鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 謎とき『風と共に去りぬ』―矛盾と葛藤にみちた世界文学―(新潮選書)

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    再読しているときは、それこそ夢中で読み終えた『風と共に去りぬ』。
    その謎とき、深掘りに本書は大成功している。

    何が書かれているかではなく、どう書かれているかに注目するのは翻訳者ならではの視点。そこに注目するとき、とびっきりのドライブ感がなぜ生まれるか明かされる。

    スカーレット/メラニーの分裂・協調、アシュリの性欲への着目、エンディングの評価、そして主要4人の密接度などどどれも冴えている。全体的におぼろげに夢中で読んだ原著の輪郭がはっきりした。

    結語の「この傑作のテクストの下に、発動機の危うい喘ぎや細かい震えを、いまのわたしは感じざるを得ない」には、わたしは恐れをも抱いた。

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    2021年06月22日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    ネタバレ

    メラニー。なんという人。スカーレットとは真逆だが、陰の主人公だ。向こうとこちらに橋を架ける人。信念の人。今際の際での場面で涙止まらず。

    そして、バトラー。4巻で家族のことが少しだけ出てくるが、後見人になっているのはあの人の息子。報われなさに、これも泣けてくる。

    最期にスカーレット。彼女のビルドゥングスロマンなのだが、最期にその気付きが訪れる。僕にとってのタラは、記憶のなかにあるが、戻り、出発する場所をもてる人は強い。

    とにかくうまい構成。

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    2021年06月20日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    2巻で大激動の戦争最中を読み、ここがピークかと思いきや、ここからが闇のスタートになるとは。
    タラを襲う北軍のヤンキー、重税の圧力、帰ってきたアシュレやレットとの交わりの中で経験する絶望。とにかく世の流れもスカーレットの人生の流れもここ半年の内に目まぐるしく変化していく。

    戦争を経験したことのない身としては、歴史で語られない敗者側のリアルな実態とプライドに初めて触れた気がしてならない。
    打ち負かされても、打ち負かされたと認めず、毅然としていて昔の形式を忘れず誇り高き人としてなり振る舞う。微笑の仮面を身につけて…。

    スカーレットの精神力や生命力の漲りは衰えないけれど、明らかに変化していく価値観

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    2021年06月19日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    スカーレットへの試練は、まだ続く。もう底だ、と思った瞬間、次の試練が。
    最初の頃とは物語の色合いが変わってきた。
    タラとはなんなのか。僕には分からない。

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    2021年06月18日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    「どうして自分がちっとも幸せに思えないのか分からなかった。でも――なんなの、わたしたち、こんな年寄りみたいな話し方して!」

    このスカーレットの叫びが、この小説の全てだった。
    これぞアメリカ。これぞ青春。いや、これぞ人生。

    たくさんの感想より一読するのがベスト。

    大人になり、発売から80年以上も経過した、そんな今、読むからこその、大きな味わい深さがありました。

    個人的には、主人公はスカーレットでもなく、レットバトラーでもアシュレーでもなく、途中からメラニーだと思って読み進めている自分がいました!

    他人をどこまでも信じる力と、自分の力しか信じてやまない、そんな二人が物語をグイグイと引っ張

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    2021年06月18日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    レットの不可解な行動。
    スカーレットの不屈の魂。葛藤しながらも、前へ進んでいく。タフになっていく。

    「背負う」ことを考えた。背負うものは、意図せず、背負わざるをえないものとなる。背負うものは重い。背負うものはなくならない。背負う者は一人だ。誰かの手伝いはない。

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    2021年06月15日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    激動の2巻。
    南北戦争が佳境に入り、読み進めるごとに事態は悪化の一途を辿る。戦争最中の人間の感情の動きやアトランタの変貌ぶりが手にとるように描かれていて、映画を一本観たかのごとくイメージされる。

    アシュレとの別れのシーンではまさかスカーレットが良い意味に捉え舞い上がるシーンで、つくづく自己肯定感が強い人だとドン引きしそうになったけれど、笑 2巻最後のシーンでは、その自己肯定感と、アイルランドの血を受け継いだスカーレットの並々ならぬ覚悟と強さ、逞しさが溢れんばかりで圧倒させられる。スカーレット、がんばれーー!



    「興奮と、パーティと、そして感激!万歳!ジョンストン将軍は二十二マイルのかなた

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    2021年06月14日
  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    傑作。
    恋愛、結婚、女性の地位、戦争の欺瞞性あますところなく書かれている。
    スカーレット・オハラ、レット・バトラーが痛快。
    構うものか、の心意気がこの後、どうなるのか。

    20年前に一度、別の訳者で読んだと思うが、ここまで痛快だとは!

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    2021年06月10日
  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    アメリカの南北戦争の時代。南部のタラやアトランタが主な舞台。
    世界史で南北戦争の経緯や結果を知っていながら、スカーレットを取り巻く人生の細かな描写を読み進めていく。
    歴史で取り扱う南北戦争は2行にも満たないかもしれないけれど、この作品には、今の自分と何ら変わらないほどの濃い1日1日が豊かな表現で綴られている。
    とにかくスカーレットの自己肯定感の強さには多少羨ましい気持ちもあるけれど笑、メラニーの芯からの優しさや柔らかさがもっと評価されてもいいのにと思わずにはいられなかった。

    5巻まであり、長旅を始める前の覚悟と同じような腹括りがなかなか出来ず、やっと読み始めたものの意外に読みやすく、面白くて

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    2021年05月17日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    ネタバレ

