あらすじ
〔ブッカー賞受賞〕52歳の大学教授は二度の離婚を経験後、娼婦や手近な女性で自分の欲望をうまく処理してきた。だが、軽い気持ちから関係を持った女生徒に告発され辞任に追い込まれる。彼は娘の住む片田舎の農園へと転がりこむが、そこにさえ厳しい審判が待ち受けていた。ノーベル賞作家の代表作。解説/野崎歓
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ずどんと重いものが内臓に残るような読後感。
ルーシーの存在は、彼の「女を組み敷きたい」という暗い欲望がどこに繋がっているかをまざまざと見せつける。女がすべて彼の人生の彩りでしかない(彼がルーシー以外の女性を人として捉えられない)状態から、主人公を徹底的に引き摺り下ろす。
羊の命にこだわり、土地の風習に抵抗していた彼が、最後に手放すものが悲しい。
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重い、これは告発小説なのだろうか?
圧倒的な力の不均衡のもとにループしてゆく暴力、暴力。
男と女、白人と黒人、若者と老人、人間と動物。
欲望と憎悪と復讐心と。
これはアフリカーナーの懺悔録なのだろうか。帝国主義のもたらした残滓としての「恥辱」が重層的に描かれる。52才にして未だ枯れやらぬ男であるが故に社会的に抹殺されるデヴィッドと、要らない生き物として殺処分される犬の運命が重ね書きされているところに、この作品の救いのなさがある。色好みの中年男性が年下の女性に入れあげて失敗し、都落ちして現地の女性と関係する、というストーリー自体は、一種の英雄流離譚とも読めなくも無くて、日本なら『伊勢物語』『源氏物語』あたりがよく知られている。そのプロットをアパルトヘイト後の南アフリカに置換えた結果、英雄流離譚が暗黒変換されたものとも読める。
では、英雄を駄犬に変えてしまうものとは何なのか?
移民、ではなく、主人、として植民地に乗り込んだ人々の後ろ暗い思いと戸惑い、なのだろうか?現代社会が説く「平等」や「博愛」、「自由」を思う様蹂躙した先祖たちの過去を、謂れもなく精算させられる側の。とするならば、これは、日本人の物語でもあるのではないのか?朝鮮の、中国の、台湾の、南洋諸島の人々の視線を無邪気にかわし、無知に遊ぶ日本人の恥辱を暴く小説ではないのか?
『今ここに在ることの恥』という辺見庸さんの著作を思い出す。
私たちは知らない間に、あるいは意図的に、いつも誰かの足を踏んでいる。
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都会的で女遊びが好きな大学教授が、社会的に転落した結果、新しい愛と多様性の受容を達成する話。後半に娘の家で強盗に襲われてからの話は深くて切れ味があって良いのだが、前半の転落するところまでのスケベ親父っぷりがひどくて引いた。
全体としては、人生も後半になって大きな内心の変化に至るまでの主人公の心情がとてもよく書かれているし、訳文も端正さと切れ味がよく文句なし。
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南アフリカの大学(都会)と田舎の二つが舞台。
仕事で2度しか訪れていないが、リアリティをもって読むことができた。
主人公は西欧文学専攻の大学教員。それがセクハラ疑惑から転落し、犬の殺処分に携わる中で、これまでの人生を振り返る。その振り返りは生やさしいものではない。過去の女性は彼の中では全て美しく輝く。しかし、唯一、実の娘ルーシーだけは、妥協点が見えない。彼女こそ、もう一人の主人公ともいえる存在。覚悟が決まっていて、不可解だが、魅力的なのだ。
読み終わって、ただただすごいものを読んでしまったという感想しかない。ヒロイズムのかけらもないのに、人間とは、社会とは何なのか、考えさせられる。
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恥辱とは何か。確かに、本書の主人公やその娘に与えられるものは私たちの常識感からいえば恥辱以外の何物でもない。しかし、主人公たちにおける価値観のゆらぎのなかで、それが恥辱ではなくなっている。アパルトヘイトが終焉したときに南アの人々が感じた価値観のゆらぎがこのようなものだったのだろうか。それは想像するほかはない。
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社会的に地位がある人の転落に次ぐ転落と複雑な親子関係を描いた作品。酷い目に遭いながらも、現実路線でそれでも生きていくことの大変さ。選択の難しさ。罪と罰、そして恥のあり方。こういったことをテーマにしながら南アフリカに残る白人と黒人の微妙な空気感までを浮かび上がらせる。文体は簡潔でリズム良く話が進む。非常に良かったです。
