鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 嵐が丘

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    嵐が丘に住む不思議な住人達。互いにいがみ合いながら暮らしているのだが、その関係性がわからず、鶫の辻の間借人のロックウッドは使用人のネリーに話を聞きます。彼女の話がまぁ、面白い。ロックウッドじゃないですが、「早く続きを話してくださいよ」とせがみたくなります。

    ネリーは自分が常識人みたいな感じで話していますが、彼女も偏見ありまくりの大概な人物で、彼女のせいで揉め事が大きくなっているまであります。そんなところを、突っ込みながら読む楽しみもあるのではないかと思います。

    二人がもめていたら、普通はどちらかの肩を持ちたくなります。ですがこの作品の場合、どっちもどっちですので、高みの見物的な立ち位置でそ

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    2024年01月15日
  • 恥辱

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    最初はしょうもないオッサンやなーって感じだったんだけどね。まぁ最後までそれは変わらなかったわけですよ。
    しかし平たく言えばいい年こいても性欲が収まらないオッサンが若い子に手を出すといういやしかし普通に今でもあるけどそれが文学的な表現でここまで生まれ変わるのかと思えば待ちでパパ活に励む世のおっさんどもも大手を振って歩けるというものではないか。
    フラレた若い子の出ている劇を見に行ってまた振り返ってくれないかなーとか妄想しているところとか最高だけどしかしこんなんで賞を取っちゃうとか審査員もオッサンしかいねーじゃねーかとかこれはこれでどうしようもなく、、イイネ!

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    2023年12月24日
  • 恥辱

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    ネタバレ

    背景はアパルトヘイトが終わった頃の南アフリカでの個性的な白人男性の転落話なんだけれど、私は女。女目線から読むと学生に手を出す准教授も白人を凌辱する男も最低……。この最低な男が語る体験と生活。そこに登場する全く理解できない娘の価値観。だからと言ってこれは嫌な話だ! となるわけではなく、読み終わるとグルグルと登場人物それぞれの人生や考え方・背景を想像し回想し行動理論を考えちゃう。この余韻を文学と呼ぶのであればすごい作品。全く想像すらできない生活エリアでの話なのにリアリティが迫ってくるのもすごい。読んでみて、価値観はきわめて個人的なもので共有できないが、慮ることはできる。しかしできたところで虚しい。

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    2023年12月02日
  • 嵐が丘

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    強烈のひとこと。
    だれも心を寄せられる人物がいない(笑) でも、それでもしばしのあいだ心のなかに人物が住みつくあの感じが残るところが、やはり名作たるゆえんなのだろうな。読書会向きというか。人の感想も聞いてみたい~。
    読みはじめ、二種類の訳をいったりきたりしたのだけど、鴻巣さん版は、語りの枠のあり方(誰が語っていて、その人がこの物語のなかでどんな位置づけなのか)が、台詞回しだけでも明確に描き出されていて、すんなり物語に入れた。
    考えてみれば、いちばん最初に登場するのが、縁もゆかりもない下宿人て、導入としてはかなり難しくないですか? でも、第三者がいないと語る動機がないからこうせざるを得ないのか。

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    2023年11月10日
  • 誓願

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    3人の視点から描かれていて、世界観が立体的に感じられた気がする。展開にもドキドキ、ハラハラするので、エンターテインメントとしても読める。

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    2023年10月31日
  • 別冊NHK100分de名著 フェミニズム

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    ザ・フェミニズム、という人選でなく、専門とは少し離れた視点もっ、てのが絶妙な匙加減。とはいえ、一番感銘を受けたのは、上野さんが取り上げている”ホモソーシャル”のそれ。さすが第一人者。ミソジニー、ホモフォビアといった、ヘテロセクシャル一辺倒な男性特有の思想も、ホモソーシャルの視点から説明され得る。なるほど。短い中にも気付きの多い一冊。

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    2023年10月24日
  • 恥辱

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    ネタバレ

    はじめて読むクッツェー。
    先入観で難しい話かと思っていたが、翻訳も読みやすく、スラスラと読めた。
    読む人の立場により、どこが印象に残るか変わってきそう。
    前半は父親の、性欲とプライドに突き動かされた結果の都落ちまでを描く。一転、後半の方は娘と父の関係が中心になっていく。
    強姦され子供を孕った娘が、相手を告発せず、そのことを誰にも話さない、その娘の気持ちを理解するできない父親の苦しみ。その背景に仄めかされる、南アフリカ社会で白人として生きていくことのハードル。そんなところが印象に残った。
    いつか再読したら違う読み方ができるかも。
    クッツェーの他作品も読んでみたい。