    嘘でしょ…。まさかの終わり…。
    スカーレットに感情移入していたから、絶望。
    全てを失ったじゃない!それでも「明日考えよう」なのね。
    初期のスカーレットの世界は風と共に去ってしまったんだ。あのキラキラしていたスカーレットも。
    多分彼女の変化は仕方なかった。でも、「明日考えよう」が良くなかったのかなあ。
    メラニーとレットという素敵な2人に出会いながら、孤独になるなんて…。
    この結末を迎えるお話が世界中で人気なの面白い。
    作者とは別の方が続編を書いたみたいだけど、無い方が良くない?衝撃的だけど素晴らしい終わり方。

    風と共に去りぬはフェミニズム的な観点で見ると偉大だし、黒人差別の歴史を知る上でも興味

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    2021年04月20日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    超大作。

    貧しさで、これほど人の気持ちは荒むのか。衝撃だった。

    学生のときに、南北戦争は、奴隷解放を目的にしていて、正義が勝ったと習った。
    でも、戦争はそんなに単純じゃない。勝者が全て正しかったわけでもない。

    スカーレットの醜さと、未来を見て生きる強さ。
    とにかく圧倒される。

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    2021年04月13日
  • 恥辱

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    重い、これは告発小説なのだろうか?
    圧倒的な力の不均衡のもとにループしてゆく暴力、暴力。
    男と女、白人と黒人、若者と老人、人間と動物。
    欲望と憎悪と復讐心と。
    これはアフリカーナーの懺悔録なのだろうか。帝国主義のもたらした残滓としての「恥辱」が重層的に描かれる。52才にして未だ枯れやらぬ男であるが故に社会的に抹殺されるデヴィッドと、要らない生き物として殺処分される犬の運命が重ね書きされているところに、この作品の救いのなさがある。色好みの中年男性が年下の女性に入れあげて失敗し、都落ちして現地の女性と関係する、というストーリー自体は、一種の英雄流離譚とも読めなくも無くて、日本なら『伊勢物語』『源氏

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    2021年03月15日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    母になってから読み返すと、この物語の終盤は、親とは何かについて考えさせられるパートでもあった。超安産体質で出産後はマミーに預けビジネスに邁進するスカーレットと、自らの命と引き換えにでも産もうとするメラニーの対比。
    全編通して描かれているテーマの多様性に本当に驚かされる。

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    2021年03月10日
  • 風と共に去りぬ 第4巻

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    この巻は恋愛模様よりも政治的なメッセージを強く感じる。拝金主義、人種差別、宗教、アメリカの今に繋がっているであろう思想が、スカーレットとその周辺に散りばめられている。

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    2021年03月09日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    「謎解き」のおかげで、ウィルの登場を心待ちにして読み進めた。何故彼の存在が映画舞台ではないものとなっているのか!彼に肯定されることでスカーレットはますます自信を持ち、タラへの拘りを強くしていくというのに!戦禍の様子、南北のパワーバランスの様子が丁寧に書かれていることに改めて驚かされる。

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    2021年03月08日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    この巻を読むと「だから!アシュリーなんてどうでもいいから!レット!レット!」と言い続ける母に完全同意しか出来ない。恋愛物語の顔をしながら、戦争の表と裏が残酷に描かれていてすごい。

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    2021年03月07日
  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    とにかく面白い。映画でも有名なバザーのシーン、スカーレットのプライドの高さと勘違いがやはり可愛い。バトラーとメラニーのさり気ないやりとりに注目。

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    2021年03月06日
  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    ネタバレ

    2人がもう少しでも素直だったら、別れることは防げたはず。特にスカーレット。好意を持ってるなら「好き」、何かしてもらったら「ありがとう」、自分に非があったなら「ごめんなさい」。何かしら友好的な反応をしていたら、レットは愛されていないと思い悩むことを防げた。


    まあ両者ともプライドが高くて素直さに欠けていたからできなかったのだろうけど。この小説では似た者同士だけが安定した結婚生活を送れる論を推すけど本当か?似た者同士は似たような短所をもつことも意味する。共通の短所を原因とした問題が発生したときにうまく対処することができない。スカーレットとレットはその際たる例。

    作者はこの作品に10年かけた。長

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    2021年03月05日
  • 嵐が丘

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    ネタバレ

    ヒースクリフとキャサリンの悲恋。ヘアトンとキャサリン・Rの恋。第1世代は、身分・教養・性・(身体)の柵を乗り越える事ができなかった。「(略)1人の人間の中に二つの真実がある。第一の真実は二つ目の真実の圧力に耐えきれない-戦争は女の顔をしていない-スヴェトラーナ・アレクシェーヴィチ-」幸か不幸か、ヒースクリフの嵐のような復讐がありえたはずの身分の柵を完全に破壊し尽くした。そして、教養の柵をキャサリン・Rが乗り越え、ヘアトンが性の柵に無視を決め込んだことで、恋が成就する事になる。二人の恋の成就は、復讐の因果に囚われたヒースを救済した。現世の恋は悲恋で幕を下ろしたヒースとキャサリン。ヒースクリフの死

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    2021年02月11日
  • 謎とき『風と共に去りぬ』―矛盾と葛藤にみちた世界文学―(新潮選書)

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    映画の印象が強すぎる作品を読み解いていく面白さ。10代の頃読んだ時は映画のシーンを思い返すだけであったことを痛感(映画に出ない人物の存在すら読み飛ばしていた模様)鴻巣訳も買い揃えたので近々読み返す。

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    2021年02月08日