鴻巣友季子のレビュー一覧
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第一部は「明日晴れたら灯台に行こう」という母と子の会話から。別荘に集まって食事を楽しむ家族と友人の、たった一晩のやりとりで200ページを超えます。
食事のシーンでのごく自然な会話、その奥でそれぞれが何を思っているかが全部!(ホントに全部)書き出されてます。
会話の間で思考がぐるぐる、話を振られたら次はそこからぐるぐる…(「意識の流れ」というらしい)
すなわち腹の中までお見通しなので、登場人物のキャラがハッキリ。海外文学あるある「この人なんだっけ」が起こりにくくありがたい。
そして忘れた頃に、まーだ灯台の話してる!
第二部はその日の真夜中。ロウソクを消してから〜朝起きる頃にはダダダッと10年の -
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ケルティッククリスマスというコンサートに行き、アイルランド関連本として会場で販売されていて、売り子さんがイチオシだったので手に取って読んだ本。ただ、ただ良かった。贅沢な暮らしをしているわけではないが、愛する妻と娘たち、重労働だがやりがいのある仕事をする主人公に、ふと、こことは違うが地続きの、裏の世界が見えてくる。それは自分の生い立ちにも関わる世界だった。そこに一歩を踏み出すことは、幸福な自分の足元が崩れてしまうかもしれない危うさを含んでいる。。。クリスマスのこの時期に読んで本当に良かった。ディケンズの『クリスマス・キャロル』を彷彿とさせる、新しいクリスマスの物語。日本語訳の素晴らしさは言うまで
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ひろさんの本棚から
作品名もかわいいし、表紙も素敵
翻訳家の鴻巣友季子さんが自らを形作った本として海外文学を紹介しています
第一章 青春の輝き
第二章 真実の愛
第三章 奇妙な夢と苦い挫折
第四章 大人のための童話
第五章 強く生きる女性たち
第六章 未来の予言
各章に4〜5冊の本が紹介されています
コンパクトな見出し、著者の紹介は親切で、翻訳家ならではの本の内容紹介は興味深いです
私の読みたい本を各章1冊ずつご紹介します
『あしながおじさん』ジーン・ウェブスター
『高慢と偏見』ジェイン・オースティン
『黒猫』エドガー・アラン・ポー
『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン -
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ネタバレ100年前に書かれた小説の中で、過去の人として描かれるラムジー夫人。
それでも、詳細に描かれる心の動きを読み進める中で、「その気持ち知ってる」と、ドキリとする。
幼い子供と気持ちのケアを求める夫に対する気持ち、夫と通じ合える部分と通じ合えない部分、集団の中で気持ちを奮い立たせる振る舞い、どれも普段意識していないもしくは意識することを躊躇うことを、克明に書き出している。何気なく通り過ぎていく気持ちの機微を掬い上げ、言語化する筆者の手腕に驚く。時代が、文化が、世代が違くとも共有できる気持ちがあることに新鮮に驚いた。
第一部は意図せず個人に立ち入りすぎてしまったような、どこか気まずい気持ちで読み終え -
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ネタバレ短い物語ですぐ終わってしまうので、大切に丁寧に読んでいく。
はじめから、心に響く文章がいくつも登場する。
秘密は恥。
黙っていることは良いことだ。
信じて良い人は見極める。
手をかけて育てる。
丁寧な言葉遣い。
礼儀正しく。
嘘をつかない。
ギャンブルをしない。
噂話をしない。
教養。
子供を亡くした夫婦で、崩壊する話はたくさんあるが、ここでは夫婦のお互いの愛情と優しさで支えあっている。
周りに噂好きの友人達がいても、自分さえしっかりと愛を持って生きていたら、腐らない。
黙っとく。
人生って、苦行ではなく、心のままに愛を感じる素晴らしい日々。
腐ってる人の家は散らかっていて、顔もキツい。
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まずタイトルにそそられた。子供の頃、エニドブライトンのおちゃめな双子やはりきりダレルを読み、美味しいに違いない未知の食べ物を頬張る少女たちの描写にワクワクした私。赤毛のアンを読んで、素敵に違いない未知の生地のお洋服の描写にうっとりした私。あの頃読んだ外国の本は、よくわからないけど素敵そうなもので溢れていた。その感覚を思い起こさせるようなタイトル。ギンガムチェックと塩漬けライム…!
