鴻巣友季子のレビュー一覧

  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    村上春樹や川上未映子だけでなく、猫や喫茶店が出てくる癒し系も英米で翻訳されて読まれているということに驚いた。また、日本文学についてだけでなく翻訳文学全体のことも書かれていて、9.11以後のアメリカは言葉の通じない外国との関わりを重要視するようになったから翻訳文学が読まれるようになってきたのではないかとか、ハン・ガンの国際ブッカー賞で共同受賞した訳者が賞金を使って翻訳出版社を立ち上げたとか、作品の良し悪しとは別の大きな流れがあるようで興味深かった。「言語を翻訳しあうことで文学・文化は互いに耕され、その巨大な循環が実りをもたらしている」というのに納得し、世界の文学を読めるようにしてくれている著者を

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    2026年07月25日
  • 誓願

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    最後までハラハラした。
    リディア小女と2人の少女、3人の語り(調書?書き残したもの?)によって進行する物語。
    独裁国家ギレアデがどのように女性を隷属させていったかが描かれ、それが現代社会においてもそんなに突飛なことだと思えないやり口であることに戦慄を覚える。

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    2026年07月20日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    飢餓も経験し、家のものを食べさせていくため、農場を守るために奮闘するスカーレットはまだ19歳。極限を経験し、食べることと屋根の下で眠れることが、最重要事項。
    何か問題が起こっても「今は考えない。明日、考えよう」で乗り切る。すごい処世術と思う。
    「わたしは一生貧乏暮らしをするつもりはない。ただ手をこまねいて奇跡が起きるのをじっと待つつもりはない。世の中に飛び込んでいって、できる限りのものをもぎとってやる」とスカーレットは思う。

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    2026年07月12日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    今まで読んできた小説とは一線を画す技巧を凝らす作品である。物語展開で作品に引き込まれるのでなく、小説の表現方法で心つかまれる体験は初めてかもしれない。

    たった二日間の出来事を登場人物たちの内省を中心に物語を組み立てる手腕はさることながら、ある人の心理描写がいつの間にか他の人の思考に置き換わり、溶け合う。さながら、長尺一本撮りの映画を観ているよう。しかし、読者が触れるのは登場人物たちの発話や表情ではなく、内なる独白なのである。この奇妙な感覚は本作との出会いに感謝せざるを得ない。

    各主要人物たちは総じて魅力的だが、個人的なベストはラムジー。なんといっても女々しい。「同情を強いてくる飽くなき欲望

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    2026年06月18日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    今の英米での翻訳事情(小説に限る)を紹介しつつ、「翻訳とは何か」にも踏み込んだ本。
    この人は、「侍女の物語」などを訳した有名翻訳家なので、名前をどこかで見た人もいるのでは。
    なお、今日本の作家で英語圏で人気なのは、
    村上春樹はもちろん、柳美里、川上未映子、村田沙耶香、小川洋子などなんだそう。

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    2026年06月04日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    初バージニア・ウルフ!

    誰の内なる思いなのかを判別するのに戸惑いながら読み進めるうちに、次第にコツが掴めてくる。自分の心中の移りゆく思いと同じ様に捉えるのがミソ。ウルフは、自身の心に浮かぶ感情や思いを、そのまま文章にする事に長けているのだろう。但し、その文章を読む方としては、慣れていないと、ちょっと気色悪いというか、まとまりが無いというか、落ち着かない様に感じてまう。

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    2026年05月27日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    1巻目の色が、花々が咲き乱れたパステルカラーだったとすると、2巻目は戦争で民間人の命をもが危ぶまれる黒と灰色。
    そんな中でスカーレットは心中で本音や悪態を呟きながら、なんだかんだでメラニーの世話をし、どうすれば今、一緒にいる人たちが戦火から逃げれるか考える。
    本人が望んでいなくても、人を引っ張っていく、強い人生になるんだな、と思いました。まだ19歳なのに。