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これすごい本かも。「恥辱」のレベルが二段階どころか三段階くらいに分けられていて、原始的共同体や女性の受動性の無条件の肯定さえも許さぬような気迫を感じた。
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最初はしょうもないオッサンやなーって感じだったんだけどね。まぁ最後までそれは変わらなかったわけですよ。
しかし平たく言えばいい年こいても性欲が収まらないオッサンが若い子に手を出すといういやしかし普通に今でもあるけどそれが文学的な表現でここまで生まれ変わるのかと思えば待ちでパパ活に励む世のおっさんどもも大手を振って歩けるというものではないか。
フラレた若い子の出ている劇を見に行ってまた振り返ってくれないかなーとか妄想しているところとか最高だけどしかしこんなんで賞を取っちゃうとか審査員もオッサンしかいねーじゃねーかとかこれはこれでどうしようもなく、、イイネ!
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背景はアパルトヘイトが終わった頃の南アフリカでの個性的な白人男性の転落話なんだけれど、私は女。女目線から読むと学生に手を出す准教授も白人を凌辱する男も最低……。この最低な男が語る体験と生活。そこに登場する全く理解できない娘の価値観。だからと言ってこれは嫌な話だ! となるわけではなく、読み終わるとグルグルと登場人物それぞれの人生や考え方・背景を想像し回想し行動理論を考えちゃう。この余韻を文学と呼ぶのであればすごい作品。全く想像すらできない生活エリアでの話なのにリアリティが迫ってくるのもすごい。読んでみて、価値観はきわめて個人的なもので共有できないが、慮ることはできる。しかしできたところで虚しい。だけどそこに小さな希望があるんだよってことかな。文学を突き詰めるのってやりたいからこそ辛そう……。物語の世界観をただ感じるだけで十分楽しいしね。
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はじめて読むクッツェー。
先入観で難しい話かと思っていたが、翻訳も読みやすく、スラスラと読めた。
読む人の立場により、どこが印象に残るか変わってきそう。
前半は父親の、性欲とプライドに突き動かされた結果の都落ちまでを描く。一転、後半の方は娘と父の関係が中心になっていく。
強姦され子供を孕った娘が、相手を告発せず、そのことを誰にも話さない、その娘の気持ちを理解するできない父親の苦しみ。その背景に仄めかされる、南アフリカ社会で白人として生きていくことのハードル。そんなところが印象に残った。
いつか再読したら違う読み方ができるかも。
クッツェーの他作品も読んでみたい。
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老いに向かう男性が少しずつ、ズレてゆき転落する物語と思っていたら、南アフリカの抱える歴史や歪みがそれぞれの運命に結びつき、思いもよらない展開となった。
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元文学部の教授が学生と関係をもったために大学を追われるも妙な開きなおりさえ見せる序盤、あまりにも現実での見おぼえがありなんともいえない気分になる。とまあそれはさておき、まだ訴えられる前の主人公の勤めるさきがコミュニケーション学部というのが最高で、この全体のかろやかな皮肉の調子はなによりも文体に滲み出て、絶望的な惨状や嘆きをとことん悲壮にさせない。いわゆるインテリ側の人間が、そういうもののまるで通じない土地に身を置いたときの無力さは、しばしば描かれる題材ではあるかもしれないがやはり痛切。自身のもたらした害には一向に想像力を働かせないで、自身と、そのまわりがうけた屈辱だけを嘆く滑稽な男が、最終的には殺処分される動物らに愛を見いだす結末には、この物語に対する安易な形容を寄せつけないすさまじさがある。
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とても面白い。結末については、当時のその土地の政治情勢を理解しないと何が書いてあるのか分からないと思う。
かなりの問題作だったのだろうと思う。少なくともあらすじを読んだ時に想像するような小説ではなかった。
