鴻巣友季子のレビュー一覧
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村上春樹や川上未映子だけでなく、猫や喫茶店が出てくる癒し系も英米で翻訳されて読まれているということに驚いた。また、日本文学についてだけでなく翻訳文学全体のことも書かれていて、9.11以後のアメリカは言葉の通じない外国との関わりを重要視するようになったから翻訳文学が読まれるようになってきたのではないかとか、ハン・ガンの国際ブッカー賞で共同受賞した訳者が賞金を使って翻訳出版社を立ち上げたとか、作品の良し悪しとは別の大きな流れがあるようで興味深かった。「言語を翻訳しあうことで文学・文化は互いに耕され、その巨大な循環が実りをもたらしている」というのに納得し、世界の文学を読めるようにしてくれている著者を
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今まで読んできた小説とは一線を画す技巧を凝らす作品である。物語展開で作品に引き込まれるのでなく、小説の表現方法で心つかまれる体験は初めてかもしれない。
たった二日間の出来事を登場人物たちの内省を中心に物語を組み立てる手腕はさることながら、ある人の心理描写がいつの間にか他の人の思考に置き換わり、溶け合う。さながら、長尺一本撮りの映画を観ているよう。しかし、読者が触れるのは登場人物たちの発話や表情ではなく、内なる独白なのである。この奇妙な感覚は本作との出会いに感謝せざるを得ない。
各主要人物たちは総じて魅力的だが、個人的なベストはラムジー。なんといっても女々しい。「同情を強いてくる飽くなき欲望 -
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なぜ、物語の批評を共感で語るのか。
それは、現代が趣味や志向を肯定しつづけてくれるサービスに触れつづけ確証バイアスを肥大させている時代だからだという。
その著者の分析に大いに賛同し、行く末を思って怖くなった。
いま、読書離れといわれる時代で、物語もよりわかりやすい(共感性をえやすい)ものが売れる時代になってきているように感じる。
他者性が複雑に織りなされた物語は、結局何が言いたいのかわからないとバッサリ切られる時代だ。
そういう人は、AIが要約した文章で事足りるから、とますます本から遠ざかっていく。
本書を読んで感じるのは、文章に織り込まれる人称や、過去形、現在形、二葉亭四迷の「完了形た -
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大変面白く読んだ。日本文学がこんなに世界で活躍するとは…隔世の感あり。旅行先としても大人気だし…わたしが子どものころは考えられなかった。時代は変わりますね。
2025年6月時点のイギリスの翻訳文学トップ50のうち23作が日本語作品だった(p33)とは驚き。
川上未映子のインタビューでの発言が興味深い。
「川上は村上の賞賛を得ていただけではなく、2017年には村上に対してその創作や世界観に深く切り込んだロングインタビューを4回に分けて行っている(日本では『みみずくは黄昏に飛びたつ』として新潮社より刊行)。おこでの大作家に対する鋭い質問とやりとりが、英訳書の発売前にアメリカで人気のウェブ文芸誌「 -
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アイルランドの昔の話だろうと読み始めたら、舞台は1985年代でわずかまだ41年前の事だった。読後、本書では”グッド・シェパード教会”となっている"マグダレン洗濯場”を調べてみた。”マグダレン洗濯場”とはどこかで見聞きした記憶がある。映画だっただろうか?
"マグダレン洗濯場”は政府とカトリック教会が後援していて、恵まれない少女や女性が事実上監禁され、働かされ、虐待を受けた施設だったとある。200年以上も存在し、閉鎖されたのは1996年!アイルランドの闇を思わずにいられなかった。
ここまで書いたレビューを止めて、もう一度本作を最初から読みなおした。訳が堅く感じられて(久々の外 -
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7歳くらいだという女の子の視点で書かれているので、その子の理解が追いついていないために状況がよくわからないところもあり、女の子の不安や戸惑いが伝わってくる。たぶん、これまで彼女はあまり親に甘えられるような環境で育ってこなかったのだろう。でも、ひと夏の間、女の子を預かることになった親戚の夫婦は、彼女をちゃんとケアが必要な子どもとして接し、子どもらしくいられるようにする。訳者あとがきに、ケアの精神が自尊心を育み、他愛につながるとあった。女の子は、その家での生活がずっと続くものではないとはじめからわかっていて諦めているようなところもあったけれど、短い間でも育まれて彼女の中に残るものがあったと思いたい
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読みたいリストに入れていたら、どうやら映画が上映中のようで、慌てて読みました。地方のため、小劇場で一週間限定でしか上映されないので、「これは観ておきたい!」という映画は即決しないと見られなくなるのです、、
中編の静かな佇まいの一冊。内容も、無駄がなく、控えめで、多くを語らないという感じ。なので、よくわからないところも正直あって、滑りだしは今ひとつだったのですが、次第に引き込まれていきました。
一般市民で、普通のささやかながら大切な生活を送っている主人公。巨大な権力には手も足も出せないのが世の常。主人公ファーロングは、偶然、権力に虐げられている人を目にしてしまう。一旦知ってしまったら、もう元 -
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クレア・キーガンは「Walk the blue fields」と「Foster」は原書で読んでいて、読むのはこれが3作目ですが、これまで読んだ3作品の全てが本当に素晴らしい。
丁寧な日常の描写の中にふと差し込まれる違和感と、主人公が自らの生い立ちを振り返って、後悔をしないための選択をするまで、彼の感情の流れを読みながら一緒に追体験できるような臨場感のある描写がすごく良かった。
この先、彼には多くの困難が待っているはずだけど、それでもなお、その選択は「後悔しないための決断」というよりも、彼が彼である以上そうするしかなかったもののように感じられた。
しかし、この出来事が1980年代だというの