【感想・ネタバレ】恥辱のレビュー

あらすじ

〔ブッカー賞受賞〕52歳の大学教授は二度の離婚を経験後、娼婦や手近な女性で自分の欲望をうまく処理してきた。だが、軽い気持ちから関係を持った女生徒に告発され辞任に追い込まれる。彼は娘の住む片田舎の農園へと転がりこむが、そこにさえ厳しい審判が待ち受けていた。ノーベル賞作家の代表作。解説/野崎歓

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Posted by ブクログ

ネタバレ

ずどんと重いものが内臓に残るような読後感。
ルーシーの存在は、彼の「女を組み敷きたい」という暗い欲望がどこに繋がっているかをまざまざと見せつける。女がすべて彼の人生の彩りでしかない(彼がルーシー以外の女性を人として捉えられない)状態から、主人公を徹底的に引き摺り下ろす。

羊の命にこだわり、土地の風習に抵抗していた彼が、最後に手放すものが悲しい。

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2023年02月26日

Posted by ブクログ

ネタバレ

背景はアパルトヘイトが終わった頃の南アフリカでの個性的な白人男性の転落話なんだけれど、私は女。女目線から読むと学生に手を出す准教授も白人を凌辱する男も最低……。この最低な男が語る体験と生活。そこに登場する全く理解できない娘の価値観。だからと言ってこれは嫌な話だ! となるわけではなく、読み終わるとグルグルと登場人物それぞれの人生や考え方・背景を想像し回想し行動理論を考えちゃう。この余韻を文学と呼ぶのであればすごい作品。全く想像すらできない生活エリアでの話なのにリアリティが迫ってくるのもすごい。読んでみて、価値観はきわめて個人的なもので共有できないが、慮ることはできる。しかしできたところで虚しい。だけどそこに小さな希望があるんだよってことかな。文学を突き詰めるのってやりたいからこそ辛そう……。物語の世界観をただ感じるだけで十分楽しいしね。

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2023年12月02日

Posted by ブクログ

ネタバレ

はじめて読むクッツェー。
先入観で難しい話かと思っていたが、翻訳も読みやすく、スラスラと読めた。
読む人の立場により、どこが印象に残るか変わってきそう。
前半は父親の、性欲とプライドに突き動かされた結果の都落ちまでを描く。一転、後半の方は娘と父の関係が中心になっていく。
強姦され子供を孕った娘が、相手を告発せず、そのことを誰にも話さない、その娘の気持ちを理解するできない父親の苦しみ。その背景に仄めかされる、南アフリカ社会で白人として生きていくことのハードル。そんなところが印象に残った。
いつか再読したら違う読み方ができるかも。
クッツェーの他作品も読んでみたい。

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2023年10月08日

Posted by ブクログ

ネタバレ

とても面白い。結末については、当時のその土地の政治情勢を理解しないと何が書いてあるのか分からないと思う。

かなりの問題作だったのだろうと思う。少なくともあらすじを読んだ時に想像するような小説ではなかった。

「無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく。持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」
「犬のように」
「ええ、犬のように」

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2021年09月04日

Posted by ブクログ

ネタバレ

作者は、南アフリカ生まれの白人。この作品で、2度目のブッカー賞を受賞。
前に読んだ『絵葉書きにされた少年』で、クッツェーの作品が何度か引用されていたので、興味を持って読んでみた。

読んでみると、話は重い。南アの社会的問題に直面させされる。
アパルトヘイトが終わり、民主化の道を開いたマンデラ政権。様々な人種が共存できる「虹の国」として新しい出発をきった南アだったが、長年抑圧されてきた黒人と白人の共存はむろん一朝一夕で実現できるものではない。犯罪率が急増し、白人への強奪、レイプなどが日常茶飯事となり、南アを去る白人も増えた。

話の展開は、一人の大学教授が、ある時女子学生と親密な中になり、それがきっかけで大学を追われ、南アの田舎で農園を営みながら一人で暮らしている娘のところへ身を寄せる。そこで、親子を襲った事件。娘は3人の黒人からレイプされ、父親は怪我を負う。父親は娘のルーシーにこの田舎の一人暮らしを辞めるように、再三説得するが、ルーシーはその家を出て行かないばかりか、レイプされたという事実を警察に告発もしない。父親は娘を理解できず、娘は説明をしない。

