あらすじ
「生きづらさ」を乗り越えるために
「100分deフェミニズム」(2023年1月2日放送)が待望の書籍化! 『伊藤野枝集』『侍女の物語』から『心的外傷と回復』『男同士の絆』まで。豪華著者陣が名著の核心を読み解きながら、フェミニズムの真価を語りつくす。未放送のトピックも収載し、新たな取材も加えた決定版!
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Posted by ブクログ
1章 大正のフェミニストって本当にアウェーの中で道を切り開いててすごいと思うし尊敬してる。でもみんな結婚してたくさん子ども生んでて育児にも追われてたんだよね。結局、結婚してない女には発言権無かったんだろうな、フェミニストなのに夫を支えるってそれまでと何ら変わらないじゃん、とも思ってしまう。
2章 『侍女の物語』でも、子どもを生むことそれ自体については当たり前のように流されてる(ように自分は感じた)。非婚非産は悪しように書かれてるし。「フェミニズム」として、「女性の権利」として、「平等」としての根本てそこだと思うのに。「消極的自由」について書かれてるし、セックスワークとかについて話す時って薄っすらとでも皆それが念頭にあると思うんだけど、「子どもを生むこと」は当たり前だよね、て認識がフェミニストにも大体ある。
3章 ヒステリーの研究をしてて下〜上流階級の全体に幼児に対する性暴力がありふれていると気付い(て研究を止めてしまっ)たらしいフロイトに、少し共感した。女が女性差別に気付いた時の気持ち悪さと似たものを感じたんだろうなあと。フロイトのそのあたりのエッセイとかないのかな。本に書かれてる通り、自分も「それ見捨てたってことじゃん」と思う。けど、男が「女性差別の気持ち悪さ」を実感できる部分てそういうとこしかないのかなとも思う。
サバイバーは体や心の境界線がへんてこな状態になってしまっていて、「そこに境界線引く?」「そこに境界線引かない?」とこっちからすると思うのはすごくわかる。
4章 今もうフェミニズムを考える上で当たり前にある「ホモソ」て概念が『男同士の絆』という本からできたのを初めて知った。ホモソに強制的に異性愛とミソジニーが組み込まれてるのもたしかになと思った。異性愛が強固に(偏執的に?)あるのに、「女性は男同士の絆(金、社会を円滑にする)のための溶媒」ていうのも分かるけど分からない。トロフィーワイフと呼ぶように、男は「人間」には恋(女の言う恋と男の言う恋もまた違う気がする)をせず、物(ここでは女)に恋をして、それによって男同士で「お前(俺たち)は“人間”に恋しないから人間だよな」と確認しあってる(から人間に恋する同性愛者は異質で危険視される)…みたいなことかなと自分は解釈してる。
エロコンテンツが溢れかえってる理由もそこにある気がする。常に男(人間)であると確認し続けるために女を消費する&消費してますよー!(自分は人間ですよ)と男に宣伝する。
「男に選ばれた女以外は潜在的な娼婦」ていうのが「AVや風俗とそこらへんにいる女性を同一視する男」がたくさんいる理由なのかなと納得した。
Posted by ブクログ
フェミニズムといえば勝手にとある女性コメンテーターさんが連想され、苦手に思っていましたが、フェミニズムに対するイメージが180度変わる程面白かったです。
特に上間先生の活動や考え方には感銘を受けました。若ければ琉球大学に行って学びたいと思ったほど。
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ハーマンについて実践的に論じてくれた上間さんの回がとりわけ素晴らしかった。トラウマ経験者にとって、震えながら読んだ。
上野さんの半身で組織に関わる提言も素晴らしい。
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フェミニズムに関わる本とそれで描かれるフェミニズム要素について、4名の方が書かれてるんだけど、どれも異なる視点で面白かったです。読めてよかった!
