鴻巣友季子のレビュー一覧

  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    2000年頃の「村上春樹独り勝ち」のあたりまでが自分が一番熱心に新しい本を読んでいた時期で、その後はライフステージの変化によりそこまで読まなくなってしまっていたので、英語圏の読者は翻訳嫌い、の認識で止まっていた。最新の日本文学翻訳事情がそんなことになっているとは!未読の作家がたくさん紹介されていたので、これから読んでみたいリストがまた増えた。
    ここ最近は春樹作品に対するフェミニズム的な視点での批評をYouTubeなどで目にすることがあるけど、恥ずかしながら川上未映子さんのインタビューは存在を知らなかったので、「みみずくは黄昏に飛び立つ」ぜひ読んでみたい。
    彼が大手出版社経由ではなく自身で翻訳者

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    2026年09月04日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    ネタバレ

    スカーレットとメラニー。対称的な二人の女性の強さが強烈に描かれた巻だった。
    スカーレットは食えない、という強烈な負の経験から、金を稼ぐことに執着し始める。「・・・もう二度とひもじい思いはしない。〈タラ〉の皆も飢えさせはしない。-ものを盗み、人を殺めることになろうと-神に誓って、もう決してひもじい思いはしない。」何というすさまじい意志か。彼女はどんなことをしても、家族を食わせていく決心をする。この誓いの後の彼女の行動はすさまじい。家に侵入してきたヤンキーを撃ち殺し、死体を隠して金品を奪う。金を援助してもらうために、バトラーを誘惑する。企てが失敗するや否や、ターゲットを妹の婚約者に変更し、まんまと

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    2026年08月29日
  • ほんのささやかなこと

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    なんて染み入る小説だろうと思って本を閉じようとした矢先に、マグダレン洗濯所の事件が紹介され、実話を元にしていたことに度肝を抜かれた。
    マーガレット学院と訓練学校とが壁一枚を隔てて立っていることが、名付けができないけれど社会の上でのもしくは人のある側面での二項対立的な事象が、実際は紙一重であるということをシンボライズしているように思われた。
    キリアンマーフィー主演のこの映画も観たいし、クレアキーガンの他の本も読みたい。また偶然にも、この本の前に読んだヴァージニアウルフの「灯台へ」の訳者も鴻巣友季子ですっかりファンになりました。この方の他の訳書も読みたい。

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    2026年08月28日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    ネタバレ

    スカーレットの青春時代の終わり。わがままなお嬢様ではもういられない。戦争により自分を守ってくれる者たちがみんないなくなり、自分の肩に家族の命運が重くのしかかってきた。母が亡くなり、アシュリも生死不明、父はショックで呆け、レットも戦場に行ってしまった。
    かつて自分に求愛してきた男たちもみんないなくなった。アシュリから頼まれた義妹メラニーとその子供、息子のウェイド、父と妹たち。スカーレットはその小さな肩にこれだけの人の命運を背負うことになった。
    なんて気丈で強い娘だろうか。迫りくる戦火に恐れおののきながらも決して逃げずに、妻のメラニーを頼むというアシュリからの約束を守り抜いた。憎んでいたはずのメラ

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    2026年08月11日
  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    長編小説を読み始める直前の、あの期待のこもった緊張感が好きだ。これから数か月、この本が描く世界とともに生活していくのだと思うと、まるで長い旅に出る前夜の眠れない気の高ぶりに似たわくわく感が胸を満たす。
    登場人物の来歴、信条、性格、容姿などが細かく描写されている作品はすべからく名作である——これが私の持論だが、本作はその条件を完璧に満たしていた。そして『風と共に去りぬ』第1巻を読み終えた今、やはりそれは間違っていなかったと確信した。
    主人公のスカーレット・ハラは、笑ってしまうほどわがままで高慢ちきだ。最初は「大丈夫か、この子は」と呆れながら読んでいたのだが、物語が進むにつれてその印象は一変する。

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    2026年07月27日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    村上春樹や川上未映子だけでなく、猫や喫茶店が出てくる癒し系も英米で翻訳されて読まれているということに驚いた。また、日本文学についてだけでなく翻訳文学全体のことも書かれていて、9.11以後のアメリカは言葉の通じない外国との関わりを重要視するようになったから翻訳文学が読まれるようになってきたのではないかとか、ハン・ガンの国際ブッカー賞で共同受賞した訳者が賞金を使って翻訳出版社を立ち上げたとか、作品の良し悪しとは別の大きな流れがあるようで興味深かった。「言語を翻訳しあうことで文学・文化は互いに耕され、その巨大な循環が実りをもたらしている」というのに納得し、世界の文学を読めるようにしてくれている著者を

