鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 風と共に去りぬ 第5巻

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    人生を変えそうな小説。訳が相当良くて、夢中になって家にこもって読破しました。南北戦争と黒人差別、タラやアトランタの情景、スカーレットの強さと弱さ、メラニーの愛、魅力的なレット、タラのご両親、そしてアシュリ…。とにかく盛りだくさん、というかぎゅーっと濃い濃い読書体験でした。

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    2026年03月22日
  • ほんのささやかなこと

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    早くも、2026年の小説のベスト候補となる小説に出会ってしまった。

    日本語に不自然なところが多く、英語版と並行して読んだが、伝統的なアイルランド小説の流れを汲むと思しい散文的というか、1人称に限りなく近い3人称で思索の流れを中心に読者が主人公の思考に没入して類推していくことを強いるような文体で、翻訳が難しいところもあったのかと思った。

    内容は、強い衝撃を受けた『ドイツ亭』を思い出さずにはいられない。社会的な事象を、一人の人間のあり方として具体化して示すことで胸がしめつけられるような思いを抱かせる。ラストも救うでもなく絶望させるでもなく、読者をただ複雑な現実に放り出す。ウイスキーをぐいっと飲

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    2026年03月20日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    ​漫画などのサブカルチャーの枠を超え、現代の日本小説が英米で「正統な文芸作品」として確固たる評価を獲得している現在地を解き明かす一冊。
    ​特筆すべきは、その人気の理由を歴史的・社会的背景と接続させた分析の鋭さ。9.11以降の不安やブレグジット等に揺れる社会の閉塞感。そこに、日本の女性作家たちが描く多様な価値観や、猫・ヒーリングをテーマとした中編小説が、現代人の精神的渇望を満たすものとして合致しているという見事な構造的理解。
    ​また、このムーブメントの裏にある「翻訳者」の存在への着目。文化的文脈や解釈を深く理解し、言語の壁を越えて共感を再構築する彼らの媒介なしに、いまの熱狂は語れないという確信。

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    2026年03月08日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    「海外文学の名作を読み解く」と始まり手にとった。小難しいジャンルだから考察本のようにかいつばみ、まぁ知ったと気になろうと思った。が、読んでびっくりする内容。
    現代は全ての積み重なった本の上に立っているのに、当たり前に受け入れその足元を見ていなかったと思うような衝撃。
    どれもが、これまでの人間の姿であり、自分であり、未来を示唆していた。
    この著者が女性の翻訳者であるからより女性の自立を戦う姿を読み解く場面が多く、
    これを新時代の女性のアイデティティ=フェミニズムとも言える。
    現代の私達はまだ一人で立つ事を受け入れられている途中であると感じているけれど、それでもこの海外文学の名作から読み解くに、な

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    2026年02月28日
  • あずかりっ子

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    ネタバレ

    読みはじめてすぐ、アイルランド版赤毛のアンみたいなお話なのかなと思った。全然違った。
    「水が染み出すマットレス」のあたりで、キンセラ夫妻が大好きになっていて、そのあとはずっと、
    主人公や夫妻に傷ついてほしくなくて、幸せになって欲しいという期待と不安でドキドキしていた。

    主人公はおじさんとおばさんと一緒に過ごして、愛されて、手をかけられる経験をして、二人を好きになって、二人の喪失と哀しみの片鱗に触れる。かと言って、両親や兄妹と離れたいわけでもないし、まだ幼い彼女には自分の居場所を自分で決めることはできない。
    最後のシーンの大泣きには、二人から離れる(自分自身の)寂しさだけじゃなくて、自分がいな

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    2026年02月28日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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     ラムジー一家とその仲間たちと、一緒に濃密な時間を過ごしている感じで読んだ。
     第二部では、一家のうち3人が亡くなり、荒廃した空き家の様子が描かれている。特に家を切り盛りしていたこの小説の中心人物であるラムジー夫人を失うことは、読んでいる私にも辛かった。
     第三部では、第一部から10年後、家は改修され、残された人達がかつての生活を回想しながら、新たな人生を送っていることがわかる。絵描きのリリーが、自分の描く絵に迷いがあったのに、最後に自分のヴィジョンを発見する所が良かった。
     灯台へと目指す舟で、父と子3人でサンドイッチを食べるシーンも良かった。
     「灯台」とは残された家族の再生の象徴なのかも