『侍女の物語』『誓願』は前から気になってたけどいっそう読みたくなったな〜。最悪な構造の中で異なる立ち位置にいる女性たちが描かれる物語、気になる‥‥。
あと私は身体が女性で同性パートナーがいて、それを割とカムアウトする方だけどこれって自分が男性だったらこんなにカムアできてただろうかと疑問に思っていて、それが上野千鶴子さんの文章で割と納得できて、読めてよかったな〜(ホモソーシャルにおいて獲得する価値のあるもの・消費するものが女性(性的に)で、その論理で行くと自分たちを消費される側と見なす同性愛者は弾かれるという論理)。
あと男性が真に認められたいのは女性ではなく男性、というのもなるほどと思った、この人のためなら死ねる、と男が命を賭けるのは大抵男性であると‥。
トロフィーワイフとかも出てきたけど、自分の彼女/妻とか誰かの彼女/妻をくさす男性たちの理屈が本当に分からなかったけど、ここで書かれたホモソーシャルの仕組みの理屈に載せるとなるほどとは思う‥それでいいんかとは思うが‥。
結構全体的に、「男性は」って主語で言いきられてたのはどきどきしちゃったけど‥まあその感覚は引き続き持っていこう‥。
加藤陽子さんの『伊藤野枝集』、上間陽子さんの『心的外傷と回復』も読んで痛ましく思いつつ、でもこういうアンソロジーだからこそ出会った内容で読めてよかったです。
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特に上間陽子さんの解説が良かった。やはり現場に入り込んでいる人の言葉は重いし、そして思いにあふれている。上間さんが紹介した「心的外傷と回復」を是非読みたいと思ったが、高額すぎて少し躊躇する。
Posted by ブクログ
上野千鶴子の担当する章が興味深かった。
ホモソーシャルな集団(往々にして男性中心のコミュニティを指す)では、同性愛嫌悪(ホモフォビア)とミソジニー(女性蔑視)を持つことで成員資格が与えられる。つまり、異性愛者として女性を性の対象として扱うことができてはじめて「仲間」として認められる。
ホモソーシャルの考え方を使えば、非モテ男性や弱者男性、インセルといった現象も説明できる。
冷静に考えたら別にモテなくて落ち込む必要はないのに女性に性的にモテなくて落ち込む人が存在する。
それは実は女性にモテないのではなく、自分が男社会で「仲間」と認められないから落ち込むのではないだろうか?
そういうのは本当の意味の仲間とは言えない。ので、「仲間」ではなくて、自分を仲間と認めてくれるコミュニティを探すのがいいと思う。世界は広い!
Posted by ブクログ
ザ・フェミニズム、という人選でなく、専門とは少し離れた視点もっ、てのが絶妙な匙加減。とはいえ、一番感銘を受けたのは、上野さんが取り上げている”ホモソーシャル”のそれ。さすが第一人者。ミソジニー、ホモフォビアといった、ヘテロセクシャル一辺倒な男性特有の思想も、ホモソーシャルの視点から説明され得る。なるほど。短い中にも気付きの多い一冊。
Posted by ブクログ
勉強になった。『侍女の物語』に見られる女性の分断は、男女雇用機会均等法や派遣法などによって現実に起きている、といわれると、たしかにそういう見方もあるなと気付かされた。専業主婦、一般職、総合職…
ルネ・ジラールの欲望の三角形の話は聞いたことがあったので、それが上野千鶴子さんの話に出てきて嬉しかった。たしかに、頼朝の女ばかり口説く「鎌倉殿の十三人」の三浦義村はそれだなと思う。
男は男に認められることで男になるが、女は男に認められることで女になる、その性の非対称性もわかりやすかった。結局この社会はそんな家父長制の尾っぽを引きずったホモソーシャルな社会だけれど、会社と半身で関わる・プライベートを大切にする生き方がそれに対する対抗になるなら、これからの社会は変わっていけるかもしれない。偏屈なおやじたちがいなくなったら。でも男は富と権力と名誉を男の中に独占するホモソーシャルな社会をやはり続けようとするだろうか。
Posted by ブクログ