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    2026年07月25日
  • 誓願

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    最後までハラハラした。
    リディア小女と2人の少女、3人の語り(調書?書き残したもの?)によって進行する物語。
    独裁国家ギレアデがどのように女性を隷属させていったかが描かれ、それが現代社会においてもそんなに突飛なことだと思えないやり口であることに戦慄を覚える。

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    2026年07月20日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    飢餓も経験し、家のものを食べさせていくため、農場を守るために奮闘するスカーレットはまだ19歳。極限を経験し、食べることと屋根の下で眠れることが、最重要事項。
    何か問題が起こっても「今は考えない。明日、考えよう」で乗り切る。すごい処世術と思う。
    「わたしは一生貧乏暮らしをするつもりはない。ただ手をこまねいて奇跡が起きるのをじっと待つつもりはない。世の中に飛び込んでいって、できる限りのものをもぎとってやる」とスカーレットは思う。

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    2026年07月12日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    今まで読んできた小説とは一線を画す技巧を凝らす作品である。物語展開で作品に引き込まれるのでなく、小説の表現方法で心つかまれる体験は初めてかもしれない。

    たった二日間の出来事を登場人物たちの内省を中心に物語を組み立てる手腕はさることながら、ある人の心理描写がいつの間にか他の人の思考に置き換わり、溶け合う。さながら、長尺一本撮りの映画を観ているよう。しかし、読者が触れるのは登場人物たちの発話や表情ではなく、内なる独白なのである。この奇妙な感覚は本作との出会いに感謝せざるを得ない。

    各主要人物たちは総じて魅力的だが、個人的なベストはラムジー。なんといっても女々しい。「同情を強いてくる飽くなき欲望

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    2026年06月18日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    今の英米での翻訳事情(小説に限る)を紹介しつつ、「翻訳とは何か」にも踏み込んだ本。
    この人は、「侍女の物語」などを訳した有名翻訳家なので、名前をどこかで見た人もいるのでは。
    なお、今日本の作家で英語圏で人気なのは、
    村上春樹はもちろん、柳美里、川上未映子、村田沙耶香、小川洋子などなんだそう。

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    2026年06月04日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    初バージニア・ウルフ!

    誰の内なる思いなのかを判別するのに戸惑いながら読み進めるうちに、次第にコツが掴めてくる。自分の心中の移りゆく思いと同じ様に捉えるのがミソ。ウルフは、自身の心に浮かぶ感情や思いを、そのまま文章にする事に長けているのだろう。但し、その文章を読む方としては、慣れていないと、ちょっと気色悪いというか、まとまりが無いというか、落ち着かない様に感じてまう。

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    2026年05月27日
  • 風と共に去りぬ 第2巻

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    1巻目の色が、花々が咲き乱れたパステルカラーだったとすると、2巻目は戦争で民間人の命をもが危ぶまれる黒と灰色。
    そんな中でスカーレットは心中で本音や悪態を呟きながら、なんだかんだでメラニーの世話をし、どうすれば今、一緒にいる人たちが戦火から逃げれるか考える。
    本人が望んでいなくても、人を引っ張っていく、強い人生になるんだな、と思いました。まだ19歳なのに。

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    2026年05月25日
  • 誓願

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    誓願読んでよかった。
    侍女の物語ではわからなかったことが、こちらでは少しずつわかってくる。男性の極端なロリコンは日本だけかと思ったが、そうでもないんだな。
    まぁこの物語の中の人物が特殊なのかもしれないけれど
    ディストピア小説としての展開も気になるが、女性の尊厳に対して改めて考えることになる小説でもあると思う。

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    2026年05月09日
  • 小説、この小さきもの

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    なぜ、物語の批評を共感で語るのか。

    それは、現代が趣味や志向を肯定しつづけてくれるサービスに触れつづけ確証バイアスを肥大させている時代だからだという。
    その著者の分析に大いに賛同し、行く末を思って怖くなった。

    いま、読書離れといわれる時代で、物語もよりわかりやすい(共感性をえやすい)ものが売れる時代になってきているように感じる。
    他者性が複雑に織りなされた物語は、結局何が言いたいのかわからないとバッサリ切られる時代だ。
    そういう人は、AIが要約した文章で事足りるから、とますます本から遠ざかっていく。

