【感想・ネタバレ】なぜ日本文学は英米で人気があるのかのレビュー

あらすじ

世界文学の潮流から、日本文学の快進撃の理由がクリアに見えてくる!

柚木麻子『BUTTER』、雨穴『変な絵』、王谷晶『ババヤガの夜』などが英国の文学賞やベストセラーリストを席巻した2025年。翻訳家・文芸評論家として国内外の文学シーンを長年観測する著者が人気の理由を読み解く。英米の書評に見られる意外な形容、日英翻訳家たちの創意工夫とネットワーク、排外主義的な政治状況に反発する若い世代からの支持……。フェミニズムからミステリ、猫と喫茶店が定番のヒーリングフィクションまで、村上春樹以後の「世界文学としての日本文学」を描く決定版!

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Posted by ブクログ

ネタバレ

・イギリスでは現在(2025年)日本文学ブームを迎えている様で、その背景をビジネス、文学、イデオロギーや時代背景などから読み解く試み
・2025年6月時点のイギリスの翻訳文学Top50の内23を日本文学が占めていたり、上半期の翻訳市場の20%を日本の小説家4名で作るなど、イギリスの翻訳文学市場を席捲している
・米国でも同様に日本文学は売れていて、この背景には、米国一強体制の崩壊や英語圏文化妄信への揺らぎ、フェミニズム潮流、意欲的な翻訳家/出版社の出現(デジタル化と並行して)、不安定な時代に人々が求めるニーズと日本のヒーリング小説の相性の良さ、川上未映子さんによる批評などポスト村上春樹の動き、などがあるという
・定量的な説明はあまり無かったが(データもないだろう)、日本文学を取り巻く海外環境を詳しく知ることが出来てとても興味深かった
・日本文学で売れている代表的カテゴリは犯罪・ミステリー、同年代女性作家、古典的男性作家、ヒーリング系(猫!)、の4カテゴリ、というのは面白い
・著者の村上春樹の現在に対する個人的意見がしれっと入れ込まれていたのは面白かった。個人的にも、村上春樹の1Q84以降作品に対して感じていたことを代弁してくれていて溜飲が下がる思いだった
・一方で、彼が米国出版業界を理解し適切な人にしかるべきアプローチを取ったことやNYTimesなどの有力チャネルで認知を取っていったこと等の戦略的な動きには学ぶことは多い(ビジネス的な妥協も含めて)。偶然で売れることはないのだということ

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2026年01月28日

Posted by ブクログ

1on1と言うYouTube番組が面白かったので、気になって買って読んだ。『バター』だけじゃなかったんやね。日本文学だけでなく、世界的に英語圏以外の言語を英語に翻訳したものが読まれつつあるそうだ。英語圏では翻訳者の名前を表紙に載せないなどの悪弊があるそうだが、日本なら信じられない話だ。むしろ翻訳者の名前で読むこともあるくらいなのに。と、そんな話もたくさんあって、面白かった。

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2026年01月18日

Posted by ブクログ

ネタバレ

日本の女性作家たちがこんなに翻訳出版されていることに驚き。知らなかった。もっと日本はこの状況を日本中に知ってもらった方がいいと思う。誇るべきこと。恥ずかしながら川上未映子さん、村田沙耶香さんたちの小説はまだ読んだことがなかったので興味が湧いた。読もうと思う。
日本や他言語の翻訳小説を読んでいるのが若い読者ということも意外だった。
これからどうなっていくのか翻訳業界に興味が湧いた。

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2026年01月18日

Posted by ブクログ

実はしばらく時間を置いてから感想を書き始めました。内容が難しかったからではなく、「自分はもう答えを知っていると思い込んでいた」問題を改めて見直すきっかけになったからです。

私たちの直感では、日本文学が英米で人気な理由は、村上春樹、異国情緒、禅的感覚、孤独、美学の違いなど、いくつかのキーワードに集約されがちです。しかし、この本の素晴らしいところは、結論を急がず、こうした「一見合理的だけれど過度に単純化された」説明を丁寧に分解していく点です。読み進めるうちに、著者が本当に関心を持っているのは「日本文学がどれだけ特別か」ではなく、「英米の文学体系がどのように日本文学を読み、必要としているか」であることに気づかされます。

特に印象的だったのは、「翻訳」の再定義です。翻訳は原文の忠実な再現ではなく、文化的な再構築の行為であるという視点です。日本文学が英米で流通するのは、原作がそのまま残されるからではなく、翻訳過程で英米の読者の読書習慣に適合する形に調整されるからです。曖昧さは強調され、文化的細部は薄められ、文法やリズムさえも「馴化」されます。これは原作の裏切りではなく、作品を「生かす」ための方法です。この考え方は少し残酷ですが、とても誠実でもあります。

もう一つ考えさせられたのは、著者による「普遍性」の問い直しです。英米の読者が日本文学を好むのは、それが完全に未知だからではなく、彼らが今必要としている感情表現——過度に劇的ではない痛み、説明を急がない孤独、空白や間の許容——を提供するからです。言い換えれば、日本文学が「普遍的」と見なされるのは、英米現代文学で失われたり過剰に消耗された表現の欠落を埋めているからです。

また、書中でこの「人気」が浪漫化されていない点も好感が持てます。著者は冷静に、日本文学の英米での成功は選ばれ、取捨選択された結果であることを指摘しています。翻訳され、宣伝され、議論される作品は、既存のイメージに合致するものが多く、過度に地域的、政治的、あるいはパッケージ化しにくい作品は言語の境界の外に残されることが多いのです。このことから、私たちが世界が日本文学を読んでいると思っている場合でも、実際には世界は「読みたいと思う部分」しか読んでいないのだと考えさせられます。

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2026年01月17日

Posted by ブクログ

すごく勉強になって興味深い一冊でした。時たま耳にする海外の文学賞についての解説もわかりやすい。2025年は王谷さん柚木さんの話題がありエポックメイキング的な年でしたね。素晴らしい~!

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2025年12月31日

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