どの章もわかりやすく興味深く読めたけれど、上間さんの語りは私の中で別格。
なぜ傷や暴力や怒りやトラウマを、悲しみと絶望あふれる世界を、こんなに力強く静かに語れるんだろう。
彼女の文章を読んでいると私はいつも深海に潜ってる気持ちになる。
Posted by ブクログ
2023.1.2放送のものに、放送では伝えられなかった内容を加えさらに充実させた1冊です、とディレクター山田氏の「はじめに」弁。
「伊藤野枝」は番組では辻潤と大杉栄との関係と28歳までに7人の子供を出産、というのがとても印象に残ってしまってあまりいい印象は無かったのだが、加藤陽子氏の活字を読むと、思索の人ではあったのかもという印象が少し増えた。明治28年の生まれで生家は没落はしていても潤沢だったころの生活の名残があり、労働者の開放を思想しながらも、女工たちの生活との間には一線がひかれている、などのことが改めて分かった。
「侍女の物語」では筋書きや登場人物の意味付けが書かれていて、気づかなかった意味付けが分かった。また続編の「誓願」にも触れられていたので、やはり読むべきかな。
「男同士の絆」では、論理的な上野氏の文章で番組を再確認。改めてマネの「草上の食事」って、やな絵だなあ・・
男同士のお話で女性は相手の男からぶんどった戦利品だ。
またセジウィックは私たちが常識と思っているような性道徳は意外と歴史が浅く、ここ3世紀くらいのもの。それを「伝統」として頑なに守っているのが宗教保守。歴史的な変化が起きると、いままで当たり前だと思っていたことに亀裂が入る。その亀裂が見えた時に初めて、いままで当たり前だと思っていたことの起源に関する議論が成り立つ。始まりについて知ってみたら、終わりもまた見えてくる。・・歴史のある時点で始まったものには、必ず歴史のある時点で終わりがくる。なので、異性愛の男同士がホモソーシャルな集団を形成して、富と権力を独占するという今日の当たり前にだって終わりを予見することができる。「男同士の絆」はそういう、希望を与えてくれる本でもある。
2023.7.30第1刷 購入
Posted by ブクログ
紹介されている本はどれも興味深かった。
ジュディス・ハーマンの心的外傷と回復は、特に読みたいと思った。
・伊藤野枝の「階級的反感」にはめちゃくちゃ共感する。
正義に燃え、階級による格差や差別をなくしたいと思って活動しているのに、(活動による救済の対象である)労働者階級と仲良くできない。相手には拒まれてしまうし、相手のそんな振る舞いに自分も苛立ってしまう。
それを率直に認めて見つめるのは勇気がいるがとても大切なこと(今のリベラル知識人に足りていないこと)。
そして、上間陽子の「階層的な違いや壁は確かに存在する。でもそこからだけどな、そこからスタートすればいい」というのは説得力があった。
・アトウッド『侍女の物語』は、カズオイシグロのフェミニスト版みたいだなという印象。
フェミニズム的価値観が押し出された小説ってあまり読んだことがない気がするので未知だが、いつか読んでみてもいいな。
現代アメリカ批判も含んでいる作品。
・ジュディス・ハーマン『心的外傷と回復』、名前はもちろん知ってる古典的名著だが、内容を解説されたものを読んだのは初めてでためになったしさらに興味を持った。
第一章の研究史の概説も知りたいし、第二章の心的外傷からの回復の道筋を私も勉強したい。
PTSDはずっと女の「ヒステリー」扱いされていたのが、ベトナム戦争帰還兵が同じ症状を訴えてはじめて病気だと認定されたというのは、女性が社会に占めてきた地位を物語っていて興味深い。
・セジウィック『男同士の絆』、いかにも上野千鶴子らしいゴリゴリの理論書。ホモソーシャル空間成立にはホモフォビアとミソジニーが不可欠という、これ自体は聞いたことのある話。
ただホモソーシャル空間での競争関係があるために、そこで敗北した「弱者男性」は自分より弱い相手である女性が攻撃対象であるという指摘には確かにと思わされた。
最後に書いてあるように、男がホモソーシャル空間から半身抜け出さないと社会は変わらない。男がんばれ。