    本書を読んで感じるのは、文章に織り込まれる人称や、過去形、現在形、二葉亭四迷の「完了形た

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    2026年05月05日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    大変面白く読んだ。日本文学がこんなに世界で活躍するとは…隔世の感あり。旅行先としても大人気だし…わたしが子どものころは考えられなかった。時代は変わりますね。
    2025年6月時点のイギリスの翻訳文学トップ50のうち23作が日本語作品だった(p33)とは驚き。

    川上未映子のインタビューでの発言が興味深い。
    「川上は村上の賞賛を得ていただけではなく、2017年には村上に対してその創作や世界観に深く切り込んだロングインタビューを4回に分けて行っている(日本では『みみずくは黄昏に飛びたつ』として新潮社より刊行)。おこでの大作家に対する鋭い質問とやりとりが、英訳書の発売前にアメリカで人気のウェブ文芸誌「

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    2026年05月04日
  • ほんのささやかなこと

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    アイルランドの昔の話だろうと読み始めたら、舞台は1985年代でわずかまだ41年前の事だった。読後、本書では”グッド・シェパード教会”となっている"マグダレン洗濯場”を調べてみた。”マグダレン洗濯場”とはどこかで見聞きした記憶がある。映画だっただろうか? 
    "マグダレン洗濯場”は政府とカトリック教会が後援していて、恵まれない少女や女性が事実上監禁され、働かされ、虐待を受けた施設だったとある。200年以上も存在し、閉鎖されたのは1996年!アイルランドの闇を思わずにいられなかった。
    ここまで書いたレビューを止めて、もう一度本作を最初から読みなおした。訳が堅く感じられて(久々の外

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    2026年05月04日
  • 嵐が丘

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    ネタバレ

    エメラルド・フェネル監督の映画公開をきっかけに手に取りました。

    めちゃ面白かった。何世代にも渡る、壮大な復讐劇であり、愛の物語であり、土地と権利の物語であり、憎しみと後悔の物語であり…。

    また、ネリーの視点から語られる構造が、より物語に引き込まれる。彼女、彼の本当の姿は?謎に包まれたまま、物語は進み、世代が入れ替わっていく。

    嵐が丘と鶫の辻という2つの一族の狭い世界、行動範囲も基本的には両家の行き来のみだし。でもこんなにスケールの大きい壮大な物語だとは。

    古典好きな方にはオススメ!

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    2026年04月26日
  • あずかりっ子

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    7歳くらいだという女の子の視点で書かれているので、その子の理解が追いついていないために状況がよくわからないところもあり、女の子の不安や戸惑いが伝わってくる。たぶん、これまで彼女はあまり親に甘えられるような環境で育ってこなかったのだろう。でも、ひと夏の間、女の子を預かることになった親戚の夫婦は、彼女をちゃんとケアが必要な子どもとして接し、子どもらしくいられるようにする。訳者あとがきに、ケアの精神が自尊心を育み、他愛につながるとあった。女の子は、その家での生活がずっと続くものではないとはじめからわかっていて諦めているようなところもあったけれど、短い間でも育まれて彼女の中に残るものがあったと思いたい

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    2026年04月20日
  • ほんのささやかなこと

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    これが史実に基づく話だとは恥ずかしながら知らなかった。
    「マグダレン洗濯所」が実在したのが1996年までって…つい最近じゃん。
    天候のこと、日々の食事のことなどと同等に、淡々とその事実を著者は記す。だからこそその事実が重苦しくのしかかる。
    最後にファーロングがする決断があったから、歴史は少し動いたのかな。現実にも誰かが動いたのでしょう。
    映画化「決断するとき」もぜひ観たい。

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    2026年04月20日
  • ほんのささやかなこと

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    読みたいリストに入れていたら、どうやら映画が上映中のようで、慌てて読みました。地方のため、小劇場で一週間限定でしか上映されないので、「これは観ておきたい!」という映画は即決しないと見られなくなるのです、、

    中編の静かな佇まいの一冊。内容も、無駄がなく、控えめで、多くを語らないという感じ。なので、よくわからないところも正直あって、滑りだしは今ひとつだったのですが、次第に引き込まれていきました。

    一般市民で、普通のささやかながら大切な生活を送っている主人公。巨大な権力には手も足も出せないのが世の常。主人公ファーロングは、偶然、権力に虐げられている人を目にしてしまう。一旦知ってしまったら、もう元

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    2026年04月18日