鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 誓願

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    長編大作でした。
    3人それぞれの語りが過去に現在に飛んでいき、
    徐々に交錯していく…
    著者の手腕で置いていかれることなく、
    しっかりと作り込まれた世界に浸れました。
    現実でも起こりうる、起こっているであろう世界観、
    虚無感が随所でありながら、
    希望も感じさせ、
    感情移入ができる作品です。

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    2025年12月27日
  • 嵐が丘

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    ストーリーの乱暴さには何度読むのをやめたくなったかわからないけど、それでも引き込まれて読んでしまいました。まだ下があったか!というくらい引きずり下ろされていく登場人物たち。語り手の配置のうまさ。登場人物が「思った」という描写は一切なくあくまで「登場人物はそう思ったんだろう」という話し手の想像で描かれてるのがユニーク。

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    2025年12月25日
  • ほんのささやかなこと

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    1985年、寒さ厳しい冬のアイルランド。家族とのつつがない暮らしを守る実直な石炭商人の男。世界が誰にとっても完全に良いものになることはないのかもしれないし、どんなに善く生きたいと願っていても誰ひとり取りこぼすことなく全ての人に手を差し伸べることはできないが、彼の選択に勇気をもらう。

    自分を驕るでもなく、他人を羨むでもなく、これまでのささやかなことの積み重ねで今の自分があると知り自分でこれから進む方向を決めるって何よりも豊かなことだ。クリスマス飾りのように煌めく文章や描写の全てに、心が潤される。

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    2025年12月24日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    第一部は「明日晴れたら灯台に行こう」という母と子の会話から。別荘に集まって食事を楽しむ家族と友人の、たった一晩のやりとりで200ページを超えます。
    食事のシーンでのごく自然な会話、その奥でそれぞれが何を思っているかが全部!(ホントに全部)書き出されてます。
    会話の間で思考がぐるぐる、話を振られたら次はそこからぐるぐる…(「意識の流れ」というらしい)
    すなわち腹の中までお見通しなので、登場人物のキャラがハッキリ。海外文学あるある「この人なんだっけ」が起こりにくくありがたい。
    そして忘れた頃に、まーだ灯台の話してる!

    第二部はその日の真夜中。ロウソクを消してから〜朝起きる頃にはダダダッと10年の

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    2025年12月24日
  • ほんのささやかなこと

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    ケルティッククリスマスというコンサートに行き、アイルランド関連本として会場で販売されていて、売り子さんがイチオシだったので手に取って読んだ本。ただ、ただ良かった。贅沢な暮らしをしているわけではないが、愛する妻と娘たち、重労働だがやりがいのある仕事をする主人公に、ふと、こことは違うが地続きの、裏の世界が見えてくる。それは自分の生い立ちにも関わる世界だった。そこに一歩を踏み出すことは、幸福な自分の足元が崩れてしまうかもしれない危うさを含んでいる。。。クリスマスのこの時期に読んで本当に良かった。ディケンズの『クリスマス・キャロル』を彷彿とさせる、新しいクリスマスの物語。日本語訳の素晴らしさは言うまで

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    2025年12月23日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    ひろさんの本棚から

    作品名もかわいいし、表紙も素敵

    翻訳家の鴻巣友季子さんが自らを形作った本として海外文学を紹介しています
    第一章 青春の輝き
    第二章 真実の愛
    第三章 奇妙な夢と苦い挫折
    第四章 大人のための童話
    第五章 強く生きる女性たち
    第六章 未来の予言
    各章に4〜5冊の本が紹介されています

    コンパクトな見出し、著者の紹介は親切で、翻訳家ならではの本の内容紹介は興味深いです

    私の読みたい本を各章1冊ずつご紹介します

    『あしながおじさん』ジーン・ウェブスター
    『高慢と偏見』ジェイン・オースティン
    『黒猫』エドガー・アラン・ポー
    『ハックルベリー・フィンの冒険』マーク・トウェイン

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    2025年12月21日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    ネタバレ

    ネタバレ有り。
    初めは殺人を犯した女の異常さを追うのか?
    と期待し、どうやら途中で違うと気づく。
    女の感情的な様子を批判した内容なのか?女批判に感じる中盤
    と同時に、独りよがり幻想を抱きがちな男性陣。 
    思春期の変な思い込みで突っ走る。
    読み返すと、それはチャニングの父の本を読んで感銘を受けたところからくるのかもしれない。
    最後には絶望
    読み終わった後にまた初めの方から読み返すと、主人公の自己中心的さが際立つ…
    自分が悪いとは結局最後まで思っていないのかもしれない。

