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うだつの上がらない「作家」である私の人生の折々に登場してくる、死神。中学二年生で初めて出会ったあいつのことだけは、これまで作品には書けなかったのだが……。芥川賞作家が描く「死」と「家族」。ユーモラスにして、痛烈な新境地。
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Posted by ブクログ
生きていて、 一度も死にたいと 思ったことがないなんて、 有り得るのだろうか? という一文に惹き込まれる 文体がとても好みで、思春期から成長する鬱屈とした心情が読み取れる。 私小説とファンタジーの融合のような不思議な話。
田中慎弥さんの本は共感というよりもこんな見方あるんやの連続でそれがアンチテーゼのようになっていて読んでいて面白かった。特にこの中の息子から見た母親という存在が移り変わっていく様がとても良かった。
田中さんの私小説なのかな。面白かった。 YouTubeで著書「孤独に生きる」の話をしている姿を見て、興味を持った。 普通の人が話題にしないような、でも、誰もが思っているような、そんなことが書かれているように感じて、共感もあったし、ホッとするところもあった。
生きてることに疲れたら田中慎弥先生の本を読む。 未成年の時の境遇がちかしくて、主人公には共感できる。死に対する距離感が心地いい。
評価が難しいです。 独特だし、雰囲気も好きなんですど、何か学びや驚きがあるかというとそんな刺激は少ない。 この世界観に浸かりぐるぐる漂っていいるだけど、どこにも向かっていい感じでした。私にはね。 沼な感覚。妄想豊かで読んでてワクワクしました。
この作品は作中にあるとおり「ファンタジー」なんだろうが、妙にリアルに感じられて面白かった。P48では一文が10行にも渡り、釘付けになって何度も読んだら、それがこの小説全体を物語っているように感じられた。 出会うなら伊坂幸太郎さんの死神と田中慎弥さんの死神とどっちがいいかなと考えながら読んだが、どっ...続きを読むちもややこしそうなので、出来れば出会いたくない。
父親に虐げられ、暴力を振るわれる母親と『私』。学校では理不尽な虐め。日常化する負の連鎖を絶ち切ろうと死を願望する『私』だが…私小説。登場する死神が『DEATH NOTE』のリュークを思わせた。
死神 著者:田中慎弥 発行:2024年11月30日 朝日新聞出版 初出:「小説トリッパー」2022年春季号~2024年夏季号 私小説と言っていいのだろう。子供の頃から自殺を考えていた少年が、死神と出会う。その死神とは、自殺することになる人間にとりついて(担当になって)、自殺をちゃんと見届けるとい...続きを読むうのが仕事である。決して自殺するように唆しはしない、ただ見届けるのが仕事なのだ、という。ところが、担当する人間との会話を通じて、それは唆しているように思える。 主人公は田中で、小説家になることを目指している。本ばかり読んでいるが、学校の勉強はできない。父親は有名大学を出て一流企業に勤め、昔ながらの父親像を歩んでいる。母親もそれを認め、それを望んでいる。父親はそうした昔ながらの(家父長的な)家族像にそれるような言動が家族にあると、手を上げる。母親はいつも暴力を受ける。しかし、それで絶望したりめげたりせず、そういうものだという考えのもと、美味しい料理を作る。田中本人も、父親からひっぱたかれる。すでに慣れて、覚悟はできている。その上であえて逆らったりする。 中学2年のとき、本気で自殺を考える。遺書も書く。何度も書くが、書き直す。死神がアドバイスをするというか、いちゃもんを付けるから。そもそも死神との出会いとなったきっかけは、小学校の時の友達の女の子。近くに古いビルがあり、上階が住まいになり、そこに住んでいる子だった。ビルの人たちから、決して屋上には行くなと言われている。変な噂もまちの人たちの間には立っている。ある日、その女の子から誘われて屋上へ行ってみることに。トライするが、ドアに鍵掛かっているのか開かなかった。女の子はどこかへ行ってしまい、諦めた。 中学になり、その怖いビルを見ないように通学した。通学路だったから。しかし、ある日、そこを避けて遠回りして通学していると、本来なら郵便局があるはずの場所にそのビルが立っていた。そんなばかな! また元通りの通学路に戻る。やはりビルがある。猫がいた。猫に誘われてビルに入る。屋上まで行ってしまった。そこにはスーツを着た男。それが死神だった。実は、猫に化けておびき寄せたのだった。自分はお前の担当だ、自殺するのはわかっているし、そろそろその時期だと判明したので見届けてやる、ということだった。 自殺するのしないの、唆すだの唆さないだの、延々と論争というか議論が始まる。その行ったり来たりが、例えば、ダイエットをしている人間が、今日はこれを食べて明日からきっぱりとダイエットした方がいいだろう、いや、やめとこう、と心の中で葛藤をする。同じように、断酒を決意した人間が、今日のこの一杯を最後にしよう、いや、これは飲むべきではない、などと葛藤する。禁煙などもしかり。その屁理屈のつけあいで葛藤している様子になんだか通じるものがあって楽しい。 しかし、前半のそんな軽快なやりとりが過ぎると、話は面白くなくなる。もうこの小説は面白くない、と思って投げ出そうとすると、また少し面白くなる。行ったり来たりする。なんだこの小説は?行ったり来たり、そのものではないか。結局、仕方なく最後まで読み終える。 結果は、うーん、面白くなかった。 主人公は作家になり、芥川賞を取る。このあたりは自伝的かもしれない。授賞式の描写などは実に興味深い。 子供のころの女の友達も、死神だった。別の自殺願望者の担当だった。別の死神が担当している田中の前に現れるのは本来はルール違反なのだが、担当の死に神を含めて、3者はなんだか友達のようになってしまう。学校の卒業式など、父親も母親も出席せず、死神だけが出席するというおかしさもあった。 そして、ずるずると死神とともに、自殺するのせんの、その前に死神を殺すの殺さないのと、うだうだしながら、小説家として成功していき、年を取って行く。まさに、多くの人間、多くのそこそこ成功者のパターンかもしれない。
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