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    2023年10月08日
  • 恥辱

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    老いに向かう男性が少しずつ、ズレてゆき転落する物語と思っていたら、南アフリカの抱える歴史や歪みがそれぞれの運命に結びつき、思いもよらない展開となった。

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    2023年09月16日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    ある田舎町の学校に女性教師が赴任し、そこから起きた事件
    田舎町の平穏だけど退屈な空気感
    そこに現れた異質な存在に惹かれる少年(過去)と、それによって人生が変わり果てた老人(現在)が事件について語っていく。
    真相がわからないまま進むが
    引っ張り込むようなエンタメの要素は無い代わりに各場面静かで鮮明な描写と比喩に浸り、物語に引き込まれた。

    意図してるものかはわからないけど、現在と過去を交互に読むうち老人と少年が混ざり切り替わりの境目が無くなる瞬間を何度か感じ、混乱するではなくて「語っている現在の主人公自身が過去と行き来している」ように読めた。

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    2023年08月31日
  • 別冊NHK100分de名著 フェミニズム

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    ネタバレ

    勉強になった。『侍女の物語』に見られる女性の分断は、男女雇用機会均等法や派遣法などによって現実に起きている、といわれると、たしかにそういう見方もあるなと気付かされた。専業主婦、一般職、総合職…
    ルネ・ジラールの欲望の三角形の話は聞いたことがあったので、それが上野千鶴子さんの話に出てきて嬉しかった。たしかに、頼朝の女ばかり口説く「鎌倉殿の十三人」の三浦義村はそれだなと思う。
    男は男に認められることで男になるが、女は男に認められることで女になる、その性の非対称性もわかりやすかった。結局この社会はそんな家父長制の尾っぽを引きずったホモソーシャルな社会だけれど、会社と半身で関わる・プライベートを大切に

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    2023年08月29日
  • 昏き目の暗殺者 下

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    いろいろな感想を読んでいると、アイリスの回想が長すぎるという声が多いけれど、わたしはアイリス部分は面白くて、逆に「昏き目の暗殺者」とその作中作が冗長でちょっと飛ばし読みになってしまった。
    全体として面白かったかといわれると、うーん、だし、作中作の秘密も終盤でうっすらと察しはしたけど、それでも放り出せない魔力のようなものは感じた。『侍女の物語』は近未来(?)のディストピアだったけど、実はそんな世界はちょっと前に厳然と存在していたし、なんなら今でも地域によってはあるしということをあらためて突きつけられる。

    アイリスの己に対する回想や評価はひたすら辛辣なのだけど、描かれていない部分でよろこびを味わ

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    2023年08月28日
  • 別冊NHK100分de名著 フェミニズム

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    どの章もわかりやすく興味深く読めたけれど、上間さんの語りは私の中で別格。
    なぜ傷や暴力や怒りやトラウマを、悲しみと絶望あふれる世界を、こんなに力強く静かに語れるんだろう。
    彼女の文章を読んでいると私はいつも深海に潜ってる気持ちになる。

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    2023年08月23日
  • 文学は予言する(新潮選書)

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    ディストピア、シスターフッド、他者の視点からまとめられた文学論。
    散発的な印象はあるが、それがアクチュアルという意味でもあるのだ。
    文学、大事だな。
    この本のおかげで読みたい本がまた増えた。

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    2023年08月17日
  • 昏き目の暗殺者 上

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    入れ子構造になった複雑な物語。
    ・人生の終盤を迎えたアイリスの現在と回想。
    ・車ごと橋から落ちて、若くして亡くなったアイリスの妹、ローラが、生涯に1作だけ書いた小説『昏き目の暗殺者』
    ・その小説自体も、人目を忍んで逢瀬を重ねる男女の逢い引きのなかで、男の口から、とある惑星を舞台にした物語(それこそが『昏き目の暗殺者』)が語られていく。

    ……とまあ、自分の頭の中を整理するために書いてみた。

    ちょっと長くて、どれもこれも謎ばかりなので、わくわくというよりは少し読み疲れる感じもあるのだけど、それでも下巻は読むつもり。あと、老いに対する容赦ないぶった切り方など、どきっとするところも多くて、この呵責