「無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく。持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」
「犬のように」
「ええ、犬のように」
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肉欲に溺れて道を外れた男。
職を追われ、縋った娘との暮らしを突如襲う厄災。
あらゆるものを破壊され、なんら救いのない生の中で男が見出すものは。
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読み終わるとニック・ホーンビィの『ハイ・フィデリティ』を唐突に思い出した。ポップソングの代わりにバイロン。もっとも細部の類似点ならジョナサン・フランゼンの『コレクションズ』かもしれないけれど。物語の進行に首を傾げる場面はいくつかあれども、男というのはこんなものかもしれないと腑に落ちる。最後の一文は秀逸。
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前時代的な全くもっていけすかないインテリおじさんの大転落と、その先にある微かな希望の物語。
始まって30ページもしないうちに主人公が「女の美は当人だけのものではない。この世にもお裾分けがなくては。美を分かちあう義務がある。」とか言い出した時には凄まじい嫌悪感が一周して逆に笑ってしまうくらい、愚かだな~と思っていたけど、南アフリカ独特の閉塞的なムラ社会の中で娘を思って七転八倒する姿と、徐々に価値観が変わっていく様子に、嫌いにはなりきれなかった。
Posted by ブクログ
衝撃すぎてなんかもう思い出したくないけどとにかく衝撃だった。衝撃すぎて読んでから7年経ってもまだ感想が書けるほど。こんなエグい物語を書く人がいるのか。でも普段考えることもないし、避けていることをガンガン突きつけられて胸糞悪いし、苦しい。密度の濃い感情を起こさせる事においてやっぱりブッカー賞はすごいんだなあと思ったけど、好き好んで読もうとは思わない…。
Posted by ブクログ
エリート大学教授が性欲により落ちぶれていく話。簡単にいうとそれだけなんだけど、じゃあ落ちぶれていくってなんだろう?アフリカは落ちぶれている?都会で大学教授をすることはエリート?生きていく上での恥辱とはなにか?
自分たちが味わった恥辱について、大学を追い出された元、エリート大学教授と、アフリカの田舎で農園経営をして必死に1人で生きていくその娘が話し合う所がある
「最下段からのスタート。無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく。持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」
「犬のように」
「ええ、犬のように」
生きていくなかで、何に裁かれていかなければならないのか。美しい女とセックスをして、それを申し訳ないと形だけでも涙ながらに謝罪しないことは糾弾されるべきことか?裁かれることか。女1人で身寄りもない田舎で農園を営む夢を持ち続けることは裁かれることか?誰かに糾弾されることか?わからないけど、人が生きるだけで誰かが嫌悪を抱いて、それらに制裁を与えたい、屈辱している姿を見たいと思う人間はそこかしこにいるのだろうなーと思った。
文中でひとつのキーワードになっている犬について描かれている本当に最後の最後の後半がすごく好きだった。多分、犬は人間に最も近いものとして描かれることが多いからめちゃくちゃ死ぬんだろうな。
犬のように生きて、犬のように優しく抱かれて、犬のように何が訪れるのかわからぬまま死ぬのだ。
犬がめちゃくちゃに死にますが、犬とはわたしでありあなたかもしれない。
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「百年の誤読」から。ノーベル賞受賞作家ってこともあり。主人公じいさんの、結構なろくでもなさ加減が面白かったです。ただおそらく、自分が本作の素敵さを十分に味わいきれていないんだろうなというもどかしさを踏まえて、満点はつけずです。アパルトヘイトがまかり通っていたかの国の抱える難しさとか、本作からそれとなく伝わってくるものも興味深かったです。もう一方のブッカー賞受賞作品も是非味わってみたい、とは思えました。
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主人公とその娘の墜落の仕方がうまく対比をなしていて、且つ彼らを陥れる(作為、無作為問わず)人々との照らし方もこれまたうまい。
動物病院での殺処分など、モチーフも唸らせる。
ただ、盗難車が見つかった件は何だったのだろう…?
