・・名ばかりの職業訓練所だったとか。 ファーロングは、その実態を垣間見てしまったのだ。 読んでいて、ずっとわけのわからない不安につきまとわれ、 先に進めなかった。 この先、きっと良くないことが起きる、平凡な日々が喪われる・・・と。 ムダがない文章なのに五感を刺激されるような文章。 惹かれるのに、この不安は何なんだろう・・・? ラストを読んだ瞬間、ああ、自分が年をとったからなんだと、納得する。 平凡な穏やかさを私は絶対に手放したくないんだな、と。 いつの間にか、小説の中で保身に走ろうとする自分に愕然とした。
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クレアキーガン
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