鴻巣友季子のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
面白かった。
さすが売れっ子の鴻巣さん。
解釈や日本語が新鮮で、わかりやすく、センスが良い。
翻訳家ってこんなにレベルの高いことが当たり前に求められているんだなと改めて思った。
文化や生活習慣に詳しいことはもちろん、あらゆる横糸縦糸をチェックしながら物語を織り直しているうえに、読者にとってはほぼ黒子なんだから、大したものだ。
(日本が翻訳文学大国だってことも、もっとみんなに知らせてもいいっすよ。)
この本ではじめて知ったことは、
アリスのいかれお茶会に出てくる、マッド・ハッター=イカレ帽子屋は、当時の帽子はフェルトを均すために水銀を使うので、水銀中毒がなかば職業病になり、ヤバい言動の人が多 -
Posted by ブクログ
ちょっと、西の魔女が死んだを思い出した。
子供にとってひと夏という短い時間が、一生の中でどれだけ大切なものになりうるかが、さらっと描かれた文章の中に詰まっている。
楽しいときを留めておけないくらいなら、いっそ素っ気なく振る舞う感じ。
願望や喜びの感情をあえてセーブすることで、避け難い現実からのダメージを大したことではないかのように、やり過ごす感じ。
そんな子どもならではの心の防衛反応が、あぁ分かるなーと思う。いろいろと思い出す。
だからラストの一言が、ぐっとくるね。
ここは、クレア・キーガンがうまい。実に鮮やか。
映像やセリフでは、この一言に込められた想いの半分も伝えられないのではないだろう -
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Posted by ブクログ
面白くなくはなかったけど、絶賛されてる意味はわかんなかった。。
毒親によって人生をめちゃめちゃにされる子供たちにはシンプルに心が痛んだので、ノットフォーミーだった気もしている。
無理矢理嵐が丘の家に連れて行かれたリントンくんが、最終的にあんなに性格がひん曲がってしまったことが悲しい。
根っこには性格の悪いところがあったとしても、穏やかな叔父の元で慈しまれながら育ったならあんなふうにはならなかったんじゃないか。
ヒースクリフが生涯を捧げた復讐も逆恨みすぎて全然共感できないし普通に嫌い。
でも登場人物一人一人にこうして心を痛めたり、嫌いになったりするってことは、まあ、ちゃんと面白くはあったんだ -
Posted by ブクログ
1985年、アイルランドの小さな町。
クリスマスが迫り、寒さが厳しくなるなか、
石炭と木材の商人であるビル・ファーロングは
ある日、石炭の配達のために女子修道院を訪れる。
そこでファーロングは「ここから出してほしい」と願う娘たちに出くわす。
修道院には未婚で妊娠した娘たちが送り込まれているという噂が立っていた。
隠された町の秘密に触れ、決断を迫られたファーロングは
己の過去と向き合い始める。
そんなあらすじ。この物語を読むまで存在すら知らなかった。
1996年まで存在したマグダレン洗濯所。
婚外交渉により身ごもった女性ばかりでなく、
堕落する可能性があると恣意的に判断された女性、
身寄りのな -
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ネタバレ作者は、南アフリカ生まれの白人。この作品で、2度目のブッカー賞を受賞。
前に読んだ『絵葉書きにされた少年』で、クッツェーの作品が何度か引用されていたので、興味を持って読んでみた。
読んでみると、話は重い。南アの社会的問題に直面させされる。
アパルトヘイトが終わり、民主化の道を開いたマンデラ政権。様々な人種が共存できる「虹の国」として新しい出発をきった南アだったが、長年抑圧されてきた黒人と白人の共存はむろん一朝一夕で実現できるものではない。犯罪率が急増し、白人への強奪、レイプなどが日常茶飯事となり、南アを去る白人も増えた。
話の展開は、一人の大学教授が、ある時女子学生と親密な中になり、それが -
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ネタバレまず、自分に700ページあまりの小説を読めるのかと躊躇しました。さらに200年も前の海外文学を理解出来るはずがないとも思いましたが、理解したいと思ったのです。
初めのうちは名前と人間関係、物語の背景に慣れず、1日30ページにも満たない遅さで、かなり時間をかけて読み進めました。何度も巻頭の家系図を見返してこれまでになく丁寧に読みました。
女中視点の昔語りで話が進み、物語の最後には現在に追いつく箇所がきます。まるで「物語の中の人」にあえた感覚でした。
英国の田舎の閉鎖的で鬱屈とした逃げ場のない環境において、遂には破壊し尽くせないこと察して諦めて死して結ばれたあの御方。とうとう最期まで理解できません -
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Posted by ブクログ
家族でも結局、一人一人の人間なのだから
分かりあうってことは、ごく珍しいかもしれない。
この本は第三者から見た景色や語り手から見た景色が進む話ではない。
出てくる登場人物たちが、お互いにどう思っているか、どんな感情を持っているかが延々と書いてある。
誰かのたった一言に対して、過去の記憶や複雑な感情が数ページにわたって書かれていたり、何も起こらない静かな情景の中で、人との孤独や繋がりが繊細に描かれている。
セリフだって無いようなもので、
読んでいて本でしか表現できないとは
こういうことかと思った。
映画ではどうしても台詞や行動で表現する必要があるから、ここまで深く、複雑な感情を伝えるの -
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Posted by ブクログ
『オデュッセイア』を、夫を20年待ち続けた賢妻ペネロペイアの視点で⁉なんて、アトウッドにしかできまいよ。死後の世界で前世を振り返るペネロペイアの独白、不実と殺された12人の奴隷女たちによる恨みのコロス(ブロードウェイ風になっていたりしてオモシロ)から、衣食住の詳細も豊かに浮かび上がる現代の女性像との対比。いや~本質はそんなに変わっていないのかも…。
たまたま飛行機で見た映画が、レイフ・ファインズ&ジュリエット・ビノシュがこの夫妻を演じる『The Return』だったりして、それぞれの解釈の違いも楽しく、薄い本なのに実に読みごたえがありました。 -