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    2025年12月20日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    100年前に書かれた小説の中で、過去の人として描かれるラムジー夫人。
    それでも、詳細に描かれる心の動きを読み進める中で、「その気持ち知ってる」と、ドキリとする。
    幼い子供と気持ちのケアを求める夫に対する気持ち、夫と通じ合える部分と通じ合えない部分、集団の中で気持ちを奮い立たせる振る舞い、どれも普段意識していないもしくは意識することを躊躇うことを、克明に書き出している。何気なく通り過ぎていく気持ちの機微を掬い上げ、言語化する筆者の手腕に驚く。時代が、文化が、世代が違くとも共有できる気持ちがあることに新鮮に驚いた。
    第一部は意図せず個人に立ち入りすぎてしまったような、どこか気まずい気持ちで読み終え

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    2025年12月08日
  • あずかりっ子

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    ネタバレ

    短い物語ですぐ終わってしまうので、大切に丁寧に読んでいく。
    はじめから、心に響く文章がいくつも登場する。
    秘密は恥。
    黙っていることは良いことだ。
    信じて良い人は見極める。
    手をかけて育てる。
    丁寧な言葉遣い。
    礼儀正しく。
    嘘をつかない。
    ギャンブルをしない。
    噂話をしない。
    教養。

    子供を亡くした夫婦で、崩壊する話はたくさんあるが、ここでは夫婦のお互いの愛情と優しさで支えあっている。
    周りに噂好きの友人達がいても、自分さえしっかりと愛を持って生きていたら、腐らない。
    黙っとく。
    人生って、苦行ではなく、心のままに愛を感じる素晴らしい日々。
    腐ってる人の家は散らかっていて、顔もキツい。

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    2025年12月01日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    まずタイトルにそそられた。子供の頃、エニドブライトンのおちゃめな双子やはりきりダレルを読み、美味しいに違いない未知の食べ物を頬張る少女たちの描写にワクワクした私。赤毛のアンを読んで、素敵に違いない未知の生地のお洋服の描写にうっとりした私。あの頃読んだ外国の本は、よくわからないけど素敵そうなもので溢れていた。その感覚を思い起こさせるようなタイトル。ギンガムチェックと塩漬けライム…!

    どうやら同じような子供時代を過ごしていたらしい著者は、翻訳家で文学評論家。本書では彼女が子供の頃や若い時分から読んできた外国文学の解説が載っていて、外国文学への良い入り口になると思う。堅苦しくなく親しみが持てる語り

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    2025年11月15日
  • 風と共に去りぬ 第1巻 無料試し読みブックレット

    購入済み

    最高
    映画で観たタラやアトランタの風景を思い浮かべながら読んだ。スカーレットだけでなく、全ての登場人物と南部という土地について、その魅力・欠点・醜さ・崇高さを生き生きと描き出している
    マーガレット・ミッチェルはこれ一作しか書いていないというのが残念
    他の小説も読んでみたかった

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    2025年11月05日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    「名著への招待」、NHkラジオ英会話に連載されたコラムの単行本。
    翻訳家ならではの、原作者の繊細な表現、日英米の文化の違いなど、翻訳家ならではの楽しい解釈の数々が楽しめる。

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    2025年10月31日
  • 誓願

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    「待女の物語」の15年後の物語
    指導者のリディア小母
    司令官の娘アグネス
    カナダで暮らすデイジー
    それぞれの立場で日々
    暮らしながらも
    何かを求めていた
    デイジーの両親が
    殺されたのをきっかけに
    思惑が動き出す
    ギレアデを告発し、自由を掴むために!

    国民の婚姻、生殖、子育てへの介入、管理
    教育と言語の抑制
    文化、芸術、学術への弾圧

    歴史上、あるいは現実にも
    存在するこれらに対する
    抗議が網羅されている

    さらにそれに加えて
    この物語には無謀な冒険がある
    生きようとする力
    自由を求める力
    大きな革命のために
    自ら犠牲になる少女
    思わず、頑張れ!と
    叫びつつ
    読むことを止められなかった



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    2025年10月30日
  • ギンガムチェックと塩漬けライム 翻訳家が読み解く海外文学の名作

