鴻巣友季子のレビュー一覧

  • 全身翻訳家

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    クッツェー『恥辱』を翻訳された鴻巣さんのエッセイ本。見慣れた世界名作文学の『嵐が丘』、『傲慢と偏見』、『ぼくを探しに』(シルヴァスタイン)、『風と共に去りぬ』、そこにいきなり『ロングテール』(クリス・アンダーソン)などなど、かつて読んだ本、見覚えのあるタイトルがぞろぞろ出てきて、そばで話を聞いているようなワクワクとした親近感が沸く。海外文学だけでなく、近代日本文学、文学者たちの翻訳の歴史まで追究して迷宮の森に入り込むようだ。
    どう翻訳しようか著者が思い悩む英単語の例には難しい単語はなく、特に英語が身近ではない人にも分かりやすく読めるだろう。翻訳の話題だけではなく、意外と料理の話も多く、しかもかなり本格的でそそられる。スキーからカヌーの冒険、酒飲みの憂鬱から、ちょっぴりせつない娘との対話、悩ましい女心まで解き明かす。

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    2011年08月18日
  • 明治大正 翻訳ワンダーランド

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    翻訳の初期のあれやこれやが、まとめて読めるし、読み易い。

    「日本文学(の言語)は最近まで、明治20年代にインストールした外国文学のソフトウェアでずっとやってきた」…という話がでてくるけれど、ナルホドと思いますね。

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    2011年06月23日
  • 明治大正 翻訳ワンダーランド

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    明治・大正時代の翻訳の裏話もろもろ語り、といった本。例えば、「鉄仮面」の仮面は鉄でできてはいなかった!とか煽ってあるけど、まあその作品自体知らないんだよなー。でも知ってたらもうめちゃめちゃ面白いと思う。というのも、あんまり想像でいい加減に書いたりしないで、面白い引用をたくさん出していて、文章も落ち着いていて、ユーモアも利いていて、いろいろ知らなくてもちゃんと読める本に仕上がっているからです。最近、岸本佐知子という唯一神を中心に翻訳家崇拝者になっているんだけど、鴻巣さんの文章もだいぶ気に入りました。ポプラ社のエッセイも読んでみたい。これ、知っている話だったら(っていうか現代作家バージョンはもう誰かがやっているんでしょうけど)、もっと楽しいのになあ。ここのところ、新潮新書は鉄板だと思う。去年の初めに読んだ新潮新書は結構ひどいのもあったけど、最近は読みやすくて刺激的な本が多くてよい。

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    2009年10月04日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    スコットランドの小島の別荘に集うラムジー一家と客人たちの、たった二日間の出来事を描いた作品。
    人々の心の動きが丁寧に書かれ、文章は詩のように美しい。

    ただ読みにくい文章だし、感情を入れて読むような文章でもなく
    物語としては単調で派手さは無いので、好みは分かれるかもしれない。

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    2026年09月13日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    物語の動きはほとんどなく、とある場面で登場人物の頭の中、心の中をつらつらと連ねた内容。
    突然人物が変わったりして最初は戸惑ったけれど、読み進めるうちに慣れてゆき、物語の場面が映像として浮かび上がってゆく。
    ここまで事細かに一人一人の考え、しかも複雑な感情までも文章化できるなんて…と感動すらした。
    が、時代背景、国柄が違うことに加えてこの技法の為、読みにくかったのが正直なところでした…

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    2026年08月24日
  • 風と共に去りぬ 第3巻

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    徹底的な現実主義者だよなあ、そしてへこたれない。「だから」、へこたれないのかもしれないけど。
    知り合いにも似たような人がいる。

    主観的で閉口してしまうことを口走るときもあるけれど、当時の南部の価値観や必死さを知れるのは興味深い。

    起承転結があるというより、スカーレットの人生(歴史)をひたすら辿る感じだけど、最後どうなるんだろ?楽しみ!

