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Posted by ブクログ
「やみくも」を全面組み替え、加筆訂正、そして新しいものをプラス。
ということで、「やみくも」を買った人でも、損はなし。
翻訳や言葉についてのあれこれを真摯に突き詰めるかと思うと、日常で出合った出来事にプチあっと驚く結末?があったり、思わぬ切り口での考察で「そうなのか」と発見させられたり、かと思うとちょっとしんみりしてみたり。
どのエッセイも中身がギュッと詰まって、「いずれの地もそれぞれ」に楽しい。
青山南さんといい岸本佐知子さんといい鴻巣さんといい、翻訳家の人はエッセイの巧い人が多い、と思う。
言葉とじっくり向き合っているせいなのか、独りであれこれ考えることが習慣になっているせいか。
鴻巣さんの場合は、発想のユニークさというよりも、言葉へのこだわり豊富さが、面白さを生んでいるようである。
「翻訳というのは、ひとことで言うと、〈解釈〉のことだ。」(P208)とするならば、鴻巣さんは世界をこういうふうに解釈しているのね、ということでもある。
しかしやっぱり、久世光彦の項が出色の出来、と思う。
「面白うてやがてかなしき」が、小説やエッセイの一つの理想だと思っているのだけれど、この久世さんの項がそれ。久世作品を喩えて、リキュールボンボンとは、なんとも見事。やっぱりこの項が一番好きだな。
Posted by ブクログ
『明治大正翻訳ワンダーランド』を読んで以来。
さすがだなあ、と思う。
翻訳者のエッセイなら、先ごろ岸本佐知子さんの作品を読んだ。
あれもとても面白かった。
岸本さんのサービス精神と、稀有のキャラクターのなせる文章だった。
こちらは、エッセイから伝わる著者の生活ぶりもすてきだが、翻訳者としての苦心や気配りなどが、より突っ込んで書かれている部分が印象に残る。
『風と共に去りぬ』の、「明日は明日の風が吹く」という名訳。
これは誰のものなのか。いつから流布したのか。
「スカーレットと江戸ことば」はこの事情を明らかにしていて、とても面白かった。
阿部知次の昭和十一年の抄訳にはじまり、数々の訳を見てもそれらしきものではない。
どうやら菊田一夫が舞台にかけたところがはじまりらしく、その舞台に立ってきた黒柳徹子の証言を得る。
それが、江戸っ子の流行りことばだった、とは。
こういう、深く深く、一つの言葉、表現にも意識を向けていくところが流石だ。
Posted by ブクログ
クッツェー『恥辱』を翻訳された鴻巣さんのエッセイ本。見慣れた世界名作文学の『嵐が丘』、『傲慢と偏見』、『ぼくを探しに』(シルヴァスタイン)、『風と共に去りぬ』、そこにいきなり『ロングテール』(クリス・アンダーソン)などなど、かつて読んだ本、見覚えのあるタイトルがぞろぞろ出てきて、そばで話を聞いているようなワクワクとした親近感が沸く。海外文学だけでなく、近代日本文学、文学者たちの翻訳の歴史まで追究して迷宮の森に入り込むようだ。
どう翻訳しようか著者が思い悩む英単語の例には難しい単語はなく、特に英語が身近ではない人にも分かりやすく読めるだろう。翻訳の話題だけではなく、意外と料理の話も多く、しかもかなり本格的でそそられる。スキーからカヌーの冒険、酒飲みの憂鬱から、ちょっぴりせつない娘との対話、悩ましい女心まで解き明かす。
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