鴻巣友季子のレビュー一覧
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有志で開いている読書会がきっかけで、世界の名作小説の代表格であるエミリー・ブロンテの『嵐が丘』を数年振りに再読。何度読んでもこの小説の謎と魅力は色褪せないなと思います。今回で読むのが3、4回目だっとこともあり、語り手ネリーの「信頼できなさ」を以前より強く感じたのですが、同時にネリーの語りのうまさがこの小説全体の面白さを創り出していると思うし、彼女の語りが上手いからこそ読者は物語に引き込まれていくのだと思います。
鴻巣友季子訳版は初めて読みました。現代の読者がとっつきやすいよう工夫されている訳出はあまり古典文学に馴染みがない読者には親切である一方、この作品の世界観を損なっているように感じてしまう -
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元文学部の教授が学生と関係をもったために大学を追われるも妙な開きなおりさえ見せる序盤、あまりにも現実での見おぼえがありなんともいえない気分になる。とまあそれはさておき、まだ訴えられる前の主人公の勤めるさきがコミュニケーション学部というのが最高で、この全体のかろやかな皮肉の調子はなによりも文体に滲み出て、絶望的な惨状や嘆きをとことん悲壮にさせない。いわゆるインテリ側の人間が、そういうもののまるで通じない土地に身を置いたときの無力さは、しばしば描かれる題材ではあるかもしれないがやはり痛切。自身のもたらした害には一向に想像力を働かせないで、自身と、そのまわりがうけた屈辱だけを嘆く滑稽な男が、最終的に
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匿名
ネタバレ 購入済み感情に迫る作品
その持ち前の激しい性格さゆえにインパクトを受けるヒロイン・スカーレットが過ごす、当時の国の環境に巻き込まれた運命を描いた作品です。「もし争いがなかったら、彼女はどのような人生を送っていたのか?」という想像が尽きませんし、読者から主人公への感情移入がしやすいと感じます。古のベストセラー作品ですが、特に心情面において優れた描写があると思いました。
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本書に出てくる英文の名作は、今の自分では自力で読み解くのは難しいレベルのものばかりでしたが、それぞれの名作に対する著者の解説を読むと「あぁなるほど」という新しい学びが多く楽しく読めました。
古今の名作というものに対して、無意識に「これは『正しいものだ』」という思い込みを誰しもしてしまいがちだと思いますが、本書に出てくるエドガー・アラン・ポーの文などは一つのセンテンスが異常に長かったりするので、細かい部分まで分からなくても「これは変だ」と感じました。
ただその「変な部分」がその名作の重要なエッセンスになっていて、翻訳はそういう部分も活かす (著者は「デコボコを均しすぎない」と表現していました -
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勉強してたので5月の新刊を今頃。
「あ、詩だけじゃなく解説も対訳もある。良さそう。」って、割と軽い気持ちで買ったのですが、一冊で何度も楽しめる深い中身でした。いい文庫本だ。作りも可愛いし。
米の若き詩人、アマンダ・ゴーマンが大統領就任式で朗読した詩の本。
①翻訳詩
②訳者鴻巣友季子さんと柴崎友香さんの対談。(文學界に掲載されたもの)
③鴻巣さん解説
④原文と詩の対訳
という構成。
②③を読むと、詩の印象がまた変わるし、
そこそこ英語を読める人なら、まず原文を読んで、他の章を読み進めるとより楽しい。
趣味的に語学学習しているもので、まずこの解説部分がとても面白かった。
また、語学に限らず -
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私が読んでるのは昭和63年初版のもの。
訳者も違うからかなり時代を感じる。
今だったら許されないような差別用語も
普通に使われている。
逆にそれが生々しくてその時代を側に感じる。
風と共に去りぬは有名。一度読んだけど
途中で止まっていたので再読した。
今回は面白く読めた(前回はタイミングではなかった)
ただの恋愛小説かと思っていたけど
アメリカの南北戦争の話が細やかに書いてある。
歴史小説は好きだけどアメリカの歴史は興味がなかった。
大統領の名前を聞けばその時代がどれくらい前か分かる。特にリンカーンは有名。それしか知らないけど。
名前と有名な演説しか知らないリンカーン。
その人が大統領の -
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ネタバレとうとうラスト。
5巻は初めてほぼ全編がスカーレット・オハラとレット・バトラーの話、そして二人の関係が終わりを迎える。
「風と…」は南北戦争前後の南部を舞台にした男女の愛がベースになっていますが、それはある意味枠組みに過ぎなくて、南部のアメリカの女性に求められた「淑女」としての姿と、そういう「常識」に逆らって自分らしく生きようとする女性の話であり、しかも、その女性が清廉潔白とか、清楚でもなく、ある時は身勝手で、利己的であるにも関わらず、その泥臭さに親密感がある、、、
レット・バトラーも生き残るために南部の男子の典型からは外れる事を選ぶ男ですが、スカーレットの生き生きとした感じに比べると、いさ -
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ネタバレ※自分は角川昭和38年、大和資雄訳のものを読んだので少し感じ取り方が違う可能性があります
サイコパスとしか思えないヒースクリフに境界性人格障害くらい気性の荒い大キャサリン、それに狂わされる虐待経験をもつ子孫たち……という感じに読んだ。
人物名のややこしさが凄かった。愛称も多用される為これは苗字か名前か息子か娘か親かどれ?と思う事が多々あった。(勿論慣れるが)
この小説のいい部分はカタルシスにあると思う。
隣の家の少女のような陰鬱感を後半まで引き摺り、物語の聞き手のロックウッドがまた嵐が丘を訪れる1802年には急展開を迎えている。
この場面転換がとても自分には良く思えた。
キャラ -
Posted by ブクログ
「風と共に去りぬ」全5巻の4巻目。
南北戦争に敗れた南部は北部のヤンキー達の支配の下で不遇をかこう。
黒人奴隷達は解放されたものの、手に入れた自由の扱いに困り、労働者として働くよりも、主人に仕え、家族の下僕として暮らしていた頃を懐かしむ者も出てくる。
南部の白人はどうか。貴族的な暮らしをしていた南部の名家は南軍の敗北と共に没落し、下層の貧困白人層が嘗ての屈辱的な暮らしに復讐するように、お金を武器に南部名家の土地を買い取ろうとする。
自分の生まれ故郷に戻っていたスカーレットも北軍が課した税金の担保として一族の農園を取られるのを防ぐため、妹の許婚者であったフランクと結婚し、フランクの財産で難を逃れ -
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ネタバレ古典小説の感じ方が変わった。
古典小説はとっつきにくく、わかりにくい。
この小説は絶妙なバランスにあると感じた。
どこか登場人物の語り方、物語の重厚さはハリーポッターを思わせるところがあった。それはイギリスの作家というところもあるのだろうか。
世界観としては小さく、登場人物も多いわけではない。しかし、心揺さぶられるシーンがあり、惹き込まれた。
主人公は決してヒーローではない。そして、救いもないようにも感じた。人間離れしたものも感じるが、人間臭さも感じる。そこが絶妙なのか。
4にしたのは、感動はしたが、やはり自分の求める結末ではなかったから。胸えぐられる心かき乱される稀有な小説。 -
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