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    2026年05月25日
  • 誓願

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    誓願読んでよかった。
    侍女の物語ではわからなかったことが、こちらでは少しずつわかってくる。男性の極端なロリコンは日本だけかと思ったが、そうでもないんだな。
    まぁこの物語の中の人物が特殊なのかもしれないけれど
    ディストピア小説としての展開も気になるが、女性の尊厳に対して改めて考えることになる小説でもあると思う。

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    2026年05月09日
  • 小説、この小さきもの

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    なぜ、物語の批評を共感で語るのか。

    それは、現代が趣味や志向を肯定しつづけてくれるサービスに触れつづけ確証バイアスを肥大させている時代だからだという。
    その著者の分析に大いに賛同し、行く末を思って怖くなった。

    いま、読書離れといわれる時代で、物語もよりわかりやすい(共感性をえやすい)ものが売れる時代になってきているように感じる。
    他者性が複雑に織りなされた物語は、結局何が言いたいのかわからないとバッサリ切られる時代だ。
    そういう人は、AIが要約した文章で事足りるから、とますます本から遠ざかっていく。

    本書を読んで感じるのは、文章に織り込まれる人称や、過去形、現在形、二葉亭四迷の「完了形た

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    2026年05月05日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    大変面白く読んだ。日本文学がこんなに世界で活躍するとは…隔世の感あり。旅行先としても大人気だし…わたしが子どものころは考えられなかった。時代は変わりますね。
    2025年6月時点のイギリスの翻訳文学トップ50のうち23作が日本語作品だった(p33)とは驚き。

    川上未映子のインタビューでの発言が興味深い。
    「川上は村上の賞賛を得ていただけではなく、2017年には村上に対してその創作や世界観に深く切り込んだロングインタビューを4回に分けて行っている(日本では『みみずくは黄昏に飛びたつ』として新潮社より刊行)。おこでの大作家に対する鋭い質問とやりとりが、英訳書の発売前にアメリカで人気のウェブ文芸誌「

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    2026年05月04日
  • ほんのささやかなこと

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    アイルランドの昔の話だろうと読み始めたら、舞台は1985年代でわずかまだ41年前の事だった。読後、本書では”グッド・シェパード教会”となっている"マグダレン洗濯場”を調べてみた。”マグダレン洗濯場”とはどこかで見聞きした記憶がある。映画だっただろうか? 
    "マグダレン洗濯場”は政府とカトリック教会が後援していて、恵まれない少女や女性が事実上監禁され、働かされ、虐待を受けた施設だったとある。200年以上も存在し、閉鎖されたのは1996年!アイルランドの闇を思わずにいられなかった。
    ここまで書いたレビューを止めて、もう一度本作を最初から読みなおした。訳が堅く感じられて(久々の外

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    2026年05月04日
  • 嵐が丘

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    ネタバレ

    エメラルド・フェネル監督の映画公開をきっかけに手に取りました。

    めちゃ面白かった。何世代にも渡る、壮大な復讐劇であり、愛の物語であり、土地と権利の物語であり、憎しみと後悔の物語であり…。

    また、ネリーの視点から語られる構造が、より物語に引き込まれる。彼女、彼の本当の姿は?謎に包まれたまま、物語は進み、世代が入れ替わっていく。

    嵐が丘と鶫の辻という2つの一族の狭い世界、行動範囲も基本的には両家の行き来のみだし。でもこんなにスケールの大きい壮大な物語だとは。

    古典好きな方にはオススメ!