レイプされたという事実を認めたくない、公にされたくないという理由で警察に訴えでない女性は多いと思う。ルーシーもそのような女性かと思っていたが、彼女には決意と覚悟があったのだ。
「いま、農園を去ったら、負けたまま終わってしまう。その敗北感を死ぬまで味わうことになる」と。彼女は、この地に根を張り、暮らしていくことを決めていたのだ。だから、「自分の身におきたことは、まったくもって個人の問題だからよ。べつな時、べつな場所では、社会問題とみなされるかもしれない。でも、この土地、この時代では、違う。これはわたしの問題、わたしだけの問題なの」と言う。

南アで起きている社会的問題が個人の身に降りかかってきたとき、どう対処するか。黒人を憎むのか、社会問題に対処できない政権を批判するのか、それとも、まったくもって個人の問題として捉えるのか。
ルーシーはこの時代に、この国で生きていくのがどのようなことなのか、それを教えてくれる。
小説の最終場面は、衝撃的ともいえる事実が明らかにされるが、それさえも冷静に受け止め、自分がこの地で生きていくにはどうしたらいいのかを彼女は考える。決してその地から離れようとはしない。なぜならそこは、近隣の黒人の人々と同様、彼女の住む土地であり、他に行くところはないと考えているから。
そこには、私が考えていた南アに住む白人とは違った像が描かれていた。そのことに少なからず衝撃を覚えた。

いわゆる「黒人政権」になって10年以上も経過した南アフリカだが、「虹の国」と称えられるのはいつのことになるだろう。

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2025年09月28日

Posted by ブクログ

ネタバレ

インテリ元モテ男だった主人公の没落。
時代の変遷についていけない古ぼけた文学者は、継続した人間関係を築くことができず、女を買っては消費する日々。
絶対に自分の考えを曲げず、他人の意見に耳を貸さず、大学を追放されるところまでは面白く読めた。

娘の農園へ住み着いてからはとにかく重い...

動物愛護ボランティアの夫婦をせせら笑い、ボランティア女性の容姿を痛烈に批判しながらも結局セックスしちゃう。
黒人コミュニティを下に見て説教じみた話をするわりに、隣人が仕組んだと思われるレイプについて核心をついた言葉は言えない。
元妻にも娘と自分が受けた襲撃についてしっかり話さない。

どの局面でも主人公は自己中かつ中途半端だし、それ以外の登場人物全員に感情移入できなかった。
動物愛護ボランティアの夫だけはいい人だったかも。一度会っただけの主人公を病院まで迎えに来てくれたし。

主人公の娘がレイプされた後にとった行動、黒人コミュニティに迎合するためには仕方ないのかもしれない。
とはいえ大切にしてきた自分の農場や犬たちを諦めて、素性のしれない男の子供を身篭って、これからの人生を隣人に隷属したまま過ごすのは幸せなのか?
元恋人の女性が新天地へ旅立ったように、別のコミュニティでイチからスタートしてもいいのでは...
レイプ犯の少年が隣人の妻の弟かつ障害があるからって、全てを赦すのは違うでしょ!と叫びたくなった。
キリスト教的な風土があるとしてもちょっと違うよなあ。

隣人と主人公の噛み合わない会話はイライラするし、犬の殺処分に対する主人公の考え方の変遷→やっと「愛」を理解する気持ちになったのかな?→また路上でひっかけた若い女と寝るっていうズコー!な行動もモヤモヤした。

このようにイライラモヤモヤしながらも、どんどん読み進めたくなる不思議な魅力があった。
男と女・親と子・黒人と白人・都会と田舎・人と動物、さまざまな対比で物語は進んでゆき、放り投げるように終わりを迎える。

動物愛護過激派の私にはつらいシーンが多かったけれど、何年か寝かせて再読したい一冊でした。

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2023年09月12日

Posted by ブクログ

ネタバレ

気分が落ち込んだ時に読んでたからますます落ち込んだ。救いがない……。

定年まぎわのおじちゃん教授は性欲ギラギラで教え子とやっちゃって教職を追われ、娘が住むアフリカへ行ってみるんだけれどギャングどもにやっつけられてやれやれ……というはなし。

救いのない時代の救いとは何か。成長なき時代の成長とは何か。ただ恥辱に耐えていくしかないのか。
身分不相応な望みを持つことは罪なのか。

しっかし陰気な小説だなーと思いました。

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2018年06月16日

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