鴻巣友季子のレビュー一覧
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土瓶さんの『夜の記憶』のレビューに触発されてトマス・H.クックを初読み。
平穏な村に美しい女性教師が訪れたことによって起こった事件は、どんな悲劇だったのか…
いや〜焦らされる。
こうして思い出すと…、あの時はまだ…、こんな恐ろしいことになろうとは…みたいな思わせぶりにずっと焦らされる。
「一体何が起きたのよ〜、早く教えて!」という思いからどんどん先へと読まされていく。
ヒロインの登場シーンは、色や音や空気感までもが映画のスローモーションのようにゆっくり描写されている。
クック作品の比喩で「雪崩を精緻なスローモーションで再現するような」と言われているのがすごい納得できる。
描写や言葉一つ一つがとても美しくて、ミステリーだけど文学小説を読んでるよう。
倒叙やスピーディーな展開が好きなので、思わせぶりな匂わせが続くクックさんは正直焦れったかった。
でも最後まで読むとその過去の緻密な振り返りも深く効いてくるし、スローモーションのような登場シーンも全てがこの作品の魅力だった。
「速く進むだけが面白さではないぞ」と、クック先生に教わった気がする。
とても良い作品だった。
真相が何とも言えない。。。
土瓶さん!ありがとうございました(◍•ᴗ•◍)
クックの他の作品も新版が出ないかな。 -
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アマンダ・ゴーマンさんの詩集ですね。
アマンダ・ゴーマンさん(1998年、アメリカ生まれ)
詩人、活動家。全米青年桂冠詩人受賞。
2021年1月、ジョー・バイデン大統領の就任式で、自作の「わたしたちの登る丘」を朗読。
訳は、鴻巣友季子さん(1963生まれ)
翻訳家、文芸評論家、エッセイスト。
アマンダ・ゴーマンの第一詩集。
『彼女の詩は苦難の瞬間をとらえ、希望と癒しのりリックに変える。歴史、言語、アイデンティティをかけめぐり、想像力豊かに、そして親密に、ことばをコラージュし、ときに消去する。パンデミックの悲嘆をうけとめ、悲痛のときに光をあてる。彼女はわたしたちの過去からのメッセンジャー、未来への声だ。』と、紹介されています。
「わたしたちの名は」
わたしたちの型に痣を刻印し、
この日付をしるせ。
この体は折々に半分以上が
自分のものではなくなる。
わたしたちの躰は非人間の細胞を
容れる器になった。
細胞にとってわたしたちは
存在を乗せる小舟
不可欠のもの。
国
大陸
惑星
人間
微生物叢というのは、この体の
表面&内面でうごめくなにか。
わたしたちの生の下で設計されるもの。
わたしたちは、わたしではないーー
わたしたちは、わたしたちだ。
こうしてわたしたちが担うもの、
その名でわたしたちを呼んでほしい
「樹木のように Ⅱ 」
樹木のように
わたしたちがしきりと
探っているねは
暖気で、
それは
この目ではなく、
このぼやけて
体で探す、
内に縫いこまれた
天使が探す。
斜め上へまっすぐ
なぜなら
じっとしたまま&
喜びにこの負傷を
見つけさせる
方法はあるから。
低く鳴る
音の
ように
わたしたちの
頭を
喪失に
洗われている
ときでさえ。
わたしたちは
おたがいの
いちばん良いところを
つかんで、
&始める。
『わたしたちの登る丘』も収録されています。
謝辞の最後に「わたしは黒人作家たちの娘。縛めを断ち切り、世界を変えた自由の闘士たちの裔。かれらがわたしを呼ぶ。わたしはかれらを担いつづける。愛を、アマンダ」と綴られています。
人種差別の活動家としても、若い闘士の雄叫びの詩もあります。
翻訳の鴻巣友季子さんの詳しい解説も、こね若い詩人を讃えています。
なかなか、受け止めるのが大変な詩が多いですが、読み応えのある素晴らしい詩人さんですね。
若い詩人の内面からの言霊に、身震いを感じる真摯な詩に感動を覚えます。 -
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著者はアイルランドの代表的な現代作家さんらしい。
舞台はアイルランドのとある都市、1985年のクリスマス。
ファーロングは父を知らぬ私生児として育ったものの、今は燃料店を切り盛りし、
妻と五人の娘に恵まれている。
ところが、クリスマスの直前、
女子修道会に付属する施設で
その実態を目の当たりにしてしまい・・・
自らの生い立ちと重ねつつ、葛藤する・・・
アイルランドには、1996年まで各地に
「マグダレン洗濯所」という施設があった。
母子収容所を併設し、政府の財政援助を受けながら
運営されていたものの、
実態は女性への虐待と労働力の搾取・・・
名ばかりの職業訓練所だったとか。
ファーロングは、その実態を垣間見てしまったのだ。
読んでいて、
ずっとわけのわからない不安につきまとわれ、
先に進めなかった。
この先、きっと良くないことが起きる、
平凡な日々が喪われる・・・と。
ムダがない文章なのに五感を刺激される。
惹かれるのに、この不安は何なんだろう・・・?