どうやら同じような子供時代を過ごしていたらしい著者は、翻訳家で文学評論家。本書では彼女が子供の頃や若い時分から読んできた外国文学の解説が載っていて、外国文学への良い入り口になると思う。堅苦しくなく親しみが持てる語り -
購入済み
最高
映画で観たタラやアトランタの風景を思い浮かべながら読んだ。スカーレットだけでなく、全ての登場人物と南部という土地について、その魅力・欠点・醜さ・崇高さを生き生きと描き出している
マーガレット・ミッチェルはこれ一作しか書いていないというのが残念
他の小説も読んでみたかった -
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「待女の物語」の15年後の物語
指導者のリディア小母
司令官の娘アグネス
カナダで暮らすデイジー
それぞれの立場で日々
暮らしながらも
何かを求めていた
デイジーの両親が
殺されたのをきっかけに
思惑が動き出す
ギレアデを告発し、自由を掴むために!
国民の婚姻、生殖、子育てへの介入、管理
教育と言語の抑制
文化、芸術、学術への弾圧
歴史上、あるいは現実にも
存在するこれらに対する
抗議が網羅されている
さらにそれに加えて
この物語には無謀な冒険がある
生きようとする力
自由を求める力
大きな革命のために
自ら犠牲になる少女
思わず、頑張れ!と
叫びつつ
読むことを止められなかった
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自分の近くに社会的の闇があることに気づいたとき、どのような行動をとるべきなのだろうか。
果たして自分は、正しいコトができるのだろうか。『ほんのささやかなこと』を読んでそんなことを考えた。
1985年のアイルランドの小さな町のクリスマスシーズンの数日間を描いた物語である。
石炭と木炭商人のビル・ファーロングが配送先の修道院で見窄らしい恰好で働く女性を見つけて助けを乞われることで、その社会の闇に気づき、といった話である。
アイルランドの「マグダレン洗濯所」という悲劇をモデルにした物語であり、恵まれない境遇の女性を取り上げている。
本書を読むまでは「マグダレン洗濯所」という悲劇を知らなかった。ま -
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1985年、アイルランドの小さな町
クリスマスが近い十二月の話
主人公の石炭販売店を営むビル・ファーロングには、妻と五人の娘がいる。
これまで苦労も多かったが、今は何とかささやかで平穏な日々を手に入れている。
ところが配達先の女子修道院で目にした光景をきっかけに、どうしようもなく心が動いてしまうのだ。
その光景とは修道院の附属施設の〝洗濯所〟
これはアイルランドに1996年まで実在した教会運営の母子収容施設と「マグダレン洗濯所」をモデルにしているらしい。
洗濯所は政府からの財政支援を受けてアイルランド各地で営まれていたもので、ひどい女性虐待がおこなわれていたという。
こんな恐 -
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ジョイスやプルーストと並び称されるモダニズム作家の珠玉の名作。
第1部と10年後の第3部はラムジー家の夏の別荘でのそれぞれの1日。それを結ぶ第2部は10年という2つの時間を家人が不在の中で語られる個人的な出来事や第一次大戦を交えた短いエピソードの中で深い悲しみとともに濃密に結びつける。
主人公一家とその知人たちの移り変わる心模様を木々や風、海や芝などと時間の流れに合わせて淡々としながらも豊かに表現された言葉の数々に心が揺り動かされ、いつのまにか心の片隅にじんわりと残る不思議な作品。
舞台となったスカイ島のスコッチウイスキー、タリスカーとともに愉しんだ一冊。