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    2026年02月22日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    まるでなにかに呼ばれたかのように、リリーはあわててカンバスに向き直った。まぎれもなくここにある──自分の絵が。そう、緑や青をふんだんに使い、ラインを縦横に描きこみ、なにかを表現しようとしているものが。

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    2026年02月21日
  • 嵐が丘

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    生けるものも死ぬものも、なにかを目にすれば、ある普遍概念に結びついてしまうんだ、無理に気をそらさないかぎり……望むことはただひとつだ。俺はそれをつかみたいと、全身全霊で切に願っている。あまりに長いこと一筋に焦がれてきたから、じきに手が届く気がするんだよ。それも、まもなくのはずだ。それほどに俺という人間は、そこに首まではまりきっている──願いがなかう予感に飲みこまれているんだ。

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    2026年02月21日
  • ほんのささやかなこと

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    静かな物語です。
    けれど静かな中に、作者の強い思いが伝わってきます。ほんの少し前まで実際にあった「マグダレン洗濯所」をモデルにして、その非人道的な活動、実態を皆んなに知ってもらおうと小説のかたちで書かれたもの。
    カトリック教会とアイルランド政府が、手を結んで進めてきた社会の暗部に対し、主人公は自分たちの今の生活が、子供たちの将来も含めて厳しいものになるのをわかっていても、一人のキリスト教徒として見過ごせなかった。
    そのあたりの苦悩がよく伝わってきました。
    この作品に目を止めて、翻訳してくださった鴻巣さんに感謝します。
    ささやかな小説ですが、たくさんのものが詰まった本でした。良かったです。

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    2026年02月16日
  • ウーマン・トーキング ある教団の事件と彼女たちの選択

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     あるキリスト教系団体の村で起きた大量レイプ事件。最年少の被害者は3歳の少女。それは「悪魔の仕業」「作り話」とされたが、実は身内の8人の男による犯行だった。彼らを保釈させようと村の男たちが外出する2日間。女たちは子どもを守るために未来を選ばねばならない。何もしないか、闘うか、村を出ていくか。文字の読めない女たちの会議(ウーマン・トーキング)が始まる。

     2005年から2009年にボリビアで起きた実際の事件を元に描かれている。彼等はメノナイトという集団で暮らしており、自らの規律で生活できる土地を求めて放浪していた。ボリビアは熟練の農夫たちとして彼等を受け入れ、教育や福祉、自治体、紛争解決、財産

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    2026年02月15日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    今まで何度か挫折していたものの、コツさえ掴めばすんなりと読めてしまった。
    そしてそれが癖になり、味わったことのない読書体験に様変わりして、物語に囚われてしまう。
    ほとんどどこにも移動していないのに、随分と長く居座ってしまったこの感覚。

    時間感覚や空間感覚までもがこの作品に掌握されてしまい、最後のページを読み終えると同時に「これが物語(小説)の力よ」と心臓を鷲掴みにして、その力の偉大さにひれ伏す。

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    2026年02月11日
  • 英語と日本語、どうちがう?

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    昔「不思議の国のアリス」の原書を読んでいて、たくさん出てくる韻を踏んだ詩のような言葉遊びのような部分を、日本語だとどう訳すのだろうと不思議に思ったのを思い出し、なるほどと今回納得。翻訳者さんもいかに原文を活かしつつ読者に伝わりやすくするか、考え考えなのだなぁ。

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    2026年02月07日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    面白いのだけれども、お上品過ぎて進展がおそい〜!笑。でも読むことをやめられない!タイパが〜とかいう人は絶対読めない笑。そして読めない方はかわいそうに衝撃の結末には、たどり着けないのです。ラッキーな方は最後のさいごに、まさしくこの水彩画の表紙のような美しい世界観と作者の表現力にどっぷりハマっている自分に気づくのであります…。みたことも会ったこともない彼女の、ゆっくりと沈んでいく姿がありありと浮かぶことでしょう。読めてよかったぁ笑

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    2026年02月07日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    十年の歳月を挟んで切り取られたある二日の情景。密度濃く描かれる一瞬一瞬の連なり、その思索や夢想が各人の中に降り積もり、人生を織り上げる。記憶は結晶のように固く残るが、肉体は儚く消えてゆく。時も人も、無常ゆえに永遠なのかもしれない。不思議な充足感が残った。
    昨年新訳が出たということで読んでみた本作、実はこれがウルフ初体験。なぜ今まで手を出してなかったんだろう?というくらい好きなタイプの空気感だった。ドラマを追う展開も嫌いではないけど、思索や意識の流れに重きを置いた作品を読むのが好き。他のウルフ作品も読んでみたい。