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    2026年04月26日
  • あずかりっ子

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    7歳くらいだという女の子の視点で書かれているので、その子の理解が追いついていないために状況がよくわからないところもあり、女の子の不安や戸惑いが伝わってくる。たぶん、これまで彼女はあまり親に甘えられるような環境で育ってこなかったのだろう。でも、ひと夏の間、女の子を預かることになった親戚の夫婦は、彼女をちゃんとケアが必要な子どもとして接し、子どもらしくいられるようにする。訳者あとがきに、ケアの精神が自尊心を育み、他愛につながるとあった。女の子は、その家での生活がずっと続くものではないとはじめからわかっていて諦めているようなところもあったけれど、短い間でも育まれて彼女の中に残るものがあったと思いたい

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    2026年04月20日
  • ほんのささやかなこと

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    これが史実に基づく話だとは恥ずかしながら知らなかった。
    「マグダレン洗濯所」が実在したのが1996年までって…つい最近じゃん。
    天候のこと、日々の食事のことなどと同等に、淡々とその事実を著者は記す。だからこそその事実が重苦しくのしかかる。
    最後にファーロングがする決断があったから、歴史は少し動いたのかな。現実にも誰かが動いたのでしょう。
    映画化「決断するとき」もぜひ観たい。

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    2026年04月20日
  • ほんのささやかなこと

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    読みたいリストに入れていたら、どうやら映画が上映中のようで、慌てて読みました。地方のため、小劇場で一週間限定でしか上映されないので、「これは観ておきたい!」という映画は即決しないと見られなくなるのです、、

    中編の静かな佇まいの一冊。内容も、無駄がなく、控えめで、多くを語らないという感じ。なので、よくわからないところも正直あって、滑りだしは今ひとつだったのですが、次第に引き込まれていきました。

    一般市民で、普通のささやかながら大切な生活を送っている主人公。巨大な権力には手も足も出せないのが世の常。主人公ファーロングは、偶然、権力に虐げられている人を目にしてしまう。一旦知ってしまったら、もう元

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    2026年04月18日
  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    この名作をはじめて読みました。鴻巣友季子さんの訳が美しい。自然の美しさ、登場人物の魅力が目の前に立ち上ってくるようです。
    スカーレットの未来、南北戦争の歴史も知りたい。2巻目が楽しみです。

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    2026年04月05日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    非常にためになる良書。翻訳を通して世界の構図がわかる感じが良い。著者の達観したスタンスもこのテーマと合っている。村上春樹の世界戦略とか、初めて知ってへーという感じ。

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    2026年04月01日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    タイトルの通り、日本文学が英米でどのように、そしてなぜウケているのかを説明している。
    butterなど日本文学が海外で注目されているというニュースをよく見ていたが、本当にそうなのか疑問だった。
    データを元にどれくらい人気があるのか示してあり、その理由はそもそも翻訳文学が盛り上がっていることにあるとのことで、納得がいった。
    日本後から外国語に翻訳されている本も気になったが、中南米やインドなど、非英語の言語から訳されている本も読みたくなった。

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    2026年03月31日
  • ほんのささやかなこと

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    クレア・キーガンは「Walk the blue fields」と「Foster」は原書で読んでいて、読むのはこれが3作目ですが、これまで読んだ3作品の全てが本当に素晴らしい。

    丁寧な日常の描写の中にふと差し込まれる違和感と、主人公が自らの生い立ちを振り返って、後悔をしないための選択をするまで、彼の感情の流れを読みながら一緒に追体験できるような臨場感のある描写がすごく良かった。

    この先、彼には多くの困難が待っているはずだけど、それでもなお、その選択は「後悔しないための決断」というよりも、彼が彼である以上そうするしかなかったもののように感じられた。

    しかし、この出来事が1980年代だというの

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    2026年03月31日
  • 嵐が丘

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    大学時代に卒論で取り上げた大切な一冊。
    嵐が丘でしか味わえない空気感に、まさに虜になってしまいました!
    色々な要素が無駄なく絡み合いながら、壮大だけども非常に個人的な唯一無二の世界が作り上げられていると思います。だからこそ200年にわたって、さまざまな形でアダプテーションされ続けているのでしょう。
    これからも読み続けます!

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    2026年03月28日