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世界文学の潮流から、日本文学の快進撃の理由がクリアに見えてくる!
柚木麻子『BUTTER』、雨穴『変な絵』、王谷晶『ババヤガの夜』などが英国の文学賞やベストセラーリストを席巻した2025年。翻訳家・文芸評論家として国内外の文学シーンを長年観測する著者が人気の理由を読み解く。英米の書評に見られる意外な形容、日英翻訳家たちの創意工夫とネットワーク、排外主義的な政治状況に反発する若い世代からの支持……。フェミニズムからミステリ、猫と喫茶店が定番のヒーリングフィクションまで、村上春樹以後の「世界文学としての日本文学」を描く決定版!
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Posted by ブクログ
2000年頃の「村上春樹独り勝ち」のあたりまでが自分が一番熱心に新しい本を読んでいた時期で、その後はライフステージの変化によりそこまで読まなくなってしまっていたので、英語圏の読者は翻訳嫌い、の認識で止まっていた。最新の日本文学翻訳事情がそんなことになっているとは!未読の作家がたくさん紹介されていたので、これから読んでみたいリストがまた増えた。
ここ最近は春樹作品に対するフェミニズム的な視点での批評をYouTubeなどで目にすることがあるけど、恥ずかしながら川上未映子さんのインタビューは存在を知らなかったので、「みみずくは黄昏に飛び立つ」ぜひ読んでみたい。
彼が大手出版社経由ではなく自身で翻訳者やエージェントを探してルートを開拓していったというビジネス手腕について書かれていたのも面白かった、やはり先駆者春樹は偉大だな。
村田沙耶香、柚木麻子その他の日本でも人気の作家の小説が英米でどのように受容されているかについても興味深く読んだ。フェミニズムって付いた途端に日本では売り上げが減りそう。自分の中にもフェミニズムという言葉に対して若干の偏見があることに気付かされた。少し前の世代の日本の女性作家の作品、有吉佐和子(恍惚の人、華岡青洲の妻)、円地文子(女坂)、宮尾登美子の一連の女性主人公の小説なんかをかつては自分ごとに近いものとして読んできたけど、あれらの作品ももし翻訳されたらフェミニズム小説として受け取られるのではないかな?
「おわりに」に書かれた源氏物語が近代小説の原型という論にも深く納得。
Posted by ブクログ
村上春樹や川上未映子だけでなく、猫や喫茶店が出てくる癒し系も英米で翻訳されて読まれているということに驚いた。また、日本文学についてだけでなく翻訳文学全体のことも書かれていて、9.11以後のアメリカは言葉の通じない外国との関わりを重要視するようになったから翻訳文学が読まれるようになってきたのではないかとか、ハン・ガンの国際ブッカー賞で共同受賞した訳者が賞金を使って翻訳出版社を立ち上げたとか、作品の良し悪しとは別の大きな流れがあるようで興味深かった。「言語を翻訳しあうことで文学・文化は互いに耕され、その巨大な循環が実りをもたらしている」というのに納得し、世界の文学を読めるようにしてくれている著者をはじめとする翻訳家のみなさんにあらためて感謝の気持ちが湧いてきた。
Posted by ブクログ
大変面白く読んだ。日本文学がこんなに世界で活躍するとは…隔世の感あり。旅行先としても大人気だし…わたしが子どものころは考えられなかった。時代は変わりますね。
2025年6月時点のイギリスの翻訳文学トップ50のうち23作が日本語作品だった(p33)とは驚き。
川上未映子のインタビューでの発言が興味深い。
「川上は村上の賞賛を得ていただけではなく、2017年には村上に対してその創作や世界観に深く切り込んだロングインタビューを4回に分けて行っている(日本では『みみずくは黄昏に飛びたつ』として新潮社より刊行)。おこでの大作家に対する鋭い質問とやりとりが、英訳書の発売前にアメリカで人気のウェブ文芸誌「リテラリー・ハブ」に掲載され(2020年4月。サム・ベット、デビット・ボイド共訳)、これもまた注目された。」
その引用の中で、特に気になった箇所(↓)。
「つまり、(村上の小説には)性的な役割を果たすためだけに存在する女性の登場人物がとても多いということなんです」と彼女は延べ、村上作品の中で女性が男性主人公のために”犠牲”になる頻度の高さを嘆いた。こう指摘された村上はやや面食らった様子で、「ぼくは個人主義的な人物には興味がないんだ。男性であれ、女性であれね」と応じた。しかしこれは政権交代の兆しでもあった。」
「おそらく日本の全国紙では読めないような記事だろう。」と鴻巣さんは書かれているが、確かに!