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    2026年08月23日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    やっぱり原作で読みたい…この読みにくさは日本語に訳してしまっているからだと思う…

    そうはいっても、後半は慣れたのか、描写も意識の流れもわかりやすくなった。
    『灯台』に到着してよかった。

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    2026年08月13日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    1927年に刊行された、ヴァージニア・ウルフの『灯台へ』。

    20世紀を代表する文学作品の一冊と言われているだけあって 多くの解説や考察が見受けられます。読み始める前にそうした解説を少し読んでおいたことは、大変助けになりました。
    読んでいなければ わからなかったかもしれませんが。

    とはいえ、構えて読み始めたものの、思っていたほど難解な小説ではありませんでした。それは昨年刊行された鴻巣友季子さんの新訳によるところも大きいのかもしれません。
    ただ 物語に動きがないので なかなか読書が進まないのも確か。

    物語は、

    第一部「窓」
    第二部「時はゆく」
    第三部「灯台」

    の三部構成です。

    第一部では戦争前、別荘で過ごすある一日の家族や客人たちの心象風景が描かれます。第二部では戦争を挟んだ約十年という時間が流れ、第三部では再びその別荘を訪れた人々の姿が描かれます。

    大きな事件はほとんど起こりません。描かれるのは、その場にいる人たちの心の動きです。そして、その「心の主」が自然に次々と入れ替わっていきます。流れに身を任せて読んでいくしかありません。一方で、今その場に誰がいて、どのような人間関係なのかは、少しずつ見えてくる構成になっています。

    この文体は「意識の流れ」と呼ばれるそうです。

    第一部では、とりわけラムゼイ夫人の思考が印象に残りました。時代も国も違うはずなのに、夫婦の間で抱く感情や、家族へのまなざしに普遍性を感じました。

    まるで突然、人の心の声が聞こえる能力を授かり、その場に居合わせているような感覚になります。

    当時、この構成や文体は非常に新しい試みとして高く評価されたそうです。個人的には、川上未映子さんの『乳と卵』を読んだときの感覚に少し近いものがありました。もちろん、あくまで私個人の印象ですが。

    そして、第一部と第三部、それぞれの最後の一文も印象的でした。

    第一部ではラムゼイ夫人の揺るぎない強さを、第三部では長い旅路を描き切った作者自身の静かな自信を感じました。

    今年の新潮文庫の100冊にも選ばれています。2027年には刊行100周年を迎えることもあり、海外では記念の学術企画も予定されているようです。そんな節目も意識された選書なのかな、と想像しながら読み終えました。

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    2026年08月10日
  • なぜ日本文学は英米で人気があるのか

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    翻訳文学において、著者とともに訳者も賞を受ける、という発想が自分の中にはなくて、世の中にそういう潮流があることも含めて良いことだと思った。

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    2026年07月27日
  • ほんのささやかなこと

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    人は、日々の中で、いろいろな出会いがあり
    看過できない事象にも遭遇する 圧倒的多数の人は見て見ぬふりするが、この小説の主人公は静かに日常の一コマのように一歩を踏み出した そのさりげなさがこの小説の1番表現したかったテーマかも

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    2026年07月25日
  • 嵐が丘

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    登場人物にまともな人がほとんどいなくて誰にも共感できず、読むのが辛いのに結末が気になってどんどん読んでしまうという、なかなかない経験をした
    ネリーの語り口がそれだけうまいということか
    ネリー自身も、その出来事はネリーのせいでは…?ということを数々引き起こしていて、最後まで油断できなかった

    こんなに酷い話なのに、最後はなんとかハッピーエンドっぽくなったのが個人的には良かった
    これはバッドエンドも致し方なしと思いながら読んでいたけど、やっぱり希望ある終わり方の方が好き

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    2026年07月17日
  • ほんのささやかなこと

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    NYタイムズ・英ガーディアン両紙の「ベスト100」選出?
    1985年アイルランド。修道院の闇を知ってしまった石炭商の男が、クリスマスの日に下す静かな決断の物語。

    雪降る町の静かな空気と主人公の葛藤。家族を守るための「沈黙」が支配する社会で、一人の男が選んだ行動はあまりささやかながら確かなもの。

    同調圧力が蔓延する現代を生きる我々にも通じる。真の勇気と良心とは何か、を問いかけるようでした。

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    2026年07月13日
  • 風と共に去りぬ 第1巻

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    ひらがな多めで読みやすい。
    スカーレットがとにかく青いなと、きっと誰にでもある虚栄心に満ちた青春時代を懐かしむように読み進めた

    個人的には黒人召使との関係性が興味深かった
    舞踏会やバーベキューで浮き足立つのは、現代のクリスマスやバレンタインみたいなもんなのかなぁと思ったり。皆いつの時代も楽しいことが好きだよね

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    2026年07月13日
  • ほんのささやかなこと

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    ネタバレ

    全く前情報なく読み、いろんなことを巻末で知る事になった。作者が描きたかったことを、そういう視点で、その角度から書くなんて、すごい。

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    2026年07月04日
  • 英語と日本語、どうちがう?