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ノーベル賞作家クッツェーの代表作。現代作家だけあって読みやすい。しかし、ストーリーが投げかける問いは難解。セクハラにより大学を追放された主人公の娘。南アフリカの田舎で農園を営む。しかしその行動は近代人である主人公やわれわれ読者には理解できない。だけどそれは近代の目指した価値観が崩壊した現代において、オルタナティブを模索しているようにもみえる。
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読みやすい。原文がよいのか訳文がよいのか、たぶん、どちらもよいのだろう。気をつけているつもりでも、結局、自分のイメージで世界を見ることしかできない知識人の中年男子が、いろいろな試練にあいます。
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作者は、南アフリカ生まれの白人。この作品で、2度目のブッカー賞を受賞。
前に読んだ『絵葉書きにされた少年』で、クッツェーの作品が何度か引用されていたので、興味を持って読んでみた。
読んでみると、話は重い。南アの社会的問題に直面させされる。
アパルトヘイトが終わり、民主化の道を開いたマンデラ政権。様々な人種が共存できる「虹の国」として新しい出発をきった南アだったが、長年抑圧されてきた黒人と白人の共存はむろん一朝一夕で実現できるものではない。犯罪率が急増し、白人への強奪、レイプなどが日常茶飯事となり、南アを去る白人も増えた。
話の展開は、一人の大学教授が、ある時女子学生と親密な中になり、それがきっかけで大学を追われ、南アの田舎で農園を営みながら一人で暮らしている娘のところへ身を寄せる。そこで、親子を襲った事件。娘は3人の黒人からレイプされ、父親は怪我を負う。父親は娘のルーシーにこの田舎の一人暮らしを辞めるように、再三説得するが、ルーシーはその家を出て行かないばかりか、レイプされたという事実を警察に告発もしない。父親は娘を理解できず、娘は説明をしない。
レイプされたという事実を認めたくない、公にされたくないという理由で警察に訴えでない女性は多いと思う。ルーシーもそのような女性かと思っていたが、彼女には決意と覚悟があったのだ。
「いま、農園を去ったら、負けたまま終わってしまう。その敗北感を死ぬまで味わうことになる」と。彼女は、この地に根を張り、暮らしていくことを決めていたのだ。だから、「自分の身におきたことは、まったくもって個人の問題だからよ。べつな時、べつな場所では、社会問題とみなされるかもしれない。でも、この土地、この時代では、違う。これはわたしの問題、わたしだけの問題なの」と言う。
南アで起きている社会的問題が個人の身に降りかかってきたとき、どう対処するか。黒人を憎むのか、社会問題に対処できない政権を批判するのか、それとも、まったくもって個人の問題として捉えるのか。
ルーシーはこの時代に、この国で生きていくのがどのようなことなのか、それを教えてくれる。
小説の最終場面は、衝撃的ともいえる事実が明らかにされるが、それさえも冷静に受け止め、自分がこの地で生きていくにはどうしたらいいのかを彼女は考える。決してその地から離れようとはしない。なぜならそこは、近隣の黒人の人々と同様、彼女の住む土地であり、他に行くところはないと考えているから。
そこには、私が考えていた南アに住む白人とは違った像が描かれていた。そのことに少なからず衝撃を覚えた。
いわゆる「黒人政権」になって10年以上も経過した南アフリカだが、「虹の国」と称えられるのはいつのことになるだろう。
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ただただ転落していく様を見ることになり、読み終えても心が晴れることはないだろう。僕にはいまいち心に響くことはなかったのは教養が足りないのか。もう少し歳をとって家庭を持ったり、ある程度の社会的地位を獲得した時に読むと感動は変わってくるのかもしれない。
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インテリ元モテ男だった主人公の没落。
時代の変遷についていけない古ぼけた文学者は、継続した人間関係を築くことができず、女を買っては消費する日々。
絶対に自分の考えを曲げず、他人の意見に耳を貸さず、大学を追放されるところまでは面白く読めた。
娘の農園へ住み着いてからはとにかく重い...
