鴻巣友季子のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
実際に起きた閉鎖コミュニティーにおける集団レイプ事件に着想を得た本作。衝撃的な話だが、事件そのものではなく被害者やその親族の女性らが、コロニーを支配する男性陣が外出している間に今後の対応策(何もしない、闘う、去る)を話し合う(ウーマン・トーキング)ことが主眼となっている。
個人的には展開が遅くて文学的すぎる印象だった。
なお、本書はある理由から幼い頃一度コミュニティーを離れた男性(それにより男性陣から下に扱われている)が書き留めたノート、という形式を取っている。女性たちは教育を受けられず文字が書けないからである。小説の最終部近くで軽く振れられているコロニーを追われた理由も罪深く考察を深めるポイントだった。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ最後の方に、バザーでレットにダンス相手として落札されてとびだしていく場面まで、スカーレットのことが一ミリも好きになれなかった。
両親以外の人を見下しすぎてきて、ついていけず…チャールズも十分愛らしい青年だったと思うけど、あんなにあっさり死んでしまうなんて…ここをほんの数行で終わらせる作者の潔さは面白かった。
スカーレットに子どもが生まれてから、決定的に人生の大事な選択を間違えてしまった様がありありと伝わってきて(特に子どもに全く愛情を持てないシーンがリアル)、いたたまれない。17歳という若さゆえに選択を誤り、社会の慣習に押し込まれる様子が、いや自業自得やろという気持ちもありつつ、かわいそうだった。今読むと、女性はしとやかであらねばならない、戦争はやるべきだ、という考え方に違和感を持てるけど、スカーレットは本当によく我慢した方だなと思う。
バザーのシーンで、みんながあるべき場所に違和感を感じることなくおさまり、キラキラと楽しそうに雰囲気に浸っている様子とスカーレットの心中の対比がすごい。1巻の山場はバザーのシーンだよな〜と思う。
そしてこのシーンでレットのもとに飛び出していくスカーレットのかっこよさといったら!頑張って読んでよかったーと思えた。側から見ると相性良さそうなのに、すごく危うさがある二人で面白い。これからレットとどうなるか気になる。
スカーレットのような美しく活力に満ちて、ひたすら現実を生きる女性(今で言うとギャル、陽キャ)が、アシュリのようなインテリ青年を好きになるという構図が、けっこう現代的で面白かった。聖書の次に読まれた本ということだけど、アシュリの世間的な評判ってどうなんだろう?
わたしなんかは物語がないと人生やってらんないので、アシュリのような人は趣味が合いそうだし優しそうだし好印象だけど…スカーレットはアシュリの趣味嗜好を事実として知っていながら、そこは全否定しているのがすごく若々しい恋愛でリアルというか…今もよく言う、自分を好きにならない人を好きになるというのがまさにこれだよなーと思いながら読んでた。
一方でレットの魅力はいまいちわからず、危うい感じの男性だな〜と思っていたが、スカーレットに惹かれている様がけっこうキュートでよかった。
南北戦争の時代の南部アメリカの風景をけっこう細かく描写しているけど、その文章はあんまりすっと入ってこず、けっこう流し読みしてしまった。なぜか『赤毛のアン』の風景描写を思い出した。アンの視線を通して、木々や花、天気、空気までもが喜びなどの感情がのせられているのに対し、『風と共に去りぬ』は、アメリカの人ならなんとなくわかるよね?という印象を受けた。
あとは出てくる登場人物全てにいろいろと言及しているので、またかい、とだれる部分もあった。でもこういう人物描写にいやみがなく、さっぱりとコミカルに書いており、それぞれ愛着を持って書いているんだろうなと思った。
続きはいつ読もうかな〜先に映画観てもいいのかな〜… -
Posted by ブクログ
面白かった。
さすが売れっ子の鴻巣さん。
解釈や日本語が新鮮で、わかりやすく、センスが良い。
翻訳家ってこんなにレベルの高いことが当たり前に求められているんだなと改めて思った。
文化や生活習慣に詳しいことはもちろん、あらゆる横糸縦糸をチェックしながら物語を織り直しているうえに、読者にとってはほぼ黒子なんだから、大したものだ。
(日本が翻訳文学大国だってことも、もっとみんなに知らせてもいいっすよ。)
この本ではじめて知ったことは、
アリスのいかれお茶会に出てくる、マッド・ハッター=イカレ帽子屋は、当時の帽子はフェルトを均すために水銀を使うので、水銀中毒がなかば職業病になり、ヤバい言動の人が多い(とされていた)というところ。怖い。
あとは、嵐が丘のヒースクリフは意外とダラダラと長セリフを吐くが、日本人にはダークヒーローは寡黙という思い込みがあるため、その魅力を損なわない訳はけっこう難しいんだなという点。
試みに、と浪速人情モノに訳されていたヒースクリフとキャサリンの会話が面白かった。
キャッチャー・イン・ザ・ライのところで、この不思議なタイトルは空耳に発祥していて、もとのスコットランドの詩は、日本では硬派な名文『故郷の空』として知られているが、ほんとはかなり艶っぽい内容で、そこを強調した訳の歌が、『誰かさんと誰かさんが麦畑〜』というドリフのアレだと知ってビックリ。3つぜんぶ元ネタが同じだったとは。
しかしまあ、英語を忘れきっていた私には、この本はさくさく読めなくて、とにかく時間が掛かってしまったが、楽しめました。
そんな私が、日々たくさんの翻訳物語を(無意識に)享受できるのも、こんなプロたちのおかげ。
本当にありがとうございます。 -
Posted by ブクログ
ちょっと、西の魔女が死んだを思い出した。
子供にとってひと夏という短い時間が、一生の中でどれだけ大切なものになりうるかが、さらっと描かれた文章の中に詰まっている。
楽しいときを留めておけないくらいなら、いっそ素っ気なく振る舞う感じ。
願望や喜びの感情をあえてセーブすることで、避け難い現実からのダメージを大したことではないかのように、やり過ごす感じ。
そんな子どもならではの心の防衛反応が、あぁ分かるなーと思う。いろいろと思い出す。
だからラストの一言が、ぐっとくるね。
ここは、クレア・キーガンがうまい。実に鮮やか。
映像やセリフでは、この一言に込められた想いの半分も伝えられないのではないだろうか。
文字で、本で読むことで味わえる仕掛けだ。