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    2026年01月24日
  • あずかりっ子

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    『ほんのささやかなこと』に続き、この著書を読んだ。全編を通じて語りすぎず、かと言ってそこはかとなくメタファーやが散りばめられていて、想像の翼を広げることができる。きつい労働、厳しい自然に黙々と生活する大人たち。そんな中で「手をかけられなかった」女の子が、悲しみの中に生きる夫婦に預かられ、自分に手をかけることの始まり知ってゆく。それは完璧な愛でもなく、むしろ不器用な、行ったり来たりの揺れる愛だ。それゆえにこの夏が、彼女の不思議な気持ちへの気づきに繋がり、人間味ある情緒の芽生えになったと分かる。読後は何やら暖かい気持ちが、自分の中に滲み出てくる。果たして彼女は今後どうなるのか、わからない、そして私

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    2026年01月23日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    鴻巣さんは、訳者としてだけでなく、文才もあるのですね。この他にも2冊ほど読んでいますが、とても分かり易く書かれているだけでなく、読者の興味をかき立てる内容。

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    2026年01月19日
  • NHK「100分de名著」ブックス マーガレット・ミッチェル 風と共に去りぬ 世紀の大ベストセラーの誤解をとく

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    鴻巣友季子さんの深掘りが、とてもおもしろかったです。さすが、翻訳家さん。マーガレット・ミッチェルもびっくり!

    “ヘェ〜”と思ったところ多数。(以下、本書より)

    ・スカーレットとメラニーのダブルヒロイン論。

    ・スカーレットの容姿、スカーレットの実家〈タラ〉の外観が、原作と映画は違う。

    ・作者は、本作品を結末から冒頭に向かって書いた。

    ・アシュリとメラニー、レットとスカーレット、2組のカップルの夫婦生活にも言及。(4人の複雑な心理、行動の考察がスゴイ)

    ・本質は「恋愛小説」ではない。土地をめぐる「不動産小説」、米国の南北分断の根本を浮き彫りにす「戦争小説」、女性同士の複雑な友愛関係を描

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    2026年01月15日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    登場人物たちの心の中や辺りを自在にたゆたっているような、不思議で素敵な感覚に包まれ今までにない新しい読み心地。

    100年ほど前に書かれた小説だが、物語の世界へ入り込むとそこは現代的にまで感じられるというのが驚き。時々何かを失い、目に見えないものを積み重ねながら人は生きていく。深い思考の奥底へと沈んでいくような、読んでいる間豊かな時間を過ごした。この先何度でも読み返したい。

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    2026年01月04日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    翻訳家の鴻巣友季子さんによる海外小説のブックガイド。いっとき、何も意識せず読みたい本を選んでいたら鴻巣さんの翻訳が続いていたことがあり、それまで翻訳家の方を意識したことがなかったが以来気になっていた方。

    読んだことのある作品もまだ知らぬ作品もあり、ページを進める時のドキドキした気持ちや、人間の悍ましさに直面した時のような恐ろしい気持ちが一気に呼び起こされた。海外文学への憧れがぎっしり詰まっていて、自分が何故こうも海外の小説に惹かれてしまうのかもよく分かった。同時に、翻訳家の偉大さを改めて知る。

    このあと、紹介されていた『灯台へ』、『ねじの回転』、『若草物語』を読んだ。『ジェイン・エア』、『

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    2026年01月04日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    Twitterで話題になっていたので購入。最初はなんか思ってた感じと違う!読みにくい!これ耐えられるかな?と思ってたけど、読み進めていくうちにどんどん夢中になっていった。

    この本の1番の特徴は、色んな登場人物たちがその瞬間頭の中で考えている細かなことが、ほとんどそのまんまと感じられるほど正確に淡々と書き続けられていくところ。
    ほんの一瞬の間にも周りにいる人間たちは各々全然違うことを考えているんだな、同じものを見ても目の前にいる人間と自分とでは全く違うことを考え、お互いに対しても常に何らかの印象を覚えているのだなと、色んな人たちの心の声を聴きながら、それぞれの脳内に瞬時にワープし続けながら考え

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    2026年01月06日