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    スローリーディング!いいですね。
    以下、名作たちをメモ。
    あしながおじさん、若草物語、若い藝術家の肖像、ライ麦畑でつかまえて、ロミオとジュリエット、高慢と偏見、嵐が丘、ジェイン・エア、レベッカ、アッシャー家の崩壊、黒猫、ドリアン・グレイの肖像、老人と海、雨のなかの猫、ハックルベリー・フィンの冒険、クリスマス・キャロル、幸福な王子、賢者の贈りもの、最後のひと葉、ピグマリオン、ねじの回転、灯台へ、風と共に去りぬ、一九八四年、侍女の物語、誓願、クララとお日さま、闇の奥

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    2025年10月17日
  • 誓願

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    最高に面白かった。やや分かりにくい前作の「侍女の物語」と違い、今回は複数の主人公の視点から描かれ、女性蔑視の宗教国家における解像度が飛躍的に上がっていて、非常に楽しめた。
    節々にアトウッド節というか、文学に対する教養の深さが垣間見えて、良い本を読んでいるなぁという実感もあり、600ページ超の大作もあっさり読めてしまった。
    他の作品もいずれ読んでみたい。

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    2025年10月12日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    小説の技法?が斬新すぎて少しだけ難解に感じた。
    たった2日間の出来事に細かすぎる情景描写、心理描写、人間関係が詰め込まれていた。

    たいてい小説を読むと、ここが印象に残った!っていうシーンがあるんだけど、本作品にはそういうのがなくて作品全体を通じてぼんやりと印象深く、なんとなく古臭く、自分の子供時代をふわっと思い出すような、なんとも言えない読後感があった。

    小説の翻訳本っていのも初めてだったし、これからも少しずつ色んな作品を手に取って、その良さに触れられるといいな〜

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    2025年10月06日
  • 嵐が丘

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    ロマンス小説だと思って手に取ったが、ドロドロの愛憎劇だった。ヒースクリフの復讐がとにかく胸糞悪いが、それも含めて面白い。「嵐が丘」を読む前に「ジェーンエア」を読んだが、「嵐が丘」の方が壮大だった。たった2軒の屋敷が舞台で1人称小説だが、3世代分の人生は読み応えがある。再読したい。

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    2025年10月02日
  • ほんのささやかなこと

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    自分の近くに社会的の闇があることに気づいたとき、どのような行動をとるべきなのだろうか。
    果たして自分は、正しいコトができるのだろうか。『ほんのささやかなこと』を読んでそんなことを考えた。

    1985年のアイルランドの小さな町のクリスマスシーズンの数日間を描いた物語である。
    石炭と木炭商人のビル・ファーロングが配送先の修道院で見窄らしい恰好で働く女性を見つけて助けを乞われることで、その社会の闇に気づき、といった話である。

    アイルランドの「マグダレン洗濯所」という悲劇をモデルにした物語であり、恵まれない境遇の女性を取り上げている。
    本書を読むまでは「マグダレン洗濯所」という悲劇を知らなかった。ま

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    2025年09月30日
  • ほんのささやかなこと

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    1985年、アイルランドの小さな町
    クリスマスが近い十二月の話



    主人公の石炭販売店を営むビル・ファーロングには、妻と五人の娘がいる。
    これまで苦労も多かったが、今は何とかささやかで平穏な日々を手に入れている。
    ところが配達先の女子修道院で目にした光景をきっかけに、どうしようもなく心が動いてしまうのだ。

    その光景とは修道院の附属施設の〝洗濯所〟



    これはアイルランドに1996年まで実在した教会運営の母子収容施設と「マグダレン洗濯所」をモデルにしているらしい。

    洗濯所は政府からの財政支援を受けてアイルランド各地で営まれていたもので、ひどい女性虐待がおこなわれていたという。

    こんな恐

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    2025年09月28日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ジョイスやプルーストと並び称されるモダニズム作家の珠玉の名作。
    第1部と10年後の第3部はラムジー家の夏の別荘でのそれぞれの1日。それを結ぶ第2部は10年という2つの時間を家人が不在の中で語られる個人的な出来事や第一次大戦を交えた短いエピソードの中で深い悲しみとともに濃密に結びつける。
    主人公一家とその知人たちの移り変わる心模様を木々や風、海や芝などと時間の流れに合わせて淡々としながらも豊かに表現された言葉の数々に心が揺り動かされ、いつのまにか心の片隅にじんわりと残る不思議な作品。
    舞台となったスカイ島のスコッチウイスキー、タリスカーとともに愉しんだ一冊。

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    2025年09月20日