鴻巣友季子のレビュー一覧
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ある田舎町の学校に女性教師が赴任し、そこから起きた事件
田舎町の平穏だけど退屈な空気感
そこに現れた異質な存在に惹かれる少年(過去)と、それによって人生が変わり果てた老人(現在)が事件について語っていく。
真相がわからないまま進むが
引っ張り込むようなエンタメの要素は無い代わりに各場面静かで鮮明な描写と比喩に浸り、物語に引き込まれた。
意図してるものかはわからないけど、現在と過去を交互に読むうち老人と少年が混ざり切り替わりの境目が無くなる瞬間を何度か感じ、混乱するではなくて「語っている現在の主人公自身が過去と行き来している」ように読めた。 -
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ネタバレ勉強になった。『侍女の物語』に見られる女性の分断は、男女雇用機会均等法や派遣法などによって現実に起きている、といわれると、たしかにそういう見方もあるなと気付かされた。専業主婦、一般職、総合職…
ルネ・ジラールの欲望の三角形の話は聞いたことがあったので、それが上野千鶴子さんの話に出てきて嬉しかった。たしかに、頼朝の女ばかり口説く「鎌倉殿の十三人」の三浦義村はそれだなと思う。
男は男に認められることで男になるが、女は男に認められることで女になる、その性の非対称性もわかりやすかった。結局この社会はそんな家父長制の尾っぽを引きずったホモソーシャルな社会だけれど、会社と半身で関わる・プライベートを大切に -
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いろいろな感想を読んでいると、アイリスの回想が長すぎるという声が多いけれど、わたしはアイリス部分は面白くて、逆に「昏き目の暗殺者」とその作中作が冗長でちょっと飛ばし読みになってしまった。
全体として面白かったかといわれると、うーん、だし、作中作の秘密も終盤でうっすらと察しはしたけど、それでも放り出せない魔力のようなものは感じた。『侍女の物語』は近未来(?)のディストピアだったけど、実はそんな世界はちょっと前に厳然と存在していたし、なんなら今でも地域によってはあるしということをあらためて突きつけられる。
アイリスの己に対する回想や評価はひたすら辛辣なのだけど、描かれていない部分でよろこびを味わ -
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入れ子構造になった複雑な物語。
・人生の終盤を迎えたアイリスの現在と回想。
・車ごと橋から落ちて、若くして亡くなったアイリスの妹、ローラが、生涯に1作だけ書いた小説『昏き目の暗殺者』
・その小説自体も、人目を忍んで逢瀬を重ねる男女の逢い引きのなかで、男の口から、とある惑星を舞台にした物語(それこそが『昏き目の暗殺者』)が語られていく。
……とまあ、自分の頭の中を整理するために書いてみた。
ちょっと長くて、どれもこれも謎ばかりなので、わくわくというよりは少し読み疲れる感じもあるのだけど、それでも下巻は読むつもり。あと、老いに対する容赦ないぶった切り方など、どきっとするところも多くて、この呵責 -
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2023.1.2放送のものに、放送では伝えられなかった内容を加えさらに充実させた1冊です、とディレクター山田氏の「はじめに」弁。
「伊藤野枝」は番組では辻潤と大杉栄との関係と28歳までに7人の子供を出産、というのがとても印象に残ってしまってあまりいい印象は無かったのだが、加藤陽子氏の活字を読むと、思索の人ではあったのかもという印象が少し増えた。明治28年の生まれで生家は没落はしていても潤沢だったころの生活の名残があり、労働者の開放を思想しながらも、女工たちの生活との間には一線がひかれている、などのことが改めて分かった。
「侍女の物語」では筋書きや登場人物の意味付けが書かれていて、気づかなか -
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紹介されている本はどれも興味深かった。
ジュディス・ハーマンの心的外傷と回復は、特に読みたいと思った。
・伊藤野枝の「階級的反感」にはめちゃくちゃ共感する。
正義に燃え、階級による格差や差別をなくしたいと思って活動しているのに、(活動による救済の対象である)労働者階級と仲良くできない。相手には拒まれてしまうし、相手のそんな振る舞いに自分も苛立ってしまう。
それを率直に認めて見つめるのは勇気がいるがとても大切なこと(今のリベラル知識人に足りていないこと)。