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    ネタバレ

    英語を勉強した時に学んだことがほとんどだったので新たな発見はあまりなし。三人称客観描写は明治になってできたということは知らなかった。翻訳小説の違和感がここにあるということも納得。

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    2026年07月03日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    これを「確かに傑作だ」と手放しに首肯するには自身の海外文学に対する読書力?知見?がまだまだ足りないのかなぁと実感させられた。

    日本の小説でも「話者が誰なのかわからない現象」はたまにあって、その度に「読みにくい」としか思わなかったが、解説を読んでみるとそれこそが技法というからびっくり。
    確かに、印象とか感想はとめどなく対象を変えていくもので、その人間本来の印象こそをそのまま描くことが正、みたいなヴァージニア考えも一理ある。
    けど、傑作とはなぁ…
    評価が分かれそうな気はする。訳者の人も原作に添いつつ、この曖昧な文章をよく訳してくれたなと感謝。

    ラムジー夫人に対する周囲の評価が場面によってコロコロ変わるのは、人には色々な面があるという証左だし、いいところ・悪いところだけじゃなくて、他の側面もあるってところでは確かに頷ける。
    ラムジー夫人の余計なお世話とも感じられる優しさもいいのかも知れない。
    10年後のジェイムズの思春期只中の考えもよく理解できる。

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    2026年06月20日
  • 灯台へ(新潮文庫)

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    ネタバレ

    読むのに非常に苦労した。目が文字の上をすべり、中身が頭に入ってこない。
    登場人物の意識の流れを克明に描写した文章なので、それを自分の頭の中のイメージに置き換えていく必要があるのだが、うまくできなかった。
    こういった文章をちゃんと読める読者になりたい、というのが率直な感想です。

    作品が何を主題として描いていたのか分からなかったので、各社の説明文の要所を引用してみる。
    ・二日間のできごとを綴ることによって愛の力を描き出した(新潮文庫)
    ・若い女性画家はそんな母子の姿をキャンバスに捉えようとする(岩波文庫)
    ・微妙な意識の交錯と澄明なリリシズムを湛えた文体によって繊細に織り上げられた、去りゆく時代への清冽なレクイエム(岩波文庫)
    ・別荘での一日を、それぞれの登場人物の意識を通して語られる内面のドラマ(みすず書房)

    新潮文庫に書いてあるように「愛の力」が描かれているということは読み取れなかった。岩波の「去りゆく時代への清冽なレクイエム」というのも意味が分からない。若い女性画家(リリー)が描こうとしていたのが母子(ラムジー夫人とジェイムズかな?)だったとは思ってもみなかった。
    みすず書房の説明は「どのような構成の小説か」を述べているだけなので、これはさすがに理解できる。逆に言えば、そのレベルまでしか読み取れなかった。

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    2026年06月16日
  • あずかりっ子

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    映画「コット、はじまりの夏」の原作ということで読んでみました。翻訳が難しそう。映画の方がわかりやすく好きかも。

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    2026年06月04日
  • ペネロピアド 女たちのオデュッセイア

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    非常に読みやすい口語体で書かれ、翻訳されている。ミュージカルのように途中途中に歌や詩などが交じり場面転換のような動きが入る。通常の小説とは異なる趣向、この手の書き方はもしかしたら原本のギリシャ神話がそうなっているパターンかもしれない。ギリシャ神話を分かっていれば、もっと楽しめるんじゃないかと思う。

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    2026年06月04日
  • イエスの学校時代

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    『イエスの幼子時代』ほどではないけれど、面白かった。
    相変わらず善良そうだけれど我が強い面々に囲まれて、普通の小市民シモンはどんどん影が薄くなっていく。
    後半は名前負けしない情欲の熱血漢「ドミートリー」に持っていかれてしまう。
    ダビードは、シモンやイネスからは独立し、真理や激情に目を向けている感じで、あまり多くを語られなかった。
    『イエスの死』、翻訳はされないのかな。

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    2026年06月03日