村上春樹のビジネス手腕についても書かれていた。すごいなあ。
『ねじまき鳥』は三部作だけど、英語版は2部作になっているのだそう。村上も承認。知らなかった。加藤典洋いわく、「僕が理解している『ねじまき鳥クロニクル』と、これを読んで英語で理解している『ねじまき鳥クロニクル』とは、そもそも同じ作品なのかどうか、わからない、ということが起こっています。ことによれば、この作品は日本語で書かれたと言いながら、将来、国際的な場所でThe Wind-Up Bird Chronicleが話題となり、問題になる場合、そこでの正典は英語テクストであって、これを英語で読んでいない日本人研究者だけが逆に蚊帳の外に置かれるなどという辞退すら、生じかねない趨勢なのです」。
何と!!
その他いろいろ面白いことがてんこ盛りだったのだけど、書ききれないのでこのへんで。
Posted by ブクログ
漫画などのサブカルチャーの枠を超え、現代の日本小説が英米で「正統な文芸作品」として確固たる評価を獲得している現在地を解き明かす一冊。
特筆すべきは、その人気の理由を歴史的・社会的背景と接続させた分析の鋭さ。9.11以降の不安やブレグジット等に揺れる社会の閉塞感。そこに、日本の女性作家たちが描く多様な価値観や、猫・ヒーリングをテーマとした中編小説が、現代人の精神的渇望を満たすものとして合致しているという見事な構造的理解。
また、このムーブメントの裏にある「翻訳者」の存在への着目。文化的文脈や解釈を深く理解し、言語の壁を越えて共感を再構築する彼らの媒介なしに、いまの熱狂は語れないという確信。
過熱するあまり、特定のテーマが新たなステレオタイプと化しつつあるという指摘も趣深い。単なる異国情緒(ジャポニズム)の消費を脱却し、世界的な社会不安と共鳴する文学へと変貌を遂げた日本小説の底力を俯瞰できる、解像度の高い読書体験。
Posted by ブクログ
柚木麻子さんの『Butter』、王谷晶さんの『ババヤガの夜』でダガー賞の翻訳部門にノミネート、のち王谷さんが受賞となったあたりから翻訳系の出版関係の人たちが日本のおもに女性作家がよく読まれているというのを聞いて「なんで!?」と思っていたらまんまのタイトルの本が出版された
読んでいくと日本の小説が翻訳、出版される歴史やきっかけとなった要因などが細かに解説される
それにあたり翻訳されている小説が挙げられるのだが「この作品も?」というものがたくさんあり、片っ端から読みたくなってくるからだめだ
本に関する本というのはたいてい読みたい本が増えて、どうしよう…となる、いつものこと。
そのなかで英語圏とそのほかの言語のパワー関係なども解説されており、日本で海外の翻訳小説をよく見るけどそれはこういうことかあと翻訳文化の土壌を認識したりとその点も興味深かった
鴻巣さんが翻訳とは批評と言っていたことも、そのテクストと内容を読み、原典の文化と翻訳する側の文化を照らし合わせて、最適な言葉でつづる。そういう行為はたしかに批評だ。
また謝辞の部分でこの情勢の中で翻訳文学を読むということは排外主義への抗いだという鴻巣さんの言葉がとても心強く、またブームであることに希望が持てた
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