動物愛護ボランティアの夫婦をせせら笑い、ボランティア女性の容姿を痛烈に批判しながらも結局セックスしちゃう。
黒人コミュニティを下に見て説教じみた話をするわりに、隣人が仕組んだと思われるレイプについて核心をついた言葉は言えない。
元妻にも娘と自分が受けた襲撃についてしっかり話さない。
どの局面でも主人公は自己中かつ中途半端だし、それ以外の登場人物全員に感情移入できなかった。
動物愛護ボランティアの夫だけはいい人だったかも。一度会っただけの主人公を病院まで迎えに来てくれたし。
主人公の娘がレイプされた後にとった行動、黒人コミュニティに迎合するためには仕方ないのかもしれない。
とはいえ大切にしてきた自分の農場や犬たちを諦めて、素性のしれない男の子供を身篭って、これからの人生を隣人に隷属したまま過ごすのは幸せなのか?
元恋人の女性が新天地へ旅立ったように、別のコミュニティでイチからスタートしてもいいのでは...
レイプ犯の少年が隣人の妻の弟かつ障害があるからって、全てを赦すのは違うでしょ!と叫びたくなった。
キリスト教的な風土があるとしてもちょっと違うよなあ。
隣人と主人公の噛み合わない会話はイライラするし、犬の殺処分に対する主人公の考え方の変遷→やっと「愛」を理解する気持ちになったのかな?→また路上でひっかけた若い女と寝るっていうズコー!な行動もモヤモヤした。
このようにイライラモヤモヤしながらも、どんどん読み進めたくなる不思議な魅力があった。
男と女・親と子・黒人と白人・都会と田舎・人と動物、さまざまな対比で物語は進んでゆき、放り投げるように終わりを迎える。
動物愛護過激派の私にはつらいシーンが多かったけれど、何年か寝かせて再読したい一冊でした。
Posted by ブクログ
先が読めない、と思ったあと、人の気持ちは分からないのだから当たり前と思い直した。語り手である彼は、同僚にいたら避けたくなる人物だが、そうした人間になって世の中を見る感覚が面白かった。
Posted by ブクログ
読みやすくはあるが、扱う主題は難しい。
都会で教授をしている二度の離婚経験のあるおじさんが、性欲を抑えきれず教え子に手を出して、職を追われ、田舎の娘のところに行き着き、そこから展開していくストーリー。
南アフリカの白人と黒人の間のわだかまり、治安の悪さ、強姦などといった時代背景がある中、娘とは事件後でも仲良くはあるが、意見は全く食い違う。
相手の意見を聞かずに、自分の意見を通し、辞職に追い込まれ、その後娘に自分の意見を通そうとする。かつて物を教える立場であったように。
一度だけでは本の一部分しか理解には及ばない自分の読解力の無さを嘆きたくなるが、ブッカー賞受賞作なだけあり、読み応えはある。
男たちに強姦され、妊娠までさせられるのに、警察などには一切言わず、その土地に溶け込もうとする娘。覚悟の上で、生き抜こうとする様は、か弱い人私にとってこの父親のように、理解に苦しむ。
人生何が起こるかわからない。そして何を起こすかわからない。ただ、現実を受け止め、何を教訓としていくか。難しい……。
Posted by ブクログ
気分が落ち込んだ時に読んでたからますます落ち込んだ。救いがない……。
定年まぎわのおじちゃん教授は性欲ギラギラで教え子とやっちゃって教職を追われ、娘が住むアフリカへ行ってみるんだけれどギャングどもにやっつけられてやれやれ……というはなし。
救いのない時代の救いとは何か。成長なき時代の成長とは何か。ただ恥辱に耐えていくしかないのか。
身分不相応な望みを持つことは罪なのか。
しっかし陰気な小説だなーと思いました。