鴻巣友季子のレビュー一覧
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おなじみ、NHK「100分de名著」で取り上げられていた『風と共に去りぬ』。
その解説をしていた著者による、より詳しく知りたい人のための本だ。
これだけの名作を読んだことがなく、映画も見たことがなかった。
だからなんとなくのイメージで、南部のわがままな金持ちの美人さんがニヒルな男性に惚れて振られる話、だと思っていた。
そもそもからしてほとんど間違っているのだが、なんと!
スカーレット・オハラはヴィヴィアン・リーのような容姿ではない!
四角い顔で、つり目、浅緑の目、猪首、低めの身長。
何も知らない私ですら、ヴィヴィアン・リーの姿は見たことがあり、あのイメージだったのだが。
著者はコンパクトグラマーと表す魅力のある女性が、原作のスカーレットだ。
さて、一体何がスカーレットの魅力か。
それは偏に、彼女の持つ強さと、幼さと、自己中心的な性格にある。
ヒロインのライバル、あるいは対をなす、対極にいるかのように見えたメラニーが、実は原作の中ではWヒロインとして扱われている。
聖女、手弱女、純朴。
そんなメラニーのイメージは覆される。
182頁からの「黒のヒロイン、聖愚者メラニー・ウィルクスの闇」の章は驚きを禁じ得ない。
スカーレット、メラニー。
そもそもこの二人の名前が表すもの、そして、ここぞの場面で発揮される強さや暗さ。
イメージとは、「幻」だ。
著者は257頁で「これは恋愛小説ではない」と言い切っている。
悲恋、泥沼、三角関係。
そんなイメージばかりが先行しているが、実は全く違う姿がそこにあった。
フェミニズム的な観点からすれば、「女の敵は女だし、女は弱々しいし、わがまま女は男から捨てられる」というイメージを作ったのはだーれだ、と言いたくなるのだが、またそれは論点がずれるので、指摘に止める。
面白いのは、67頁。
『風と共に去りぬ』は壮大なる萌えの物語で、このセリフを誰に言わせるか、なる評論もあるそうだ。
私なら、ルパン三世の中のキャラクターなら次元大介がぴったりだと思う。
素晴らしき名作は、母と娘の物語、女同士の友情、力強さを持ってたくましく生き抜く女性の物語だ。
ってことは、最近の少女漫画、ディズニー作品に通じるんじゃないか?
今度、原作を読んでみよう。 -
Posted by ブクログ
エリート大学教授が性欲により落ちぶれていく話。簡単にいうとそれだけなんだけど、じゃあ落ちぶれていくってなんだろう?アフリカは落ちぶれている?都会で大学教授をすることはエリート?生きていく上での恥辱とはなにか?
自分たちが味わった恥辱について、大学を追い出された元、エリート大学教授と、アフリカの田舎で農園経営をして必死に1人で生きていくその娘が話し合う所がある
「最下段からのスタート。無一文で。それどころか丸裸で。持てるものもなく。持ち札も、武器も、土地も、権利も、尊厳もなくして」
「犬のように」
「ええ、犬のように」
生きていくなかで、何に裁かれていかなければならないのか。美しい女とセックスをして、それを申し訳ないと形だけでも涙ながらに謝罪しないことは糾弾されるべきことか?裁かれることか。女1人で身寄りもない田舎で農園を営む夢を持ち続けることは裁かれることか?誰かに糾弾されることか?わからないけど、人が生きるだけで誰かが嫌悪を抱いて、それらに制裁を与えたい、屈辱している姿を見たいと思う人間はそこかしこにいるのだろうなーと思った。
文中でひとつのキーワードになっている犬について描かれている本当に最後の最後の後半がすごく好きだった。多分、犬は人間に最も近いものとして描かれることが多いからめちゃくちゃ死ぬんだろうな。
犬のように生きて、犬のように優しく抱かれて、犬のように何が訪れるのかわからぬまま死ぬのだ。
犬がめちゃくちゃに死にますが、犬とはわたしでありあなたかもしれない。 -
Posted by ブクログ
明治大正期の名&迷翻訳家14人とその主要作品を紹介。
経歴の紹介はあっさりとしたものですが、
それよりも翻訳家としての悲喜こもごもに重点が充てられています。
著者自身も翻訳家であることからの、想いと感情が入り混じり、
エッセイ的な色合いが濃い感じの文章です。
一字入魂の森田思軒、絶妙の会話文の若松賤子、
荒業師な黒沼涙香、古きパリへの憧憬を窺わせる永井荷風、
翻訳者としての想い爆発な内田魯庵、発禁と伏せ字、邦題の謎、
ノベライゼーション・・・等々、明治大正期の彼らの挑戦が
楽しく語られています。
引用文献・参考文献も豊富。さすがに当時の文献は大変そう。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ言葉を生業にしている親近感もあり、翻訳家や通訳のひとの話はおもしろい。書評もよくかいているが、そのセンスもわりと好き。彼女はちょっと上の世代で子育てもする人なので、共感のポイントはさらに多くなる。あちこちの媒体に書いたエッセイを集めたものなので、長短も話題・文体もバラバラながら、それもまた最後まで飽きさせないリズムと思えてくる。「言葉が気になる」の章はもちろん、「道草を食う」と章立てされたちょっと不思議な、非日常にくらっとするような文章もおもしろいもの揃い。ホストファミリーとして出会ったアフガニスタンの若い女性の話、掉尾を飾る久世光彦さんとのエピソードなどはしんみり。