ラストを読んだ瞬間、
ああ、自分が年をとったからなんだと、納得する。
平凡な穏やかさを私は絶対に手放したくないんだな、と。
いつの間にか、小説の中でも、
保身に走ろうとする自分に愕然とした。 -
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ミステリーに分類されているが、ネタバレや謎解きに重きが置かれている訳ではない。
事件発生までの時系列に加えて、主人公の少年が老齢になった現代の描写や裁判の公判での証言を織り交ぜることで飽きの来ない展開がされている。
少年の一途な心理が描かれているが、大人の自分としては、彼が興醒めする大人側の視点で考えてしまう。学校長の父親に対する評価が、主人公の少年と女性教師で違っていたことが判明し、彼自身の成長に併せてそれも変遷していくことが描かれている。美人教師の赴任に端を発する事件の裏で展開される、親子や家族関係がテーマなのだろう。
一つ気になったのは、主人公の心理描写と重ねられて陰鬱に描かれているチャタム村が、自分のイメージがなくてあまり共感出来なかった点。現地の人には一般的なステレオタイプなのだろうか。 -
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ネタバレ箸休め的に軽めの一冊。
翻訳本は結構読むけど、こういった視線は新鮮だったり。
筆者のスタンスは序章に言い切ってしまっていて「翻訳とは一種の批評なのです。しかし翻訳者が書くのは、その作品の論評ではありません。作品そのものを書くのです」という文に集約される。いやー、あまりに正鵠を射た意見すぎて何も付けたせない…。
学芸書も同じように翻訳本が結構あるわけだけど、ああいったのもキチンと専門家が訳してくれている意義があるわけだ。いやぁ、ホントありがたいなぁ。
そういえば各章に英語本文を持ってきて、どちらかというと翻訳者を目指す人向けではあるんだけど、どういう思考で翻訳をするかという視点の読み物でもあるので楽しめると思うな。英語はもう当たり前のように読めなかったし! -
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嵐が丘に住む不思議な住人達。互いにいがみ合いながら暮らしているのだが、その関係性がわからず、鶫の辻の間借人のロックウッドは使用人のネリーに話を聞きます。彼女の話がまぁ、面白い。ロックウッドじゃないですが、「早く続きを話してくださいよ」とせがみたくなります。
ネリーは自分が常識人みたいな感じで話していますが、彼女も偏見ありまくりの大概な人物で、彼女のせいで揉め事が大きくなっているまであります。そんなところを、突っ込みながら読む楽しみもあるのではないかと思います。
二人がもめていたら、普通はどちらかの肩を持ちたくなります。ですがこの作品の場合、どっちもどっちですので、高みの見物的な立ち位置でその騒動を眺めることになります。全く感情移入できない人たちのゴタゴタを見せられるのですが、ワイドショー的な興味で読める感じです。
そんなぐちゃぐちゃな話なのに、なぜか読後感は良かったです。それまでのテンションも終盤も終盤になると、徐々に憑き物が落ちたように下がっていき、ほっこりするようなエピソードが出てきます。
そして最後には、取ってつけたような結末があります。普通ならそういうものは、鼻についたり、納得できなかったりするのですが、この作品に関しては、それまでのゴタゴタがあまりにもすごすぎたので、「とりあえずどういう形にしろよかったね」と思えてしまいました。
なんだろう、今までになかった読書体験でしたね。特定の人物の幸せを願ったり喜んだりではなく、あまりにもぐちゃぐちゃな物語世界が回復してほっとする感覚でしょうか。あるいは神さまの気持ちなのかもしれない。あまりに愚かな人間たちが、少しだけまともになって喜んだみたいな。
とりあえず、背表紙にある「世界の女性を虜にした恋愛小説」では、決してない作品だと思いました。 -
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最初はしょうもないオッサンやなーって感じだったんだけどね。まぁ最後までそれは変わらなかったわけですよ。
しかし平たく言えばいい年こいても性欲が収まらないオッサンが若い子に手を出すといういやしかし普通に今でもあるけどそれが文学的な表現でここまで生まれ変わるのかと思えば待ちでパパ活に励む世のおっさんどもも大手を振って歩けるというものではないか。
フラレた若い子の出ている劇を見に行ってまた振り返ってくれないかなーとか妄想しているところとか最高だけどしかしこんなんで賞を取っちゃうとか審査員もオッサンしかいねーじゃねーかとかこれはこれでどうしようもなく、、イイネ! -
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ネタバレ背景はアパルトヘイトが終わった頃の南アフリカでの個性的な白人男性の転落話なんだけれど、私は女。女目線から読むと学生に手を出す准教授も白人を凌辱する男も最低……。この最低な男が語る体験と生活。そこに登場する全く理解できない娘の価値観。だからと言ってこれは嫌な話だ! となるわけではなく、読み終わるとグルグルと登場人物それぞれの人生や考え方・背景を想像し回想し行動理論を考えちゃう。この余韻を文学と呼ぶのであればすごい作品。全く想像すらできない生活エリアでの話なのにリアリティが迫ってくるのもすごい。読んでみて、価値観はきわめて個人的なもので共有できないが、慮ることはできる。しかしできたところで虚しい。だけどそこに小さな希望があるんだよってことかな。文学を突き詰めるのってやりたいからこそ辛そう……。物語の世界観をただ感じるだけで十分楽しいしね。
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ネタバレはじめて読むクッツェー。
先入観で難しい話かと思っていたが、翻訳も読みやすく、スラスラと読めた。
読む人の立場により、どこが印象に残るか変わってきそう。
前半は父親の、性欲とプライドに突き動かされた結果の都落ちまでを描く。一転、後半の方は娘と父の関係が中心になっていく。
強姦され子供を孕った娘が、相手を告発せず、そのことを誰にも話さない、その娘の気持ちを理解するできない父親の苦しみ。その背景に仄めかされる、南アフリカ社会で白人として生きていくことのハードル。そんなところが印象に残った。
いつか再読したら違う読み方ができるかも。
クッツェーの他作品も読んでみたい。