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    2023年08月16日
  • 別冊NHK100分de名著 フェミニズム

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    2023.1.2放送のものに、放送では伝えられなかった内容を加えさらに充実させた1冊です、とディレクター山田氏の「はじめに」弁。

    「伊藤野枝」は番組では辻潤と大杉栄との関係と28歳までに7人の子供を出産、というのがとても印象に残ってしまってあまりいい印象は無かったのだが、加藤陽子氏の活字を読むと、思索の人ではあったのかもという印象が少し増えた。明治28年の生まれで生家は没落はしていても潤沢だったころの生活の名残があり、労働者の開放を思想しながらも、女工たちの生活との間には一線がひかれている、などのことが改めて分かった。

    「侍女の物語」では筋書きや登場人物の意味付けが書かれていて、気づかなか

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    2023年07月13日
  • 別冊NHK100分de名著 フェミニズム

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    紹介されている本はどれも興味深かった。
    ジュディス・ハーマンの心的外傷と回復は、特に読みたいと思った。
    ・伊藤野枝の「階級的反感」にはめちゃくちゃ共感する。
    正義に燃え、階級による格差や差別をなくしたいと思って活動しているのに、(活動による救済の対象である)労働者階級と仲良くできない。相手には拒まれてしまうし、相手のそんな振る舞いに自分も苛立ってしまう。
    それを率直に認めて見つめるのは勇気がいるがとても大切なこと(今のリベラル知識人に足りていないこと)。
    そして、上間陽子の「階層的な違いや壁は確かに存在する。でもそこからだけどな、そこからスタートすればいい」というのは説得力があった。

    ・アト

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    2023年07月10日
  • 緋色の記憶〔新版〕

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    ネタバレ

    1926年、アメリカ。ケープ・コッドにあるチャタム校に、新しい美術教師のミス・チャニングがやってきた。校長の息子ヘンリーは絵の才能を見込まれ、放課後や休日も黒池のほとりにあるチャニングのコテージを訪ねるようになる。だが、チャニングが同僚の文学教師リードと親しくなりはじめてから、少しずつヘンリーの世界は歪みはじめた。少年時代の記憶の澱を揺さぶるミステリー。


    完成度が高くて面白かったんだけど、最後まで読んで語り手がやらかしたことを知ると、途中で何度も「しんどい記憶だけど、今思えばあれも青春だった……」みたいな感慨を漏らしてたのが後からムカついてくる(笑)。最終章は激しい罪悪感から生みだされた捏

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    2023年06月04日
  • 風と共に去りぬ 第4巻

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    怒涛だった………
    最初から最後までずーっとハラハラしながら読んでいた気がする。
    KKKってなんとなく存在だけは知っていて、「(白装束の姿の白黒写真とか見て)薄気味悪いな〜」っていう印象しかなかったんだけど、まさかここで物語に関わってくるとは。
    無知すぎてKKKが元々は南部の人たちで結成された組織っていうことすら知らなかった。
    4巻は、ただ楽しく読むだけじゃなくて深く考えさせられることが多かった。
    南部でずっと行われてきた奴隷制の是非や、KKKが結成されざるを得なかった当時の情勢とか。
    自分の中では、黒人も白人も関係なく平等だし、就く仕事も誰と結婚するかも、人種というのに制限されずに個人で選択さ

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    2023年05月20日
  • 嵐が丘

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    自分の中の海外女流文学ブーム来たる。
    おどろおどろしく、でも生々しさはない恋愛、不思議だった。ヒースクリフの気持ちは推しはかることしかできないのね。

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    2023年05月16日
  • 嵐が丘

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    ネタバレ

    まず構成がすごい。複雑な構成の作品は苦手だが複雑なのに分かりやすくて、さらに息子娘たちが親の世代のコピーのようでよくできてるなと。
    出てくる登場人物がみんなわがままで気が強くて正直前半は読むのに疲れるくらいだった。恋愛小説って書いてあるのに恋愛小説っぽくないし。復讐物は復讐する人に共感できる傾向があると思うがヒースクリフはくせものすぎて全然共感できず衝撃だった。
    ただキャサリンとヘアトンが結ばれていく様子は美しいし、ヒースクリフも最後までずっとキャシーだけを一途に愛し続けていて、終盤は特に良かった。

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    2023年05月11日