田中慎弥のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
田中さんの作品としては、これが読んだの二つ目でした。
短編の作品が三つ入っていて、各々、不意の償い、蛹、切れた鎖です。
共食いと同様、文章が力強くて、短編なのに物凄く疲れるものでした。
疲れるとはいっても、不快感はなく、本文といい意味で対峙している感覚になれます。
三つとも印象には残りましたが、三つ目の切れた鎖が一番印象に残りました。
正直、初め人間関係や、話しのつながりが把握できなくて、半分行く前に初めに戻って、やっと本の世界に入り込むことができましたが。
自分の国語力のなさに改めて気づかされました。
まだこの春休み本を読むとは思いますが、今のところ春休みでは、一 -
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ネタバレゼミの課題図書でした。
手に取ったときの印象は「随分と短いな」ということ、それとカバーのするりとしたちょっと変わった感触。指紋がつきやすそうだなぁ、と。
読んでみての感想というか、読みながらの感想になるのですが。
タイトル通り「掌編小説」が「陳列」されている、全体としてそんな雰囲気の本でした。
好きな話とかを一つ一つ書き連ねるのも大変そうなので、大まかに思ったことを。
まず登場人物にほぼ名前がついていないことが気になりました。
もちろん「男たち(一幕)」は別ね。
なぜだろうか。
この掌編が毎日新聞に連載されていたものだと知って、あぁと思いました。
新聞に載っている記事ってノン -
Posted by ブクログ
読み始めから、暴力性と、閉じた世界の閉塞感が心地悪かったが、生き生きとした会話のせいか、いつの間にか引き込まれていた。
「共喰い」とは、遠馬と父親の関係であろう。
そしてそこに、生命力に溢れ泥にまみれた、ヌメヌメとうごめく鰻が重なる。
遠馬は父を、暴力を否定しつつ、自分の中にもそれがうごめいていることを感じ、自分自身をも否定し、しかし否定しきれない。父の呪縛を超えなければ、自分の生は否定される。
言い換えればこれは、伝統的な「父親殺し」の物語でもあるのだろうか。
しかし遠馬は、自らの手で父を殺すことができなかった。
殺したのは、仁子。これはおそらく、神のメタファーだろう。遠馬の父親と社で出 -
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著者のネットでのインタビューを見て、著書を読んでみたくなった。
情景と、人物の描写が浮かぶ。
主人公、17歳の篠崎遠馬は
生みの親である母は、魚屋を一人で生計をたてている。
近所だが一緒に住まず、たまに訪問するような間柄
父と再婚相手の義母と暮らす。
父は、暴力を伴う性癖があり実母にも義母も同じことをしてきた。
自分の中にもその衝動を感じ彼女の千種に暴力をふるってしまうことに戸惑う。
倫理とか、そういうのを超えた暴力性が男性の性の表現かもしれない。
少しわからなったのは、女性達がどう思っていたのかだ。
お母さんにしても、琴子さんにしても、暴力を振るわれていてもお父さんのことが好きだったか -