そして、上間陽子の「階層的な違いや壁は確かに存在する。でもそこからだけどな、そこからスタートすればいい」というのは説得力があった。
・アト -
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ネタバレ1926年、アメリカ。ケープ・コッドにあるチャタム校に、新しい美術教師のミス・チャニングがやってきた。校長の息子ヘンリーは絵の才能を見込まれ、放課後や休日も黒池のほとりにあるチャニングのコテージを訪ねるようになる。だが、チャニングが同僚の文学教師リードと親しくなりはじめてから、少しずつヘンリーの世界は歪みはじめた。少年時代の記憶の澱を揺さぶるミステリー。
完成度が高くて面白かったんだけど、最後まで読んで語り手がやらかしたことを知ると、途中で何度も「しんどい記憶だけど、今思えばあれも青春だった……」みたいな感慨を漏らしてたのが後からムカついてくる(笑)。最終章は激しい罪悪感から生みだされた捏 -
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怒涛だった………
最初から最後までずーっとハラハラしながら読んでいた気がする。
KKKってなんとなく存在だけは知っていて、「(白装束の姿の白黒写真とか見て)薄気味悪いな〜」っていう印象しかなかったんだけど、まさかここで物語に関わってくるとは。
無知すぎてKKKが元々は南部の人たちで結成された組織っていうことすら知らなかった。
4巻は、ただ楽しく読むだけじゃなくて深く考えさせられることが多かった。
南部でずっと行われてきた奴隷制の是非や、KKKが結成されざるを得なかった当時の情勢とか。
自分の中では、黒人も白人も関係なく平等だし、就く仕事も誰と結婚するかも、人種というのに制限されずに個人で選択さ -
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有志で開いている読書会がきっかけで、世界の名作小説の代表格であるエミリー・ブロンテの『嵐が丘』を数年振りに再読。何度読んでもこの小説の謎と魅力は色褪せないなと思います。今回で読むのが3、4回目だっとこともあり、語り手ネリーの「信頼できなさ」を以前より強く感じたのですが、同時にネリーの語りのうまさがこの小説全体の面白さを創り出していると思うし、彼女の語りが上手いからこそ読者は物語に引き込まれていくのだと思います。
鴻巣友季子訳版は初めて読みました。現代の読者がとっつきやすいよう工夫されている訳出はあまり古典文学に馴染みがない読者には親切である一方、この作品の世界観を損なっているように感じてしまう -
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元文学部の教授が学生と関係をもったために大学を追われるも妙な開きなおりさえ見せる序盤、あまりにも現実での見おぼえがありなんともいえない気分になる。とまあそれはさておき、まだ訴えられる前の主人公の勤めるさきがコミュニケーション学部というのが最高で、この全体のかろやかな皮肉の調子はなによりも文体に滲み出て、絶望的な惨状や嘆きをとことん悲壮にさせない。いわゆるインテリ側の人間が、そういうもののまるで通じない土地に身を置いたときの無力さは、しばしば描かれる題材ではあるかもしれないがやはり痛切。自身のもたらした害には一向に想像力を働かせないで、自身と、そのまわりがうけた屈辱だけを嘆く滑稽な男が、最終的に
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匿名
ネタバレ 購入済み感情に迫る作品
その持ち前の激しい性格さゆえにインパクトを受けるヒロイン・スカーレットが過ごす、当時の国の環境に巻き込まれた運命を描いた作品です。「もし争いがなかったら、彼女はどのような人生を送っていたのか?」という想像が尽きませんし、読者から主人公への感情移入がしやすいと感じます。古のベストセラー作品ですが、特に心情面において優れた描写があると思いました。
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本書に出てくる英文の名作は、今の自分では自力で読み解くのは難しいレベルのものばかりでしたが、それぞれの名作に対する著者の解説を読むと「あぁなるほど」という新しい学びが多く楽しく読めました。
古今の名作というものに対して、無意識に「これは『正しいものだ』」という思い込みを誰しもしてしまいがちだと思いますが、本書に出てくるエドガー・アラン・ポーの文などは一つのセンテンスが異常に長かったりするので、細かい部分まで分からなくても「これは変だ」と感じました。
ただその「変な部分」がその名作の重要なエッセンスになっていて、翻訳はそういう部分も活かす (著者は「デコボコを均しすぎない」と表現していました